
ベトナムVAT法の改正点と実務上の留意事項
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ベトナムにおいて、企業は月次または四半期ごとに税務当局へ付加価値税(以下、「VAT」)の申告・納付を行う必要がある。基本的な概念は日本の消費税と類似しているが、いくつかの留意点がある。本稿ではその概要と、2024年11月26日に可決された改正法の主要ポイントを解説する。なお、VAT還付については次回詳述する。
目次
ベトナムの付加価値税(VAT)
VATの概要
ベトナムのVATの概要は図表1の通りである。

VATの計算方法
VAT納付額は、以下の2つの方法のいずれかによって算定されるが、適用条件などを踏まえ、日系企業では基本的に控除方式が採用されている。
・控除方式:売上に係るVATから仕入時に支払ったVATを控除する方式
・直接方式:課税対象価額に法令で定められた税率を乗じて計算する方式
控除方式の適用要件
控除方式で仕入VATを控除するためには、法令上、以下の条件を満たす必要がある。
・宛先がベトナム法人名の適格なVATインボイス、輸入品に係るVATの支払い領収書、または国内外の組織・個人に代わって支払われたVATの領収書のいずれかが保存されていること
・取引額が500万VND(約3万円)以上の場合、非現金決済で取引が行われていること
※2025年7月以降、非現金決済が求められる取引額の閾値は、従来の2,000万VNDから500万VNDに引き下げられた。
実務上の留意点
上記の法定要件に加え、実務的には以下の点も満たしていない場合、税務当局から指摘を受ける可能性がある。
・宛先がベトナム法人名の適格なVATインボイス、輸入品に係るVATの支払い領収書、または国内外の組織・個人に代わって支払われたVATの領収書のいずれかが保存されていること
・取引額が500万VND(約3万円)以上の場合、非現金決済で取引が行われていること
※2025年7月以降、非現金決済が求められる取引額の閾値は、従来の2,000万VNDから500万VNDに引き下げられた。
VATインボイスの未取得や、社名など記載内容の誤りによって上記要件を満たさない場合、税務当局から指摘され、仕入VATとして認められないケースが発生している。取引の際には必ずVATインボイスを取得し、記載内容の正確性を確認することが重要である。
日本の消費税との主な違い
ベトナムのVATと日本の消費税は、その税の性質こそ類似しているものの、実務手続きにはいくつか相違点がある。主な項目を図表2に示す。

日本では、確定申告とあわせて超過納付分の還付が受けられるため、還付を前提とした予算編成が一般的である。一方、ベトナムにおいて還付を受けるには、VAT申告とは別に還付申請を行う必要があり、各種資料の提出に加え、税務当局からの照会にも対応しなければならない。
現状、ハノイでは2〜10ヵ月程度で還付手続きが完了する例が多いが、ホーチミンでは口座への入金までに2〜3年かかるケースも少なくない。そのため、ベトナム法人の予算編成においては、VATのスムーズな還付を前提としない慎重な資金計画が推奨される。
法改正の主要ポイント
2024年11月に改正付加価値税法(第48/2024/QH15号)が可決され、2025年7月1日より施行された。本改正により、日系企業が留意すべき主なポイントは以下のとおりである。
輸出加工企業(EPE)向け「輸出サービス」への0%税率適用要件の厳格化
既存の法令要件に、「輸出生産活動に直接使用される商品・サービスであること」という条件が新たに追記された。これまでは、EPEの特殊な性質を踏まえ、会計、監査、オフィス賃貸などの各種サービスも「輸出性がある」と解釈され、ベトナム国内企業がEPEに提供する多くのサービスがVAT0%の適用対象とされていた。
今回の改正により、EPE向けのサービスであっても、輸出生産に直接関与しないものは0%税率の対象外となる。ただし、現時点ではどのサービスが適用対象外となるかの明確な定義は示されておらず、今後の実務運用や通達等の動向に注意が必要である。
輸入品をそのまま輸出する取引は還付対象外に(EPEへの販売を除く)
ベトナムの法令上、三国間貿易における仲介取引の位置付けが不明確であることから、輸入した商品をそのまま輸出するという実質的な仲介ビジネスを行う法人が一定数存在している。これまでは、こうした取引にかかる仕入VATについても還付が認められていたが、今回の改正により、今後はEPEへの販売を除き、還付対象外となることが明確化された。
投資期間中のVAT還付申請に期限を設定
製造業などの企業が投資段階で購入する設備等にかかるVATの還付について、売上計上開始から1年以内(試作品の販売や財務収益は除く)という申請期限が新たに設けられた。これまでは、投資プロジェクトが完了するまで還付申請が可能と解釈されることが多く、実務上も累積VAT額が3億VNDを超えた段階で随時還付申請を行うケースが一般的であった。
しかし、今回の改正により、今後はこの期限内に還付申請を行わなければならず、提出が遅れると還付を受けられなくなる。特に2024年6月以前に売上を計上し、投資期間のVAT還付申請をまだ行っていない法人は、今後、投資期間に対する還付が受けられない点に注意が必要である。
拡張投資に対するVAT還付が明確に認可
これまでも新規プロジェクトにかかる設備投資については、VAT還付申請が認められていたが、拡張投資についてはその内容により還付が否認されるケースがあった。今回の改正により、既存プロジェクトにおける生産能力の向上や設備のアップグレードなどの拡張投資も、還付対象として認められることが明確化された。
仕入VAT控除要件の厳格化
これまでは、仕入VATの控除にあたって2,000万VND以上の取引について非現金決済が必須とされていたが、今回の改正により、500万VND以上の取引について非現金決済が必須となった。
さらに、輸出取引に関する仕入VATの控除・還付を受けるには、以下の書類の提出が必須となる(商品の性質等により一部例外あり)。
•輸送書類(船荷証券、運送契約書など)
•商品受領証明書(受領書、買い手の署名入りの受領確認書など)
•商品検査証明書(品質証明書、検査機関発行の合格証明書など)
•電子証跡(電子インボイス、システム上の取引記録など)
おわりに
VATは原則すべての取引に課されるため、企業活動への影響は大きい。したがって、VATに関する法令の変更は、企業のオペレーションや資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性がある。
今回の法改正により、VAT還付手続きに必要な書類が一定程度明確化されたものの、実務上は引き続き担当官の判断によって追加書類の提出を求められることが想定される。また、法改正直後は税務当局の対応が手探りで進められるため、還付完了までの期間が延びる可能性も高い。
VAT還付は特にベトナム南部において手続きが煩雑かつ長期化しており、企業にとって重要な論点となっている。次回のレポートでは、本改正の影響を踏まえた上で、VAT還付の現状と今後の見通しについて解説する。
なお、法改正に対応した実務プロセスの見直しやVAT還付の申請にあたっては、その複雑性を踏まえ、適切な会計・税務の専門家に相談されることを推奨する。








