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【2027年施行予定】育成就労制度の概要と企業が今から準備すべきこと

【2027年施行予定】育成就労制度の概要と企業が今から準備すべきこと

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政府は、技能実習制度に代わる新たな外国人受け入れ制度として「育成就労制度」を創設します。これまでの技能実習制度に代わるもので、外国人材の育成と人手不足の解消を両立させることを目指しています。

この記事では、2027年に施行予定の育成就労制度について、概要や技能実習制度との違い、さらに企業と外国人双方にとってのメリットや課題を詳しく解説します。

育成就労制度とは?

「育成就労制度」は、外国人材の受け入れ体制を大きく見直す新しい仕組みです。従来の「技能実習制度」に代わる制度で、人材の育成と確保を両立することを目的としています。まずは、育成就労制度の概要を解説します。

制度の概要

育成就労制度は、外国人材の確保と育成の両立を目的としています。外国人材を「実習生」として位置づけていた従来の技能実習制度を発展的に解消し、「労働者」として人材を確保する仕組みです。

外国人が日本で働きながら技能を習得できる仕組みが整備されており、在留期間は原則として3年間です。3年間で特定技能1号に相当する技能水準の習得を目指すことが求められます。

3年間の育成期間を経て要件を満たした外国人は、特定技能1号への移行が可能です。さらに特定技能2号に移行すれば、在留期間の上限がなくなり、日本での長期的な就労が可能になります。このような仕組みにより、技能の向上と長期的な就労の両立が図られています。

参照:厚生労働省|育成就労制度の概要

廃止される「技能実習制度」とはどのような制度なのか

1993年に創設された技能実習制度は、「開発途上国への技術移転を通じた国際貢献」を目的とした外国人材受け入れ制度です。日本の産業現場で技能を学び、母国の経済発展に役立てるという目的で運用されてきました。

しかし実際には、低賃金で活用できる労働力として人手不足を補うケースが多く、制度の目的と実態がかけ離れていることが問題視されてきました。さらに、長時間労働や賃金未払いといった人権侵害の報告も多く、制度に対する問題提起がなされてきました。

また、技能実習生には原則として転籍(実習先の変更)が認められておらず、不当な扱いを受けても職場を離れられず、失踪に至る事例が多発しました。このような問題が制度改正の契機となり、新たな「育成就労制度」の創設へとつながっています。

新たな育成就労制度の説明画像

引用:厚生労働省|改正法の概要(育成就労制度の創設等)

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育成就労制度はいつから始まるのか

育成就労制度に関する法律は、2024年6月21日に公布されました。政府は2025年9月26日の閣議で、2027年4月1日の施行を正式に決定しています。制度の活用にあたっては、早めに準備を進めましょう。

育成就労制度と技能実習制度の違い

育成就労制度は、従来の技能実習制度を引き継ぎつつ、課題を解消することを目的に設計されています。両制度の違いについて解説します。

制度の目的の違い

技能実習制度は、本来「開発途上国への技術移転を通じた国際貢献」を目的として設計された制度であり、日本の労働市場における人手不足の解消は主目的ではありませんでした。

一方、育成就労制度は「人手不足の分野における人材育成と人材確保」を目的としています。単なる技能習得にとどまらず、労働力としての活躍を前提に、職業能力の向上と安定した雇用環境の構築を目指します。

新制度では外国人労働者の保護やキャリア形成支援が重視されており、従来の国際貢献型制度から、国内の労働政策を中心とした制度へと大きく転換しています。

対象職種の違い

育成就労制度の対象職種は、正式に公表されていません。しかし、制度の性質上、原則として「特定技能制度」で定められた分野と一致する見込みです。特定技能制度では、介護、外食業、製造業、建設業など、人手不足が深刻な業種が対象です。育成就労制度も、同様の範囲となる見込みです。

また、特定技能制度は、対象分野の追加や業務範囲の拡大が進められているため、連動して育成就労制度でも対象範囲が拡大していくことが予想されます。

ただし、注意が必要なのは、現行の技能実習制度と比べると対象職種の範囲がやや狭まる点です。従来、技能実習として認められていた一部の単純作業や限定的な業務は、新制度の対象外となる可能性が指摘されています。

