
マレーシア発「Trambellir」が描くグローバル戦略 アジアから世界を目指すメディカルツーリズム革命
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本連載では、グローバル視点での戦略策定やデザイン開発の実績を活かし、APACと日本の双方向進出支援を行っているI&COが、イベントレポートや企業インタビューを通じてAPACのビジネスシーンをお届けしています。今回は、マレーシア発の越境医療プラットフォーム「Trambellir(トランベリア)」の創業者、飯塚崇氏へのインタビューを通じて、医療・ウェルネス領域における“グローバル×ローカル”戦略と、アジアから世界を目指すスタートアップの成長モデルを探ります。
目次
患者としての原体験から生まれた事業構想
――I&CO Trambellirの創業背景について教えてください。
飯塚氏:Trambellir(トランベリア)は、2018年にマレーシアで創業したメディカルツーリズムプラットフォームです。私はこれまで日本・シンガポール・クアラルンプールで20年以上にわたり複数の事業を立ち上げてきました。そうした経歴とは別に、Trambellir創業の背景には、患者としての原体験があります。
私自身やチームメンバーは、長年にわたる闘病生活や身体機能の障害を経験しており、そこから「健康にかかわる事業を展開したい」という強い思いが芽生えました。その思いを具現化する形で、誰もが医療サービスにアクセスできる予約プラットフォームの開設を決意したのです。
「医療ツーリズムの民主化(Democratizing the Medical Tourism)」をビジョンに掲げ、創業直後に直面したパンデミック期にも、各国ごとのニーズを徹底的に分析しながら、グローバルに通用する事業モデルへと磨き上げてきました。
医療アクセス格差解消への挑戦
――I&CO Trambellirが取り組んでいる課題とは、具体的にどのようなものでしょうか
飯塚氏:Trambellirが取り組んでいるのは、医療・美容サービスにおける「アクセス格差」の解消です。国や地域によって、受けられる治療や施術の内容・価格には大きな差があり、その結果、利用者の選択肢に偏りが生じています。こうした偏りをなくし、「世界中どこにいても、自分に合った医療・ウェルネスサービスにアクセスできる環境」を整えることが、健康水準の向上につながると考えています。
現在、世界のメディカルツーリズム市場は急速に拡大しています。2032年には1,628億ドル(約24.5兆円)規模に達すると見込まれ、2025年から2032年のCAGR(年平均成長率)は23.0%に達する予測です(図表1)。予防医療や回復系サービスへの関心の高まりも、市場成長を後押ししています。

幅広いサービスと直結モデルで変える医療ツーリズム
――I&CO Trambellirの強みは何でしょうか?
飯塚氏:Trambellirの最大の特徴は、リラクゼーションから高度な外科手術までを網羅する横断的なサービスラインナップと、ダイレクト・トゥ・ペイシェントモデル(患者直結型)による、優れたユーザー体験にあります。
従来のメディカルツーリズムでは、旅行代理店や現地コーディネーターといった仲介業者を介するのが一般的でした。しかしTrambellirでは、予約から決済、レビューの閲覧までをすべてオンラインで完結できます。
さらに、提携する医療機関については、ライセンスや保険加入状況などを事前に確認したうえで掲載しており、利用者が安心して選択できる仕組みを整えています。

多言語対応とBtoB参入で進めるグローバル展開
――I&CO メディカル領域、しかも国を跨いでサービスを提供するには、チャレンジも多いのではないかと思います。越境メディカルサービスを提供する上で、どのような課題に直面し、どう乗り越えてきましたか?
飯塚氏:Trambellirのサービスを提供するにあたっては、各国の法規制や言語・文化の違いを乗り越える必要がありました。そのため、日本とマレーシアを拠点とする多言語・多文化チームを組成し、柔軟な顧客対応を実現しています。
カスタマーサポートの面では、膨大かつ日々増加する問い合わせに対応するため、業務フローの最適化やAIを含むテクノロジーの導入を進め、対応力を強化してきました。さらに、少人数体制でも事業をスケールさせるために、日系企業を含む各社との戦略的提携も推進しています。
現在Trambellirは22ヵ国・35都市でサービスを展開しており、特にタイ、バリ島、東京といった観光地での施術予約に強みを持っています。顧客の中心は、シンガポール、オーストラリア、米国などの高所得国の旅行者です。今後は日本の病院・クリニックの掲載拡大に加え、インドや中東といった新興市場への進出も視野に入れています。
直近では、新たに旅行代理店向けの「MedGDS(医療ツーリズム版グローバルディストリビューションシステム)」をローンチし、BtoB市場への本格参入を開始しました。
患者視点と品質を基盤に磨き上げるUX
――I&CO 経営チームやカルチャーについて聞かせてください。
飯塚氏:創業メンバーはいずれも異なるバックグラウンドを持ちながら、患者としての視点や痛みを理解しています。マレーシア、日本、シンガポールといった複数拠点で活動する中でも、「患者視点」と「プロダクト品質」を核とするカルチャーが根付いています。
さらにI&COとの業務提携を通じて、UXの高度化やブランド戦略の再構築に取り組み、グローバル水準の”信頼される医療UX”を設計する体制を強化しています。

資金調達と事業提携で加速する成長戦略
――I&CO 資金調達や今後の成長戦略について教えてください。
飯塚氏:Trambellirは、VCのみならずCVCや事業会社とのアライアンスを重視し、プロダクトと市場の両面から成長を目指しています。2025年2月には、「Fortune Global 500」に名を連ねる日系企業様からプレシリーズAラウンドの資金調達を完了しました。
今後はグロースフェーズへの移行に向け、エクステンションラウンドによる追加調達も視野に入れています。中長期的には、日本やアジア各国でのIPOに限らず、ビジョンの実現を第一に、M&Aを含めたさまざまな選択肢を検討しています。あわせて、医療・美容・観光関連企業との新たな連携や、法人・自治体との協業にも積極的に取り組んでいきます。
戦略パートナーと共創する医療・観光の未来
――I&CO 最後に、日本企業や投資家の皆様に期待することを教えてください。
飯塚氏:日本のインバウンド市場の拡大を背景に、Trambellirは「日本の医療・観光資源と海外顧客をつなぐハブ」としての役割を果たしたいと考えています。日本の医療機関やウェルネス施設が海外から患者を受け入れるには、言語対応、価格の透明性、マーケティング支援など多面的なサポートが不可欠です。
投資家の皆様には、財務リターンにとどまらず、事業シナジーを共に創出する戦略パートナーとして参画いただくことを期待しています。特に、健康・医療・観光といった分野で新規事業や海外展開を検討している企業とは、相互に大きな可能性を見出せると考えています。









