絞り込み検索
Keyword
Category
Tag
トップ 人材育成・採用
DX人材育成を成功させるステップと実践事例について詳しく解説

DX人材育成を成功させるステップと実践事例について詳しく解説

  • 人材育成・採用
  • # 解説記事

最終更新日:

公開日:

バナー画像です

デジタル技術の進化により、企業の競争環境は大きく変化しています。多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み始めていますが、「DXを推進できる人材がいない」「育成方法が分からない」といった課題に直面しているケースは少なくありません。

DXを成功させるうえで欠かせないのが、ITスキルと業務理解の両方を備えたDX人材の育成です。しかし、単にデジタル研修を実施するだけでは、実務に活かせるDX人材は育ちません。重要なのは、自社の目的に合った人材像を定義し、段階的かつ実践的に育成していくことです。

本記事では、DX人材育成の重要性や日本企業の現状を整理したうえで、育成を成功させる具体的なステップや実践事例を分かりやすく解説します。これからDX人材育成に取り組む企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

DX人材育成の重要性と現状

企業がDXに取り組む動きは広がっていますが、「思うように成果が出ていない」「現場が変わらない」と感じている企業も少なくありません。その背景には、ツールやシステムの導入だけが先行し、DXを実行・定着させる人材が不足しているという課題があります。

DXを成功させるためには、まずDX人材とはどのような存在なのかを正しく理解し、その育成がなぜ重要なのかを整理することが欠かせません。ここでは、DX人材の基本から「注目される背景」などについて深掘りします。

DX人材とは何か

そもそもDX人材とは、単にITやデジタル技術に詳しい人材を指す言葉ではありません。業務プロセスや顧客体験を理解したうえで、データやデジタル技術を活用し、業務改善や価値創出につなげられる人材を指します。

たとえば、システムの導入目的を整理し、現場の課題に即した活用方法を設計できる人材や、部門を横断してDXを推進できる人材は、DX人材の代表例です。重要なのは「技術」そのものよりも、「技術を使って何を変えるのかを考え実行できる力」にあります。

そのため、DX人材にはITスキルに加え、業務理解力、課題設定力、コミュニケーション力など、複合的なスキルが求められます。

DX人材育成が注目される背景

DX人材育成が注目されている背景には、急速なデジタル化と人材市場の変化があります。クラウド、AI、データ分析といった技術は、もはや一部のIT企業だけのものではなく、あらゆる業種・業界で活用が進んでいます。

一方で、DXを外部ベンダー任せにしているだけでは、自社にノウハウが蓄積されず、継続的な改善や新規施策につながりません。その結果、「システムは導入したが、業務は変わらなかった」という失敗に陥るケースも多く見られます。

こうした課題を解決するため、自社の中でDXを理解し、推進できる人材を育てる必要性が高まり、DX人材育成への注目が集まっています。

日本企業におけるDX人材の不足

日本企業では、DX人材の不足が深刻な課題となっています。その理由の一つが、これまでの人材育成が専門分業型で進められてきた点にあります。IT部門と業務部門が分断され、双方をつなぐ役割を担う人材が育ちにくい環境が続いてきました。

また、DX人材を中途採用で確保しようとしても、需要に対して供給が追いついておらず、採用コストが高騰しています。その結果、「採用が難しいなら、社内で育てるしかない」という状況に直面している企業も多いでしょう。

こうした背景から、日本企業においてはDX人材を“外から連れてくる”のではなく、“中で育てる”視点が不可欠となっており、DX人材育成は経営課題の一つとして位置づけられています。

DX人材育成のメリット

DX人材育成は、多くの企業から「時間とコストがかかる」と敬遠されがちです。しかし、DX人材を社内で育成することには、外部に依存したDX推進では得られない大きなメリットがあります。単なるスキル習得にとどまらず、DXを“自社の力”として根付かせることができる点が最大の特徴です。

ここでは、DX人材育成によって企業が得られる代表的なメリットを3つの観点から解説します。

メリット(1)自社のニーズに合ったDX推進ができる

DX人材を自社で育成する最大のメリットは、自社の業務や課題に即したDX推進が可能になる点です。外部ベンダーやコンサルタントは、汎用的な手法や成功事例を提示することはできますが、個別企業の業務の細部まで把握しているとは限りません。

