
外国人材が「長く働きたい」と思う職場の共通点。離職を防ぐ評価制度とコミュニケーションの基本
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精一杯向き合っているはずなのに、なぜか1〜2年で外国人材が辞めてしまう……。日本には、そういった悩みを抱えている経営者が後を絶ちません。
そこで今回、累計3,000名以上の外国人材採用に携わってきた株式会社ジンザイベース 代表取締役の中村大介氏にお話を伺い、外国人材が職場に根付くための「定着戦略」に迫りました。外国人材が「ここで働き続けたい」と思える現場をどう作るか、具体的な方法について掘り下げます。
(前編はこちらから)
目次
1年目と2年目で理由は違う?データで見る「離職の壁」の正体
――外国人材の定着において、特に注意すべき時期や傾向はありますか。
株式会社ジンザイベース代表取締役 中村大介氏(以下、中村 ):最近の統計によれば、離職のピークは入社1年未満と2年目の2段階でやってきます。この初期の2年間をいかに乗り越えるかが定着の鍵です。
まず、入社1年未満で辞める最大の理由は、入社前の期待と実際の現場のギャップです。採用時に良い面ばかりを伝え、入社後の丁寧なフォローを怠ると、相手は「思っていたのと違う」と感じて離職につながります。
次に、入社2年目の離職は、自己評価と報酬のギャップから生じます。この時期は、 仕事に慣れ、成長を感じた本人が「自分はもっとできるはずだ」「もっと給与を上げて当然だ」と自身の市場価値を意識し始める時期です。ここで「なぜ自分の給与はこの金額なのか」を納得させられないと、他社へ流出してしまいます。

出典:出入国在留管理庁・厚生労働省|転籍制限期間の設定について「<表1>資格取得年別1号特定技能外国人の転職状況(暫定値)」
曖昧さを排除する。外国人材が納得する「定量的な評価」のつくり方
――離職を防ぐために、企業は何をすべきでしょうか。
中村:最も効果的なのは、具体的で定量的な評価制度の導入です。「頑張り」などの曖昧な評価は、外国人材には伝わりません。「これができたらプラス1万円」というように、何を達成すれば報酬が上がるのかを明示する必要があります。
――評価制度を導入する際のポイントを教えてください。
中村:ある中華料理チェーンの成功例を参考にしてみましょう。この会社が採用したベトナム人の男性は、入社半年で早くも「辞めたい」と言い出したそうです。
しかし、いまだにベトナム人は働き続けており、「仕事が楽しい」とも語っているといいます。その理由は、中華料理チェーンの社長の緻密な評価制度が活かされているからです。
例えば、「餃子を包めるようになる」「中華鍋を上手に扱えるようになる」というように、タスクを細かく分解し、クリアすべき基準を定量化したのです。なおかつ、それぞれの業務の基準を満たすと、具体的な価格で昇給があることを約束しました。
こうしたロジックに基づいた、わかりやすい基準は、たとえ希望額に届かなくても本人に高い納得感を与えます。この制度は日本人社員にも適用すべきでしょう。公平で透明性の高いロジックこそが信頼関係の基盤となります。
定着の鍵は「信頼の貯金」。良好な人間関係を築く「当たり前」の交流
――給与などの条件面以外で、現場での定着を促すために効果的な取り組みはありますか?
中村:コミュニケーションの頻度をいかに上げていくかに尽きます。バーベキューや飲み会、社員旅行といった社内イベントを積極的に行う企業は、現場の人間関係が良好になりやすい傾向にあります。
信頼関係がしっかりと構築されていれば、たとえ給与が他社より若干低かったとしても、「この人たちと一緒に働きたい」と、とどまってくれるケースは多々あります。
――そうしたイベントは日本の企業にとって一般的なものに思えますが、現状はどうなのでしょうか?