転職可否の違い

技能実習制度では、受け入れ先企業を変更する「転職」は原則として禁止されています。実習生が不当な労働条件や人権侵害に直面しても自由に職場を移ることができず、問題視されていました。

一方で、育成就労制度では、定められた条件を満たせば、同一の業務区分内での転職が可能です。具体的な条件は分野によって異なりますが、一定期間以上の就労実績があること、技能水準や日本語能力などが所定の基準に達していることなどが求められます。

外国人労働者が自らの意思で働く環境を選びやすくなり、適切な労働条件の確保や職場のミスマッチ防止につながることが期待されています。

監理団体・支援機関の違い

技能実習制度では、外国人材の受け入れを監督する「監理団体」が存在し、実習生の支援や指導などを担っていました。しかし、一部の監理団体による不正や不十分な監督体制が問題となり、信頼性を損なう要因となっていました。

育成就労制度では従来の監理団体制度を廃止し、新たに「監理支援機関」が設けられます。新制度では、外部監査人の設置義務化や職員配置基準の見直し、相談対応体制の強化など、より厳格なルールが導入されます。

さらに、従来の監理団体を監督していた「外国人技能実習機構」は「外国人育成就労機構」へと改組され、外国人材の保護・支援機能や監理支援機関への監督指導体制が強化される予定です。

育成就労制度と特定技能制度の違い

特定技能制度は、日本の産業界が直面する深刻な人手不足に対応するために2019年に創設された「在留資格」であり、特定の分野で即戦力として働ける外国人を受け入れる仕組みです。技能実習制度とは異なり、労働力確保を目的とした制度として位置づけられています。

一方で、育成就労制度は、特定技能への移行を前提とした「人材育成のための段階的制度」です。3年間の就労期間で、特定技能1号の水準に到達することを目指し、技能や日本語能力を習得する仕組みが導入されます。

つまり、特定技能が「即戦力の確保」を目的とするのに対し、育成就労は「人材育成のプロセス」を担います。

育成就労制度を取り入れる企業のメリット

育成就労制度の導入は、外国人材をより安定的に受け入れたい企業にとって大きな利点があります。育成就労制度を取り入れる具体的なメリットを解説します。

現行の技能実習制度よりも日本語能力の高い人材を確保できる

育成就労制度では、技能実習制度と異なり、受け入れ時点で一定水準の日本語能力が求められます。外国人労働者を「実習生」ではなく「労働者」として位置づける制度設計の一環であり、職場内での円滑な意思疎通や安全管理を目的としています。

一定の日本語能力を持つ外国人材を採用できることで、作業指示や報告内容といったコミュニケーションの正確性が向上するだけでなく、企業側の日本語教育にかかる負担も軽減可能です。特に製造や介護など、チームでの連携が重視される分野では、コミュニケーションロスの減少が業務効率化につながると考えられます。結果として、教育コストの削減や生産性の向上に寄与し、定着率の改善にもつながることが期待されます。

特定技能への移行がスムーズで長期的に働いてもらえる

育成就労制度は、特定技能制度への移行を前提とした仕組みとして設計された制度であり、外国人材は段階的にスキルを高めながら長期的に働くことが可能です。外国人材が3年間の育成期間を経て特定技能1号へ移行し、最終的に特定技能2号まで進めば在留期間の制限がなくなるため、安定した人材確保につながります。

制度全体でキャリアパスが明確化されたことで、受け入れ企業にとっても教育投資が無駄になりにくくなりました。育成段階から長期雇用を視野に入れることで、企業側の教育体制整備や職場環境の改善意識が高まることが期待されます。

結果として、外国人労働者の定着率が向上し、企業は即戦力化した人材を中長期的に活用できる点が大きなメリットとなります。

育成就労制度を利用する外国人労働者のメリット

育成就労制度は、従来の技能実習制度で指摘されていた課題を改善する方向で設計されています。育成就労制度に移行することで外国人労働者側に生まれるメリットを解説します。

転籍が可能となったため日本で長く働ける

従来の技能実習制度での転籍は、やむを得ない事情がある場合のみに限られていました。 一方で育成就労制度では、一定の要件を満たすことで、外国人労働者本人の意思による同一業務区分内での転籍が可能になります。

