
ASEAN発のGX人材育成の在り方
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前回は、日系企業がASEAN各国と共創してきた産業アセットの競争力を維持・強化するためには、国際情勢に応じて、その高度化を図る必要があることについて述べた。今回は、高度化を進めるうえで、現地の研修施設との連携等を通じた人材育成の重要性について、GX(グリーントランスフォーメーション)を切り口に掘り下げていきたい。
目次
エネルギーユーザーサイドでの人材育成の必要性
日系企業がASEAN各国と共創してきた産業アセットの持続可能な競争優位性を確保するためには、国際情勢の変化に機敏に対応し、常に高度化を図る必要があることを、これまでの記事で述べてきた。しかし、GXを実現するためには、具体的な取り組みを推進できる「人づくり」が不可欠である。
特に、GXの第一歩であるCO₂排出量の可視化や省エネを実現するには、生産プロセスを含む事業活動に精通していることが求められる。そのため、工場などエネルギーの「需要側」におけるGX人材の育成が、電力会社などの「供給側」の人材以上に重要となる。需要側の従業者数は供給側に比べて圧倒的に多く、Appleなど世界的企業が目指すサプライチェーン全体でのGXを推進するには、取引関係を持つ企業間での連携を促し、関係者全体のリテラシーを同時並行的に底上げしていく必要がある。
また、ASEAN地域では先進国と比べて費用対効果に対する意識がよりシビアであることも、過去に述べた通りである。
こうした背景を踏まえ、現地のニーズに即したGX人材の育成を、より効率的かつ効果的に進めるためには、以下の2点が重要な鍵となると考えている。
① 現地研修施設との連携強化
② Leanの考え方やデジタル技術との組み合わせ
以下では、この2点について詳しく述べたい。
現地研修施設との連携強化の重要性
日系製造業はこれまで、ASEAN各国への進出にあたり、現地の安価な人件費などを最大限に活用すべく、日本等に立地する工場の生産工程を現地で再現することを基本方針としてきた。そのため、現地で中核となる産業人材の育成についても、日本の工場における熟練職人による専門的なOJT(On the Job Training)などを通じて実施される「自社完結型」の研修が中心であり、日本政府も、企業が行うこうした研修を補助金等を通じて支援してきた。
しかしながら、GXなどの新たなトレンドに対応する知識・ノウハウは、自社の人材が必ずしも精通しているとは限らない。加えて、GXを実現するには、多様な組織に所属する、より多くの人々のリテラシーの画一的な底上げを図る必要がある。
こうした背景から、現地の研修施設等に専門家を集め、より汎用的な内容の指導を集中的に行う、いわゆる「現地完結型」の研修を推進する意義は大きいといえる。
これら2種類の人材育成手法の特徴は図表1に整理した通りであり、二者択一とするものではない。各企業の状況や、研修生のスキルレベル・研修内容に応じて、適切に使い分けることが重要である。
Lean・カイゼンの考え方やデジタル技術との組み合わせ
加えて、GXがLean・カイゼンの考え方やDX(デジタルトランスフォーメーション)と高い親和性を持つ点に着目し、これらとのシナジーを最大限に追求することも重要である。
まず、Lean実現のためのカイゼンは、業務における無駄を可視化し、それを省くという行為を指す。これまでのカイゼンは、人の動作や生産設備の稼働といった生産ラインに存在する無駄が主な対象であったが、同様のアプローチをエネルギーの供給にも応用することで、さらなる省エネとCO₂削減が期待できる。
実際、脱炭素意識が高い企業は「カイゼン×GX」の取り組みを徹底しており、例えばDENSOでは、エネルギーの需要側・供給側の両面においてLean化を進め、真に付加価値を生む活動に対してのみエネルギーを供給する「エネルギーJIT(ジャスト・イン・タイム)」の実現を目指している※1。こうした取り組みは大規模投資を必要としないケースも多く、コスト削減を通じた競争力強化にも寄与することから、積極的に推進すべきGX活動である。
さらに、デジタル技術の戦略的な活用も極めて重要である。CO₂排出量や電力使用量などは目に見えないため、まずはIoTセンサーや可視化システムを用いて、「見える化」する必要がある。そのうえで、 CO₂削減策の検討や実施に際して、AIやデジタル制御技術を活用すれば、より効率的かつ効果的にCO₂排出量等の削減を進めることができる(図表2)。また、DXの推進は「人が理解し、やらなければならないこと」を最小化できるため、人材育成に必要な工数の低減にも寄与しうる点も見逃せない。
※1 デンソー公式ウェブサイト「CO₂ Zeroモノづくり」(2025年3月24日閲覧)