一方、社内で育成されたDX人材は、自社の業務プロセスや現場の実情を深く理解しています。そのため、「どこにムダがあるのか」「どの業務をデジタル化すべきか」といった判断を、現実的な視点で行うことができます。その結果、目的の曖昧な施策や形だけのシステム導入を避け、成果につながるDXを推進できます。

メリット(2)社内の一貫性を保てる

DXを外部主導で進める場合、部門ごとに異なるシステムやツールが導入され、社内の一貫性が失われるケースも少なくありません。その結果、データが分断されたり、業務フローが複雑化したりするリスクが高まります。

DX人材が社内に存在すれば、全社的な視点からDX施策を整理し、部門間の調整役を担うことができます。IT部門と現場部門をつなぐ橋渡し役として機能することで、DXの方向性がブレにくくなります。

このように、DX人材育成は単なるスキル強化ではなく、組織全体の整合性を保ちながらDXを推進する基盤づくりにもつながります。

メリット(3)リスキリングの環境を構築できる

DX人材育成に取り組むことは、DX人材だけでなく、組織全体のリスキリングを促進する効果もあります。DXをきっかけに、データ活用やデジタルツールへの理解が社内に広がることで、従業員の学習意欲が高まりやすくなります。

また、DX人材が社内にいることで、外部研修で学んだ内容を現場に落とし込みやすくなり、学びが「点」で終わらず「線」として定着されていきます。これは、単発の研修では得られない大きなメリットです。

結果として、DX人材育成は一部の専門人材を育てる施策ではなく、継続的に学び続ける組織文化をつくる取り組みへと発展していきます。

DX人材育成の課題

DX人材育成には多くのメリットがある一方で、実際に取り組もうとすると、さまざまな壁に直面します。「研修は実施しているが成果が見えない」「DX人材を育てているつもりが、業務が変わらない」と感じている企業も少なくありません。

こうした状況の背景には、DX人材育成特有の課題があります。ここでは、多くの日本企業が共通して抱えやすい3つの課題を整理します。

課題(1)育成方針の不明確さ

DX人材育成で最も多い課題が、育成方針が曖昧なまま進められていることです。「とりあえずDX研修を受けさせる」「ITスキルを学ばせればDX人材になる」といった発想では、育成のゴールが見えません。

DX人材と一口に言っても、求められる役割は企業ごとに異なります。業務改善を主導する人材が必要なのか、新規事業を立ち上げる人材が必要なのかによって、身につけるべきスキルや経験は大きく変わります。

育成方針が定まっていないと、研修内容と現場の期待がかみ合わず、「学習が実務に直結しない」形骸化した状態に陥りやすくなります。

課題(2)実務に結びつかない育成

DX人材育成がうまくいかない理由として、学習内容が実務と切り離されている点も挙げられます。座学中心の研修や汎用的なDX講座を受講しても、現場でどう活かせばよいのか分からないまま終わってしまうケースは少なくありません。

特に、業務の忙しさを理由に、学んだ内容を試す機会が与えられないと、知識は定着せず、育成効果も見えにくくなります。その結果、「DX人材育成は効果がない」という誤った認識が社内に広がってしまいます。

DX人材育成では、実務とセットで学ばせる仕組みを用意しなければ、形骸化を避けることはできません。

課題(3)新規ビジネスへの発展が難しい

DX人材を育成しても、既存業務の効率化にとどまり、新規ビジネスにつながらないという課題もよく見られます。業務改善は重要な成果ですが、それだけではDXの本来の価値を十分に引き出しているとは言えません。

その背景には、挑戦を後押しする評価制度や意思決定プロセスが整っていないことがあります。DX人材がアイデアを持っていても、「前例がない」「リスクが高い」といった理由で却下されてしまえば、挑戦する意欲は失われてしまうでしょう。

DX人材育成を新規ビジネスへと発展させるためには、育成と同時に組織の受け皿を整える視点が欠かせません。

DX人材育成を成功させる4ステップ

DX人材育成を成功させる企業には共通点があります。それは、DX人材育成を思いつきや研修任せで進めるのではなく、明確なステップに沿って段階的に取り組んでいることです。
逆に、成果が出ない企業の多くは「研修を受けさせること」が目的化してしまい、育成の全体設計が欠けています。

