ベトナム人事の最適解、日本式では通用しない?「自社に合った人事制度」とは
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「人材確保が難しい」「定着率が低い」「期待通りのパフォーマンスが出ない」……。ベトナム進出企業が直面する人材課題は尽きません。
そこで今回は、採用から育成、定着までの一連のプロセスを効果的に構築・運用するための実践的ノウハウをお届けするセミナー「ベトナム人材のつまずきゼロを実現!次世代型採用と組織開発の設計図〜数々の実例から導く、採用・育成と早期戦力化のシナリオ〜」を開催しました。
本セミナーでは、適性検査を活用した採用ミスマッチの防止、ベトナム人材の特性を踏まえた組織開発、そして効率的な教育システムによる早期戦力化など、持続的な企業成長を実現する方法を解説。
ベトナム市場での豊富な経験と実例から導き出された、具体的施策とその実装方法とは――?
PERSOLKELLY Consulting Vietnam の野尻康平氏に登壇いただき、ベトナムにおける人事制度の課題と解決策、そして自社に合った評価制度について伺いました。
(前回の記事はこちらから)
目次
ベトナムで企業が直面する人事課題とは?
PERSOLKELLY Consulting Vietnam 野尻 康平氏(以下、野尻): 私は2019年からベトナムに在住し、人材教育コンサルティングや人事制度設計に携わってきました。今回は「自社に合わせた人事制度の考え方」と題してお話しします。
ベトナムで企業が直面する人事課題は多岐にわたります。まず、「日本から持ち込んだ人事制度がベトナムでは機能しないのでは」という不安が多く聞かれます。実際に、日本の制度をそのまま導入しても、ベトナムとの文化や労働習慣の違いからうまくいかないケースが少なくありません。

次に、「どのような評価制度がベトナムの会社に合っているのか」という悩みもよく聞かれます。他社の成功事例を真似しても、自社のビジネスモデルには合わないことが多く、かえって問題が生じることもあるのです。
さらに、ベトナムの報酬水準は大幅に上昇しており、特に欧米系や中国系、韓国系企業の給与が高いため、優秀な人材の獲得や定着が非常に難しくなっているのが現状です。その結果、「新入社員と既存社員の給与が逆転する」という現象も起きており、市場競争を優先すると社内の公平性が保てなくなるという課題も浮上しています。
また、「長く勤めている社員の給与が、実際の働きぶりに比べて高すぎると感じる」という経営者の悩みも多くあります。物価上昇に合わせて給与が上がっていることも原因に挙げられますが、日本企業の年功序列的な給与体系により、10年前と同じ仕事をしている人が2倍の給与をもらっているといった状況も頻繁に発生しているのです。
これらの課題を解決するため、本日は「ジョブ型とメンバーシップ型」「自社に合った評価制度」「仕事に見合った報酬水準の適用」の3点に焦点を当ててお伝えしたいと思います。
「ジョブ型」と「メンバーシップ型」
野尻:ベトナムに進出する日系企業には、以下の4つの傾向が見られます。
1. 長期勤続を重視するため、一般職の報酬が市場相場より高い。
2. 役職がついても実務が伴わないケースがある。
3. マネジャー層の報酬競争力が不足し、優秀なマネジャー層の採用が困難。
4. 成果に応じた報酬差や昇格スピードが不足し、より良い条件を求める人材が流出。
これらの背景には、日本人がトップを占め、権限委譲が進んでいないことや、ミドルマネジメント層の育成不足が挙げられます。日系企業は、マネジャーに任せる仕事のレベルが市場の求める水準に達していない状況にあるのです。
ここでポイントとなるのが、「ジョブ型」と「メンバーシップ型」という2つの雇用形態の違いです。

ジョブ型は「仕事」に「人」を割り当てる考え方で、特定の職務に対して人を採用し、実績に基づいて昇進や昇格が行われる。人材の流動性が高いのが特徴です。
メンバーシップ型は「人」に「仕事」を割り当てる日本独自の雇用形態で、長期雇用を前提に年功序列で給与が上がり、人材の流動性は低い傾向にあります。この形態は、海外ではほとんど見られません。
ベトナムでは、降格や減給などが制限されていることもあり完全なジョブ型ではありませんが、基本的な考え方はジョブ型雇用です。
日系企業ではメンバーシップ型が主流で、企業は定期的に大量採用し、年功序列で昇進や昇格をしていく仕組みのため、給与も順調に増えていきます。
そのため、現地の従業員に対して「アシスタントマネジャー」などの肩書きを多くつくり、本来の職務機能がないポストにも報酬を支払う傾向があります。これにより、本当に必要な職務に投資する分が手薄になってしまう問題が生じているのです。
ジョブ型が基本のベトナムにおける人事制度の課題は、職務内容を明確にすることです。
同じ職種で同じ仕事をしている場合、ある程度の習熟度を超えたら報酬の伸びを抑えることが必要だと思います。中堅管理職の仕事内容とレベルをしっかりと把握し、組織全体の生産性低下を防ぐことも重要です。
「自社に合った評価制度」とは
野尻:次に、「自社に合った評価制度」についてです。
様々なスポーツにはそれぞれのルールがあるように、会社ごとに最適な形は異なります。他社の成功事例をそのまま導入しても、自社のビジネスモデルには合わないことがほとんどなのです。
重要なのは、自社のビジネスモデルに合わせて、どの部署や役職で財務目標(KPI)、業務プロセス目標、個人の能力(コンピテンシー)を評価するかを設計することです。
また、「会社が求めること」と「実際の評価制度の運用」の間に一貫性を持たせることも非常に大切です。これらが異なると、従業員は混乱してしまいますよね。

一貫性を保つためには、会社と従業員間のコミュニケーションをルール化し、週ごとの進捗確認や、月ごとの成長フィードバック、キャリアに関する話し合いを定期的に行うことが推奨されます。自社に合った評価基準をつくり、日頃の業務における要求と具体的な評価項目を一致させることがポイントです。
適正な報酬水準を確立しよう
野尻:最後に、「仕事に見合った報酬水準の適用」についてお話しします。
簡潔に言うと、「階層と職種によるメリハリをつける」ということです。日本の企業は、職種間の報酬差をあまり設けない傾向がありますが、優秀な人材を確保するためには、その会社にとって特に重要で代替の効かないポジションや職種を明確にし、そこに手厚い報酬を支払う必要があります。職種ごと(特に替えの利かない階層・職種)に給与の範囲(報酬レンジ)を設定することが有効です。

さらに、評価による報酬のメリハリも重要です。成果を出せる人と出せない人で報酬に差をつけないと、優秀な人材のモチベーションが下がってしまいます。
例えば、「優秀な人材が2割、成果が不十分な人材が2割」といった明確な評価分布を設定することで、従業員が目指すべき方向性をはっきり示すことができます。ボーナスも一律ではなく、高い成果を出した人には支給月数を増やすなど、明確な差をつけることも効果的な方法のひとつです。

まとめ
人事制度は、事業戦略や人事戦略といった戦略とリンクしていることが不可欠であり、人事制度だけを部分的に変更しても期待する効果は得られません。
そのため、自社に合った人事制度は何かを考え、人や会社、は状況によってそれぞれの会社に合ったやり方を作り上げていく必要があると言えるでしょう。
次回は、ベトナムにおける人材活用の現場課題やAIを使った育成戦略についてご紹介します。






