絞り込み検索
Keyword
Category
Tag
トップ 経営・事業運営
日本企業の生産性が上がらない理由とは?3つの壁と克服の方法を解説

日本企業の生産性が上がらない理由とは?3つの壁と克服の方法を解説

  • 経営・事業運営
  • # 解説記事

最終更新日:

公開日:

バナー画像です

日本企業において、生産性向上は多くの経営者が抱える重要な課題です。生産性向上に資する便利なテクノロジーや方法論は次々にあらわれているにもかかわらず、なぜ日本企業の生産性は思うように上がらないのでしょうか。本記事では、日本企業の生産性が低迷する原因や、生産性を向上させるための具体的なポイントを紹介します。

日本の人口減少と求められる「生産性向上」

総務省統計局によると、2023年10月時点での日本の総人口は約1億2,400万人で、前年度と比べて約59万5,000人の減少でした。この人口減は一過性のものではなく、13年連続で減少し続けています。地域別で見ても、人口が増加したのは東京都のみという状況です。

参照元:統計局ホームページ/人口推計/人口推計

このように、日本の人口減少は歯止めが利かなくなっており、2050年代には1億人を割り込み、2070年には今の人口の30%減にあたる8,700万人になるという推計も出ています。また、少子高齢化に伴って、2040年までに国民の3人に1人が65歳以上の高齢者になる見込みです。

参照元:日本の将来推計人口 (令和5年推計)

人口が減少し、少子高齢化が加速すれば、国内市場の縮小や働き手の不足、社会保障費の拡大など、企業にもさまざまな悪影響が出ることは避けられません。今後の日本社会の持続的な発展のためにも、無駄を減らし、生産性を向上させることが重要です。

参照元:国土を知る / 意外と知らない日本の国土|一般財団法人国土技術研究センター

日本企業の生産性はなぜ上がらないのか

生産性を高める重要性は、多くの企業が認め、その改善に取り組んでいるはずです。それにもかかわらず、なぜ日本企業は生産性が低いと言われ続けているのでしょうか。

そもそも生産性の高さは、以下の関係式で表せます。

生産性=付加価値(アウトプット)÷投入資源(インプット)

要するに、「投入資源に対して、どれだけ多くの付加価値を生み出せたか」を示すのが生産性の基本的な考え方です。生産性が低いとは、簡単に言えば、コストパフォーマンスに難があることを意味します。日本企業における生産性の低迷は、以下の3つのような事情に起因します。

業界固有の事情にこだわりすぎる傾向がある

世の中にはさまざまな業種・業界・規模の企業が存在します。そして多くの企業が生産性向上を目指した取り組みをしていますが、自社や業界固有の事情にとらわれすぎて、自ら制約をつくってしまうケースがしばしば見受けられます。つまり、「この業界には特殊な商慣習があるから」、「我が社には独自のやり方があるから」などの考え方に縛られ、本質的な課題解決に至っていない状況です。

生産性が上がらない状況を打破するためには、生産性向上活動のフレームワークを知った上で、自社の状態を把握し、目標を立て、何をどの順番で行うのか全体像を把握する必要があります。

長時間労働の考え方が根強く残っている

日本企業には依然として、「長時間働くこと=勤勉」というポジティブなイメージが根強く残っていることも問題のひとつです。その結果、実際には同じ業務量をこなしていても、定時で帰る従業員よりも、残業をしている社員のほうが高い評価を得やすいなどのいびつな構図が生じているケースもあります。

当然ながら、生産性という観点で見た場合、同じ業務量を短時間でこなせるほうが望ましいのは明らかです。残業をすればその分の割り増し賃金が発生しますし、長時間働けば集中力が低下し、ミスも起きやすくなります。こうした認識が不十分だと、社員はだらだらと仕事をしやすくなり、生産性が低下する原因となります。

「付加価値」を創造する力が弱い

ここで言う付加価値とは、商品の生産数、売上高、顧客満足度、ブランドイメージなど、市場で競争力を持つために必要な要素を指します。
日本企業では、多くの社員が同じ業務に携わり、作業の効率的な分担が行われていないことがしばしば見られます。例えば、ダブルチェックやトリプルチェックのように、複数人で同じ作業を繰り返すプロセスです。これによりヒューマンエラーを防ぐ効果はありますが、過剰な確認作業が非効率となり、結果として作業時間が増加し、労働力が過度に使われることがあります。

このような非効率な仕組みによって、限られたリソースが消費され、同じ成果を得るために過剰な時間と労力が必要となります。その結果、創造的な業務や新しい付加価値を生み出す活動に割ける時間が減少し、生産性だけでなく付加価値を創造する力も低下してしまいます。こうした状況では、社員の業務が過多となり、結果的に作業品質の低下や競争力の弱体化につながるリスクも高まります。

生産性向上のポイント

繰り返しになりますが、「投入資源に対して、どれだけ多くの付加価値を生み出せたか」を示すのが生産性の基本的な考え方です。つまり、単純化すると、生産性を増やすためのアプローチは、主に以下の3つがあります。

