「マニュアルは作って終わり」の常識を覆す!ベトナム人材を劇的に変える育成術
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「人材確保が難しい」「定着率が低い」「期待通りのパフォーマンスが出ない」……。ベトナム進出企業が直面する人材課題は尽きません。
そこで今回、採用から育成、定着までの一連のプロセスを効果的に構築・運用するための実践的ノウハウをお届けするセミナー「ベトナム人材のつまずきゼロを実現!次世代型採用と組織開発の設計図〜数々の実例から導く、採用・育成と早期戦力化のシナリオ〜」を開催しました。
本セミナーでは、適性検査を活用した採用ミスマッチの防止、ベトナム人材の特性を踏まえた組織開発、そして効率的な教育システムによる早期戦力化など、持続的な企業成長を実現する方法を解説。
ベトナム市場での豊富な経験と実例から導き出された、具体的施策とその実装方法とは――?
Studist (Thailand) Co.,Ltd.の豆田裕亮が登壇し、ベトナムにおける人材活用の現場課題やAIを使った育成戦略についてお話しました。また、Viecoi Co.,Ltd.の安濟彰氏、PERSOLKELLY Consulting Vietnamの野尻康平氏を交えた質疑応答コーナーでの内容の一部を紹介します。
(前回の記事はこちらから)
目次
ベトナムにおける人材活用の課題
Studist (Thailand) Co.,Ltd. 豆田 裕亮(以下、豆田):ベトナム国内では、人材不足と賃金上昇が深刻化しており、優秀な人材の確保が非常に困難になっています。

特に製造業では、一人が複数の業務をこなす多能工化(1人の従業員が複数の業務を習得し、担当できるようにすること)が進んでいるのが現状です。また、ベトナム以外のASEAN諸国からの出稼ぎ労働者も増えています。
そういった多くの企業では、「マニュアルが不足している」または「マニュアルが日本語のみで活用されていない」といった問題があります。その結果、業務の引き継ぎや教育がOJT(現場研修)に頼りがちになり、口頭での指導によって作業内容にばらつきが出たり、同じミスが繰り返されたりしています。
この課題に向き合うためには、「人材が出ていくことを前提として組織を作るべきだ」と考えています。ベトナムを含むASEAN地域では人材の流動性が非常に高く、良い条件を求めて頻繁に転職が行われるからです。
「つまずきゼロ」の育成戦略
豆田:当社では、これらの課題解決のためにマニュアルを中心とした育成方法を導入しています。会社設立当初からマニュアルを作り、それを教育の基本として業務を進めているのです。
まず、人による直接の教育をできるだけ減らしています。新入社員は、基本的に人が教えるのではなく、マニュアルを見て自分で作業を進めます。119日間の試用期間中に、マニュアルだけで月末の作業を一人で完璧にこなせるようになることを目指しています。
また、業務中にわからないことがあれば、先輩社員や外部の専門家に質問して解決しますが、その答えは個人のメモではなく、必ず社内のマニュアルに追記してもらうのです。こうすることで、社員が辞めても会社の知識が失われず、財産として残ります。

さらに、視覚的な要素も積極的に取り入れています。文字だけのマニュアルでは内容が伝わりにくく、人によって解釈が違う可能性があるため、写真や動画をたくさん使ってマニュアルを作成するのです。請求書の発行手順や行政手続き、採用が決まった人へのオファーレター作成など、さまざまな業務が視覚的にわかりやすくマニュアル化されています。
マニュアルは最初から完璧を目指すのではなく、まずは60〜70%の完成度で作成し、実際に使いながら随時更新して内容を充実させていく方法をとっています。
AIが実現する次世代マニュアル作成
豆田:マニュアル作成は通常手間がかかる作業ですが、当社が提供するマニュアルを作成・共有・運用できるクラウドサービス「Teachme Biz」の機能「Teachme AI」を活用し、このプロセスを大幅に効率化しています。
この機能では、簡単な操作と音声からマニュアルを自動生成できます。システムを操作しながら話すだけで、AIが内容を理解し、各ステップに分けてくれます。AIはベトナム語にも対応しているため、言語の壁を解消し、外国籍の従業員でも日々の作業をしながら簡単にマニュアルを作成でき、業務の可視化が容易になりました。
これらの取り組みにより、従来2〜3時間かかっていたマニュアル作成が、AIの活用で10〜15分程度に短縮されました。作成者はほとんど待つだけで、数分の微調整で公開できる状態になるのです。
さらに、チャット形式でAIに指示を出すだけで、一般的な業務マニュアルを生成したり、不正防止などの特定の要件を盛り込んだりすることが将来的に可能になります。これにより、企業はマニュアルの「作り方」よりも「どう活用するか」という教育プランの策定に時間を割けるようになると思います。

