
外国人材の定着率を高める育成術。評価制度の構築とキャリアパス明示のポイント
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外国人材を単なる人手不足の補填ではなく、共に成長する貴重な戦力として迎え入れる動きが高まっています。そのためには、入社後の適切なフォローと組織づくりが不可欠です。
そこで今回は、「人と組織の最適化」が企業成長の必須条件であることをポリシーに人事・組織戦略に関連するコンサルティングを展開する株式会社セレブレイン代表取締役社長・高城幸司氏をゲストに迎えたセミナーの内容を紹介します。外国人材の人員配置の考え方や、キャリアパスの提示、自社の魅力を伝える採用広報のポイントなど、多様な価値観を受け入れるこれからのマネジメントのあり方について、詳しく解説いただきました。
(前編はこちらから)
目次
曖昧な「総合職」からの脱却。役割を言語化する「人材ポートフォリオ」の重要性
株式会社セレブレイン代表取締役社長・高城幸司氏(以下、高城):これまで日本企業は、新卒を一括で「総合職」として採用し、入社後に様々な部署を経験させながら適性を見ていく手法が主流でした。
しかし、外国人材を採用する際は、「どんなポジションで、どんな形で活躍していくのか?」を明確化しておく必要があります。
近年、専門性を活かして役割ごとに定義する「ジョブ型」へのシフトが話題になっていますが、すぐに制度を導入できない場合でも「人材ポートフォリオ(誰に・どの部署で・どんな活躍をしてもらうかの配置図)」という考え方を取り入れることが有効です。つまり、会社としては総合職という枠組みであっても、一人ひとりに対して専門性を明示していくのです。

例えば、営業職で働くのであれば、大手企業との交渉力、提案力、問題解決能力、業界知識といった具合に、職場で求められるテクニカルスキルやヒューマンスキルを具体的に言語化し、その能力を持った人を募集するやり方です。
専門性や人間関係を円滑にするスキル、問題解決力など、必要とされる求めるスキルを細分化し、各ポジションの役割を明確にした上で採用活動を行うことが重要なのです。
定着のための最大の鍵は、報酬とキャリアパスの明確化
高城:外国人材を採用し、長く活躍してもらうために絶対に避けて通れないのが、仕事に応じた報酬設定とキャリアパスの明確化です。
前提として、日本人社員と同等の報酬水準にすることは当然ですが、「その仕事でどんな成果を求め、それに基づいてどんな報酬・賞与が得られるのか?」という評価の基準を明確に示すことが必要です。
若手社員全般に言えることですが、特に外国人材は「入社後に自分がどのようにステップアップできるのか」を非常に気にします。
これは、面接でも必ず質問される項目です。逆に言えば、キャリアパスが明確であれば、入社への意欲が高まり、入社後の高いモチベーション維持にも直結します。ある国内大手食品メーカーの事例では、社員がさらに力を磨くための選択型のプログラムを提供しています。
このように、次のグレードに上がるための具体的な役割要件や、社内外の教育研修プログラム、学ぶための費用支援などがしっかりと準備されていることが重要です。
優秀な層を惹きつける!自社の魅力を言語化する4つのキーメッセージ
高城:人材紹介エージェント(以下、エージェント)や求人サイトを活用して採用活動を行う際、他社との競合に勝つためには、自社の魅力を的確に伝える「キーメッセージ」の設計が不可欠です。
キーメッセージの具体例を考えてみました。
「あなたの文化が、会社の未来を創る」。これは、多様性を重視している企業の文化をアピールしています。
「日本でのキャリアは、私たちが支えます」。これは、安心なサポート体制を明示しています。
「日本から、世界へ。あなたの能力を世界で活かす」。これは、キャリアアップの機会の提示をしています。
「透明な評価と、働きやすい環境。あなたが輝ける場所がここに」。これは、働きやすさと公正さを強調しています。
これらのキーメッセージは当たり前のように感じるかもしれませんが、日本企業はこうした仕組みが暗黙の了解になっているケースが多いのです。制度をしっかりと明文化・言語化し、分かりやすく外部に向けてアピールすることが採用成功の鍵を握ります。もし仕組みがないのであれば、これを機に整備していきましょう。
