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東南アジアにおける情報収集のあり方〜外部環境の適切な把握を目指して〜

東南アジアにおける情報収集のあり方〜外部環境の適切な把握を目指して〜

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グローバルなビジネス環境の先行きが不透明さを増す中、日本企業の事業展開先として存在感を増す東南アジアでも、外部環境に関する情報収集の重要性は増している。しかし、現地での情報収集は経験の浅い担当者がメイン業務の合間に手探りで対応しているケースも少なくない。本レポートでは、より効果的かつ効率的な情報収集を行うための基本的な心構えと情報源を共有する。

本レポートは、東南アジアで働くビジネスパーソンを主な想定読者とし、特に現地赴任の準備中や赴任開始から1年程度の方、または本社への報告のために現地ビジネスを取り巻く外部環境(地政学、国内政治、マクロ経済、社会状況、主要産業など)についての情報収集を新たに担当することになった方を念頭に置いている。

情報収集の第一歩

情報を吟味するための「軸」を作る

まず、ビジネスを取り巻く外部環境についての情報を収集する際の基本動作を確認したい。第一歩として肝要なのは、目の前にある情報やデータの「確からしさ」を自分である程度判断できるようになるための「軸」を作ることである。現代では、インターネット空間を中心に玉石混交の情報が氾濫しており、出所や定義が不明なデータも数多く存在する。このような状況では、信頼できる国際機関、政府機関、メディアなどの情報に優先的に触れ、可能な限り平均的で中庸な見方や認識を把握するようにしたい(具体的な情報源については後述)。ただし、こうした見方や認識が常に正しいわけではなく、どの情報にも発信者の意図が入り込むことは否定できない。重要なのは何事も鵜呑みにせず、根拠の薄い極論や明らかな誤情報に接した際に「ちょっとおかしいのではないか」と違和感を持てるような相場観を養っておくことである。

東南アジアの外部環境に関連する定量情報を把握する際には、日本の状況をしっかり押さえておくことも大切な軸の一つである。例えば、国の経済発展の度合いを示す指標である一人当たりGDPであれば、日本は現在約33,000ドルであり、過去の推移を見ると、1970年代後半はおおよそ2,000~5,000ドル、1980年代前半には1万ドルに達し、同年代後半のバブル期には2万ドルを超えた。こうした数字を押さえた上で、東南アジア各国の現在の一人当たりGDPが過去の日本のいつ頃の水準に相当するかを見ることで、各国の発展段階をより複眼的に捉えることができる。駐在している国や担当している国について何かしらのデータを調べる機会があれば、可能な限り日本の状況についても確認するようにしたい。図表1 東南アジアにおける情報収集のポイント

比較可能な情報源を重視する

東南アジアのビジネスを取り巻く外部環境を把握する際、実際に駐在や生活をしている1ヵ国のみの情報やデータを収集すれば十分な場合もあるだろう。しかし、多くの場合、ASEAN構成国全体(10ヵ国)や一部の国を除いた複数国を対象とすることが一般的である。たとえ明示的に求められていなくても、分析対象の特徴を際立たせ、より深い理解や洞察を得るためにも、比較対象となり得る複数国の情報やデータを収集する方がよい。情報は比較によってその価値を高めるからである。

こうした場合は、できるだけ1つの情報源(シングルソース)に依拠するのが望ましい。第1の理由として、シングルソースに絞ることで情報収集が効率的に行える点が挙げられる。例えば、「ASEAN構成国の総人口に占める65歳以上の比率(=高齢化率)を知りたい」となった場合、各国の統計局や人口関連の政策を担当する省庁のウェブサイトにアクセスし、それぞれデータの有無を確認する作業を繰り返すのは、相当な手間がかかる。こうした場合に信頼できるシングルソースからデータが取得できれば、労力を大幅に省くことができる。人口関連のデータであれば、国連の「World Population Prospects」を利用することで、ほぼ全ての国・地域について過去の推移や予測を含むデータを入手できる。

シングルソースが望ましい第2の理由は、情報やデータを提供する側が、その定義を統一してくれている、または定義が揃っていない場合でも「注」などで説明を補足してくれている点である。例えば、東南アジア各国では経済発展に伴い都市化が進展しているとよく言われるが、この「都市化率」を調べる際、それぞれの国の統計でどの項目が「都市化率」に該当するのかを逐一確認しながらデータを集めるのは手間がかかるうえ、指し示す内容が異なるデータを横並びで比較してしまうリスクもある。しかし、国連の「World Urbanization Prospects」を利用すれば、「全人口に占める都市部人口の比率」のデータが各国・地域について入手できるため、このデータを「都市化率」として扱い、比較分析を進めることができる。

