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ベトナム外資規制の業種別制限と実務対応

ベトナム外資規制の業種別制限と実務対応

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近年、高い成長率で注目を集めるベトナム市場ですが、外資系企業の参入障壁となるのが外資規制です。WTO加盟以降、緩和は進んでいるものの、多くの業種で外資比率の制限やライセンス取得義務が課されており、法令の解釈や運用も容易ではありません。本稿では、外資規制の基本的な枠組みと、主要業種ごとの特徴を解説します。

外資規制の法的枠組み

投資法とWTOコミットメント

ベトナムにおける外資規制は、主に「投資法」および「企業法」に基づいています。さらに、WTO加盟時に提出された「WTOコミットメントスケジュール」に従い、業種ごとに外資の参入条件が定められています。これらの法令およびコミットメントに基づき、外資系企業は、投資登録証明書(Investment Registration Certificate:IRC)および企業登録証明書(Enterprise Registration Certificate:ERC)を取得する必要があります。

ポジティブリストとネガティブリスト

現在、ベトナムでは、外資の参入が可能な業種を「ポジティブリスト」として列挙する方式ではなく、参入が禁止または制限される業種を「ネガティブリスト」として管理しています。最新のネガティブリストは、2021年施行の改正投資法附属書に定められており、「投資禁止分野」と「条件付投資分野」に分類されています。

「投資禁止分野」には、麻薬取引、性産業、野生動物の取り扱いなどが含まれ、外国資本の参入は一切認められていません。一方、「条件付投資分野」では、出資比率の上限、ベトナム企業との合弁義務、特定ライセンスの取得など、個別の法令に基づく要件が課されます。

個別のビジネスライセンスによる統制

外資規制の適用は、通常、投資家の国籍や出資比率に基づいて判断されます。IRCやERCの取得時に、ビジネスライン(登録業務範囲)の申請内容をもとに判断されることもありますが、個別法令に基づく規制については、各主管省庁が所管するビジネスライセンス(いわゆるサブライセンス)を取得する段階で、当該外資企業による事業実施の可否が判断されるケースもあります。

外資規制の判断は、ベトナム計画投資局(DPI)などの当局の裁量に大きく左右されるため、法令の文言だけでなく、実務上の運用状況を確認することが不可欠です。実務に精通した専門家の支援や、計画投資局への事前ヒアリングが重要となります。

また、法令上は外資と国内資本の区分が明示されていない分野であっても、当局の判断により、実質的に外資によるライセンス取得が困難となる場合があります。

業種別の外資規制

以下では、日系企業が特に関心を寄せる主要業種ごとの外資規制の概要を紹介します。

小売業・卸売業

小売業および卸売業は、WTO加盟当初は外資参入が厳しく制限されていた分野ですが、現在は一定の条件のもとで外資100%出資が認められています。ただし、小売業を行う場合は、原則として商工省からビジネスライセンスを取得する必要があります。

また、小売業には「経済的ニーズテスト(ENT)」と呼ばれる審査がありますが、日本を含むCPTPP加盟国については、この規制は撤廃されています。もっとも、個別法令への明確な反映がなされていないため、現時点では実務上の対応が求められる状況にあります。今後、短期的に制度改正が進む可能性が高い分野といえます。

教育業

教育分野では、幼稚園から大学まで外資による設立が可能であり、出資比率に関する規制も設けられていません。ただし、すべての外資系教育機関は、ベトナムの教育規制(Decree No. 124/2024/ND-CP等)に従う必要があります。さらに、教育訓練省(MOET)による事前承認(サブライセンス)の取得と、機関情報のウェブサイトへの掲載が求められます。これは、完全に外国の教育カリキュラムを提供するインターナショナルスクールを設立する場合でも同様です。

一方で、外資によるカリキュラムの導入が認められていない分野も存在し、政策上の制約が多く、実務上は難しい領域となっています。

なお、技能実習生の送り出しなど、国外への人材紹介事業については、外国資本の参入は認められていない点にも注意が必要です。

物流業

物流業は、外資への開放が進んでいる分野ですが、業態ごとに異なる規制が設けられています。たとえば、国際海運サービスや倉庫サービスについては、100%外資による提供が可能です。一方で、国内運送など一部の分野では制限が残っているため、業態ごとの規制内容を個別に確認する必要があります。

金融業

金融業は、依然として外資規制が厳格に適用されている分野です。ベトナムの銀行に対する出資比率は、外国投資家全体で30%まで、単独では15%までとされており、外国戦略的投資家に限り20%まで認められています。また、外国投資家が単独で5%以上の株式を取得する場合には、国家銀行からの事前の書面承認が必要です。

なお、2025年5月19日以降、一部の国内銀行に限っては、外国投資家全体で最大49%までの出資が可能となりますが、対象銀行が限られているため、実務上の影響は限定的です。

不動産業

外国人および外資系企業による不動産取引は、土地使用権制度の影響により、依然として多くの制限が存在する分野です。ベトナムでは土地が国有とされており、企業が取得できるのはあくまで「土地使用権」に限られます。住宅開発に関しては、一定の条件を満たせば外国企業によるプロジェクト開発も可能ですが、農地の取得や土地転売については厳格な制限が設けられています。

広告業

出資比率に制限はないものの、会社設立にあたっては内資企業との合弁形態が求められます。なお、旅行仲介業やインバウンド向けの旅行業についても、同様の規制が適用されています。

外資規制への実務対応

外資規制が厳しい領域であっても、ベトナム市場への進出を断念する必要はありません。実務上は図表1のような対応策が講じられています。

図表1 ベトナム外資規制への主な対応

おわりに

ベトナムの外資規制は、単なる法的な制限にとどまらず、行政手続きや地方当局の裁量、さらには政策的判断も関係する極めて複雑な分野です。特に日系企業が進出を検討する際には、「法的に可能か」だけでなく、「実務的に認められるか」を見極めることが重要です。

規制の内容やその解釈は変更されることもあるため、現地における最新の運用状況を継続的に把握する体制が求められます。法務・税務・業界の専門家と連携しながら、慎重かつ戦略的にアプローチすることが不可欠です。

執筆者
工藤 拓人
CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd.
代表弁護士

2014年から現在に至るまでベトナムに居住し、日系企業の進出および運営に関連する法務全般に幅広く携わっている。ベトナムでの日系企業の顧問業務、M&A、不動産、労務、知的財産対応などを専門的に取り扱う。また、個人として、日本人の海外におけるスタートアップ展開の支援も行っている。

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CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd.

弁護士法人キャスグローバルのベトナム拠点として2014年にホーチミン、2022年にハノイに拠点を設立し、ベトナムにおける日系企業の法務全般を、日本人とベトナム人弁護士が連携してサポートしている。現在、約300社への支援を継続して行っており、クライアントは製造業、商社、IT、不動産、エンタメ、小売、飲食、その他サービス業など多岐にわたる。