外国人労働者は自分に合った職場を選びやすくなり、納得のいく条件で働き続けられるようになりました。技能実習制度では、本人の意思による転籍が不可であったため、職場の不適応やトラブルがあっても離職しづらい問題がありましたが、新制度では不安が大幅に軽減されています。

外国人労働者が自らのキャリア形成を主体的に考え、働きやすい職場を選択できるようになったことで、長期的な就労意欲の維持や生活の安定につながることが期待されています。

人権が保護された環境で働ける

育成就労制度では、劣悪な労働条件の適用や職場での不当な扱いを防ぐため、監督体制の強化や相談窓口の整備など、人権保護のルールが厳格化されます。技能実習制度で指摘されてきた人権侵害の発生を防ぎ、外国人労働者が安心して働ける環境の整備に向けた取り組みです。

加えて、渡航費や仲介手数料といった経済的負担を軽減することも考慮されており、過度な費用を負担することなく日本での就労を始められる仕組みの導入が検討されています。

適切な労働環境の確保と費用軽減策が両立することで、外国人材は職場での技能向上やキャリア形成に集中でき、日本で安定した生活基盤を築くことが可能となります。

育成就労制度を取り入れる際の企業の課題

育成就労制度には多くのメリットがありますが、導入する企業には負担が発生します。外国人労働者を受け入れる企業側が知っておくべき課題について解説します。

採用や教育コストがかかる

育成就労制度では、外国人労働者本人が支払っていた送り出し機関への手数料の一部を、受け入れ企業が分担する仕組みが導入される予定です。これにより、外国人労働者の経済的負担は軽減される一方で、企業にとっては新たな費用負担が発生します。

また、日本語能力の要件が設けられているとはいえ、現場で円滑なコミュニケーションを図るには、教育体制の整備が欠かせません。マニュアルの多言語化やOJT指導の強化など、初期段階で一定の教育コストがかかります。

さらに、外国人が特定技能制度へ移行する際の資格取得支援などに伴い、企業側が費用を一部負担する場合も考えられます。採用・教育・定着支援を含めた中長期的なコストを見据えた人材雇用の計画が求められます。

ダイバーシティ教育など既存従業員の意識変容が求められる

外国人労働者の受け入れが進む中で、企業には文化や宗教、価値観の違いを理解し、多様性を尊重する職場づくりが求められています。組織全体の意識改革が不可欠であり、既存社員に向けたダイバーシティ教育の実施が有効です。文化的背景への配慮や言葉の壁を越えたコミュニケーション方法を学ぶことで、相互理解が促進され、職場の一体感も高まります。

また、定期的な面談などを通じて、外国人労働者の悩みや不安を早期に把握し、生活面を含めた支援を行うことが大切です。

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なぜ今「ダイバーシティ経営」が求められるのか?背景や課題、導入メリットを徹底解説

多言語化対応など社内の環境整備が必要となる

育成就労制度では、日本語能力試験がN5(基本的な日本語がある程度理解できる)程度の外国人も受け入れ対象となるため、企業には言語面での配慮が求められます。現場での指示や安全管理を正確に伝えるためには、日本語能力のみに依存するのではなく、理解を助ける仕組みを整えることが大切です。

職場内の案内や業務マニュアル、社内掲示物などを多言語化する対応が必要です。母国語に対応した資料を整備することで、誤解やトラブルを未然に防ぐ効果が期待されます。

また、言葉の壁を超えて安心して働けるよう、外国人労働者が業務や生活に関する疑問をすぐに相談できる体制の構築も欠かせません。社内相談窓口の設置や支援担当者の配置など、継続的にサポートできる環境整備が求められます。

育成就労制度の注意点

育成就労制度は、技能実習制度で指摘されてきた課題を改善するために多くの変更点が設けられています。導入予定の企業は、制度の趣旨や要件を正しく理解したうえで、受け入れ体制の整備を進めましょう。制度の運用にあたって企業が注意すべきポイントについて解説します。

技能実習制度と比較して受け入れ可能な職種が少ない

育成就労制度では、受け入れ可能な職種について、原則として特定技能制度の対象分野と一致する方向で設計されています。技能実習制度で対象となっていた一部の職種は新制度の範囲外となる可能性があります。従来のように幅広い分野で外国人を受け入れられなくなる点は、企業にとって注意が必要です。

