「今ある強み」をより伸ばすために。ダイヤ精機 諏訪社長が主導する業務効率化とは
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ダイヤ精機株式会社の二代目取締役社長であり、就任当初から現場を巻き込んだ業務効率化に取り組んできた諏訪貴子氏。現場に浸透するシステムをつくりあげるには、従業員の意見に丁寧に耳を傾け、実行しやすい方法を取り入れる必要があると語ります。
今回は、諏訪氏に業務効率化のための取り組みや新たな方法を会社に浸透させる工夫、そして従業員のモチベーションを高めるための方法などについてお話を伺いました。働き手が不足し、業務効率化の必要性が強く問われる時代に、経営者はどのような組織づくりをすべきかを探ります。
目次
はじめに
諏訪氏は、新卒でエンジニアとして経験を積んだ後、結婚・出産を機に専業主婦に。その後、諏訪氏の父が経営していたダイヤ精機株式会社の二代目社長に就任。日経BP社「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013」大賞を受賞したほか、メディアへの出演や講演会での登壇も多数行う女性経営者です。業務効率化や社員のモチベーション向上に取り組みながら、日本のものづくりの技術が次世代に継承されるよう精力的に活動しています。
大企業での勤務経験を活かし、5Sから始めたダイヤ精機の改革
――まずは、貴社の企業概要や諏訪様のご経歴について教えてください。
諏訪:ダイヤ精機は精密金属加工を行う一貫加工メーカーです。1964年に父の諏訪保雄が創業し、2004年に逝去したタイミングで私が二代目の取締役社長として就任しました。就任当初は、技術を維持しながら次世代を担う20~30代の従業員を増やすことを目標にさまざまな改革に取り組んできました。
私はかつて大企業に勤めていたので、いわゆる町工場であるダイヤ精機で働き始めた時は、仕事の進め方や状況がこれまでとは全く違うこともあって大きなギャップを感じていました。経営に携わることも初めてだったので、まずは自分が取り組んできたエンジニアの視点からさまざまな改革をしていこうと決意したのです。
――社長に就任してから最初に取り組んだことは何ですか?
諏訪:まず最初に取り組んだのが、職場の整理整頓です。当時は何がどこに置いてあるのかも分からない状態で、業務に使われていない道具があちこちに無造作に置かれているような状況でした。
会社員時代に「製造業では5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底が大事だ」と教え込まれていたので、当社でもまずは5Sの徹底が必要だと考えたのです。生産性や利益率の向上、コストダウンなど取り組むべきことはたくさんありましたが、まずは基本である5Sの徹底から手をつけることにしました。

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生産性を上げる「5S活動」を導入するには?
お客様目線での「強み」に気づき、システム化へ踏み出す
――最初は5Sの徹底から取り組まれたのですね。その後、どのようなことに取り組んだのでしょうか。
諏訪:5Sの徹底化を進めた後、当社の強みを把握する必要性を感じ、SWOT分析を実施しました。その結果として、当社の強みは“高い技術力”であるという結論を導き出しましたが、とある方から「それはあなたの目線でしか考えられていないのではないか」との指摘を受けたのです。
その言葉にハッとさせられた私は、お客様目線で見た時の当社の強みは自分で考えたところで導き出せるものではないと判断し、お客様に「なぜ弊社に仕事を発注していただけるのでしょうか?」と聞いて回ったのです。その結果、依頼すれば必ずこなしてくれる“柔軟な対応力”が強みだということが分かりました。
当社として顧客第一主義を掲げていたにもかかわらず、自分の目線でしか物事を見ていなかったことを深く反省する出来事でした。
そこから、当社の武器である“柔軟な対応力”を維持して価値を提供し続けるために、業務をシステム化することを検討し始めたのです。業務のシステム化を進めるためにさまざまな展示会に通い、私の思い描くイメージに合うサービスを探しました。最終的には当時普及し始めていたバーコードを導入し、生産管理のシステム化を本格的に進めることになります。
現場を巻き込み、従業員と共にシステムをつくる
――システム化を推進していくなかで、従業員からの反応はいかがでしたか?