ここでは、DX人材育成を実務につなげるために欠かせない4つのステップを順に解説します。どのステップも省略できない重要な工程であり、順番どおりに進めることが成功の近道ですので参考にしてください。

ステップ1:目的の明確化

DX人材育成の第一歩は、「なぜDX人材を育てるのか」という目的を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、育成の方向性が定まらず、研修内容や評価基準もぶれてしまいます。
たとえば、目的は以下のように企業ごとに異なります。

  • 業務効率化・コスト削減を進めたい
  • データを活用した意思決定を強化したい
  • 将来的な新規ビジネス創出につなげたい

重要なのは、「DXを進めたい」という抽象的な表現で終わらせず、経営課題や事業戦略と結びつけて言語化することです。この目的が、後続の人材要件や育成内容の判断軸になります。

ステップ2:人材要件の定義

目的が定まったら、次に行うべきはDX人材の人材要件を定義することです。
ここでいう人材要件とは、「どのような役割を担い、何ができる人材なのか」を具体的に示したものです。

たとえば、DX人材といっても以下のようにタイプが分かれます。

  • 現場の業務改善を主導するDX推進人材
  • データ分析やIT活用を専門とする技術寄りの人材
  • 部門横断でプロジェクトを推進する企画・調整型の人材

すべてを一人に求める必要はありません。自社の目的に照らし、どの役割のDX人材が必要なのかを明確にすることが重要です。この工程を省いてしまうと、「ターゲットが不明確な、実効性の乏しい育成」に陥りかねません。

ステップ3:育成プログラムの設計

人材要件が定まったら、ようやく育成プログラムの設計に入ります。ここで注意すべきなのは、「研修ありき」で考えないことです。

育成プログラムは、以下の要素を組み合わせて設計するのが効果的です。

  • 基礎知識を学ぶ座学・オンライン研修
  • 自社課題をテーマにしたワークショップ
  • 小規模なDXプロジェクトへの参画

特に重要なのは、「学ぶ→試す→振り返る」のサイクルを回せる設計にすることです。知識をインプットするだけではDX人材は育ちませんので、実務とセットで設計することが不可欠でしょう。

ステップ4:実務でのスキル応用

DX人材育成の成否を分けるのが、「実務でスキルを使わせる仕組みがあるかどうか」です。学んだ内容を業務で試す機会がなければ、育成はそこで止まってしまいます。

具体的には、以下のような取り組みが有効です。

  • 業務改善テーマを任せ、小さく実践させる
  • DX関連プロジェクトのサブリーダーを担当させる
  • 上司やDX推進担当が定期的にフォローする

重要なのは、完璧を求めすぎないことです。小さな成功体験を積み重ねることで、DX人材は着実に成長していきます。このステップまで実行して初めて、DX人材育成は「ただの研修」から「成果の出る取り組み」へと変わるのです。

DX人材

成功するDX人材育成のポイント

DX人材育成は、正しいステップを踏めば必ず成果が出るとは限りません。実際には、途中で頓挫したり、形だけの取り組みで終わってしまったりする企業も多く存在します。成功と失敗を分けるのは、育成の進め方そのものではなく、「運用上のポイントを押さえているかどうか」です。

ここでは、DX人材育成を現場に根付かせ、継続的な成果につなげるために意識すべき4つのポイントを解説します。

ポイント(1)小規模プロジェクトからのスタート

DX人材育成を成功させるうえで重要なのは、最初から大きな成果を求めすぎないことです。全社横断の大規模DXプロジェクトをいきなり任せてしまうと、失敗のリスクが高まり、育成対象者の負担も大きくなります。

まずは、特定の業務や部門に限定した小規模プロジェクトからスタートし、DX人材に実践の場を与えることが効果的です。たとえば、帳票作成の自動化やデータ集計の効率化など、成果が見えやすいテーマを選ぶことで成功体験を積みやすくなります。

