
パートナービジネスの役割はこう変わった。成果を生むパートナー戦略と実践ステップ
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メーカーが販売や導入を担う外部パートナーと連携して自社の商品・サービスを顧客に提供する仕組みである「パートナービジネス」。長年にわたり定着してきた取引の形ですが、今その役割は大きく変わっています。
ただ、現場では「契約したのに動いてくれない」と悩むメーカーや「商材はいいが売り方が分からない」と手探りするパートナーが少なくありません。その背景にはメーカーの一方的な期待や思い込みがあるといいます。
そこで今回は、法人営業やBtoBマーケティング、新規事業支援のコンサルティングを提供する株式会社才流のシニアコンサルタントであり、『チャネルを広げBtoB事業をスケールさせる パートナービジネス戦略 基本と実践』の著者でもある桂川誠氏に、パートナービジネスが求められる背景や役割の変化、成功に導く実践ステップについてお話を伺いました。前編では、パートナービジネスの位置づけの変化と「売れる型」の作り方・最初の成功者の生み出し方について深掘りします。
目次
パートナービジネスとは何か。なぜ今、その役割が変わっているのか
――まず、パートナービジネスとは何かを教えてください。
株式会社才流 シニアコンサルタント 桂川誠氏(以下、桂川):パートナービジネスとは、商品・サービスの開発や製造を行うメーカーが、第三者であるパートナーと協業して、自社の商品・サービスを顧客に提供する仕組みです。
代理店やSIer、リセラーなどのパートナーがメーカーと顧客の間に入り、商品・サービスの販売から導入・保守まで幅広い役割を担います。こうした商流は、日本のビジネスに深く根付いています。
――そのパートナービジネスですが、近年その役割が変わってきたと伺いました。以前と今では何が違うのでしょうか。
桂川:はい、大きく変わっています。以前はパートナーへの期待は販路拡大が中心で、メーカーはパートナーに商材を渡して販売を任せるだけの関係が一般的でした。2010年代前半までは、メーカーは直販ではリーチしきれない市場への販路を、パートナーのネットワークで広げていました。いわば、営業力を足し算で広げることが主な目的だったのです。
ところが、顧客に求められる支援が広がり、メーカーだけでは対応することが難しくなってきました。サブスクリプションモデルやSaaSの普及もその一因で、受注した後も、導入から活用定着、カスタマーサクセスまで対応することが求められるようになっています。つまり、売って終わりにならないケースが増えているのです。
これらすべてをメーカーだけで担うには限界があります。そこでパートナーと役割を分担するわけですが、それだけではありません。メーカーの製品力や技術とパートナーの顧客接点や業界知識、エンジニアのリソースなどを組み合わせることで、どちらか1社では届けられない価値を顧客へ提供できるようにもなります。「売ってもらう」から「一緒に価値を届ける」への転換です。
私はこれを「営業の足し算から価値の掛け算へ」と表現しています。「代理店」「特約店」ではなく「パートナー」という呼び方が広がっているのも、こうした変化の表れです。

自社商材をパートナーに扱ってもらうための 「PPF」と「三益トライアングル」
――そうしたパートナーとの関係を築くうえで、まず重要になる考え方を教えてください。
桂川:パートナーが自社の商材を扱う理由を設計することが最優先事項です。弊社ではこれを「PPF(プロダクト・パートナー・フィット)」と呼んでいます。メーカーの商品・サービスとパートナーのビジネスモデルが噛み合い、パートナーが「この商材を担ぐ意味がある」と納得できる状態のことです。
この「担ぐ意味」は、3つの切り口に整理できます。「価値が高まる」「儲かる」「売りやすい」です。
「価値が高まる」は、既存サービスに付加価値を加えて独自のソリューションを作れるなど、扱うことでパートナー自身の競争力が高まること。「儲かる」は継続的な収益が見込めるマージン設計や、導入支援から保守・運用まで収益を得られる仕組みがあること。「売りやすい」は導入や運用の負荷が少なく、パートナーが顧客に説明しやすい商材かどうかです。
3つすべてを満たす必要はありません。パートナーの特性によって刺さる切り口は変わります。例えばSIerなら「価値が高まる」、卸売や代理販売が中心のパートナーなら「売りやすい」、継続的な数字を求めるパートナーなら「儲かる」というように、相手に合わせて軸を見極めることが大切です。

出典:株式会社才流 パートナービジネス戦略の強化支援
――PPFを考えるうえで、メーカーが陥りやすい失敗はありますか。
桂川:顧客にとって良い商品であれば、パートナーも喜んで扱ってくれると思い込んでしまうことです。実際には、顧客にとって良い商品であることと、パートナーにとって扱う価値があることは別の話です。
パートナーが見ているのは利益だけではありません。自社の付加価値が高まるか、自分たちの戦略を補えるか。そこに扱う理由がなければ、動いてはくれません。
ただ、パートナーにとって扱う価値を考えるだけでも十分ではありません。価値の流れを、メーカー・パートナー・顧客の三者で見渡す必要があります。
顧客への価値は、たいていのメーカーがちゃんと考えています。抜け落ちやすいのは、残りの2つです。パートナーから顧客への価値。その顧客は、なぜこのパートナーから買うのか。そして、メーカーからパートナーへの価値。パートナーにとって、この商材を扱う意味は何か。
とくに後者で気をつけたいのが、パートナーのメリットを手数料だけで考えてしまうことです。小遣い稼ぎ程度の手数料では、パートナーは本気になりません。必要なのは、パートナー自身のビジネスとのシナジーです。自社の受注が増える、顧客との関係が深まる。そんな手応えが見えてはじめて、パートナーは動きます。
顧客・メーカー・パートナー。この三者がそれぞれ得をする形を、私は「三益トライアングル」と呼んでいます。近江商人の三方よしと同じ発想です。どれか1つでも欠けると、パートナーは動かず、顧客は買わず、メーカーにも何も残りません。全員が報われる設計を描く。それが、パートナービジネスを成功させる土台です。

