
グローバル人材育成を加速するAIマニュアル。属人化防止と業務品質向上の実践事例
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株式会社スタディストでは、海外事業責任者向けにオンラインセミナー「ASEAN多拠点化を実現させる組織マネジメント ~ガバナンス対応と標準化の実践~」を開催しました。
多様化する海外拠点の現場において、業務の標準化とマニュアル化は欠かせない取り組みです。しかし、マニュアルがあっても「使われない」「定着しない」といった悩みが根強く、多くの企業が成果につながらない運用に頭を抱えています。
このした課題に対し、AIやデジタルツールの活用によって、誰でも簡単に作れる・使えるマニュアル環境を整え、実際に現地の業務品質を底上げしている企業が注目を集めています。
本セミナーの後半では、参加者からの質問に対して、株式会社東京コンサルティングファームの田附浩明(たつき・ひろあき)氏と株式会社スタディストの豆田裕亮が、現場視点から対談形式で回答いたしました。AI活用や現地スタッフの巻き込み方、定着化に必要な仕組みについて、実例を交えて具体的に語っています。
(前編はこちらから)
目次
なぜ「業務標準化」や「マニュアル化」が重要なのか?
株式会社スタディスト・豆田裕亮(以下、豆田):私自身、現在はタイを拠点に活動していますが、「人の流動性の高さ」と「言語の壁」という2つの課題を肌で感じています。タイやベトナムの製造現場では、毎月のように多くの人が入れ替わるほど流動性が高く、現場の作業者も多国籍である点が特徴です。
このような環境下では、いかにして作業手順や安全教育を正確に伝え、定着させることが非常に大きな課題になります。だからこそ、業務を標準化し、誰が見ても理解できる形でマニュアル化することが不可欠です。それが現場の品質や安全性を保つ基盤になると考えています。

「使われること」を前提に設計する、現場で活きるマニュアル運用
豆田:マニュアル作成では、特に「いつでも、誰でも、どこでも見られること」を重視しています。言語の壁によって、作業者が他人に聞けない場面でも、自己解決できる状態を目指しています。
「知りたい情報が知りたいときにアクセスできる」状態でなければ、マニュアルは意味をなしません。作って終わりなのではなく、誰もが使いやすいマニュアルにすることが重要です。
そのため、現場では作業者に「作業結果」だけでなく、「作業リスト」や「マニュアル」の整理もルーチンワークとして組み込んでもらっています。これにより、業務の属人化を防ぎ、新入社員が多く入ってくる現場でも迅速に対応できるようになります。
経理業務の仕組み化は「スピード」と「平準化」がカギ
株式会社東京コンサルティングファーム・田附浩明氏(以下、田附):例えば、経理業務では、月次決算が締まらないという課題は多くの企業に共通しています。決算の数字が見えなければ経営判断を下すための材料が揃わず、意思決定が遅れてしまいます。だからこそ、月次決算を迅速に締める必要があるのです。
これを解決するためには、業務プロセス全体の見直しが不可欠です。マニュアルを作る際には、単に手順を並べるだけではなく、業務全体を「前工程」「後工程」などに分解し、それぞれの役割と流れを明確にすることが重要です。
例えば、経理業務なら下記の図のように、集める(第1工程)、処理・計上(第2工程)、チェックと確認(第3工程)の3段階に分けて整理します。この工程ごとに可視化することで、「どの部分をマニュアル化すべきか」「どこが属人化しているか」といった課題が自然に浮かび上がってきます。

処理の効率化は、制度とチェックの仕組み化から始まる
田附:業務の処理工程をマニュアル化する際は、作業内容だけでなく、それを支える制度やツールの設計自体をものも見直すことが重要です。
例えば「仮払いや前渡金制度に切り替える」「固定化している作業をAIに代替させる」ことで、業務そのものを簡素化し、マニュアルの構造もよりシンプルにできます。マニュアルは業務の「あるべき姿」を示すものです。制度設計まで含めて最適化しなければ、実用的なマニュアルにはなりません。
また、チェック体制についても、すべてを人の目で確認するのではなく、サンプリングや分析的手続きなどを組み合わせることで、スピードと品質を両立できます。チェックリストなどのツールも活用しながら、効率的な確認体制を構築することが重要です。
質疑応答
ーーAIは現場スタッフにも使いこなせますか?
豆田:当社は、画像や動画を活用してマニュアルを作成・共有・運用できるクラウドサービス「Teachme Biz」をお客様に提供しています。「Teachme AI」という機能を2024年にリリースして、マニュアル作成者の工数を大幅に削減できるようにしました。開発にあたり私たちが強く意識しているのが、誰もが簡単に操作できるようなUI設計です。私たちもその方向でUIを設計することを大事にしています。
人に聞く・話すような感覚でAIを使えれば、現場スタッフにも抵抗なく受け入れられるからです。数年後には、多くの人が意識せず自然にAIを使いこなす時代が来ることを期待しています。
ーーマニュアルが活用されない場合、どう改善すればよいでしょうか?
田附: マニュアルが活用されない、または現場との温度差がある場合は、管理者側の視点を育むことが重要です。また、ジョブローテーションによって「使う側」と「作る側」の両方を経験させることが非常に効果的です。マニュアルを使って仕事をするだけでなく、自ら作成・更新を行う立場にも立たせることで、マニュアルの重要性や改善の必要性を実感できるようになります。
豆田:マニュアルを作った後に「何が目的だったのか」を振り返ることも重要です。マニュアルが使われなくなる原因は大きく分けて3つあります。1つ目は「存在を知らない」こと、2つ目は「場所が分からない」、3つ目は「内容が古い」ことです。これを防ぐには、使う場面を明確にし、業務プロセスに組み込むことが重要です。
スタッフを巻き込むには“体験”させることが近道
田附:現場のスタッフにマニュアルを”自分ごと”として捉えてもらうには、体験を通じた理解が最も効果的です。マニュアルを使う立場になったときにわかりにくさを体験することで、改善意識が自然と芽生えます。
このような体験を積み重ねることで、マニュアルが単なる業務指示書ではなく、「自分たちの働き方を支えるツール」として認識されるようになります。そしてそれが、チーム全体の業務改善や品質向上への第一歩となるのです。
まとめ
業務の標準化やマニュアルの整備は、単なる手順の「見える化」にとどまらず、現地スタッフの育成や属人化の防止、多拠点での品質管理を支える基盤となります。近年はAIやデジタルツールの進化により、マニュアルの作成・運用が格段に効率化されています。しかし、重要なのはマニュアルが実際に現場で使われるかどうかです。それが、自律的に動ける現地人材を育てる仕組みづくりにつながり、グローバル展開を持続可能にするカギとなります。
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