小さな成功の積み重ねが、DX人材の自信と社内の理解を同時に高めることにつながるのです。

ポイント(2)外部リソースの活用

DX人材育成をすべて自社だけで完結させようとすると、時間も労力もかかります。そのため、外部リソースを適切に活用する視点が欠かせません。

外部研修や専門家の支援は、最新の知識や他社事例を効率よく取り入れる手段として有効です。ただし、外部に任せきりにするのではなく、社内で学びを咀嚼し、実務に落とし込む役割を明確にしておく必要があります。

外部の知見と社内の業務理解を組み合わせることで、DX人材育成の「スピード」と「質」を同時に高めることができるはずです。

ポイント(3)経営層・現場を巻き込む仕組みづくり

DX人材育成がうまく進まない原因の一つが、経営層や現場の理解不足です。DXは一部の担当者だけで進められるものではなく、組織全体の協力があって初めて成果が出るものなのです。

経営層にはDX人材育成の目的や期待する成果を明確に共有し、継続的な支援を得ることが重要です。一方、現場には「業務が楽になる」「成果につながる」といった具体的なメリットを示すことで、協力を得やすくなるでしょう。

DX人材が孤立しないよう、組織横断的(経営層から現場まで)な巻き込みが成功の鍵となります。

ポイント(4)全社的な支援体制の構築

DX人材育成を一過性の施策で終わらせないためには、全社的な支援体制の構築が欠かせません。例として、DX推進を評価制度に反映したり、挑戦を後押しする風土を醸成したりすることが挙げられます。また、DX人材が相談できる窓口やコミュニティを用意することで、学びやノウハウが社内に蓄積されやすくなるでしょう。

このような仕組みが整うことで、DX人材育成は個人任せではなく、組織として継続的に取り組むテーマへと進化するのです。

DX人材に求められる5つのスキルとは

独立行政法人情報処理推進機構が公表している「デジタルスキル標準 ver.1.1」では、DXに関わる人材に求められるスキルとして、次の5つが整理されています。

  • ビジネス変革に関するスキル
  • データ活用に関するスキル
  • テクノロジーに関するスキル
  • セキュリティに関するスキル
  • パーソナルスキル

<参考>「デジタルスキル標準 ver.1.1」<PDF>(独立行政法人情報処理推進機構)

DX人材育成というと、デジタル技術やデータ分析といった専門スキルに目が向きがちです。しかし実際には、ビジネスをどう変えるかを考え、プロジェクトを前に進める力も同時に求められます。ここでは、それぞれのスキルがDX人材育成においてなぜ重要なのかを解説します。

(1)ビジネス変革に関するスキル

DXを推進する目的は、単に新しい技術を導入することではありません。ビジネスモデルや業務プロセスを見直し、企業としての価値創出の方法を変えていくことにあります。そのため、ビジネス変革に関するスキルはDX人材の中核となる能力です。

このスキルには、戦略的思考力や業務プロセスの再設計力、関係者を巻き込むマネジメント力などが含まれます。

たとえば小売業であれば、店舗中心の販売モデルからオンラインを活用した新たな顧客接点を構築する際に、業務の組み替えや組織の意識改革が必要になります。こうした変化を主導できる力こそが、ビジネス変革のスキルです。

(2)データ活用に関するスキル

デジタル化が進んだ現代において、データは企業にとって重要な経営資源のひとつです。DXを実現するためには、データを収集・分析し、意思決定や業務改善に活かす力が欠かせません。

具体的には、データ分析やデータマネジメント、BIツールの理解と活用などが挙げられます。これらのスキルを活用することで、市場動向や顧客ニーズを可視化し、感覚や経験に頼らない判断が可能になります。

また、分析結果を現場で活用できれば、マーケティング部門では新規市場の開拓に、営業部門ではクロスセルやアップセルといった具体的な成果につなげることも期待できます。

(3)テクノロジーに関するスキル

DXの基盤となるのが、テクノロジーへの理解です。プログラミングやシステム設計といった基礎知識に加え、AI、IoT、クラウドなどの新技術を自社の課題解決にどう活かすかを考える力が求められます。