諏訪:新しいシステムを導入する際、現場の職人気質な従業員から反発を受けることもありました。システム化や管理に力を入れると、従業員からは「自分たちを監視するための取り組みなのではないか?」と思われてしまったのです。
従業員全員に対して「監視したいわけではなく、業務をより良い形に最適化したいだけ」「導入することで業務が楽になり、現場にとってもメリットがある」ということを丁寧に伝え続けました。また、複数の企業に来社していただき、システムを導入した場合の実例やメリットを説明してもらいながら、従業員の理解を得られるように努めました。
さらに新しいシステムを導入した後にはアンケートを実施し、集まった意見をもとにシステムを改良することを繰り返したのです。その結果、従業員の中で「自分たちで作り上げたシステムだ」という認識が強まり、新しいシステムをとことん使ってくれるようになりました。
意思決定をすることは経営者の役割ですが、できるだけ現場の意見を取り入れながら、巻き込み型で改善することが大切だと痛感しました。
システム導入の際には、最初から完璧を求めないことも重要
――システム化を推進していく際に、どのようなことを工夫したのでしょうか。
諏訪:とある会社のシステムを導入したのですが、すべての機能を最初から完璧に使いこなそうと考えるのではなく、当初の目的でもあった進捗管理の部分でのみシステムを活用していきました。つまり、そのシステムに搭載されている進捗管理の機能以外はほぼすべての機能を捨てたのです。
多くの経営者はシステムを導入する際に、最初からすべての機能を完璧に使いこなそうと考える人が多いと思います。しかし、それだとかえって非効率になることも多いので、時には思い切って重要な部分だけに絞ることが重要だと思っています。この記事を読んでくださっている経営者の方には、時には捨てる勇気も持ってもらいたいです。
業務効率化を進めるためには、そのメリットを実感してもらうことが不可欠
――貴社において、システム化以外に抱えていた課題はありましたか?
諏訪:当社が当時抱えていた別の課題として、すべての作業工程がベテラン従業員の頭の中にあり、業務内容を他の人に上手く引き継いでいないというものがありました。
長く勤めている従業員は経験が豊富なので、業務フローをすべて把握しています。しかし、新しい人が入ってきた時には、業務フローの見える化がされていないので上手く伝わらなかったり、見よう見まねで動いてもらう必要があったりと、会社としてあまりにも非効率な状況でした。
――そのような状況を打破するために、どのようなことをしたのでしょうか。
諏訪:ベテラン従業員の頭の中にある情報を、とにかく言語化して外に出していくという作業を進めました。はじめは「わざわざ言語化するのは面倒だ」という反対意見がベテラン従業員から出ていたのですが、実際に業務の効率化が進んだり、効率化により売上が向上し、ボーナスの増額などの成果が従業員に還元されたことで、効率化に対する意識が組織全体に浸透していったように思います。従業員がメリットを実感できることで、自然と協力的な姿勢が生まれることが分かりました。
経営者の役割は、自分がやりたいことを押し付けることではなく、きちんと結果を出して従業員に還元する姿勢なのだと改めて感じた出来事でした。
ベテランの指導を見える化。交換日記が生んだ副次的効果
――その他に、諏訪様が経営者として取り組まれていることはありますか?
諏訪:少し珍しい取り組みなのですが、かねてより私は新入社員と1ヶ月間の交換日記を実施しています。交換日記をすることで、その方の人柄や強みを把握するという狙いがあります。大学ノートに自由に書いてもらっているので、それぞれの個性が見えやすく、文章を読むだけでも「ちょっと元気がなさそうだな」「こういう仕事が向いているかもな」とさまざまなことを感じ取ることができます。
しかし、交換日記を始めた当初は新入社員のことを知るという目的で始めたわけではありませんでした。実は、新入社員を指導している従業員がどのような指導をしているかを把握するための取り組みとして始めたのです。
社長に就任した当初、私はまだ32歳でしたが、従業員は50〜60代の方ばかりでした。「新入社員に対してきちんと基礎から教えているか」、「安全性について教育しているか」など確認したいことは多くありましたが、ベテランの従業員に対して「しっかり指導していますか?」と直接聞くことはなかなか難しかったのです。
そこで、ベテラン従業員がどのような教育をしているのかを把握するために新入社員との交換日記を始めました。当初の目的どおり指導内容の把握ができたうえ、さらに新入社員の人柄や強みを知るきっかけにもなったので、交換日記は今でも大きな意義のある取り組みだと考えています。
後編では、トップとしての在り方やコミュニケーションの大切さ、従業員に働く意味を感じてもらうための取り組みについて深堀りしていきます。
(後編はこちらから)
取材・文:小町ヒロキ