特定技能制度は分野の拡大が進んでいるものの、技能実習で認められていた全職種を網羅しているわけではありません。特に「国内での育成になじまない」と判断される分野は対象外となる見込みで、技能実習生を受け入れてきた業種では制度変更の影響を受ける可能性があります。

企業は自社の業務内容が育成就労制度の対象に含まれるかを確認し、受け入れを継続できるかどうかを慎重に検討する必要があります。複数の職種にかかる場合は、キャリアアップしやすい分野を検討することも重要です。

企業としてキャリアパスなどの明確化が求められている

育成就労制度は、特定技能制度への移行を見据えたものであり、企業は外国人労働者の成長支援に取り組まなくてはなりません。単に人材を受け入れるだけでなく、就労期間中の技能向上や日本語能力の習得を段階的に促す「育成就労計画」を策定する必要があります。

企業には、特定技能制度へ移行するまでの過程を見据えた教育方針を明確化し、実務訓練や学習支援の体制を整備することが求められます。外国人労働者が自身のキャリアアップの道筋を理解したうえで、安心して長期的な就労を目指すために欠かせない取り組みです。

受け入れ側の企業がキャリアパスを明確に示すことは、外国人材の定着促進や企業の信頼性向上にもつながります。制度の目的を踏まえ、教育計画と評価基準を具体化して運用することが求められます。

労働者としての権利を保護しなくてはならない

育成就労制度では、一定の条件を満たせば外国人労働者本人の意思による転籍が可能になるなど、労働者としての権利が従来よりも強化されます。企業には、適正な労働条件や職場環境を整備すること、長時間労働や賃金の不払いといった不当な取り扱いが発生しないように法令やルールを遵守することが強く求められます。長く就労してもらえる環境を整備することが求められます。

育成就労制度では、人権保護の観点から、外国人材が安心して働ける環境の整備が必須です。差別やハラスメントの防止に取り組み、適切な相談窓口や教育体制を整備することで、外国人にとって魅力ある職場づくりを実現できます。

育成就労制度を受けるための企業の要件

育成就労制度による外国人労働者の受け入れ企業となるには、安定した経営基盤を有していなければなりません。具体的には、過去5年間に出入国や労働関係の法令に違反していないことが求められるため、法令遵守の体制が整っていない企業は受け入れができません。

また、外国人材が安心して働けるよう、研修や教育を実施する体制が備わっていること、外国人の待遇が日本人労働者と同等以上であることが求められます。

加えて、「監理支援機関」との契約の締結も必須です。受け入れ企業と監理支援機関が連携し、就労から生活までを一体的に支援する体制を整える必要があります。

育成就労制度の導入をスムーズに進めるサービス例

外国人労働者を安定的に受け入れるためには、社内資料の多言語化や業務フローの可視化など、教育の効率化と品質の均一化を図る取り組みが欠かせません。また、業務プロセスを見直すことで、外国人材にとって働きやすい環境が実現できるだけでなく、日本人社員を含めた職場全体の生産性向上や無駄の削減にもつながります。

とはいえ、こうした取り組みを実施するのは容易ではありません。自社での対応が難しい場合は、株式会社スタディストの提供するリーンソリューションサービスを活用した業務改善がおすすめです。

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まとめ

育成就労制度は、外国人労働者が日本で働きながら学び、成長できる新しい仕組みです。外国人材の育成と、人手不足の分野における人材確保を目的としています。

ただし、日本語能力が高くない人材や日本文化になじみがない人材を受け入れるケースも想定されるため、受け入れ側の企業には、業務の多言語化対応や可視化といった体制づくりが求められます。

また、文化や価値観の違いによる従業員同士のトラブルを未然に防ぐには、すべての従業員が安心して働けるための工夫を取り入れましょう。社内体制の構築には、業務の可視化や単純化を支援する専門サービスの活用も有効です。

監修者
下川 めぐみ
社会保険労士法人ベスト・パートナーズ

社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。 医療機関、年金事務所等での勤務の後、現職にて、社会保険労務士業務に従事。