重要なのは、技術そのものを深く知ることだけではありません。HRテックをはじめ、テクノロジーはさまざまな部門の課題解決に応用できます。

まずは自社の業務課題を整理し、「この課題はテクノロジーで解決できないか」という視点を持つことが、DX人材育成の第一歩となります。

(4)セキュリティに関するスキル

DXが進むほど、サイバー攻撃や情報漏えいといったリスクも高まります。実際、セキュリティ対策が不十分なままDXを進め、企業の信頼を損なってしまうケースも少なくありません。

DX人材には、情報セキュリティマネジメントやネットワークセキュリティ、データ保護に関する基本的な知識が求められます。加えて、従業員に対するセキュリティ教育を通じて、組織全体の意識を高める視点も重要です。

セキュリティは専門部署だけの問題ではなく、DXを支える土台であることを理解しておく必要があります。

(5)パーソナルスキル

DXを成功に導くために欠かせないのが、パーソナルスキルです。DXは変化を伴う取り組みであり、関係者との調整や合意形成が避けられません。そのため、コミュニケーション力やリーダーシップが重要な役割を果たすのです。

問題解決力や柔軟性、環境変化への適応力に加え、ストレス管理や継続的に学び続ける姿勢もDX人材には求められます。リーダーシップについては、研修などを通じて自社が求めるリーダー像を明確にし、育成の中で意識的に磨いていくことが重要です。

DX人材育成の事例

DX人材育成は、理論やステップを理解しただけでは成果につながりません。重要なのは、自社の状況に合わせてどのように育成を進め、実務に落とし込んでいるかという点です。

続いては、日本企業で実際に見られるDX人材育成の代表的な成功パターンを3つ紹介します。いずれも業種や企業規模を問わず参考にしやすい事例です。

成功事例1:産学連携による育成

ある企業では、DX人材育成を加速させるために、大学や研究機関と連携した育成プログラムを導入しました。目的は、社内研修だけでは得られない最新のデジタル技術やデータ活用の知見を取り入れることでした。

この取り組みでは、基礎理論は外部で学びつつ、テーマ設定は自社の業務課題に紐づけて実施。学びをそのまま持ち帰り、現場で検証する仕組みを整えたことで、知識が実務に定着しやすくなったのです。

その結果として、DX人材候補者が業務改善提案を主体的に行うようになり、学習と実務が循環する育成モデルが構築されたようです。

成功事例2:内製化による業務改善

別の企業では、外部ベンダーに依存していた業務システムの運用を見直し、内製化をDX人材育成のテーマに据えました。育成対象者には、既存業務の棚卸しから改善案の検討、簡易ツールの開発までを段階的に任せていったようです。

すると、最初は小さな業務改善から始めたものの、内製化を通じて業務理解とIT活用の両方が深まり、DX人材としてのスキルが着実に向上しました。その結果、外部委託コストの削減だけでなく、改善スピードの向上という成果も生まれたのです。

この事例は、DX人材育成と業務改善を同時に実現した好例といえるでしょう。

成功事例3:DX専任部門の設立

DX人材育成を中長期的な経営課題と捉え、DX専任部門を設立した企業もあります。
この企業では、各部門からDX人材候補を選抜し、専任部門でのプロジェクト経験を通じて育成を進めました。

このDX専任部門は、単なるIT部門ではなく業務改革や新規施策を横断的に推進する役割を担っています。育成されたDX人材は、一定期間後に各部門へ戻り、現場でDXを広げる役割を果たしているようです。

この仕組みにより、DX人材が組織内に点在することになり、全社的なDX推進体制が自然と形成されていったのです。

DX人材育成に役立つ補助金・助成金

事例について見ていきましたが、DX人材育成を進めるうえで多くの企業が悩むのがコストの問題です。研修費用や外部支援の活用には一定の投資が必要となるため、「必要性は理解しているが、予算の確保が難しい」という声も少なくありません。

こうした課題を解決する手段として活用したいのが、国や自治体が提供する補助金・助成金制度です。制度を正しく理解し、自社のDX人材育成に組み込むことで、負担を抑えながら育成を進めることが可能になります。

ここでは、DX人材育成において特に活用しやすい代表的な制度を紹介します。

人材開発支援助成金

DX人材育成で多くの企業が活用しているのが、人材開発支援助成金です。この助成金は、従業員の職業能力開発を目的とした制度で、DXやデジタル分野の研修も対象となります。

