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タイの工業団地の選び方

タイの工業団地の選び方

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タイは長年にわたり外国直接投資を積極誘致し、重層的なサプライチェーンを構築してきました。現在、国内には80を超える工業団地が存在します。工業団地へ進出するメリットは大きい一方、自社に最適な工業団地を見極めることは非常に重要です。本稿では、工業団地選定のポイントや代表的な工業団地の特徴を解説します。

工業団地選びの基本ポイント

工業団地を選ぶ際に考慮すべき主なポイントは、以下のとおりです。

(1) 立地とアクセス

工業団地の立地は非常に重要です。製造した製品を国内外へ輸送する際に、主要な港湾や空港、高速道路へのアクセスが良い場所を選ぶことで、物流コストを抑えられます。特に、タイの主要輸出港であるレムチャバン港やスワンナプーム国際空港へのアクセスに優れた工業団地は、輸出を重視する企業にとって有利です。

(2) インフラの整備状況

電力、水道、通信、廃棄物処理施設などのインフラの整備状況は、製造業の安定稼働に欠かせません。工業団地によってインフラの品質や供給の安定性、保守メンテナンスの精度に差があるため、専門家から情報を収集し、比較検討することが重要です。

(3) 労働力の確保

製造業では、労働力の確保が事業運営のカギとなります。たとえば、バンコク周辺や東部経済回廊付近では管理職や熟練労働者を比較的確保しやすい一方で、賃金水準が高い傾向にあります。一方、地方ではタイ政府の最低賃金制度の開始により、低賃金労働者の確保が難しくなっているほか、高度な技術を持つ労働者の確保も困難な場合があります。そのため、各地域の労働市場の特性を把握し、自社のニーズに合った地域を選ぶことが重要です。

(4) BOIの税制優遇措置とIEATのサポート体制

BOI(タイ投資委員会)の提供する税制優遇措置では、法人税や輸入関税の減免を受けることが可能です。ただし、高付加価値を生み出す事業計画を明確に示す必要があります。IEAT(タイ工業団地公社)の工業団地では、外国企業でも土地所有が認められ、建設許可や操業許可、外国人労働者の就業許可をワンストップで申請できます。そのため、非IEAT工業団地に比べて許認可申請をスムーズに行えるのが特徴です。タイでの事業がBOIの優遇措置を受けられるか、また進出先がIEATの工業団地かどうかを事前に確認しましょう。

(5) サプライチェーンとの連携

自社のサプライチェーンが主にどのエリアに集中しているかを事前に調査し、連携しやすい工業団地を選ぶことで、原材料調達や部品供給を効率的に行うことができます。バンコク中心部に近いエリアでは、物流車両の大きさや通行時間帯に制限がある場合もあるため、注意が必要です。

タイの主要な工業団地

タイの工業団地は、IEAT(タイ工業団地公社)が運営する「IEAT工業団地」と、民間企業や地方自治体が運営する「非IEAT工業団地」に大きく分かれます(詳細は第4回参照)。ここでは、代表的なIEAT工業団地をいくつかご紹介します。

工場の位置マップ

アマタシティ・チョンブリ工業団地(Amata City Chonburi Industrial Estate)

特徴

バンコクから約1時間の距離で、他の主要工業団地の中心的な立地に位置し、レムチャバン港にも近いことから、多くの日系企業が進出しています。近年は土地不足により土地価格が高騰し、初期投資が高くなることが企業にとって悩みの種ですが、それでも立地の優位性から参入企業は増え続けています。アマタコーポレーションでは、本工業団地の南部に「アマタシティチョンブリ工業団地2」の開発を進めており、すでに多数の予約が入っている状況です。

メリット

開発運営を行うアマタコーポレーションは、タイにおける工業団地開発の実績が高く、品質の高いインフラや労働力確保のしやすさ、周辺地域に多くの関連企業が集積している点などが強みです。サプライチェーンが整備されており、今後もタイの中心的工業団地として発展が期待されるため、中長期的にも安心して入居できます。

イースタン・シーボード工業団地(Eastern Seaboard Industrial Estate)