中村:大半の企業はこうした当たり前のことも実行できていないのが現実です。外国人材を受け入れている企業の約55%以上は、100名未満の中小・零細企業が中心であり、コミュニケーションの活性化を経営上の重要な指標(KPI)として捉える余裕がない、あるいは軽視しているケースが非常に多いのです。
――評価制度が整う前段階で、こうした交流は有効かもしれません。
中村:そうですね。定量的な仕組みを構築するには時間がかかりますが、制度が整うまでの間、曖昧な評価による不満をコミュニケーションでカバーすることができます。信頼関係の貯金を作っておくことは、組織を維持する上での重要な経営策と言えます。
結局のところ、これらも日本企業が従来行ってきた福利厚生と変わりません。
「外国人だから」と特別なことを探すのではなく、「一人の人間として、大切にされている」と実感してもらうこと。 このシンプルな視点を持っているかどうかが、2027年以降の外国人材を獲得し続ける企業になるかどうかの分かれ目です。
地方企業こそ「東京水準」を意識。都市部への流出を防ぐ、納得感のある待遇づくり
――人材不足に悩む地方の中小企業にとって、新制度下で人材に選ばれ続けるための戦略はありますか。
中村:地方企業の基本戦略は、日本での就労が初めての層、いわゆるファーストペンギンたちに優先的にアプローチすることです。一度日本での就労を経験した転職層は、都会の企業と給与水準を比較するため、地方企業は太刀打ちしづらいからです。
厳しいようですが、地方の企業は地域の競合他社ではなく、「東京の企業」を基準に考えるべきです。
かつての日本人採用は、その土地を離れられない人の中から雇うことができましたが、育成就労制度が施行された後は、ガラリと変わります。もともと外国人材はキャリアに対して非常に流動的な存在です。一箇所に留まる理由がなければ、より条件の良い都会へ移動するのは合理的であり、当たり前のことなのです。
もちろん、即座に東京と同じ給与にするのは難しいかもしれませんが、そこに近づける経営努力をしているかどうかが問われています。

――中村さんの著書『日本人が知らない 外国人労働者のひみつ』(白夜書房)では、地方企業ではたらくメリットとして、家族を呼び寄せて暮らせるようになった時、都会より住環境を快適だと感じる場合があると挙げられていましたが、実際のところいかがでしょうか?
中村:そうですね。ただ、外国人材が家族を呼ぶには、特定技能2号を取得する必要があります。特定技能2号の試験は高度な日本語の読み書きが求められるため、難易度が高いのが現状です。
そのため、資格取得の見込みがない人材は働ける期間が決まっているので、「短期間で稼げる都会に行こう」となりがちです。もし外国人材の定着を視野に入れるならば、地方企業は特定技能2号を取得する可能性がある、日本語能力が高い人材を採用することをお勧めします。そういった方こそ、将来的なビジョンを描いているはずですから。
ただし、これはあくまで「入り口」の話です。入社後にいかに定着させるかについては、評価制度やコミュニケーションの質を根本的に見直す必要があると思います。
OJT頼みからの脱却。成長スピードを加速させる「母国語マニュアル」の力
――現場での育成において、多くの企業がつまずくポイントとは?
中村:ほとんどの企業がOJT(現場での口頭指導)に頼りすぎているように思います。業種で言うと、製造業などは手順書やマニュアルが有効に働きやすいですが、サービス業では指導が属人的になりがちです。
こうした状況で、業務の基準を明確にするためにも、多言語(日本語と母国語)の作業手順書やマニュアルの整備が極めて重要です。「とにかく山を登れ!」と言われるより、「明日の10時までにバスと徒歩で、この山に向かってください」と言われる方が迷いませんよね。業務の基準を可視化することで、成長スピードは劇的に上がります。100点の成果を求める仕事であればあるほど、マニュアルづくりを丁寧に整えるべきです。
――最後に、中村さんが熱意を持って外国人材雇用の改革に取り組まれているのは、どういった思いがあるのでしょうか。
中村:私は性格的に、非効率で的外れなことがまかり通っている状況を黙って流すことができないんです。正しい選択肢を知らないがゆえに損をしている企業や、不当な扱いを受けている人材があまりにも多すぎる。この状況をなんとか改善していきたいという思いが活力になっています。
外国人材を「労働力」としてではなく、「一人の人間」として尊重し、共に成長できる組織を作る。当たり前のことを当たり前にやる経営こそが、2027年以降の成功を決めると信じています。
(前編はこちらから)
取材・文:池田アユリ








