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製造業のタイ進出方法

製造業のタイ進出方法

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タイは、東南アジアの中でも製造業に適した国として注目されています。自動車、電機、食品加工など多様な産業クラスターが形成されており、インフラの充実や労働力の質の高さなどが企業にとって大きな魅力です。本記事では、製造業がタイに進出する際の具体的な方法を紹介するとともに、成功するためのポイントを解説します。

製造業のタイ進出の具体的方法

1. 現地法人の設立

製造業がタイで事業を展開する際、最も一般的な方法は現地法人の設立です。特に「株式会社(Limited Company)」としての法人設立が多く選ばれています。製造業の分野によっては、BOI(タイ投資委員会)からの優遇措置を受けることで、法人税や輸入関税の免除、土地所有許可といった恩典を得ることが可能です。

 

現地法人の設立には、商務省への商号登録、定款作成、資本金払い込みといった手続きが必要で、通常は事前準備から設立完了までに3~4ヵ月を要します。さらに設立後は、製造に必要な各種ライセンス(工場建設許可や工場操業許可など)の取得も必要となります。

2. 工業団地への進出

タイには約80の工業団地があり、その多くは製造業向けに特化して整備されています。これらの工業団地は、インフラが整備されており、電力、水道、通信、物流ネットワークが充実しているため、製造拠点を構築する上で効率的な環境を提供します。また、バンコクから3時間圏内に70以上の工業団地が集中していることから、高密度なサプライチェーンが形成されており、進出する製造業にとって大きな魅力です。

 

タイの工業団地は、大きく分けて「IEAT工業団地」と「非IEAT工業団地」に分類されます。それぞれにメリットとデメリットがあり、企業のニーズに合わせて選択することが重要です。

 

IEAT工業団地:
IEAT(タイ工業団地公社)が管理する工業団地はワンストップサービスを提供しており、土地所有許可、工場建設許可、工場操業許可、外国人就業許可などの手続きをスムーズかつ低リスクで進めることができます。ただし、工業団地の月間管理費や土地の価格がやや高めになる場合があります。

 

非IEAT工業団地:
これらの工業団地は民間企業のみによって運営されており、月間管理費や土地価格が比較的安い場合が多いです。ただし、外国企業が土地所有をするにはBOIへの申請が必須であり、工場建設許可や工場操業許可はそれぞれ管轄の役所に個別に申請する必要があります。エリアや担当官によっては審査基準が曖昧であったり、賄賂を要求されるケースもあるため注意が必要です。また、IEATよりも各種許認可の取得に時間を要する場合があり、スケジュール管理の難易度が上がります。

 

工業団地への進出を検討する際は、IEATと非IEATのどちらが自社に適しているかを慎重に検討する必要があります。インフラの充実度、立地、税制優遇、許認可の手続きのしやすさなど、多くの要素を考慮し、専門家から情報を得ることをお勧めします。専門家のサポートを受けることで、進出にかかる手続きやリスクを最小限に抑え、スムーズに事業を開始することが可能です。

3. BOI認可による優遇措置の活用

BOI(タイ投資委員会)は、タイ政府が指定する特定の業種に対してさまざまな優遇措置を提供しています。特に、自動車、高付加価値エレクトロニクス、グリーンテクノロジー、データセンターなどの分野では、法人税の免除や輸入関税の免除、場合によってはVAT(付加価値税)の減免など手厚い恩恵を受けることができます。

 

BOI認可を受けるには、事業計画書や製造プロセス(特に原材料、使用する機械・設備、環境負荷、付加価値を生む工程など)を詳細に記載した書類を提出する必要があります。また、資本金や借り入れの要件を満たすことも求められます。認可を受けた企業は、製造設備の導入時にかかるコストを大幅に削減できるため、長期的な競争力を確保できる可能性があります。ただし、投資金額によっては、BOIの申請準備から奨励証書の受領までに3~5ヵ月程度を要する場合もあるため、全体のスケジュール管理が重要です。

4. 現地企業とのパートナーシップによる進出

タイ市場に進出する製造業者にとって、現地企業とのパートナーシップを築くことは、効率的なビジネス展開を可能にする重要な手段です。その一例がジョイントベンチャー(JV)です。タイ企業のネットワークやノウハウを活用することで、市場理解が深まり、ローカルでの事業展開がスムーズになります。また、外国企業が単独で進出できない分野にも、JVを通じて参入できる場合が多く、事業範囲を広げる手段として有効です。

 

ただし、JVのパートナー選びは慎重に行う必要があります。信頼性、企業文化の違い、利益配分などの要素を十分に検討し、明確な契約を結ぶことが成功の鍵となります。

5. M&Aを活用した進出

タイでのM&A(企業の合併・買収)を活用することで、既存の市場や顧客基盤、サプライチェーンを迅速に確保できます。M&Aを通じて、既存の工場や製造設備を引き継ぐことができるため、新たに工場を建設するコストや登記移転時に必要な諸税の削減につながります。また、既存企業の法的手続きを引き継ぐことで、迅速に操業を開始できるのもメリットです。

 

ただし、M&Aには初期投資が高くなるリスクが伴います。そのため、適切な買収先を選定し、デューデリジェンス(企業調査)を十分に行うことが重要です。現地の法務・財務専門家と連携し、リスクを最小限に抑えることが求められます。

成功の鍵となる労働力確保と育成

製造業がタイに進出する際、労働力の確保と育成は重要な課題です。タイは豊富な労働人口を有し、製造業における熟練技術者も多く存在します。特に、2021年のミャンマーでのクーデター以降、ミャンマーからの労働者が急増しており、製造業にとって安定した労働力の供給源となっています。

 

タイ政府は技術者育成のための教育機関やトレーニングセンターを設置しており、現地でスキルを持った労働者を確保することができます。また、BOIのサポートを受けることで、外国人技術者のビザ取得手続きが簡素化され、高度な専門知識を持つ人材を効率的に確保できます。

 

さらに、タイ周辺国からの外国人労働者派遣サービスを提供する企業も多く、それらの企業への照会も労働力確保の有効な手段となります。

 

まとめ

タイへの製造業進出には、現地法人の設立、工業団地への進出、現地企業とのパートナーシップ、M&A、BOI認可による投資優遇措置の活用など、さまざまな方法があります。これらの進出形態や戦略を慎重に選択し、労働力の確保や現地の規制への対応を適切に行うことが、タイでの製造業成功への重要な第一歩となります。

 

次回は、タイの主要工業団地の選び方や、それぞれの特徴について詳しく解説します。

執筆者
高尾 博紀
GDM (Thailand) Co., Ltd.
代表取締役社長

「タイで最も土地取引を行う日本人」として、工場・物流施設やホテル・オフィスなどの事業用不動産の取得支援を行い、これまでのタイ国内での取引実績は150万㎡を超える。早稲田大学商学部卒業。2011年GDM (Thailand) Co., Ltd.を創業。

GDM (Thailand) Co., Ltd. のロゴ
GDM (Thailand) Co., Ltd.

土地・建物事業、オフィス物件事業、空間デザイン事業の3つの事業部で構成され、タイ・バンコクで設立から10年を超える。それぞれの分野には、日本人とタイ人スタッフのプロフェッショナルが在籍しており、各事業のレベルアップを図る「縦軸」と、事業横断的にサービスを展開する「横軸」によるシナジーを実現し、クライアントファーストのサービスを提供している。