質疑応答
Q1: 日本語や英語ができる人材は非常にありがたいですが、その能力はどのように給与に反映するのが良いでしょうか?また、公式な資格で判断すべきでしょうか?
PERSOLKELLY Consulting Vietnam 野尻 康平氏(以下、野尻): 大きく2つの方法が考えられます。ひとつは「手当として支給する方法」、もうひとつは「基本給に含める方法」です。
まず、手当として支給する場合ですが、TOEICや日本語能力試験(N1・N2)などの公的な資格で評価し、その人が「持っている能力」に対して手当を支給する方法です。日本語能力を持つ人材を増やしたい企業には、明確でわかりやすいでしょう。
最近増えている方法で、会社独自の資格を設け、実際に社内で「発揮できる能力」があるかどうかを判断して評価します。特に大手製造業で多く見られますね。
次に、基本給に含める方法ですが、これは「ジョブ型」と呼ばれる考え方で、任された仕事の重要性や内容に応じて給与を決める方法です。語学力は仕事をする上で必要な能力の一部として、基本給に含めて設定します。外資系企業では、語学手当がないことが多く、能力は仕事の大きさに含まれる傾向があります。日本企業においては、「発揮できる能力」で評価していくのが良いのではないかと考えています。
Q2: 製造業のワーカーさんに給与上限を設けるのは一般的でしょうか?また、日本では優秀な人材は間接職へ移動しますが、ベトナムでも同じく可能でしょうか?
野尻:製造業では給与テーブル(サラリーテーブル)が設定されており、給与に上限が設けられているケースが多いです。しかし、この給与テーブルは数年に一度見直され、上限自体が引き上げられるため、実際に上限に到達する従業員は少ないのが現状です。
次に、優秀な人材の間接職への異動についてですが、ベトナムでは、雇用契約に明記されていない仕事はできないことになっているため、異動は基本的に従業員の合意に基づいて行われます。もし本人が間接職への異動を希望すれば、新しい雇用契約を結び直して異動することは可能です。ただし、その際の給与調整が課題となる場合があります。
Q3: 社員向けに適性検査を実施する際は、各社どのような目的でやられますか?
Viecoi Co.,Ltd. 安濟 彰氏(以下、安濟): 社員向けに適性検査を実施する目的として最も多いのは、中間管理職の層が手薄だと感じた際に、将来的に誰を管理職として育成していくべきかを判断するため、一般社員に向けて活用するケースです。
最近の具体例としては、ホーチミンに拠点を持つ企業がハノイチームも担当することになった際、ハノイチームのメンバーの特性が把握できていない状況で適性検査を利用しました。
この企業はホーチミンチームの受検データを持っていたため、ハノイチーム全員に適性検査を実施し、同じビジネスや職種で2つの拠点のチーム特性を比較分析し、その後のマネジメントに役立てたとのことです。
Q4: マニュアル作成、維持にどの程度の専任人員と予算が必要でしょうか?また、製造業で従業員約100名程度のうち、同様のシステムを構築する場合の現実的なタイムラインはどの程度でしょうか?
豆田: 数百人規模の組織であれば専任の人員が必要となると思われますが、100名程度の規模であれば、各ラインで担当者がマニュアル作成・維持を行うケースが多いです。
当社としては約3ヶ月間で、特定の部門や部署に必要なマニュアルを作成し、まず運用に乗せて効果を出すことを推奨しています。最初から全てを作りきるのではなく、小さな成功体験を得ることが重要だと考えています。
当社のサービスはSaaS(サブスクリプション)形式ですので、従来の大きなシステムの保守費用と同程度のイメージでご利用いただけます。
まとめ
ベトナムをはじめとするASEAN地域で事業を展開する企業は、人材確保の困難さや低い定着率、期待通りのパフォーマンスが得られないといった人材課題に加えて、言語や文化の違いなど、複合的な課題に直面しています。
これらの課題を解決するためには、効果的な教育システムの構築が重要な鍵となります。特に、業務マニュアルの活用方法を見直すことで、大きな改善が期待できます。マニュアルは「作っておしまい」ではなく、「使うこと」が重要です。教育での利用はもちろん、日常業務の中で参照や読み上げるなど、具体的な使い道を明確にすることで、教育の効率は飛躍的に向上します。
このような実践的なアプローチにより、ベトナムにおける高い人材流動性に対応し、持続的な企業成長を実現するためには、次世代型の育成・定着戦略が不可欠であると言えるでしょう。
(前回の記事はこちらから)






