
2025年、年明けに直面するインドネシアの労務課題
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日本ではあまり耳にすることのないインドネシア特有の労務が存在します。特に、新年度の会社カレンダーや最低賃金の設定など、年明けにまつわるルールや慣習は多くの駐在員を困惑させる要因となっています。本稿では、インドネシアに赴任した駐在員が直面しやすい、年明けの労務課題について解説します。
目次
会社カレンダーの発表
これは法律上の義務ではありませんが、その年の休業日を定めた会社カレンダーを従業員に周知することを推奨しています。インドネシアでは、毎年政府によって翌年度の祝日と「年休消化奨励日(Cuti Bersama)」が設定されます。この年休消化奨励日は、従業員が持つ年次有給休暇(年休)の権利から差し引くことが認められており、会社がこれに従う場合は、全従業員の年休権利からその分を差し引くことを周知する必要があります。
例として、2025年の年休消化奨励日は全10日間ですが、会社がそのうち5日間を採用する場合、年休が12日間の従業員は5日間を差し引いた7日間を自由に消化できることになります。これを年明けに周知することで、従業員がその年の休暇計画を立てやすくなります。ただし、奨励の10日間すべてに従う必要はなく、一切従わない選択も可能です。これは法律で義務付けられたものではなく、あくまで“奨励”に過ぎないためです。
この年休消化奨励は、2002年に発生したバリ島テロ事件で打撃を受けた観光業の復興を目的に、連休を作り観光を促進するよう政府が呼びかけたことから始まりました。現在では、インドネシア特有の文化として定着しています。
旧賃金と新賃金の支払い調整
新賃金を1月度の支払いから適用する会社において、12月度の旧賃金と1月度からの新賃金の計算についてのご相談をいただくことがあります。給与計算の起算日は各社で異なりますが、以下に一例を挙げて解説します。
例えば、「15日締め、同月25日払い」の場合、12月16日から31日までは旧賃金で計算し、1月1日から15日までは新賃金で計算します。
労働法上の日給計算式は図表1の下部の通りです。

最低賃金問題
インドネシアでは毎年、最低賃金が上昇します。これにより、最賃労働者(例:工場作業員やドライバー)だけでなく、最低賃金を超えて給与を受け取るホワイトカラー層の昇給にも大きな影響を及ぼします。特に2025年には、新政権のもとでコロナ禍以前に存在していた業種別最低賃金(UMSK)が復活することが決まり、最低賃金が10%前後上昇するとの噂が広がっています。

最低賃金の設定は各州知事に委ねられているため、決定のタイミングや金額には地域格差があります。早い地域では12月中に決定される一方で、遅い地域では翌年に持ち越されることもあります。日系製造業が集積するブカシ県やカラワン県では、過去には毎年5月や9月に決定されていたことから、2025年にはどのような決定が下されるのか注目されます。これらの動きは、多くの経営者にとって試練の年となることが予想されます。
会社での昇給交渉へ進展
上述の通り、最低賃金問題により不穏な年明けを迎え、最賃決定後には昇給交渉が待ち受けています。労働組合の影響が強い企業では、最低賃金の上昇率が10%の場合、それに2~3%を上乗せした12~13%を昇給率として経営者に要求することが一般的です。これに否定的な姿勢を示すと、年明け早々からストライキをちらつかせたり、残業拒否や意図的な業務遅延(怠業・サボタージュ)などで経営者を揺さぶる行動を起こすケースもあります。さらに、これを組織的に扇動する上部組織も存在します。これらの背景が、インドネシアの労務の難易度はアジア一と言われる所以となっています。
これらの上部組織には、多数の知識人(弁護士や戦略コンサルタント)が所属し、各社の組合長に経営者が嫌がるタイミングや戦略的な交渉手法を伝授しています。その結果、交渉はさらに厄介なものとなります。
インドネシアに進出している日系企業の約半数を占める製造業を窮地に追い込む最低賃金問題が過度にエスカレートすれば、迎える2025年は更なる事業の縮小に見舞われる企業が相次ぎ、撤退を含め従業員の大量解雇のリスクが高まることが懸念されます。