出典:株式会社才流 パートナービジネス戦略の強化支援
直販の「売れる型」を言語化し、パートナーに展開する
――PPFと三益トライアングルの設計ができたら、次はどう動けばよいのでしょうか。
桂川:まず大前提として、直販で売れないものは、パートナー経由でも売れません。これは私が20年以上この業界に携わってきたなかでの最大の教訓です。「直販が伸び悩んでいるからパートナーに活路を見出したい」というメーカーからのご相談は非常に多いのですが、順番が逆です。
直販で売れることを確認してからパートナービジネスへ展開する。この順番を間違えてはいけません。
そのうえで、弊社ではこの流れを「売れる型の発見」「最初の成功者の創出」「成功パターンの仕組み化」「パートナー網の拡大」「パートナーとの協業モデルの構築」という5ステップで整理しています。特に重要なのが最初の2ステップで、ここを超えられるかどうかで成否はほぼ決まります。

出典:株式会社才流 パートナービジネス戦略の強化支援
――最初のステップである「売れる型の発見」について詳しく教えてください。
桂川:「売れる型」とは、どのような顧客に、どのような価値を、どのように伝えると受注できるかのパターンのことです。
パートナーの営業担当者は10も20もの商材を抱えており、売り方を一つひとつ自分で考える余裕はありません。だからこそ、メーカーが売れる型を言語化して渡す必要があります。しかし多くのメーカーでは、その型がトップセールスの頭のなかに留まったままで、組織として共有できていません。そのため、最初にやるべきことが「売れる型の発見」です。
発見するには、受注案件をセグメントして勝率の高い領域を見つけ、「なぜその領域で勝てているのか」を掘り下げていきます。顧客が何を比較基準にして、最終的に何が決め手になったのかを丁寧に紐解くことで、再現性のあるパターンが見えてきます。
こうして言語化した型は、パートナーが実際に使える形に落とし込む必要があります。パートナーが覚えきれない商材は提案されません。顧客に価値を伝えるためのひと言を、パートナーが自然に口にできるか。そこが、型が現場で使われるかを左右します。
例えば、ある複合機メーカーはパートナーに「印刷1枚5円ですよ」というひと言を渡していました。短くて覚えやすい。だからパートナーの営業担当者の口から自然に出てきます。型がここまで研ぎ澄まされて、はじめて現場で使われるのです。
契約後の90日が勝負。最初の成功者を生み出すことが鍵
――次のステップ、最初の成功者の創出とは何でしょうか。
桂川:最初の成功者とは、パートナー社内で初めて自社商材の受注を作り上げた営業担当者のことです。この担当者が生まれると、パートナーの社内に変化が起きます。
同僚が「あの人が売れたなら自分にもできる」と動き始め、組織全体にムーブメントが広がっていきます。
逆に言えば、最初の1人を作れないまま時間が経つと、パートナー社内の熱は冷め、その後は動かなくなります。だからこそ、この担当者を生み出せるかどうかで、その後がまったく変わります。
この担当者を見つけるには、まずパートナー社内で積極的に動いてくれる協力者を探します。例えば勉強会で、具体的な質問を次々にぶつけてくる営業担当者がいます。その人と組んで、最初の受注を目指します。
顧客への同行、共同提案、案件対応まで伴走します。ゴールは、その担当者に最初の受注を届けること。つまずかないよう細かくフォローし、成功体験を一緒に作ります。
――伴走の目安として、90日が鍵になると伺いました。
桂川:明確な根拠がある数字ではありません。20年の現場経験で得た感覚値です。ただ、勝負どころははっきりしています。それが最初の約90日、つまりパートナーと取り組みを合意してからの3カ月です。相手の熱が高く、冷めないうちに、1人目の成功者を作ってしまう。一度冷めると、温め直すのは骨が折れます。ゼロからではなく、マイナスからのやり直しになるからです。
パートナーの熱が冷めるのは、こんなときです。顧客を5件、10件と紹介しても、案件にならない。すると担当者は、この商品は売れないのでは、と思い始める。だから、最初の1件を生み出すために、メーカーは短期集中で伴走します。売れる型を作り、最初の成功者を生み出す。この2つが、パートナービジネスの土台になります。
後編では、パートナーの熱量を上げる運用サイクルと、メーカー・パートナー双方が陥りやすい「落とし穴」について掘り下げます。
(後編はこちらから)
取材・文:小町ヒロキ






