システム導入で現場が混乱する原因は?社内浸透を成功させるコツ
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深刻な労働人口の減少に直面するなか、業務効率化を目的としたシステム導入は多くの企業で進んでいます。しかし「導入したシステムが現場に浸透しない」「担当者が問い合わせ対応に追われ、本来の業務に手が回らない」といった課題を抱える企業も少なくありません。
こうした状況でも、情報伝達の仕組みを整えることで、説明会を開かずに新システムの活用を社内へ浸透させることは可能です。
本セミナーは、「デジタル投資成功の法則〜新手法への移行をスムーズに実現するには〜」と題して開催されました。株式会社スタディストの元人事部長で現カスタマーサクセス本部/CSopsグループの坂野亜希子が、説明会を開かなくても新システムの活用を社内に浸透させる手法について解説しました。
前編ではシステム浸透を妨げる要因と解決策の考え方を、後編ではスタディスト社内での実践事例をもとに、再現性の高いマニュアルを整備・運用するための具体的なステップをご紹介します。
目次
DX推進の壁?システム導入後の業務効率化が進まない実態
株式会社スタディスト カスタマーサクセス本部/CSopsグループ・坂野亜希子(以下、坂野):近年、クラウドサービス(SaaS)の利用は急速に拡大しており、総務省の調査では約8割の企業が導入しているとの結果が出ています。10年ほど前には法人利用が10%程度だったことを考えると、デジタル活用の裾野は大きく広がりました。
ところが、DXへの関心が高まっているにもかかわらず、業務効率化まで実現できている企業はまだ少ないのが実態です。経済産業省のデータによると、DX推進が道半ばの企業は66.2%に上ります。
デジタルツールの活用に着手し始めている企業は多いものの、業務効率化を実現できたと言える段階には至っていないケースが大半を占めているのです。

坂野:新しいツールの導入時には、従業員が抱く抵抗感といった心理的な負担やシステムに慣れるまでの時間的な損失のほか、ツールを運用する際の負担が伴うという声も聞かれます。
効率化のために新しいシステムを導入したにもかかわらず、入れ替え作業や現場への定着対応で逆に業務が増えるといったことが発生するなど、多くの企業において導入が思ったより進まないケースもよく見られます。
「誰でも迷わず使える」状態が現場の抵抗感をなくす鍵
坂野:新しいシステム活用の社内浸透が進まない原因には、従業員がシステムをしっかり使える状態が整っていないことが挙げられます。
例えば、活用のイメージが湧かなかったり、使い方がしっかりと共有されていなかったり、システムが高機能すぎてITリテラシーが低い従業員だと使いこなせなかったりといった、さまざまな要因が考えられます。
それに加えて、システム導入に向けた関連業務が煩雑であることが影響し、導入後の運用が後手に回る企業も少なくありません。システムは導入が目的ではなく、従業員がそれを十分に活用し、本来の目標を達成するまで導く必要があります。しかし、その環境整備が追いついていないのが現状です。
こうした課題を踏まえると、新システムの社内浸透を進めるには「誰でも使える」状態を作らなければなりません。具体的には、使い方が全社に共有され、分からないときにすぐに調べられ、初めて利用する人やITに不慣れな人でも操作できる環境が求められます。
誰でも使える環境が整うことで初めて、手順を正しく伝え、その通りに実行できる「再現性の高い情報伝達」が成り立つのです。
導入研修の実施だけでは業務の再現性を担保できない
坂野:企業が新しいシステムを社内に浸透させる際、導入研修の実施やベンダー提供のマニュアル配布といった手段が一般的です。しかし、こうした従来の方法だけでは、実務での「再現性」を担保するには限界があります。
なぜなら、導入研修で一時的に理解できたとしても、いざ実務で操作する際に手順を思い出せなくなるケースが多いからです。自力で解決できなければ、結局は周囲の詳しい人に頼らざるを得なくなります。
また、文字中心の説明書は従業員にとって心理的なハードルが高くなりがちです。特にITに不慣れな従業員にとって、作業手順をイメージしにくいテキストベースの資料は、閲覧自体を敬遠する原因となります。
さらに、システム上で不明な点が発生したら、システム導入担当者に質問が集中しますし、システムのアップデートに伴って勉強会を企画する必要に迫られるため、ますます担当者の負担が大きくなってしまうのです。
本来の業務が進まない弊害が続くことで、次のシステム導入の検討そのものに躊躇してしまうケースも考えられます。

「わかりやすいマニュアル」が業務再現性のポイントとなる
坂野:こうした課題を解消する手段として有効なのが、自社の運用に合わせた「ビジュアルベースのマニュアル」の活用です。具体的には、画像や動画をメインとした、文字を読まなくても手順がわかる形式が理想的です。
ここで重要になるのが「業務の再現性」という考え方です。再現性とは、誰にも質問せず、迷わず、ミスなく業務を遂行できる状態を指します。こうした再現性の高い情報伝達をどう整えるかは、システムの選定や検討と同じくらい重要です。
近年は検索や生成AIで自ら答えを見つける行動が主流となっており、人に聞かなければ解決できない環境そのものが従業員のストレスになっています。マニュアルによる自己解決が可能になれば、心理的ハードルが下がるだけでなく、担当者への問い合わせも削減できます。
それに加えて、ビジュアルベースのマニュアルは更新も容易です。システムのアップデートがあっても、マニュアルを書き換えるだけで変更内容を即座に全社へ周知できるため、その都度研修を開く必要もなくなります。
こうした環境を整えることは、ミスの防止や属人化の解消、さらには教育負担の軽減といった大きな副次効果にもつながるはずです。

坂野:画像と動画を用いたビジュアルベースのマニュアルなら、文字を読まなくても手順が一目でわかるため、ITリテラシーを問わず、誰でも迷わずに作業を完結できます。
まさに「隣で誰かが教えてくれているような安心感」を全社に提供できるのです。
こうした環境が整えば、担当者が同じ質問に何度も答える時間は不要になります。浮いた時間は、システムのさらなる改善や、より付加価値の高い業務に充てることが可能です。さらに、システムのアップデートへの対応も容易になります。画面構成が変わってもマニュアル内の画像を差し替えるだけで、即座に最新の手順を周知できるからです。
再現性の高いマニュアルを整備することは、単なる効率化を超え、常に改善が回る「筋肉質な組織」をつくるための第一歩になるはずです。
まとめ
本セミナーの前編では、システムの社内浸透を妨げる要因と、それを克服するための「再現性の高い情報伝達」の重要性について解説しました。
導入研修と文字ベースの説明書では再現性が確保できず、質問対応の発生によるシステム導入担当者への負担が大きくなります。ビジュアルベースのわかりやすいマニュアルを活用して「誰でも使える」状態を構築することが、デジタル投資を成果につなげるためのポイントといえます。
後編では、説明会を開かずにシステム導入を推進した当社の事例や、当社が支援した他社の事例を通じて、再現性の高いマニュアルをいかに整備・運用すべきかについて解説します。