ここまで述べたのは、複数の国同士の「横」の比較であるが、過去・現在・未来という「縦」の比較も意味を持つ。同じデータであっても、時間軸を加えた分析や、「横×縦」の掛け合わせによる比較を行えば、さらに多くの示唆を得ることができる。例えば、自分が駐在している国の現在の状況が、過去の日本のどの時期に相当するのかを比較することで、より具体的なイメージを掴むことができるだろう。具体例として、東南アジアの中でも高齢化が進んでいるタイを挙げると、現在の中間年齢(約40歳)は1998年の日本と同水準である一方、タイの現在の一人当たりGDPは約7,500ドルで、1998年の日本は3万ドルを超えている。この比較から、タイは先進国になりきらないまま高齢化を迎えており、日本よりも厳しい状況にあることが分かる。

生成AIを適切に利用する

日々の情報収集や資料作成に限らず、多くの業務遂行において生成AIは有用なツールである。しかし、現時点では誤情報を含むもっともらしい回答を生成する、いわゆるハルシネーションを完全に回避することは困難とされる。また、特定の国のビジネスオペレーション上のリスクについて質問しても、どの国にも当てはまるような一般的なポイントを列挙するだけの場合もある(この場合、質問の仕方にも改善の余地は大いにあるだろう)。そのため、生成AIが提示した回答をそのまま利用することはお勧めできない。生成AIが示す情報の正確性をある程度自分で判断できるようになるためにも、先述のとおり、「軸」を持つことが不可欠であろう。

一方で、生成AIは「日本の本社に東南アジアの電気自動車(EV)市場の状況について説明しなければならないが、どのようなポイントを盛り込めばよいか」といった壁打ちには有用である。また、「東南アジアのパパママショップでDXが進んでいると言われるが、具体例を挙げてほしい」といった形で、できるだけ多くのポイントを挙げてもらうこともできる。いきなりレポートを作成させることもできるが、あえて対話をしながら自分自身の思考を整理するような使い方がいいこともある。日々進化する生成AIに日常的に触れながら、情報収集と資料作成の補助ツールとして適切に活用したい。

押さえるべき情報源

軸を作るための情報源

ここでは、基本的な見方や認識を養うためのベースとなる情報源を紹介したい。まずは書籍であるが、いきなり専門書に手を出す必要はない。東南アジア全体、もしくは駐在する国、担当する国について、その通史や現代の政治経済を扱った新書やソフトカバーの入門書を2~3冊読んでみることをお勧めする。どの筆者の本がよいかは目的や好みにもよるが、一般論で言えば、多様なテーマについての著作を持つ筆者よりも、大学などの研究機関で東南アジアを長年研究している専門家が執筆した本の方がよいだろう。

地理についても、できるだけ早い段階で理解を深めておきたい。例えば、首都や主要都市、主な港湾や海峡の位置、さらには物流を支える鉄道や道路のルートを把握しておくとよいだろう。とはいえ、無理に覚えようとする必要はない。書籍や新聞、シンクタンクのレポートなどを読む際には、インターネットで地図を開き、気になる都市名などが出てきた際にその位置を確認するとよい。重要なものには繰り返し出会うため、いつの間にか頭に定着するだろう。また、東南アジアの概況を地図とともに説明している書籍なども、手元に置いておく価値はある。軸を作るための情報源

日本語の情報源としては外務省のほか、政府系の貿易・投資促進機関である日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所などの公的機関が挙げられる。これらのウェブサイトにある国・地域別のページは、まずその概況を大まかに把握する上でも有用である。特にビジネス寄りの情報を求める場合、ジェトロの「ビジネス短信」や「地域・分析レポート」には関心を引く記事も多いであろう。また、駐在先や担当国で国政選挙や政権交代といった大きな政治的な動きがある場合、何がポイントなのかを把握しておくことが重要になる。その際、現地での駐在や研究経験が豊富な専門家が在籍する組織の発信する解説記事などは頼りになる。