特徴

「東洋のデトロイト」と称されるほど自動車産業が集積しており、グローバルな自動車生産拠点として知られています。日米欧の自動車メーカーや部品メーカーが多数進出しており、自動車産業のサプライチェーン構築に最適なエリアです。近年は中国の電気自動車メーカーも進出が相次いでおり、これまでのエンジン車関連以外にEVサプライチェーンも形成されつつあります。

メリット

レムチャバン港や他の大型工業団地が近隣にあり、輸出面で優位性があります。本工業団地を運営するWHA社は、タイでトップクラスの工業団地開発能力を有しており、新規工業団地の開発にも積極的です。東部経済回廊(EEC)エリアで圧倒的な存在感を示す開発会社が運営している点も安心材料といえます。

ロジャナ・ノンヤイ工業団地(Rojana Nong Yai Industrial Estate)

特徴

これまで東部経済回廊内では、レムチャバン港から南東方面への開発が進んできましたが、ロジャナ・ノンヤイ工業団地はレムチャバン港から北東方向に開発されています。既存の開発エリアからは少し離れていますが、344号線沿いに位置し、バンコクからのアクセスが非常に便利です。大規模な開発が見込まれており、プリングルスで有名なケラノバ社が工場を建設中です。そのほかにも多数の企業が着工中で、2025年から2027年にかけて新工場が続々と稼働する予定です。

メリット

344号線沿いに立地しており、直進するルートでバンコクからのアクセスが簡便です。344号線にはタイ政府が産業イノベーション特区と指定した「EECi」が存在することから注目度が高まっています。今後の発展が期待されるエリアです。

ピントン工業団地7(Pintong Industrial Estate 7)

特徴

ピントン社はレムチャバン港近辺を中心に工業団地開発を行ってきました。比較的小規模の開発が多く、中小企業でも購入しやすい区画を用意してきた傾向があります。本工業団地はレムチャバン港にも非常に近く、優れた立地が魅力です。ただし、今回の分譲区画は大型化しており、中小企業にとっては購入しにくくなった点はデメリットといえます。2025年6月ごろに予約開始を予定しており、6ヵ月ほどで完売する見込みです。

メリット

レムチャバン港へのアクセスが非常に良く、イースタン・シーボード工業団地やアマタシティラヨン工業団地などへも行きやすい立地です。レムチャバン港近辺で工場や物流施設の拡張を検討する企業にとっては、必ず調査しておきたい工業団地といえます。

工業団地選びの注意点

工業団地を選ぶ際には、事前リサーチが何よりも重要です。実際に現地視察を行い、インフラや労働力の状況、周辺企業との連携の可能性などを確認することをおすすめします。また、IEATやBOIの優遇措置を活用できるかどうかも専門家に相談し、総合的に比較検討するのが望ましいでしょう。

タイ工業団地マップ

まとめ

タイの工業団地選びは、製造業の成功に直結する重要なステップです。立地、インフラ、労働力、税制優遇、サプライチェーンとの連携などのポイントをしっかり検討し、自社に最適な工業団地を選ぶことが、タイでの事業展開を成功させるカギとなります。

執筆者
高尾 博紀
GDM (Thailand) Co., Ltd.
代表取締役社長

「タイで最も土地取引を行う日本人」として、工場・物流施設やホテル・オフィスなどの事業用不動産の取得支援を行い、これまでのタイ国内での取引実績は150万㎡を超える。早稲田大学商学部卒業。2011年GDM (Thailand) Co., Ltd.を創業。

GDM (Thailand) Co., Ltd. のロゴ
GDM (Thailand) Co., Ltd.

土地・建物事業、オフィス物件事業、空間デザイン事業の3つの事業部で構成され、タイ・バンコクで設立から10年を超える。それぞれの分野には、日本人とタイ人スタッフのプロフェッショナルが在籍しており、各事業のレベルアップを図る「縦軸」と、事業横断的にサービスを展開する「横軸」によるシナジーを実現し、クライアントファーストのサービスを提供している。