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深刻化する人材・労働力の不足、その背景と解決への道筋

深刻化する人材・労働力の不足、その背景と解決への道筋

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人材不足・労働力不足は、多くの企業が直面している大きな課題です。少子高齢化が進行する中、この問題は今後ますます深刻になっていきます。そこで本記事では、人材不足・労働力不足の現状とその原因をわかりやすく解説すると同時に、この課題を解決するために有効なアプローチを紹介します。

技術革新が進む一方で、変わらない人材不足・労働力不足問題

2008年のiPhone登場を皮切りに、クラウド技術、ビッグデータ、IoT、RPA、ChatGPTの登場・普及など、IT技術は急速に進歩してきました。それに伴い、データや情報を収集・処理・活用する方法は急速に高度化しています。データの収集・処理・活用とは、具体的に以下のことを指します。

  • 収集:大量の情報をリアルタイムで収集・計測し、一元的に蓄積すること
  • 処理:蓄積された情報を効率的に処理・演算・分析し、有用なインサイトや成果を導くこと
  • 活用:処理された情報を適時スムーズに業務に活かすこと

このように情報処理技術が進歩したことで、ビジネスや業務のあり方もまた近年大きく変化してきました。しかし、「慢性的な人材不足」「若手社員の早期離職」「採用・教育体制の不備」などの本質的な課題を、企業はいまだに数多く抱えています。

業界別データで見る日本の人材不足・労働力不足の現状

そもそも人材不足・労働力不足とは、企業が業務を遂行するために必要な人員を十分に確保できず、円滑な業務運営が難しい状態を指します。厚生労働省の「労働経済動向調査(令和6年5月)」によれば、現在の日本においては、ほぼ全ての産業で人材不足・労働力不足が深刻化している状況です。

特に正社員の不足が深刻な業界としては、「建設業」「運輸業・郵便業」「情報通信業」「医療・福祉」が挙げられます。これらの業界は、しばしば厳しい労働環境が課題とされる点が共通しています。また、パートタイム労働者に関しては、「宿泊業・飲食サービス業」や「生活関連サービス業・娯楽業」の不足が顕著です。これらの業界の労働力不足は、コロナ禍で削減した人材が戻ってこないことも要因として挙げられます。

業界・業種とは別に、人材や労働力不足は企業規模によっても大きく左右されます。中小企業は、大企業に比べて採用力や人材育成体制が弱いこともあり、人材や労働力不足が深刻化しがちで、物流業を中心に人手不足倒産も増えている状況です。

参照:労働経済動向調査(令和6年5月)の概況|厚生労働省

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人材不足・労働力不足の主な原因

日本で人材不足・労働力不足が続いている原因としては、「少子高齢化」「需給のミスマッチ」「DXの遅れ」など複数の背景が挙げられます。それぞれの概要は以下の通りです。

少子高齢化

少子高齢化は、日本社会全体にわたって人材不足・労働力不足を生み出している根本的な要因のひとつです。厚生労働省によると、2040年には65歳以上の高齢者層が全人口の35%以上、2070年には39%に達すると予測されています。総人口に関しても、2070年代には9,000万人を割り込む見込みです。

総務省の人口推計によると、2023年10時点で人口減は前年比で59万5000人にも及んでおり、人口減少は歯止めが利かなくなっています。若年層の労働力が都市部に集中する傾向があるのも相まって、特に地方の人口減は非常に顕著であり、地域経済の存続が危ぶまれている状況です。

少子高齢化・人口減少の影響は、単純な労働力不足のみならず、国内市場の縮小、医療・介護リソースの圧迫や社会保障費の負担増など多方面にわたります。

参照:我が国の人口について|厚生労働省

参照:人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)|総務省統計局

需給のミスマッチ

日本における人材不足・労働力不足の要因のひとつとして、業界・業種ごとの需給のミスマッチも挙げられます。需給のミスマッチとは端的に言えば、比較的人手に余裕がある業界・業種に求職者が集まり、慢性的な人手不足が続いている業界・業種は忌避されるという状態を指します。

例えば、先述のように建設業や物流業、介護業などは、人手不足が特に深刻な業界です。これらの業界は、肉体労働や夜勤・休日出勤などが多く、しばしば労働環境の厳しさが指摘されています。そのため、これらの業界は求職者から避けられやすく、その結果、ますます人手不足が進み、さらに労働環境が悪化するという負のスパイラルに陥りがちです。

こうした状態を改善するためには、給与や待遇の向上、柔軟な働き方の導入などが求められます。一方、すでに人手不足に直面している企業にとっては、これらの改善策を実行する余力が乏しいという現実もあります。

DXの遅れ

デジタル技術による変革、いわゆるDXが遅れていることも、人材不足・労働力不足を加速させる原因のひとつです。多くの日本企業は、アナログな業務プロセスや古い業務システム(レガシーシステム)を使い続けており、業務の効率化や自動化が進んでいない状況が見られます。特に中小企業では、DXを推進するためのIT人材やノウハウ、資金などのリソースが不足していることもあり、DXが遅れがちです。社内のIT人材の不足は、ベンダー企業に技術者が集まりやすいという日本の労働市場の構造的問題でもあります。

DXの遅れている企業は、アナログな業務や属人的な業務が多く、従業員一人ひとりにかかる負担が大きくなりがちです。このような非効率な働き方では、限られた労働力を効率的に運用できず、離職者も増えやすいため、人材や労働力の不足がさらに深刻化します。DXの遅れは個々の業務の効率性だけでなく、データ活用の精度の低さなど経営レベルでも悪影響を与える問題です。

