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新興国ビジネス成功の鍵 : ビジネス環境への適応とパートナーの活用

新興国ビジネス成功の鍵 : ビジネス環境への適応とパートナーの活用

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新興国でのビジネス展開は、かつては「日本製」というだけで売れる時代もありましたが、現在は進出先のビジネス環境を正しく理解し、適応することが不可欠です。今回は、JICAの調査から得られた「成功企業に共通する12の教訓」の中から、環境への適応とパートナーの活用に関わる5つの要素を取り上げ、具体策を提示します。

ビジネス環境が事業に与える影響

ビジネス環境とは、政治・経済の動向、規制の枠組み、社会文化、技術の発展状況など、企業の外部に存在するさまざまな要因を指します。新興国では、政治状況や規制の変更等によって、事業の方向性が大きく左右されることがあります。また、現地の文化や消費者の嗜好を無視すれば、どれだけ優れた製品であっても受け入れられず、競争優位性を失うリスクが高まります。経済状況や市場構造を十分に理解しないまま進出すると、ターゲットとする顧客層の購買力や需要との間にズレが生じ、期待した収益が得られない可能性があります。

このように、現地のビジネス環境が事業に及ぼす影響を見極め、それに適応する(いわゆるローカライズする)力を持たなければ、新興国におけるビジネスの成功は難しくなります。

ビジネス環境の適応において重要となるのが、現地でのビジネスパートナーの存在です。現地市場に精通したパートナーと協力することで、環境への適応をスムーズに進めることができ、リスクを低減しながら競争力を確保することが可能となります。
では、実際に新興国市場で成果を上げるためには、何を意識すべきでしょうか。

信頼できる現地パートナーをどう選び、どのようにリスクを最小限に抑えるか。進出先の法規制や社会環境に、どこまで踏み込んで対応できるか。さらには、自社の製品やサービスが本当に現地ニーズに合っているのか、単なる自己満足に終わっていないかを、厳しく見極める必要もあります。そして、競争の激しい海外市場において、自社ならではの価値をいかに明確に伝えるか。これらの問いに真剣に向き合うことが、環境への適応力を高め、成功確率を押し上げるカギとなります。

ここからは、現地適応とパートナー活用に関わる5つの重要な教訓について、具体的に解説していきます。SDGsビジネスのポイント

環境適応とパートナー活用に関わる5つの重要な要素

教訓3:信頼できる現地パートナーの確保

多くの企業が、適切な社外パートナーを確保し、協業できたことが進出先で売上を実現できた要因と考えています。新興国でのビジネス展開では、現地の市場、法制度、商習慣に精通し、自社の弱みを補完できるパートナーの確保が重要です。不適切なパートナーを選んでしまうと、契約違反やトラブルが発生し、ビジネスに悪影響を及ぼす恐れがあります。そのため、信頼できる相手かどうかを見極めることが重要です。

• 適切なパートナーの確保
信用調査を行い、過去の実績や評判を慎重に確認する。パートナー企業との協議では、技術面だけでなくビジネス全体の観点についても、しっかりと議論する。
• 契約事項への留意
契約条件が自社にとって不利でないか、知的財産の流出や情報漏洩のリスクがないかなど、契約内容には十分注意を払う。特に、進出先特有の留意点がないかを確認する。
• ネットワークの活用
現地のビジネスネットワークや行政機関との関係を持つパートナーを選ぶことで、規制対応や市場開拓がスムーズに進む。行政向けのビジネス展開を検討する場合には、JICAの企業支援事業を活用するのも有効な手段となる。
• 信頼関係の構築
信頼関係を築き、相互に利益のある関係を長期的に維持するために工夫をする。

教訓4:自社の弱みを補完する専門家の活用

企業が持つリソースだけでは、現地の法規制、技術要件、マーケティング戦略、現地の言語などに十分対応できないことがあります。「知らなかった」「気づかなかった」では済まされないリスクを防ぐためにも、適切な専門家を活用し、自社の弱みを補完することが重要です。

• 自社の弱みの把握
自社がどの分野に課題を抱えているのかを把握し、外部の専門家をどこで活用すべきかを明確にする。
• 専門通訳の活用
交渉や現地関係者とのコミュニケーションを円滑化するために、必要に応じて分野に精通した通訳を活用する。
• 公的支援制度の活用
自社の弱みを補完する手段として、公的機関のサービスや支援制度が活用できないかを確認する。

教訓5:進出国の法規制・社会環境を事前に確認

新興国でビジネスを展開する際には、市場の魅力だけで判断せず、規制や社会環境の適合性を確認することが不可欠です。進出国によっては、事業の進め方に大きな制限がかかる場合があります。外資規制や法規制、認証の有無などを事前に調査し、事業運営のリスクを最小限に抑える必要があります。外資規制などに関する情報は、JETROのウェブサイトを活用することで、効率的に把握することが可能です。

• 外資規制の確認
進出先によっては外資に厳しい規制が設けられていることがあるため、参入予定の分野がネガティブリストに該当し、参入が制限されていないか、事前に情報を収集する。
• 許認可・認証の確認
許認可や認証の取得が必要な商材については、事前にその要件を確認する。
• 規制運用の実態把握
規制の実際の運用が想定以上に緩いケースもあり、かえってビジネスの推進を難しくする場合があることに注意する。
• 最新規制への対応
規制の変更が頻繁に行われる国では、知らぬ間に規制に抵触するリスクがあるため、常に最新情報を収集し、必要に応じて現地の専門家と連携しながら対応策を講じる。