  1. 投入資源(分母)の削減
  2. 付加価値(分子)の増加
  3. 1と2の両立

それぞれの詳しい内容は以下の通りです。

「投入資源」の削減を目指す

生産性向上のための第一のアプローチは、「投入資源」の削減です。その代表例としては、経費削減などのガマン型の施策が挙げられます。また、無駄な業務を洗い出し、業務の標準化をすることも有効です。業務フローを可視化し、重複する作業や不要なタスクを排除することで、限られた人員を効率的に運用できます。

さらに、RPAなどのテクノロジーを活用して定型業務を自動化したり、業務をアウトソーシングしたりするのも効果的です。こうした施策によって、人員や時間、資金などの投入資源を削減することで、相対的に生産性を上げられます

「付加価値」の増加を目指す

生産性向上は「付加価値」を増加することでも実現可能です。一般的な手段としては、営業活動の強化や新商品の開発による売上の増大、積極的な設備投資による生産量の増加などが挙げられます。

また、社員のスキルやモチベーションを高めることも効果的です。個々人のスキルやモチベーションが上がれば、働く人数や時間は同じでも、これまで以上の成果を生み出せます。スキルアップの方法としては、定期的な研修や勉強会の実施、資格の取得支援などが挙げられます。社内のコミュニケーションを活性化したり、人事評価の透明性や公正さを見直したりすることも有効です。

「投入資源」の削減と「付加価値」の増加の両立を目指す

ここまでに2つの方法を挙げましたが、生産性を上げるためにはどちらかを選べばいいというものではありません。実際には、投入資源の削減と付加価値の増加の両方をバランスよく有機的に組み合わせながら進めることが大切です。

生産性向上と言うと、経費や人員の削減といった「守り」の施策を取りがちですが、これだけでは持続的な生産性向上には限界があります。例えば経費削減に重きを置きすぎて必要な設備投資を怠れば、市場に新しい価値を提供できず、長期的には競争力を失っていくことになりかねません。

そこで重要になるのが、守りの施策で生み出した余力を活用し、今度は付加価値を増加させる「攻め」の施策に再投資することです。例えば、一度に投入資源を20%削減するのは難しくても、10%の投入資源削減と10%の付加価値増大の合わせ技をすることで、同等以上の効果を見込めます。

生産性向上のヒントとなる「リーンオペレーション」

生産性向上に継続的に取り組めている状態の理想型として「リーンオペレーション」があります。「リーン(lean)」とは、「筋肉質」や「脂肪の少ない」という意味を持つ英語です。ここから転じて、ビジネスでは「無駄をなくす」という意味で使われています。

リーンオペレーションは、業務効率化などを通して無駄を徹底的に排除しながら、付加価値の最大化を目指す考え方です。つまり、生産性向上のアプローチとしては、前項で紹介した「投入資源の削減と付加価値の増加の両立」を目指す方向性と合致します。

企業が生産性を向上し、市場競争力を高めるためには、業務に潜むムリ・ムダ・ムラを削減する改善活動と、それで生まれた余力を再投資することで付加価値を強化するサイクルを継続的に回すことが必要です。

実現に向けたフレームワーク

リーンオペレーションを実現するためには、体系化されたフレームワークに沿って進めるのが効果的です。投入資源を削減するための活動は、通常「オペレーション改善」と呼ばれ、「可視化→標準化→単純化→徹底化」という4つのステップで行われます。リーンオペレーションでは、この4つに加え、「価値強化」を行うのが特徴です。それぞれのステップで行うことは、以下の通りです。

  • 可視化:現状の業務フローや資源配分を詳細に把握し、どこに無駄があるのかを明らかにします。
  • 標準化:業務プロセスをマニュアル化し、業務の属人化や作業品質のバラつきなどを抑制します。
  • 単純化:複雑な業務や工程を削減し、できる限りシンプルな作業にまとめます。
  • 徹底化:標準化・単純化したプロセスを組織全体に定着させ、継続的な運用を徹底します。
  • 価値強化:削減された余力を使って、さらなる付加価値を創出するための施策に投資します。

価値強化の具体例としては、新しい技術開発や営業・マーケティング活動の強化などが挙げられます。このフレームワークを基に段階的な改善を行い、継続的な生産性向上を目指すことで、組織全体が効率的かつ価値のあるオペレーションを維持できるようになります。

あわせて読みたい
リーンオペレーションとは?実践に向けた5つのステップを紹介

まとめ

日本企業の生産性が低い理由は、長時間労働をポジティブに捉える風潮や付加価値を生み出す力の弱さ、自社や業界固有の事情にこだわりすぎる性質などが挙げられます。これらの課題を解決するためには、生産性向上に役立つリーンオペレーションのフレームワークに基づいて、投入資源の削減と付加価値の増加にバランスよく取り組むことが大切です。
リンオペ度診断を受ける