
ベトナム法人から親会社への資金還元手段と「減資」
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ベトナムでは「減資」は法令上認められているものの、手続きが煩雑で難易度が高いため、多くの企業は資本金を少額に設定し、資金調達や還元手段を慎重に選定してきた。近年は手続きが整備されつつあり、減資の事例も見られる。本稿では、ベトナムから親会社への資金還元手段としての減資に着目し、最新動向と実務上の留意点を解説する。
目次
ベトナム法人から親会社への資金還元手段
ベトナム法人から親会社へ資金を還元するにはさまざまな手段があるが、現在、実務上よく用いられているのは主に図表1の3つである。まずは、図表2でそれぞれの特徴を整理する。
資金還元の手段としては、配当送金が最も一般的である。利益剰余金に限定されるものの、税務上のメリットから広く利用されている。一方、サービス契約やロイヤリティ契約、親子ローンの利息支払は課税対象となり、移転価格リスクや証憑の整備にも注意が必要である。
減資はこれまであまり活用されてこなかったが、一定の要件を満たせば実行可能な手段として、近年注目されている。次章では、その法的枠組みと実務手続きについて解説する。
「減資」関連法令とその目的
企業法における規定
2020年ベトナム企業法では、有限責任会社が減資できる条件として図表3の要件が規定されている。資金還元を目的とする減資は、ケース1に該当するため、本稿ではこのケース1を前提に解説する。
減資による送金は資本返還として扱われるため、ベトナムにおいて課税対象とはならない点が大きなメリットである。一方で、減資が認められない、または制限されるケースとしては、以下のような状況が挙げられる。
• 累積損失がある場合
• 最低資本要件が定められている業種(不動産、金融など)の場合
• 投資優遇措置を受けている場合(奨励条件を満たさなくなるため)
企業が減資を行う目的
そもそも、ベトナム法人が減資を検討する目的は、大きく分けて3つあると考えられる(図表4)。
日本では、減資というと売上減少や収益悪化といったネガティブな理由に基づく行為と受け取られやすく、経営不振の印象から株価下落や株主への影響といったリスクも懸念される。一方、ベトナムでは法令上、利益剰余金が十分でない場合は減資の申請自体が認められないためため、実務上は資本戦略や組織再編を目的とした前向きな施策として、減資を検討することが可能である。
減資の申請手続きと銀行送金における最新実務
図表3で示したケース1に関して、法令上、減資可能金額に明確な上限は定められていない。ただし、弊社の実務経験上、減資の条件である「すべての債務および財務上の義務を全額履行できること」は、図表5の計算式により表現でき、これが減資可能額の上限と解釈している。
減資を実施するにあたっては、①企業登録証明書(ERC)および②投資登録証明書(IRC)の修正申請を、所管官庁である財務局(以下「DOF」※旧・計画投資局)に対して行う必要がある。2020年ベトナム企業法では、減資があった日から10日以内にERCの修正申請を行うことが義務付けられている。一方、実務上は、銀行が減資資金の送金時に修正済のERCの提示を求めるケースが多い。実際に、弊社が支援したハノイ市およびホーチミン市の減資手続きは、図表6の流れで対応が行われた。
弊社がこれまでに支援した減資の実務事例を踏まえ、以下に、ERC/IRCの修正手続きおよび銀行送金における主な留意点を整理する。
<財務局(DOF)へのERC・IRC修正に関する留意点>
• IRC修正時には、減資の合理性や今後の財務見通しについて説明を求められる傾向が強い。
• 地方省庁では減資の前例が少ない場合があり、その際は財務局(DOF)がハノイ市やホーチミン市の実績を照会することもある。これにより審査期間が長引く可能性があるため、スケジュールには十分な余裕をもたせる必要がある。
<銀行送金手続きに関する留意点>
• 減資による送金を予定している旨は、取引銀行にあらかじめ通知しておくことが望ましい。
• 送金に必要な書類や手続きは、銀行ごとの内部規定によって異なる。なかには、送金時に修正済みのERCおよびIRCの両方の提出を求める銀行もあるため、取引銀行への事前確認が不可欠である。
おわりに
これまで難易度が高いと認識されていた「減資」についても、近年は実務事例が少しずつ見られるようになり、ベトナム法人における資金計画の選択肢が広がってきたと言える。とはいえ、依然として事例数は限られており、慎重な対応が求められることから、管轄当局や取引銀行との事前交渉は不可欠である。
弊社では今後、減資手続きに関する支援体制をさらに強化していく。本稿を参考にしていただくとともに、具体的なご相談があればぜひお問い合わせいただきたい。








