
中国自動車メーカーの攻勢、タイから東南アジアに拡大も=日本総研リポート
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日本総研はこのほど、「タイ自動車産業における中国EVの攻勢~在タイ日本自動車メーカーに大きな脅威~」と題する調査リポートを発表した。同リポートでは、日本メーカーが中国メーカーにタイ市場でシェアを奪われ続けた場合、近隣の東南アジア諸国でも同様の事態が生じる恐れがあると警鐘を鳴らしている。リポートは、日本総研調査部の福田直之主任研究員と森田一至研究員が執筆した。
同リポートは、「アジアのデトロイト」とも呼ばれるタイの事業環境が、相次ぐ中国メーカーの進出によって急速に変化しており、着実に形成されつつある中国系自動車のサプライチェーンが、日本メーカーにとって脅威になっていると強調。2024年の自動車産業向け投資(フロー)の約4割が中国企業によるものであったと報告し、中国メーカーのタイ進出ラッシュの背景には、中国国内における生産の過剰供給や、中国製EVに対する西側諸国の関税引き上げ、さらにそれに伴う生産拠点の国外移転があると説明している。また、「自動車産業の基礎インフラがすでに整備されているタイが移転先の有力候補になっている」との見方を示した。
さらに、タイ政府によるEV振興策も後押しとなり、中国メーカーはタイ国内での生産能力の拡充を進めているが、完成車工場の新設に付随する形で、「中国からの部品サプライヤーの進出が大幅に増加している」点にも注目すべきだと強調している。具体的には、タイヤ、ゴム、チェーンなどの部品や車載電池を製造する企業の工場新設が進んでおり、「2019年まで数十社にとどまっていた中国資本の部品サプライヤーは、足元では約150社にまで増加している」と報告している。
東南アジアでの中国シェアはゼロ近辺から10%に
中国メーカーの攻勢により、日本車のシェアはかつての9割から7割にまで縮小し、中国車のシェアは2割に迫っている。さらに、家計債務問題などによる自動車市場全体の縮小や、ピックアップトラックの深刻な販売不振、日本メーカーのタイからの撤退や生産縮小といった厳しい現状を説明。その上で、「市場規模が現状のままで、新車販売に占めるEVの割合が30%へ上昇する場合、日本メーカーのシェアは6割へとさらに落ち込む一方、中国メーカーのシェアが約3割にまで高まる」との試算を示している。
さらに、タイで進む中国メーカーの攻勢が世界各地に波及した場合、日本メーカーのグローバル展開に大きなダメージをもたらすと警告。とくに、日本メーカーが長年にわたり高い競争力を維持してきた東南アジアにおいて、中国メーカーの勢力拡大はすでに顕著であり、「2019年まではゼロ近辺だった市場シェアが、足元では10%に迫る水準まで上昇している」と報告した。さらに、「中国メーカーが日本メーカーにとって代わり、タイを拠点に東南アジアや中近東への輸出を拡大させる可能性もある」と予想している。
こうしたタイ市場の今後の見通しを踏まえ、同リポートは日本メーカーの戦略として、以下の3点を提案している。
- 廉価モデルの投入やEVピックアップトラックの開発を含む、EV市場への迅速な対応と競争力の向上
- サプライチェーンの強化(部品供給網の再構築、ハイブリッド車やEVの現地生産・調達)
- バイオ燃料生産や水素製造など、バイオ・循環型・グリーン(BCG)産業をはじめとする新規市場での事業展開
(リンオペ編集部)
▼リポート全文はこちら
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=110602
【本リポートに関するご照会】
株式会社日本総合研究所
調査部 研究員
森田 一至
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=109757
TEL:080-4332-5865
Email:morita.kazushi@jri.co.jp
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