日々の動きを追うためには、新聞も重要である。東南アジアに関する英語メディアではNikkei AsiaやシンガポールのThe Straits Timesなどが挙げられるが、駐在国でどのような経済・ビジネス新聞が最も読まれているかを現地の同僚などに聞いてみるとよいだろう(これも大切な情報収集の第一歩である)。基本的にはインターネットで記事は読めるが、可能であれば紙媒体を購読するのもよい。一面から最後まで読み込む必要はないが、現地で何に関心がもたれているのかを知るためにも、ざっと眺めてみて、どのテーマに紙幅が割かれているのかを把握するだけでも意味がある。

また、政府高官の発言も重要な情報源である。メディア報道では一部が引用されることが多いが、大統領や首相、外交・経済・産業などを所管する大臣、中央銀行総裁などが行う記者会見や講演は、公式ウェブサイトで全文が確認できる場合が多い。気になる発言に触れた際には、公式ウェブサイトで全文を見てみるのもよいだろう。

定量情報を得るための情報源

下記に、東南アジア各国の状況を把握する際によく利用される定量情報や統計データの情報源をまとめる。まずは、こうした無料で入手できる公開情報の中で、頻繁に引用される情報源をしっかり押さえるところから始めたい。

日本企業の動向を把握するための情報源

現地にいると、本社から「他の日系企業のビジネスの状況はどうか」、「日本企業の東南アジアへの関心が分かる資料はないか」と尋ねられることは少なくないだろう。現地に進出している日系企業の動向を把握するには、ジェトロの「日系企業活動実態調査」が有用であり、東南アジア各国の状況については「アジア・オセアニア編」で確認できる。同調査は、実際に現地に進出、操業している日系企業が回答している点で貴重である。調査項目には、営業利益の見通し、今後の事業展開、競争環境や投資環境に対する見方、サプライチェーンや輸出の状況、賃金実態などがある。また、日本企業の海外事業の状況を把握するには、経済産業省の「海外事業活動基本調査」も参考になる。どのようなデータが取得できるか見ておくとよいだろう。

製造業企業の日本本社を対象に海外事業について調査したものとしては、政府系機関である国際協力銀行(JBIC)の「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」がよく参照される。この調査では、海外事業の実績評価、中期的な海外事業展開の姿勢、有望と考える事業展開先(国・地域)やその理由と課題に加え、サプライチェーンやサステナビリティにおける対応のあり方といった個別テーマについても取り上げられている。ジェトロが日本本社を対象に実施している「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」も参考になるであろう。日本企業の動向を把握するための情報源また、現地の日本や欧米などの商工会が会員企業を対象に実施しているビジネス環境についてのアンケート調査や、これらの団体が現地政府に投資環境の改善を要望するために作成している建議書なども、現地のビジネス環境を理解する上で有用である。

なお、こうした調査やレポートが公開されるとメディアで取り上げられることもあるが、記事で言及されるのは調査結果のごく一部に過ぎない。記事では紹介されていなかった部分から有益な情報が得られることもあるため、ぜひ実際にレポートの原典に当たることをお勧めする(時間がなければレポートの目次をながめ、どのような情報が得られるかだけでも見ておくとよい)。

COLUMN:東南アジアの多様性と情報収集
東南アジアは多様性に富んでいるとよく言われる。ASEANを構成する10ヵ国を見ても、歴史、民族、宗教、言語、文化、政治体制、人口規模、経済発展の度合い、産業構造など、多くの点で違いがある。その多様性を理解するには、まず自分で手を動かし、各国ごとに上記の項目などについて情報を集め、一覧表に整理していくことをお勧めする。こうして「手で稼ぐ」ことで、各国の違いや特徴を浮かび上がらせることも重要である。
ただ、現地に駐在しているのであれば、やはり「足で稼ぐ」のが一番だ。国内出張で地方都市を訪れたり、東南アジア域内の他の国へ出張したりすれば、多様性を肌で感じることができる。ここで大事なのは、移動中はできるだけ仕事のメールをチェックせず、街の様子や風景を見ることに集中することである。そこから得られる気づきもあるし、自分がデスクで調べた情報の「答え合わせ」にもなる。
ビジネスの視点で見ても、東南アジア各国の投資環境、商習慣、消費者の嗜好はそれぞれ異なる。この点について、各国や地域の市場の特性に合わせた戦略が重要だとよく言われるが、同時に、ある国で自社の商品やサービスが受け入れられなかったからといって、「東南アジアには市場性がない」、「東南アジアは難しい」と結論づけるのは早計とも言える。ビジネス環境が異なる他の国ではうまくいく可能性が残っているからだ。多様な東南アジアだからこそ、市場に適応する柔軟性のみならず、情報収集を通じて自社に合う市場を探し続ける粘り強さも必要かもしれない。

