
パートナーの熱量を最大化する3ステップと、陥りがちな落とし穴
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前編では、パートナービジネスの役割がどう変わったのか、そして「売れる型」の発見と最初の成功者の生み出し方について伺いました。
しかし、最初の成功者を生み出した後も、その熱量をパートナー組織全体へ広げ、継続的な成果につなげていくには別の難しさがあります。
後編では、法人営業やBtoBマーケティング、新規事業支援のコンサルティングを提供する株式会社才流のシニアコンサルタント・桂川誠氏に、パートナーの熱量を組織へ広げる運用と、メーカー・パートナー双方が陥りやすい落とし穴、そして経営者が押さえるべき考え方について伺いました。
目次
パートナーの熱量に火をつけ、広げ、絶やさない方法
――最初の成功者を生み出した後、パートナーの熱量をどう高めていけばよいのでしょうか。
株式会社才流 シニアコンサルタント 桂川誠氏(以下、桂川):「火をつける」「火を広げる」「火を絶やさない」という3段階で考えると整理しやすいです。
「火をつける」はパートナー社内で担当者を見つけること、「火を広げる」はその成功体験をパートナー企業全体へ広げること、「火を絶やさない」はその熱量を維持し続けることです。
――まず「火をつける」とは、具体的に何をするのでしょうか。
桂川:パートナー社内で、自社商材に関心を持ってくれる担当者を見つけることです。勉強会を開くと、必ず熱心に質問してくれる人が1割ほどいます。その中でも特に熱心な人と1on1を重ね、距離を縮めていきます。
相手が何に困っていて、どんな顧客を抱え、日常的にどんな提案をしているのかをヒアリングします。そのうえで、前編で紹介した「PPF(プロダクト・パートナー・フィット)」を担当者個人のレベルまで落とし込んでいくのです。この商材を提案することで担当者個人の数字や評価、キャリアがどう変わるのかを具体的に伝えること。そこまで踏み込んで初めて、担当者の中に自社商材への熱量が生まれてきます。
――「火を広げる」ためには何をすればよいのでしょうか。
桂川:「火をつける」段階で見つけた担当者に、まず最初の受注体験を積んでもらいます。受注が生まれたら、パートナー社内で事例共有会を開き、受注した担当者本人に語ってもらいます。このとき、メーカーが講師として前に出すぎないことが大切です。メーカーの話はポジショントークに聞こえかねませんが、同僚の売れた話は素直に届きます。売ってくれた担当者にスポットライトを当て、ヒーローにすることで、同僚が「あの人が売れたなら自分にもできる」と動き始める状態を作ります。
同時に、その担当者の上司を味方につけることも重要です。成功事例が生まれたタイミングでメーカーの担当者からパートナー企業のマネジメント層にその成果を届け、「この商材に注力する」とパートナー企業内に号令をかけてもらいます。現場の熱量と組織の意思決定が揃って初めて、パートナー企業全体に火が広がります。
――「火を絶やさない」ためにはどんな工夫が必要でしょうか。
桂川:いくつかあります。まず、接触頻度を保つことです。パートナーの頭の中に自社商材を置き続けてもらうには、定期的に顔を出すしかありません。担当者の異動で関係が途絶えないよう、経営層同士や現場同士など、パートナー企業との接点を複数持っておくことも大切です。
その際、オフラインとオンラインの使い分けが鍵を握ります。特に関係を深めるべき場面ではオフラインが圧倒的に有効です。例えば最初のキックオフだけオフラインで行うと、その後のオンラインでのやり取りが驚くほどスムーズになります。毎回オフラインである必要はありませんが、ここぞという場面に集中投資することが重要です。
また、弊社の調査によると、パートナーがメーカーに求める条件として最も多く挙げたのは「営業担当者のレスポンスの早さ(44%)」でした。パートナーの営業担当者は多くの顧客から質問を受けており、早く返したいと考えています。メーカーからの返答が遅れれば、パートナーの業務が止まってしまいます。案件の話だけでなく、パートナーの経営課題や営業戦略まで踏み込んで「相談相手」になれるかどうかが、長期的な関係の土台になります。

出典:株式会社才流 調査結果|パートナーがメーカーに求めること
メーカーとパートナー、それぞれが陥りやすい落とし穴
――パートナービジネスを進めるうえで、メーカーが陥りやすい落とし穴はありますか
桂川:メーカー側の落とし穴は2つあります。
1つ目は、パートナーの数を追ってしまうことです。前編でもお伝えしましたが、社数だけが積み上がり商談が生まれない状態に陥りやすいので注意が必要です。
2つ目は、契約前にターゲットと役割分担を詰め切らないことです。うまくいっているメーカーは、契約前の段階でどの顧客を狙い、どう役割を分担するかまですり合わせています。そこまですり合わせておくことで、契約後に現場が止まらずに動き続けられます。
――パートナー側が陥りやすい落とし穴はありますか。
桂川:手の内を見せず、情報を隠してしまうことです。弊社の調査では、取引金額が伸びている企業の担当者ほど、メーカーに対して情報を開示し、関係構築に投資していることがわかっています。
例えば、月に100件売るが情報を一切共有しないA社と、50件ながら商談の状況や今後の戦略をオープンにして積極的に動くB社があったとします。メーカーからすれば、B社のほうを応援したくなるはずです。手厚い支援やインセンティブも、B社に集まりやすくなる。情報をオープンにすることが、結果として自分たちに返ってくるのです。

パートナービジネスに取り組む経営者へ
――パートナービジネスの立ち上げや強化を検討している経営者の方へ、メッセージをお願いします。
桂川:一足飛びに成果が出るような魔法の杖はありません。20年以上この業界に携わっていますが、それは実感しています。
だからこそ重要なのは、「何を自社でやり、何をパートナーと一緒にやるか」を決めることです。導入支援やカスタマーサクセスの一部をパートナーに委ねるといったように、その仕分けそのものが経営の意思決定になります。
どれだけAIが進化しても、パートナービジネスは人と人との信頼の上に成り立つビジネスです。売れる型を作り、最初の成功者を生み出し、その成功を組織全体へ広げていく。この地道な積み重ねこそが、パートナービジネスを一過性の施策で終わらせず、事業を支える仕組みとして定着させる唯一の道だと思っています。
(前編はこちらから)
取材・文:小町ヒロキ

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