研修内容や実施方法によって複数のコースが設けられており、外部研修の受講や社内研修の実施にかかる費用の一部が助成されます。DX人材育成を体系的に進めたい企業にとって、非常に使い勝手のよい制度といえるでしょう。

ただし、助成金の活用には事前申請や計画書の提出が必要です。研修を実施してから申請することはできないため、育成計画の段階から助成金の活用を前提に設計する必要があります。

地域のDX推進支援制度

国の制度に加えて、各自治体が独自に実施しているDX推進支援制度も見逃せません。自治体によっては、中小企業向けにDX人材育成やIT導入を支援する補助金・相談窓口を設けているケースがあります。

これらの制度では、研修費用の補助だけでなく、専門家による伴走支援や個別相談が受けられる場合もあります。特に、DXに関する知見が社内に少ない企業にとっては、人材育成と実務支援を同時に受けられる点が大きなメリットです。

地域の支援制度は公募期間や要件が限られていることも多いため、日頃から自治体や支援機関の情報をチェックし、自社のDX人材育成に活用できる制度がないか確認しておくことをお勧めします。

DX人材育成のためのリソース

DX人材育成を進める際、「何から学ばせればよいのか」「どのようなリソースを使うべきか」で悩む企業は少なくありません。育成を成功させるためには、目的や人材要件に応じて、適切な学習リソースを選び、使い分けることが重要です。

ここでは最後に、DX人材育成において活用しやすい代表的なリソースとして「オンライン学習プラットフォーム」と「専門家によるセミナー・ワークショップ」の2つを紹介します。

(1)オンライン学習プラットフォームの活用

DX人材育成の入り口として活用しやすいのが、オンライン学習プラットフォームです。時間や場所に縛られず学習できるため、業務と並行して育成を進めたい企業に適しています。

オンライン学習の強みは、DXやITの基礎知識、データ活用、プロジェクト管理などを体系的に学べる点にあります。特に、DX人材育成の初期段階では、全員が共通言語を持つことが重要であり、その土台づくりにオンライン学習は有効です。

一方で、注意すべき点もあります。動画視聴やテストの受講だけで終わってしまうと、学習が形骸化しやすくなります。そのため、学習内容を業務にどう活かすのかを整理し、実務課題とセットで活用する仕組みを用意することが欠かせません。

(2)専門家によるセミナーやワークショップ

DX人材育成を一段階進めるためには、専門家によるセミナーやワークショップの活用も効果的です。外部の専門家は、他社事例や最新動向を踏まえた実践的な視点を提供してくれるため、社内だけでは得にくい気づきを得ることができます。

特に、ワークショップ形式のプログラムでは、自社の業務や課題をテーマに議論や検討を行うため、学びをそのまま実務につなげやすいという特徴があります。また、第三者の視点が入ることで、社内では言語化しにくかった課題が明確になるケースも少なくありません。

ただし、セミナーやワークショップも単発で終わらせてしまうと効果は限定的です。参加後に振り返りや実践の場を設けて育成ステップの中に組み込む形で活用することが、DX人材育成を成功させるポイントとなります。

まとめ

DX人材育成は、一度取り組めば完了する施策ではありません。デジタル技術や市場環境が変化し続けるなかで、DX人材に求められる役割も常に進化していきます。そのため、DX人材育成は「研修の実施」ではなく、継続的に人材を育て続ける仕組みづくりとして捉えることが重要です。

本記事で紹介したように、DX人材育成を成功させるためには、「目的の明確化」から始まり、「人材要件の定義」「実務と結びついた育成ステップの設計」が欠かせません。また、小規模な成功体験を積み重ね、経営層や現場を巻き込みながら全社的に取り組むことで、DX人材は組織に定着していくはずです。

今後、DXの重要性はさらに高まり、DX人材の確保や育成は企業の競争力を左右するテーマとなるでしょう。外部に頼るだけでなく、自社の中にDXを推進できる人材を育てることが、持続的な成長への近道です。まずは身近な業務からDX人材育成に取り組み、小さな一歩を積み重ねていくことが、未来のDXを支える大きな力となります。