企業が抱える人材不足・労働力不足に関する共通課題

人材不足・労働力不足に直面している企業には、共通して解決すべき課題が存在します。以下に、その具体的な内容を解説します。

労働環境の改善

人材を呼び寄せ、定着させるためには労働環境の改善が必要です。先述のように、多くの企業では、DXが進まずアナログな仕事の進め方が残っており、これが生産性の低下を招いています。特に、業務のルールやプロセスが明確に定まっていないと、業務の属人化が進み、特定の従業員に負担が集中しがちです。属人化は業務の透明性を失わせ、ミスや不正、混乱などを招く原因にもなります。

十分に整備されておらず、非効率的な労働環境は、従業員の負担や不満を増やす大きな要因です。特に長時間労働が蔓延していたり、休暇が取得しにくかったりする職場環境では、適切なワークライフバランスを保てず、従業員が離職しやすくなります。そのため、人材や労働力不足に対応するためには、労働環境を見直し、業務効率化や柔軟な働き方の推進など、働き方改革を行うことが重要です。

従業員一人当たりの業務量の多さ

非効率な業務プロセスとも密接に関係しますが、各従業員が抱える業務量が多すぎる点も多くの日本企業に共通する問題です。日本企業では、一人の従業員に複数の業務や役割を与えることが多く、ひとつの業務に複数人が携わることも珍しくありません。

しかし、過度なマルチタスクを課すことは、従業員の負担を過大にし、集中力の分散や作業効率の悪化をもたらす原因です。これによって余裕がなくなれば、従業員から新しいことに挑戦する機会やモチベーションを奪うことにもつながります。従業員から成長の意欲や創意工夫が失われれば、企業全体の成長やイノベーションは期待できず、ますます人材が離れていきます。そのため、人材や業務を最適配分できる体制の構築も、人材・労働力不足に苦しむ企業の大きな課題です。

現場の実情を把握していない管理体制

多くの企業が犯しがちな過ちのひとつに、経営陣や管理者が現場の実情を十分に把握せず、無理な目標設定や対応を求めてしまうことも挙げられます。現場の状況を考慮せずに「限られた資源でアウトプットを増やす」といった非現実的な目標を押し付けることは、従業員をいたずらに疲弊させ、会社への不満や不信を招く原因です。

また、本部からの指示が現場の実態に合っていない場合、現場は適切に対応できず、混乱やミスが生じやすくなります。このような状況にもかかわらず、現場を知らないマネジメント層は問題が生じていること自体に気づかないか、施策がうまくいっていない原因を現場の能力不足や怠慢のせいにしがちです。マネジメント層と現場のギャップを埋めるためには、全社的なコミュニケーションや情報共有の活性化などが求められます。

人材不足・労働力不足にアプローチできる3つの提案

ここまで解説してきたことを踏まえると、日本企業が直面している人材不足・労働力不足に対応するためには、以下の3つのアプローチに取り組むことが重要です。

DXによる労働環境の改善

まず有効なのは、DXによる労働環境の改善です。DXによる業務の自動化や効率化を図ることで、従業員の業務負担を減らすと共に、多くの業務を迅速に遂行できるようになります。例えば、RPAを導入すれば、定型的なバックオフィス業務を自動化し、業務負担を軽減可能です。システムは人間と違って疲れを知らず、一定のアウトプットを生み出せるので、ヒューマンエラーの削減や品質の均一化にも役立ちます。

また、クラウド技術を活用することで、情報管理体制の強化やテレワーク環境の整備を進めることも可能です。従業員が柔軟に働きやすい環境を整えることで、採用力の強化や定着率の向上が期待できます。

業務負担の見直しとタスク管理の最適化

従業員にかかる過大な業務負担を改善するには、現状を把握し、タスク管理を最適化する取り組みも必要です。まずは現状の業務プロセスを詳細に分析し、どこに過剰な負担がかかっているのかを把握することから始めましょう。業務の洗い出しを行うことで、無駄な業務を削減し、スムーズに業務効率化を進めやすくなります。

その後、タスク管理を見直し、優先順位をつけて過不足なく業務を分配できるようにしましょう。優先度の低いタスクや単純なタスクは、DXによる自動化やアウトソーシングすることも検討する価値があります。タスク管理を最適化するには、各業務の進捗状況などを継続的に把握・共有できる体制の構築も重要です。タスク管理自体の負担を軽減するために、タスク管理ツールなどを活用することも検討しましょう。

現場とのコミュニケーション強化と適切な管理体制の構築

どのような施策を行うにせよ、現場の実情を知らずに有効な手を打つことは困難です。そのため、現場とのコミュニケーションや情報共有を強化し、適切な管理体制を構築しましょう。

例えば、業務フローの可視化や見直しをする際には、現場の担当者の意見も積極的に取り入れることで、管理者目線では見落としがちな問題点や改善策が発見できることがあります。また、人材不足を直接的に解消するために採用を強化する場合にも、現場がどのような人材を求めているのか確認することが大切です。

現場とコミュニケーションを取る方法としては、定期的なミーティングや1on1の面談などが挙げられます。また、生産性の向上を目指すためには、個々の従業員のスキルや適性などを把握した上で、最適に人材を配置することも重要です。

まとめ

日本企業が人材不足・労働力不足に悩まされている要因としては、少子高齢化という社会的背景のほか、労働環境の厳しさや業務量の多さなどその業界・業種や企業固有の課題が挙げられます。こうした状況を改善するためには、DXや管理体制の見直しなどを通して生産性を向上することが重要です。