ベトナム・タイで成功する在庫管理術と現地スタッフでも運用できる仕組み
- ASEAN・海外展開
- # セミナーレポート
最終更新日:
公開日:

ASEAN市場では、多拠点展開や現地スタッフの流動性、複雑なサプライチェーンが在庫管理を一層困難にしています。そこで今回、「在庫管理の実践的ノウハウをお届けするセミナー「経営基盤を強化するASEAN在庫管理戦略 ~キャッシュフロー改善・コスト削減・意思決定高度化の実践ノウハウ」と題し、セミナーを開催しました。
本セミナーではStudist (Thailand) Co.,Ltd. Managing Director 豆田裕亮が、ASEAN市場における在庫管理に取り組むための「業務の標準化」、「マニュアルの見える化」を解説。また、参加者から寄せられた在庫管理に関する疑問に対し、I-GLOCAの熊谷克樹氏、CRESCO VIETNAMの神門亮氏を交えた回答の一部を紹介します。
(前回の記事はこちらから)
目次
ASEAN市場の在庫管理で失敗する企業の共通点
Studist (Thailand) Co.,Ltd. Managing Director 豆田裕亮氏(以下、豆田):ASEAN市場における在庫管理の強化策として、現地スタッフが円滑に運用できるマニュアル整備の重要性についてお話しさせていただきます。
海外、特にベトナムやタイのような国々で事業を進める中では、様々な課題にぶつかります。現場スタッフの入れ替わりが非常に激しいこと、そして地域ごとに文化や言語理解度が異なるため、システム導入や教育が難しいのが実情です。
日本で導入したシステムをそのまま海外で使うのも困難で、特にベトナムでは言語のハードルが高く、実際に使うワーカーの方々が操作を理解できないという課題があります。
業務が可視化されず、口頭での伝達に頼ったり、現地語で書き出された紙のマニュアルを代々コピーしたり、リーダーが口頭で教えるOJTに頼っているケースも散見されます。
現地スタッフが使えるマニュアル作成のコツ
豆田:このような課題を克服するには、「業務の標準化(業務プロセスや手順を統一し、誰が担当しても同じ品質で効率的に業務を遂行できるようにすること)」と「マニュアルの見える化」が不可欠だと考えています。
システムで長大な文字ベースのマニュアルを増やすのではなく、画像、動画をフル活用した手順書が必要です。手順書を作成することで、スタッフの方々が「いつでも、どこでも、どんな時でも」同じように内容を確認できるようにするのです。

もちろん、対面での教育が不要になるわけではなく、初回はしっかり教えることが必須です。しかし、2回目以降、少し忘れてしまった時に自分で確認できるものがあれば、教える側も教わる側も時間が削減でき、非常に効果的です。
弊社タイ法人のマニュアルは新しい作業ができれば追加し、不要になった作業はアーカイブするようにし、年二回の棚卸しを実施していて、8年間継続的に内容を更新しております。これにより、新人スタッフはマニュアルを見ながら一人で作業を進められるようになり、必要な品質を保ちながら業務を行えるようになりました。
もしマニュアルに抜けや漏れがあったり、古くなっていたりする場合は、先輩社員に確認し、その内容を必ずマニュアルに反映させることを徹底しています。また、社内で分からないことがあれば、外部の会計事務所や弁護士事務所の顧問に連絡し、正しい流れを確認します。
これらの知識は個人の元(ノート等)に置くのではなく、会社の資産として残すことが大切です。イレギュラーな事態への対処法などもノウハウとしてマニュアルに落とし込み、VISA更新等のマニュアルはトラブルシューティング、想定問答集としても活用しています。
質疑応答
Q1:システム上の数字と実際の棚卸しの数字はなかなか一致しないことが多いと思いますが、一般的にどのように処理をすることが正しいのでしょうか?
I-GLOCAL CO., LTD. Consultant 熊谷克樹氏(以下、熊谷):少額であれば帳簿上の数字をそのままにする場合もありますが、大きな差異がある場合は不正の疑いもあるため、管理者と連携し、実態を正確に把握して合わせるべきです。 帳簿が実態を表していないと、税務や決算で問題が生じるため、理想的には常に実態に合わせることが重要です。
CRESCO VIETNAM CO., LTD. Global IT Solution Division IT Service Manager 神門亮氏(以下、神門):システムの運用の側面で言えば、差異が発生しているのが部品材料のレベルか、半製品・仕掛品のレベルか、またその差異が何によるのかを明らかにすることが必要です。
生産管理システムを導入している場合、その基準情報(特にBOM/Bill of Materials:部品構成表)のメンテナンスが重要です。システムと実態の差異を分析し、基準情報を継続的にアップデートすることで、その差を徐々に埋めていくことが重要です。
Q2:ベトナムでは人の入れ替わりも多いですが、在庫管理の属人化を防ぐにはどうすれば良いですか?
熊谷:業務の「マニュアル化」「ルール化」「システム化」を進めることが有効でしょう。システムを導入すれば履歴が残り、新しいスタッフへの引き継ぎが容易になるため、リスクを小さくしていく方向性で取り組むべきです。
豆田:在庫管理に限らず、あらゆる業務を「可視化」「標準化」「マニュアル化」することが必要です。弊社でも営業やマーケティング、カスタマーサクセスなど、スタッフレベルの業務はすべてマニュアル化しており、「いつ人が抜けてもサービス品質を落とさない組織作り」が経営側の責任であると考えています。
Q3:在庫の「見える化」はどこまでやれば見えると言えるのでしょうか?
熊谷:「見える化」は、闇雲にお金をかければ良いわけではありません。コストとのバランスが重要であり、最終的には本社や現場の管理者が「ある程度の履歴が見える状態」にすることが落としどころになると思います。
神門:まず、「どの切り口で在庫を見たいか?」を把握しましょう。部門や担当者によって見たい情報は異なります。社内のニーズを正確に理解し、多様な視点から在庫情報をリアルタイムで提供できるシステムが必要になると思います。
Q4: 棚卸しを年一回しかしていないのですが、四半期ごとにやるのは現場負担が大きくなるのでは?
熊谷:棚卸しの適切な頻度は会社の在庫状況や規模によって異なりますが、年に一度では不十分な場合が多いです。ただ、頻度を増やすと現場負担が増えるため、まずは月に一度、実際に現場に足を運んで棚卸しに立ち会うことから始めることを推奨します。管理者が現場に足を運ぶ姿勢を見せることで、現場とのコミュニケーションが生まれ、不正の予防にもつながるでしょう。
神門:システム側の負担軽減策としては、「ABC法」の活用等の手法もよく使われます。これは、例えば在庫品を高額品(A品)、中額品(B品)、低額品(C品)に分類し、A品は毎月、B品は四半期ごと、C品は半年に一度と、価値に応じて棚卸しの頻度を変える方法です。全ての在庫を同時に数えるのではなく、対象を絞って効率的に行うことが可能になります。
まとめ
ベトナムやタイのような国で事業を進めるには、「業務の標準化」、「マニュアルの見える化」に取り組むことが必要です。
人によって教える内容が違ったり、同じ人でもその時々で伝える内容が薄くなったりするのを防ぐため、マニュアルをベースとした教育を行う必要性が高まっています。これらを通じて、ASEAN市場における在庫管理の課題を克服し、持続的な成長を実現しましょう。







