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インドネシアにおける就業規則と労働協約

インドネシアにおける就業規則と労働協約

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労働者保護が強いといわれるインドネシアでは、就業規則(PP)や労働協約(PKB)について、企業がその制度や手続きを正しく理解しておくことが重要である。本稿では、両制度に関する法規定と実務上の留意点を整理する。

就業規則(PP)

就業規則(PP)とは、使用者が作成する労働条件や社内ルールを定めた書面である(労働法2003年第13号(以下「法」という)第1条20号)。
就業規則

作成義務と労働者の意見聴取

従業員を10人以上雇用する事業主は、就業規則を作成し、管轄労働局へ届け出て承認を得る義務がある(法108条1項)。作成にあたっては、労働組合や労働者代表の意見を考慮する必要がある(労働大臣規則2014年28号(以下「規則」という)第4条5項)。事業主が案を提示後、労働者側は7営業日以内に意見を提出する(規則6条1、2項)。期日内に意見が出ない場合、事業主は意見要求の証明資料を添えて、管轄労働局へ承認申請できる(同条4項)。

記載事項と社内承認

就業規則には、双方の権利義務、労働条件、会社規律、有効期間を明記する(法110条)。内容は現行法令に反してはならない。また、就業規則の制定・変更は業務執行上の決定に該当するため、取締役会などの承認決議を要する。

労働局への申請・審査

事業主は管轄労働局へ承認申請を行う(規則8条1項)。労働局は6営業日以内に調査し、不備通知を受けた事業主は14営業日以内に修正版を提出する(規則9条2項)。期限を過ぎると最初からやり直すことになるため、注意を要する。申請から30営業日以内に労働局からの通知がない場合、就業規則は承認されたとみなされる(法112条2項)。

更新と変更

就業規則の有効期間は最長2年であり、更新義務がある(法111条3項)。期間中の変更が労働者に不利となる場合、作成時と同様に、労働組合や労働者代表の意見・助言を考慮する必要がある(規則12条1項、規則4条5項)。更新申請は期限の30日前までに行う(規則13条1項)。更新・変更後は、従業員へ周知し、写しを渡さなければならない(法114条)。

労働協約との関係

日本では就業規則と労働協約が併存するが、インドネシアでは労働協約が成立すると労働協約に一本化される。就業規則と労働協約は、原則として選択的な制度として位置付けられている。事業主は労働協約の協議に応じる義務はあるが、必ずしも締結する義務はない(法116条2項)。労働協約は全従業員に適用され、締結には慎重な判断を要する。なお、労働協約交渉中に就業規則の期限が過ぎる場合、最長1年間の期限延長申請が可能である(規則11条)。

労働協約(PKB)

労働協約(PKB)とは、労働局に登録された労働組合と事業主との合意文書である(法1条21号)。原則として1社につき1つのみ制定され、全労働者に適用される(法118条)。

協議参加者と交渉ルールの定め

協議には、労使双方から最大9名ずつが参加する(規則22条1項)。協議に先立ち、目的、参加者の編成、期間、手順、不成立時の解決法などを定めた「交渉ルール」を作成する(規則21条)。協議が難航した場合、最長30日間の延長が可能である(規則25条1項)。

記載事項

労働協約には、双方の名称・住所、組合登録番号、双方の権利義務、有効期間・発効日、当事者の署名を盛り込む(法124条)。法令に反する条項は無効となり、法令が優先適用される。

労使調停手続き

交渉ルールおよび最長30日の延長期間を経ても合意に至らない場合、当事者は労使関係の紛争解決手続き(以下「労使調停」という)を申請できる(法117条1項)。

  1.  申立て・調停手続き: 申立てを受けた労働局長は調停官を指名し、調停官は7営業日以内に調停手続きを開始する(労使紛争解決法2004年第2号(以下「紛争解決法」という)第10条)。
  2.  推奨案の呈示と回答: 調停官は初回の調停期日から10営業日以内に「書面による推奨案」を示す(紛争解決法13条2項)。労使は10営業日以内に受諾可否を書面で回答する。双方が受諾すれば、和解協議書を作成し、労働関係裁判所に登録する(同条1~3項)。
  3.  処理期限: 調停手続きは受理から最長30営業日以内に完了しなければならない(紛争解決法15条)。

紛争

労働関係裁判所(PHI)

推奨案に不服がある場合、管轄の労働関係裁判所(PHI)へ提訴できる(紛争解決法81条)。労働協約の作成・改定に関する合意不成立は「利益紛争」に分類され(紛争解決法2条b号)、労働関係裁判所の判決が第一審かつ最終審として確定する(紛争解決法56条b号)。

更新

労働協約の有効期間は最長2年であり、合意により最長1年間の延長が可能である。期限前3ヶ月から新労働協約の協議を開始できる。協議が難航しても、有効期限内であれば現行の労働協約が最長1年間効力を保つ(法123条)。内容変更が生じた場合、事業主の費用で書面化し、全労働者へ周知・配布する(法126条2、3項)。

執筆者
北岡 真理子
TNY Consulting Indonesia
コンサルタント / 日本国弁護士資格保有者

上智大学法学部卒業、上智大学法科大学院修了。千葉県内の法律事務所で弁護士として勤務後、現在はTNY Consulting Indonesiaに勤務。日系企業向けに、契約書の作成・レビュー、現地規制の調査、労務相談などの法務サービスを提供している。