付加価値を高める方法

「現地ならでは」を意識する

現代では、多くの情報がインターネットで取得可能で、ビジネス環境の把握や分析に必要な情報も例外ではない。しかし、インターネット上で(無料で)入手可能な情報のみで構成された報告であれば、極端に言えば、日本にいながらでも作成可能であり、何よりも「現地ならでは」の付加価値が感じられない。だからこそ、現地駐在員は、「現地にいるからこその付加価値」が盛り込まれた情報や報告が提供できるようにしたい。

日本と現地で最も大きな差が生じるのは「肌感覚」で、これは体験や経験といった五感を通じて得られる情報でもある。例えば、一人当たりGDPを見ると、インドネシアは約5,000ドルで、日本と比較すると約6倍の差がある。この差が持つ意味は実際に現地に行ってみなければ分からない。5,000ドルという数値はあくまでも国全体の平均であり、首都のジャカルタであれば約2万ドルまできている(ジャカルタ中心部はさらに高くなる)。一方、地方都市では5,000ドル未満の地域も少なくない。

こうした数字はインターネットでも入手可能である。しかし、実際に各都市のショッピングモールやスーパー、市場を訪問し、テナント構成や棚に並んでいる商品の種類、その価格などを見てみると、地域や都市ごとの発展段階の違いをより体感的に理解できる。図表2 各国・都市の一人当たりGDP(2023年)東南アジア、特にタイなどで中国ブランドのEV(電気自動車)が存在感を高めていることは日本の報道でも把握できる。ただ、バンコクの幹線道路を観察すれば、中国ブランドのEVを簡単に見つけることができるし、中国車を扱うディーラーの店舗が増加している状況についても、現地で生活していれば自然と気づく。現地の同僚や友人に中国ブランドのEVに対する見方を聞いてみるのも「現地ならでは」の情報収集であろうし、中国車のシェアの推移を示すデータとともに関連する現地の動画や写真を報告に盛り込めば、より生き生きとした資料になる。

一方で、現地で生活していると、政府や調査会社が発表する統計データよりも先に、経済や社会、ビジネストレンドの変化を肌で感じることがある。例えば、食品価格の上昇、韓流の浸透、ECの普及といった変化を体感したのであれば、その感覚を裏付ける統計データや市場調査を探してみるとよいだろう。食品価格の上昇であれば、政府が発表する消費者物価指数(CPI)を参照することで、統計データと肌感覚の両面から現地の経済情勢への理解を深めることができる。

現地でのネットワークを作る

「現地ならでは」という観点で言えば、ネットワーキングもその一つである。情報収集という観点では、通常の人脈形成に加えて、現地の銀行やシンクタンクが開催するセミナーに参加し、もっと話を聞いてみたいと思った講演者がいれば、名刺交換し、その場で個別に意見交換の機会を設けてもらえるようお願いしてみるとよいだろう。また、自社ビジネスに参考になるレポートを見つけた場合は、そのレポートの発行者や執筆者にコンタクトを取ってみるのもよい。

専門家との意見交換となると、アポイントを取得するハードルが高いように思われるかもしれない。しかし、しっかりとした目的意識を持って趣旨を説明すれば、無下に断られることは意外と少ない。専門家側も、実際のビジネス関係者の見方を知りたいと考えている。情報交換、意見交換はgive&takeが基本であり、自社が現在のビジネス環境をどう評価しているか、どのような影響を受けているかといった情報を可能な範囲で提供すれば、双方にとって十分に意義のある意見交換にできる。

現地駐在の醍醐味は、統計データと肌感覚を突き合わせたり、ネットワークを活用したりすることで、「現地ならでは」の付加価値のある情報を収集、分析、発信できる点にある。こうした情報は、「日本からでもできる情報収集」を超えた説得力を持つ。日本の本社に現地情勢を報告する際には、具体的な数字などのデータとともに、現地でしか得られない肌感覚をいかに伝えるかを意識して対応したい。

普段から留意しておきたい点

情報源を蓄積する

情報収集に携わる中では、有益な情報源を拡張していく姿勢も重要である。良質な情報源に触れながら日々の情報収集に取り組んでいると、副次的な効果として、記事やレポートの中で「こんな興味深い情報やデータがあるのか」、「面白い見方をする専門家がいるのだな」と気づくことがある。また、信頼できる記事やレポートが引用している情報やデータは、ひとまず参考にしてもよいだろうという判断もある程度は可能である。多くの場合はそうした情報やデータの出所、コメントなどが使われている専門家の所属も明記されているため、これらをリスト化しておくのもよいだろう(ネットブラウザのブックマークに保存するだけでもよい)。

