
シンガポールデザインウィーク2024 EVENT REPORT
- ASEAN・海外展開
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本連載では、グローバル視点での戦略策定やデザイン開発の実績を活かし、APACと日本の双方向進出支援を行っているI&COが、APAC各国で開催されるイベントのレポートや、シンガポールをはじめとするアジアのビジネスシーンをお伝えします。今回は、「シンガポールデザインウィーク2024」のレポートを通じて、シンガポールが抱える意外な課題を紐解きます。(執筆日:2024年11月13日)
目次
「シンガポールデザインウィーク」とは
シンガポールデザインウィーク(Singapore Design Week、以下SDW)は、アジアでも有数の規模を誇るデザインイベントです。2024年は「People of Design」をテーマに掲げ、9月26日から10月6日まで開催されました。イベントは「Design Futures」「Design Marketplace」「Design Impact」の3つのテーマから成り、それぞれ未来のデザイン、デザインのグローバルトレンド、そして社会課題に取り組むデザインに焦点を当てています。
期間中、シンガポール市内のデザイン地区(デザインディストリクト)として指定されたNational Design Centre、Bras Basah.Bugis Design District、Marina Design District、Orchard Design Districtなどで展示やイベントが催され、アジア全域から集まったデザイナーやビジネスリーダーたちが、デザインの未来やその社会的インパクトについて活発な議論を交わしていました。
メインステージとなる「Design Futures Forum」では、基調講演やインタラクティブなセッション、ネットワーキングの機会が提供されました。また、街全体が「デザインのキャンバス」となり、複数のエリアでインスタレーションや展示が行われるのもこのイベントの特徴です。「Bras Basah.Bugis Design District」や「Marina Design District」など、文化的なランドマークや都市の主要スポットがデザインの力によって変貌しているのを見て回ることで、その影響力を実感します。


(「Asian Literature」の棚はあっても「Singapore Literature」の棚はない大手書店)
経済優先の歴史が生んだクリエイティブ産業の課題
シンガポールでは近年、こうしたデザイン関連のイベントが開催されていますが、その背景には「クリエイティブ産業の発展が遅れている」という国全体の課題があります。経済成長を第一に考えてきたシンガポールでは、アートやカルチャーなど娯楽とみなされる分野が自国で育成されなかったという歴史があり、現在流通している音楽や文学も、海外から入ってきた英語ベースのものが大半を占めています。
こうした状況を受けて、2003年にはクリエイティブ産業の振興を国策に掲げ、同年にはシンガポールのデザイン産業の推進を担う政府機関「デザインシンガポール・カウンシル」が設立されました(今回のSDWもこの団体が主催しています)。
世界的なデザインイベントを誘致したり、国内のデザイナーが海外のデザインイベントに参加する際の支援をしたりと、国策を推し進める力はさすがシンガポールといった印象ですが、現地で出会った参加者からは「デザインを仕事にする土壌が整うのはまだまだこれから」「大きな盛り上がりは感じられない」といった声も聞こえてきました。イベント会場で出会った20代の方は、親の猛反対を押し切って美大に進学しグラフィックデザインを学んだものの、「デザインを仕事にして生活をしていくための十分な環境が整っていない」と話してくれました。
「親の猛反対」に象徴されるように、環境整備の進行と人々の理解の醸成には時間的なギャップが生じるものです。イベント会場で出会った方々の話からは、国のビジョンに対する現状が浮き彫りになりました。しかし、シンガポールのスピード感をもってすれば、「アジアのデザインハブになる」という国の目標は、そう遠くないうちに達成される気がします。

いかにクリエイティブ資源をビジネス価値に転換するか
私自身は、スタートアップでの事業開発の経験を活かしてI&COに加わり、約一年半のAPAC各国の現地視察・リサーチを経て、I&CO APACの設立とともにシンガポールに移住しました。「戦略×クリエイティビティ」を特徴とするI&COの中で、私は事業やパートナーシップの創出・拡大などを担当しており、少々特殊な立ち回りをしていると言えるかもしれません。
そんな私が注目しているのは、デザイン・キャピタルの取り組みです。これは、スタートアップにクリエイティビティを「出資」し、対価としてエクイティや成果報酬を獲得するモデルです。I&COとしてもすでに複数の企業とタッグを組んでいます。こうした取り組みを通じて、クリエイティブの力をビジネスに掛け合わせる機会を増やし、より大きな価値を生んでいけるのではないかと考えています。

イベント概要:
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