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「世界のニッチトップ」へ。ダイヤ精機 諏訪社長が見据える会社の未来とは

「世界のニッチトップ」へ。ダイヤ精機 諏訪社長が見据える会社の未来とは

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業務効率化やDX推進、AIの活用など人間以外の力を活用する場面が増えてきましたが、その一方で組織づくりには丁寧で地道なコミュニケーションが欠かせません。

本記事では、「人が辞めない組織づくり」で注目されているダイヤ精機株式会社の二代目取締役社長 諏訪貴子氏に、トップとしてのあり方やコミュニケーションの大切さ、人を大切にすることと業務効率化の関係性などについて話を伺いました。

(前編はこちらから)

大切なのは、結果を出して従業員に期待してもらうこと

――諏訪様が経営者として大切にしていることを教えてください。

諏訪:経営者として大切なのは、明確な方向性を提示しながら従業員のモチベーションを上げることだと考えています。また、私が元気で楽しそうにしていないと「この人についていきたい」と思われないので、従業員の前では明るく振る舞うことも心がけています。

そのうえで、経営者の役割として最も重要なのは結果を出すことです。当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、結果を出せば従業員からの期待値が上がります。私が新しいアクションを起こすたびに「社長が何かまた新しいことを始めようとしている」「あとで面白い話が聞けるかも」と期待してもらえたら、会社の中にポジティブな活気が生まれるはずです。そのため、従業員からどのように見えているかという部分は常に意識した方が良いと思います。

閉ざさずに向き合う。社員教育で伝える多様性の受け止め方

――「明確な方向性を示すこと」や「結果を出すこと」のほかに、諏訪様が経営者として大事にしていることはありますか?

諏訪:私は社長に就任してからずっと日々のコミュニケーションを大事にしています。人は言葉にしないと分からないことが多く、言葉を交わすなかで学び、そして成長していくものだと考えているためです。

例えば、苦手な人に対してなぜ苦手意識を持ってしまうかといえば、「自分だったらこうするのに」というその人の中の常識があり、そこから逸脱する時に違和感を抱いてしまうからではないでしょうか。

そのような場面で「こういう考え方もあるのか」と捉えられるようになると、相手と関わることも、自分の価値観が新しくなることも楽しめるはずです。一人ひとりに性格や個性があるので、そこから学びながら人として成長してほしいですし、閉ざしてしまうのはもったいないと思います。社員教育ではそのようなことも意識しながら、さまざまな取り組みを実施しています。

諏訪さん1

あえて「その人にしかできない仕事」をつくるメリット

――従業員のエンゲージメントを向上させるために、どのようなことをしていますか?

諏訪:業務効率化を推進する一方で、ダイヤ精機では一部の仕事に関してはあえて属人化させるという方針を取り入れています。

ベテランの従業員はもちろんですが、新しく入った方にも「その人しかできない技術」を持ってもらうようにしています。その理由としては、誰でもできる仕事ばかりを担当していては会社の中での自分の存在価値を見出せなくなり、モチベーションが低下し、結果として会社全体の業務効率も落ちると考えているためです。

一番大事なのはメリハリで、一部の仕事を属人化させることでダイヤ精機ならではの高い技術力を保ち、それ以外の部分を積極的に効率化させていきました。一般的には業務を属人化させることはリスクと捉えられがちですが、一部の業務を意図的に属人化させることにはメリットもあると考えています。

自己肯定感を支えるために「褒められる場」をつくる

――「業務の属人化」という部分以外に、従業員に長く働いてもらうために大切にしていることがありますか?