教訓6:進出国の社会環境に適した製品・技術の選定

新興国でのビジネス成功には、市場規模だけでなく、進出先の社会環境との適合性を見極めることが重要です。現地の経済状況や技術水準、インフラの整備状況、文化的背景を考慮しないまま事業を展開すると、製品やサービスが受け入れられないリスクが生じます。実際、技術的に優れた製品であっても、進出国の状況や市場を十分に理解していなかったことでうまくいかなかったというケースも少なくありません。現地の需要や社会文化に合ったビジネスモデルを構築することが、成功の鍵となります。

• 市場分析と価格戦略
想定顧客層の購買力や嗜好、市場の成熟度を分析し、それに応じた価格設定やマーケティング戦略を策定する。
• 技術・流通環境の確認
進出国の技術レベルや流通環境を事前に確認し、自社製品が現地で適切に運用・保守できるかを検討する。
• 文化・習慣への適応
文化や習慣に配慮した製品設計やサービス提供を行うことで、現地市場での受け入れやすさを高める。
• 販売・回収モデルの最適化
小分け販売など、現地の商習慣を考慮した販売手法や、資金の回収方法を含めた実効性のあるビジネスモデルを構築する。
• 業界構造と利害関係の把握
既得権益など、既存の業界構造や利害関係者の影響が根強く存在する場合があることに留意する。

【現地ニーズに対応した製品ローカライズの例】
メロディ・インターナショナル
Melody International Ltd.
メロディ・インターナショナルは、現地ユーザーの声を重視し、日本で販売しているモバイル型分娩監視装置に改良を加えている。たとえば、山道など電波状況の悪い場所でも計測が途切れない設計にしたほか、医療機器としては珍しくタイ語に対応させるなど、助産師にも使いやすい製品づくりを進めている。現地ニーズに対応した製品ローカライズの例
【進出国の関係法令に順応したサービス提供の例】
株式会社淺沼組/東レ株式会社
ASANUMA CORPORATION/Toray Industries, Inc.
淺沼組と東レは、インフラの長寿命化を目的とした炭素繊維シートによる補強工法を展開するにあたり、進出先の国での関係法令によって日本製資材の輸出が難しい状況に対応し、現地で調達可能な代替資材に切り替えた。その際、技術の品質に影響が出ないことを確認した上で対応し、日本と同等の技術水準を維持したサービスの提供を実現している。【進出国の関係法令に順応したサービス提供の例】

教訓7:バリュープロポジションの明確化

バリュープロポジションとは、「顧客がなぜ自社の製品・サービスを選ぶのか」という明確な理由を示すことを指します。ただ市場のニーズに合っているだけでは、競争の激しい海外市場で持続的なビジネスを展開するのは難しく、自社ならではの独自の価値(強み)を打ち出し、それを顧客に明確に伝えることが成功の鍵となります。

また、顧客の意思決定者は、製品やサービスの性能だけでなく、経営や財務の観点にも高い関心を持っています。そのため、進出国の経営層と商談を行う際には、事業の財務的な持続可能性や投資回収期間(ROI)を明示し、財務的メリットや市場での競争力をどのように確保するかを説明できることが重要です。

• バリュープロポジションの仮説構築
自社のバリュープロポジションを把握するために、3C分析、SWOT分析、4Pなどのフレームワークを活用して仮説を立てる。
• 仮説の検証
構築した仮説を外部有識者や想定顧客に当てて検証する。
• 継続的な仮説の見直し
バリュープロポジションは外部環境の変化に影響を受けるため、定期的に確認・見直しを行う。
• 差別化戦略の確立
顧客ニーズを認識したうえで、競合にはない自社の強みを活かした独自のポジショニングを確立する。
• 付加価値型ビジネスモデルの構築
価格競争だけに依存せず、品質、アフターサービス、ブランド力といった要素を活かした付加価値型の競争戦略を検討する。

新興国でのビジネス展開を成功させるには、進出先のビジネス環境を正しく理解し、それに適応するための戦略を立てることが不可欠です。市場の魅力だけにとらわれるのではなく、規制、社会文化、経済状況などの外部要因を十分に考慮し、リスクを見極めながら進める必要があります。

次回は12の教訓のうち、競争優位と事業計画に関わる残り5つの要素について解説します。

執筆者
木下 真人
JICAタイ事務所
Representative

JICAにてタイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、シンガポール、中国などのJICA、日本大使館で15年以上にわたり経済・社会開発業務等に従事。開発学修士、MBAを保有し、現地政府や支援機関等と連携し、民間企業の持続可能なビジネス展開を推進。

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JICAタイ事務所

JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に実施する機関として、約150の国と地域で開発途上国の課題解決に取り組んでいます。ビジネス分野では、社会課題の解決につながる技術やサービスを持つ日系企業の海外展開を支援するため、「中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)」を展開し、企業の成長と持続可能な開発の両立を後押ししています。