情報源として注意したいのは、著名人を含む個人のSNSなどでの情報発信である。専門家として認知されている方や、特定の業界で知見を積み上げた方が自身の専門分野について発信している情報はある程度信用できるが、そうでない場合は、「なにかの情報を知るためのきっかけ」程度に受け止めておき、必要に応じて自身で裏を取るのが無難であろう。

とはいえ、政治家や政府機関のSNSは情報収集において有用であるし、インフルエンサーなど個人のSNSが現地の事情やトレンドを知るうえでの貴重な情報源となることもある。SNSは適切な距離感で活用するようにしたい。

英語での情報収集に取り組む

日本語で入手できる情報量には限りがあるため、アクセス可能な情報量を増やすためには英語での情報収集が不可欠となる。初期的な情報収集はインターネット検索から始まることが多いと思われるが、インターネット上の情報の約半分は英語で書かれているというデータもある(日本語の割合はおそらく世界の総人口に占める日本の比率と同程度だろうか)。しかし、技術の進歩のおかげで、ネットブラウザ上で英語から日本語への翻訳ができるようになっている。現地のビジネスに影響を与える外部環境の変化をいち早く、かつ正確に捉えるためには、英語での情報収集に対する抵抗感はできるだけなくしておきたい。

また、先述の通り、現地で関心が持たれているニュースや出来事を把握する上でも、現地の英字新聞をインターネットだけでなく、一覧性に優れた紙媒体で購読するのもよい。ローカル言語では難しいかもしれないが、英語で読める現地の新聞や雑誌、テレビ番組などから得られるものも「現地ならでは」の情報である。

再現性の高い情報収集を意識する

情報収集力や分析力は、組織として向上させるべきものである。そのため、情報収集における考え方や手法などは可能な限り形式知化し、後任者に確実に引き継げるようにしておく必要がある。情報源については、人的ネットワークを含めてリスト化しておくことが望ましい。先述したような「現地ならでは」の付加価値が乗った情報は、どうしても個人の駐在経験の長さや感覚に依存する面がある。ただ、そうした情報を含む説得力のある、かつ更新しやすい「見本」となるような資料を作成する意識は持っておきたい。後任の「見本」となるような資料を作成しておく

情報収集の組織化において重要なのは、一般公開されている情報(オープンソース)を基盤とすることである。一般に信頼できる情報源であるほど、入手の容易性、情報やデータの更新の継続性、過去の情報やデータへのアクセスなどが担保されている。情報を得るのに特殊なスキルを必要としない情報源である方が、誰でも容易に触れることができるため、組織内での再現性や汎用性が高い。

一方で、高額な費用や特別な人的ネットワークを必要とするような特殊な情報源は、必ずしも組織としての継続的な利用に適しているとは言えない。情報収集の担当者がローテーションすることを想定すると、後任者が着任後すぐに前任者の構築した基盤をもとに活動を開始できるよう、できるだけ再現性の高い情報収集と分析のあり方を模索していくことが重要だろう。

本レポートで述べてきた情報収集のあり方は、「土台」とも言える。確固とした土台があれば、情報収集の経験値が積み上がるにつれ、その質も着実に向上していくだろう。不確かな理解やデータに基づく信頼性の低い情報を見抜けるようになるだけでなく、無料では入手できない情報(=調査においてフィーを払って入手する価値のある情報)を見極められるようになる。また、本レポートでは個別の国や産業に特化した情報源には言及していない。ただ、ここで共有した情報収集の要諦を念頭に置けば、個別の国や産業についての信頼に足る情報源を蓄積していくことはそれほど難しくはないだろう。本レポートが、東南アジアで情報収集に携わる日系企業のビジネスパーソンの一助となれば幸いである。

執筆者
岡野 陽二
JSIP エバンジェリスト
コンサルティングファーム所属
シニアマネージャー

政府系機関、総合商社系シンクタンクを経て現職。一貫して、日本企業の中国を含むアジアでのビジネス展開の支援やインテリジェンスの提供に従事。中国、シンガポールでの駐在経験あり。「情報の力で日本企業の海外ビジネスを支える」がキャリアを通じたミッション。

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