諏訪:私は従業員のモチベーションを維持するために、目標を伝えて、それに対する評価をきちんとすることを大切にしています。自分が頑張ったことを評価してもらえないと、人はすぐにモチベーションを失ってしまいます。

そこで外部の方が工場の視察に来た際には、積極的に従業員を褒めるようにしています。「この技術はこの方しかできないんですよ」と外部の方の前で伝えると、従業員の自己肯定感が上がり、自分の仕事に誇りを感じるきっかけになることがあります。

そのため、お客様を工場に呼び、従業員と直接関わる機会を積極的に設けています。お客様が現場にいらっしゃって技術を褒めてくださったり、お礼を言ってくださったりすると働いている人たちは嬉しいものですよね。

従業員のことを適切に評価し、さらに外部の方にも技術力の高さを褒めていただく機会をつくることで、ダイヤ精機で働く意味や喜びを感じてもらえるよう工夫しています。ダイヤ精機で働く意味や喜びを感じられれば、従業員は長くこの会社に勤めてくれるはずです。長く働いてくれる従業員が多くなると業務の効率は上がりますし、会社をより良くするための的確な案を出してくれるようにもなります。

業務効率化はシステム的な視点から語られることが多いですが、当社の場合は従業員が会社に長く勤め続けたいと思ってくれるところから始まると考えています。

新入社員の意見を取り入れ、材料費を40%減らすことに成功

――会社全体の業務効率化を推進するための取り組みを教えてください。

諏訪:当社ではQC発表会というものを定期的に実施しています。QC発表会とは「こうすればもっと良くなる」という部分について入社1年目の従業員が全社員に向けて発表する取り組みです。

何十年も同じ仕事をしていると、客観的な視点が段々となくなってきてしまうことも多々あります。そこで、新しく入社したフレッシュな方々の意見をヒアリングする機会を意識的に作っているのです。

――なぜ、このような形で実施しているのでしょうか?

諏訪:入社1年目の従業員が日常的なコミュニケーションの中で「この業務は無駄だと思います」「別の方法を取り入れた方が楽だと思います」と直接言葉にすると、社内の雰囲気が悪くなる可能性があります。そこで、発表会という機会を設けて意見交換をしようというのがQC発表会の目的です。

働き始めて1年という時期は、会社のことが分かってきて「こんな風になりたい」「この会社に必要とされたい」「でも、自分は認められているのだろうか?」というような色んな想いが出てくる頃です。そのタイミングで、従業員の前で発表するという役割を与えることで、本人たちにも会社に貢献できている感覚を味わってもらいたいとも考えています。

私自身が大企業に勤めていた頃は「私って本当に会社の役に立っているのかな?」と考えることも多く、自分は会社にとって必要な存在なのかが分かりませんでした。そのような経験を踏まえて、会社にとっての自分の存在価値を感じてもらえるような取り組みを実施しています。

実際にQC発表会で出た意見を採用したことで、材料費が約40%も削減できたこともありました。新しい視点を取り入れることで会社にも大きなメリットがあり、新入社員にも自信をつけてもらえるので、一石二鳥の良い取り組みだと考えています。

「世界のニッチトップ」へ。技術継承と次世代育成の挑戦

――今後の展望について教えてください。

諏訪:日本では中小企業が減り続け、ますます高齢化も進んでいますが、技術が次世代に継承されないことは避けなければなりません。日本のものづくりは世界に誇れるものだと信じているので、当社だけの話ではなく、日本全体で技術の継承に力を入れる必要があると考えています。

そこで、経営者は業務効率化を推し進めるべきポイントを的確に判断し、技術を継承してくれる次世代の若者たちを育てていく必要があります。当社としても次の世代にバトンタッチをしなければならない日が近づいてきているとも感じているので、その準備も着実に進めていきたいです。

ダイヤ精機としては「世界のニッチトップを目指す」という目標を掲げることにしました。日本のものづくりの実力をこれからも世界に示し続けるために、当社の高い技術力を武器に今後も頑張っていきたいと考えています。

(前編はこちらから)

話し手
諏訪 貴子
ダイヤ精機株式会社
代表取締役

1971年東京都生まれ。 成蹊大学工学部卒業後、ユニシアジェックス(現・日立Astemo)でエンジニアとして働く。 32歳で父の逝去に伴いダイヤ精機社長に就任。 新しい社風を構築し、育児と経営を両立させる女性経営者として活躍中。 日経BP社ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013 大賞受賞。 NEWS ZEROやN日曜討論等のメディアに多数出演し、現在、新しい資本主義実現会議の構成員として中小企業の現状と課題を伝えている。