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「競争心」から「連帯感」へ。世代間ギャップを解消する管理職のコミュニケーション術

「競争心」から「連帯感」へ。世代間ギャップを解消する管理職のコミュニケーション術

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深刻な労働人口の減少と生産性向上の必要性に直面する現代、企業にとって多様な人材の活用は避けて通れない課題です。現場ではZ世代、ベテラン、外国人材など様々なバックグラウンドのスタッフが働いており、かつての日本企業で当たり前だった「以心伝心」や「阿吽の呼吸」はもはや通用しなくなっています。

「何度説明しても伝わらない」「どう説明したら良いのかわからない」――。こうしたリーダーたちの悩みを解消し、多様性を組織の力に変えるヒントとして、コミュニケーション教育の第一人者である、株式会社話し方研究所 代表取締役 福田 賢司氏をゲストに迎えたセミナーの内容を紹介します。現代のリーダーが身につけるべき「適切な踏み込み方」のアップデートとは?コミュニケーションのギャップに悩む方々に必見の、福田氏の具体的なエピソードが満載です!

「叱っていいのかわからない」管理職が陥る対話不足の実態

株式会社話し方研究所 代表取締役 福田 賢司氏(以下、福田):現代社会において「ダイバーシティ(多様性)」という言葉は一般的になりました。大企業が専門部署を立ち上げ、人材確保に成功している事例が報じられる一方で、中小企業の現場では「教育体制が整わない」「採用してもすぐに辞めてしまう」といった苦悩が続いています。 特に、多くのリーダーを悩ませているのが、Z世代と呼ばれる若手社員との世代間のギャップです。

先日、中小企業の経営者団体から「怒る・叱る」をテーマにインタビューを受けました。その理由を聞くと、「今、多くの経営者やリーダーが『部下を叱っていいのかわからない、ましてや怒っていいのかわからない』と悩んでいるからだ」ということでした。これを聞いた私は、変に叱ればハラスメントと言われ、相手を困らせてしまうのではないかという恐怖心が、必要なコミュニケーションを阻害しているように思いました。

喜怒哀楽は、人間の自然な感情です。喜びや悲しみは共有するのに、怒りの感情だけを表に出さないというのは不自然な気がしませんか。もちろん怒鳴り散らすのは論外ですが、上司も人間として「そういうことをされると腹が立つ」と適切に伝えることは、自分らしく仕事をする上で大切なことです。

あるアンケート調査によると、部下との対話時間が1週間の合計で1時間未満という回答が約9割に達しています。これには「トータルで1時間も話さないの?」と、とても驚きました。この対話時間の少なさが、ハラスメントのリスクに直結しているように思います。

本来、ハラスメントとは、日頃のコミュニケーション不足や関係性の希薄さから生じるものです。普段から雑談を通じた親密な関係があれば、多少の厳しい指摘も信頼の中で受け止められるはずなのです。

しかし、上司が感情に蓋をして我慢しすぎてしまい、コミュニケーション不足に陥ってしまう。そうすると、いつか上司側が爆発してしまい、大きな問題に繋がります。
「怒る(感情の表出)」ことを認め、それを改善の要求である「叱る」へと繋げていく工夫こそが、健全な職場風土を作るといえるでしょう。そのためにはもっと具体的で、正しい線引きを理解しなければなりません。

無意識の「決めつけハラスメント」に

福田:私自身の苦いエピソードを紹介しましょう。 ある時、お客様からいただいたお土産のお菓子が、社員で分け合っても少し余ってしまったことがありました。

私は、近くにいた若い社員に「若いんだから食べられるでしょ?」と、良かれと思って勧めたのです。ところが、その社員から返ってきたのは「福田さん、それハラスメントですよ」という私にとって意外な言葉でした。

私は驚いて「どうしてそう思ったの?」と理由を尋ねると、「年寄りはそれほど食べられないが、君のような若い人なら食べられるだろう」という私の考えが、相手にとっては一方的な“決めつけ“であり、それがハラスメントに当たるという指摘でした。

幸い、私とその社員は普段からざっくばらんに話し合える良好な関係を築けていたため、その場は笑い話として済みました。しかし、もし日頃の雑談やコミュニケーションが不足していたら、この何気ない一言が原因で、人事に「ハラスメントを受けた」と報告されていたかもしれません。今の時代、こうした無意識の決めつけがコミュニケーションを縛っているのです。

多様性の時代に必須な「言葉選び」のルール

福田:現代では、LGBTQなど、性的マイノリティへの配慮や理解も必要です。私は以前、日本LGBT協会代表との対談を通じ、言葉選びの重要性を知りました。

たとえば、若手に「彼氏・彼女はいるの?」と聞くのではなく、性別を特定しない「パートナー」という表現を共通化すること。つまり「男らしさ・女らしさ」ではなく「人間らしさ」を尊重する言葉を使う必要がある、ということです。
これらは単なる言葉の言い換えではありません。「踏み込んでいけない領域」が増えたのではなく、「適切な踏み込み方」が必要な時代になったことを意味しています。相手の個性を認め、尊重する姿勢を示すアップデートが、多様な人材が安心して力を発揮できる土台になります。

「競争心」から「連帯感」へ。Z世代のモチベーション源を理解する

福田:30年前にさかのぼると、働くモチベーションの源泉は「競争心」でした。同期よりも一歩抜きん出ることが原動力だったのです。

しかし、現在の若手世代は「連帯感」を大切にしています。仲間と一緒に頑張っている感覚や、繋がっている実感を持つことに最も価値を見出す傾向があるのです。SNSでは自己肯定感や心理的安全性が重視されていますよね。こうした価値観の変化からも、競争心を煽るマネジメントは通用しません。リーダーはまず、この価値観の根本的な変化を正しく認識する必要があります。

その上で、過度にハラスメントに怯えるのではなく、「ここは譲れない部分だ」と思うものを明確にし、相手に対して要求を述べていく必要があります。

まずは、普段から良い関係を築いていきましょう。「若い世代と何を話せばいいかわからない」という意見も聞きますが、なんだっていいじゃありませんか。ちょっとした雑談から得られるもの……。それは「相手への親しみ」という、何にも勝る価値です。
親しみは、人の心理に大きな影響を与えます。仲の良い人に何か頼まれたら、つい引き受けてしまうことがありますよね。それは相手への安心感があるからこそでしょう。ぜひ、それをリーダーから発信してみてください。

まとめ

多くの中小企業が「ダイバーシティ」を掲げながらも、うまく取り組めていない現実があります。現代の若手社員は「競争」よりも「連帯感」にモチベーションを感じている中で、世代間のギャップが生まれているからかもしれません。リーダーはハラスメントを恐れるのではなく、対話時間が極端に不足していることを念頭に置き、世代間の認識やLGBTQ対応などを含む“言葉選びのアップデート”をしていく必要があります。


(後編はこちらから)

話し手
福田 賢司
株式会社話し方研究所
代表取締役

金融業界を通じ、社会の裏側を垣間見て、人間の心と表現、行動に興味を持ち、コミュニケーション教育の業界へ飛び込む。 身の回りで起きた出来事を臨場感たっぷりに話すことを得意とし、聞く人を惹きつける講義で受講者の人気を博している。 主な著書に「一流の聞く力(総合法令出版)」「心がやわらぐ会話の作法(コスミック出版)」などがある。