また、高度人材を採用する場合は、エージェントとの「二人三脚」の関係構築が極めて重要です。具体的には、求人メディアやエージェントとの連携がこれに該当します。
求めるスキルや期待する役割を丁寧に伝え、紹介された人材に対してこまめにフィードバックを行うことで知見を蓄積し、エージェント側にも「どんな人が必要なのか」を的確に理解してもらう。通常の採用活動以上に密なコミュニケーションを取り、成功体験を共有していくプロセスが求められます。
現場の「心理的抵抗感」をどう解く?社内の合意形成を促す3ステップ
高城:入社後の育成において、日本企業は「入社3年目までは全員同じ研修を受ける」といった一律主義的な教育を行いがちです。
しかし、価値観が多様化する中では、個人の志向に合わせた「選択制」のスキルアップ支援が必要です。育成プログラムを多数準備し、一律で受けさせるのではなく、自分がやりたいものを選べるようにする。迷う場合にはアドバイザーがナビゲーションをしてくれる。こうした個別化されたステップアップ環境の構築が理想です。
ある製造メーカーや大手コンビニエンスストアでは、外国人材を採用・定着させるために自社の育成環境を抜本的に変革し、大きな成果を上げています。これは大企業だけでなく、中堅・中小企業でも強い意志と戦略を持って取り組めば実現可能なことです。
さらに、柔軟なワークスタイルの導入も人材定着の強力な武器になります。
「母国からフルリモートで勤務したい」「フレックスタイム制を利用したい」あるいは「京都の町家で観光を楽しみながら働くワーケーションを望みたい」という具体的な希望を持つ方もいます。彼らの多様な働き方を受け入れる環境を整えることは、応募数の増加やエンゲージメントの向上に直結します。
こうしたビジョン・パーパスの浸透やルールの明確化、公平性の担保といったマネジメントの徹底は、外国人材のためだけに行うものではありません。
Z世代を含む若手の日本人社員が働きやすく、能力を最大限に発揮できる組織を作るためのマネジメントであると私は考えています。外国人材の採用をきっかけに、会社全体のエンゲージメントを高める絶好の機会と捉えていただきたいです。
質疑応答
Q. 外国人留学生を多数抱える大学や専門学校として、就活の必要性を浸透させるためにまず何をすべきでしょうか?
高城:まずは学生本人の強みの棚卸しと、やりたいことのヒアリングを行ってください。その上で、「コミュニケーション力が高いなら、接客業で活躍できる道がある」といった大きな道筋を示し、具体的な企業名や業界を挙げて興味を惹き出します。
さらに、日本の職場環境への不安を払拭するために、短期アルバイトやインターンなど、実際の職場に触れるようなスモールステップでの経験を提供し、環境に慣れていただくサポートが非常に効果的です。
Q. 外国人材の採用面接で聞くべき、特有の質問はありますか?
高城:「どんな時にモチベーションが下がるか」と「下がった時にどうやって立て直すか」は、ぜひ聞いてみてください。離職の最大の原因は、モチベーションが下がった状態が続くことです。些細なことで傷つきやすいなど、自社のカルチャーとの適合性を見極める判断材料になりますし、自社でフォローできる範囲であれば活躍が期待できます。
Q. 現場の日本人社員の中に、外国人材への心理的抵抗感がある場合、人事や経営層はどうメッセージを発信すべきですか?
高城:今までの環境と変わるタイミングは、最初の段階で心理的抵抗感があるかもしれませんね。人間の心理として、ポジティブな問いかけに「イエス」を3回言うと合意しやすくなると言われています。
「会社が生き残るには多様な人材との協力が重要ですよね」「違う視点が入ることで新しい事業が生まれるのは良いことですよね」と問いかけ、大枠での合意を取ります。
その上で、まずは「日本での勤務経験が長い」「在留期間が長くメンタリティが日本に近い」といった、現場の心理的ハードルが低く安心感のある人材の採用からスモールスタートを切り、徐々に多様性を受け入れていくアプローチをおすすめします。
まとめ
外国人材採用においては、職場で求められるスキルを具体的に言語化・定義する「人材ポートフォリオ」的思考を取り入れましょう。定着の最大の鍵は、日本人と同等の報酬水準を前提とした上での「キャリアパスの明確化」をすることです。
これらのマネジメントの徹底は、外国人材だけでなくZ世代を含む若手日本人社員にも必須であり、組織全体のエンゲージメントを高める絶好の機会となるでしょう。
(前編はこちらから)







