
業務の徹底化で組織が変わる!成果に直結する改善術
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業務の徹底化は、業務の効率性と生産性を高めるために、業務の各段階を徹底的に実行することを指します。新しい業務方式やルールを導入しても、それが現場に定着し、効果を生み出さなければ大きな変化は期待できません。そこで重要なのが業務の徹底化です。本記事では、新しい業務方式が定着しない理由や業務徹底化の進め方を解説します。
目次
業務の徹底化とは
「業務の徹底化」とは、業務がルール通りに進められているかどうかを確認することです。業務の「可視化」「標準化」「単純化」のプロセスを経て、現場の従業員が業務の内容やルールを理解し、実践し、効果を生み出すところまでを指します。新しいルールを導入しても、実際に定着しなければ意味がありません。業務の徹底化によって、現場で具体的な結果が出されることが重要です。
業務の徹底化を行うためには「理解」「実践と確認」「しかけ」の3段階に整理して考えることが大切です。
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徹底化における1stステップ「理解」とは
業務の徹底化における「理解」とは、現場の従業員に新しいルールや、やり方を理解してもらうことです。ただ伝達して終わりではなく、現場の従業員が「理解した」と感じられる状態にまでしなければなりません。伝え方としては、社内通達やマニュアルの共有、ミーティングでの伝達といったさまざまな手段があります。どの手段を採用する場合でも重要なのは、現場の行動変容につながる具体性と分かりやすさがあることです。
従業員がルールや手順をしっかりと理解し、日々の業務に適用できるようにするためには、できるだけ分かりやすく説明しなければなりません。例えば、文章だけではなく、写真や動画を活用した業務マニュアルの作成が効果的です。視覚的な情報を加えることで、誰でも簡単に理解できるようになります。
また、勉強会や社内研修などの場を設けて、地道に理解を得る努力も重要です。こうした取り組みにより、現場の従業員は新しいルールや、やり方を確実に身につけ、実践する準備が整います。
「理解」で重要な「MORSの法則(具体性の法則)」
従業員の理解を得る段階で活用できるのが「MORSの法則(具体性の法則)」です。この法則を取り入れることで、より効果的に新しいルールや、やり方を伝えられるようになります。
MORSの法則(具体性の法則)は、以下の四つの要素で構成されています。
- Measured(計測できる)
- Observable(観察できる)
- Reliable(信頼できる)
- Specify(明文化されている)
各要素について解説します。
Measured(計測できる)
「Measured(計測できる)」は、業務がカウントできる、あるいは数値化されているかを確認するための基準です。具体的な数値目標を設定することで、業務の進捗を明確に測定でき、従業員は自分がどのように達成すべきかを理解できます。
この要素では、定量的な評価が可能なことがポイントです。例えば、在庫の棚卸しを指示する際に、「在庫数を把握してください」という曖昧な伝え方ではなく、「1時間以内に棚の5列分の在庫を数えてください」という具体的なものにします。
Observable(観察できる)
「Observable(観察できる)」は、誰が見てもどんな行動なのかが分かることです。曖昧な指示では伝わらないため、具体的な実施場所や期日を指定する必要があります。
この要素では、客観性があり、目に見える形で確認できることがポイントです。誰が見てもその作業や活動の様子を観察することで、進行状況を把握できる必要があります。例えば、定期ミーティングの実施を徹底したい場合は、「定期的にミーティングを行う」という目標ではなく、「毎週月曜日の10:00に会議室Aで全員参加の進捗報告会を行う」とします。
Reliable(信頼できる)
「Reliable(信頼できる)」が意味するのは、誰が見てもそれが同じ行動だと認識できるかどうかということです。依頼すべき行動はできるだけ具体的にする必要があります。
この要素では、全員が共通の理解をもち、再現性があることが重要です。例えば、営業部の各メンバーに売上の記録を徹底させたい場合には、単に「記録してください」と指示するだけではなく、同じ形式・条件で記録させる必要があります。
Specify(明文化されている)
「Specify(明文化されている)」は、何をどうするかが明確に定義されている状態を指します。目標やプロセスが具体的に明文化されていることで、従業員は何をすべきかを正確に理解し、行動に移せるようになります。
例えば、品質改善に取り組む場合、「品質を向上させる」という曖昧な指示ではなく、「毎日終業前に30分間、製品の品質チェックを行う」のように、具体的な行動を明文化します。
「理解」の次に行う「実践と確認」とは
業務の徹底化において、「理解」の次に行うステップは「実践と確認」です。ルールが現場で理解されただけでは不十分であり、その理解が行動として実践されることが重要です。また、上司や指導者は、現場の従業員が実際にできたかどうかを確認する必要があります。
しかし、「理解」と「実践と確認」の間には大きなハードルがあり、理解させただけで「絵に描いた餅」に終わってしまうことは少なくありません。このハードルを乗り越えるためには実践されない原因を冷静に分析し、解消に向けて適切なアプローチを重ねることが不可欠です。
実践されない原因は大きく2つに分けられます。
- 分かっているが実践に移せない
- 実践に移しているが思うような結果に至らない
それぞれの原因について詳しく解説します。
分かっているが実践に移せない主な原因
従業員が新しい業務方式を理解していても行動が伴わず、実践されない場合があります。この主な原因は「忘却」「誤解」「惰性」「無視」の四つです。
1. 忘却
新しいルールを理解していても、いざ使う場面になるとその存在をすっかり忘れてしまうことがあります。これを防ぐためには、通知や警告、表示の仕方を工夫し、確実に新しいルールを実践する仕組みを作ることが重要です。
2. 誤解
従業員が新しいルールを理解しているつもりでも、実際には誤解している場合があります。この場合、具体的で明確な指示を出すとともに、理解度チェックやテストなどを通じて、正しく理解しているかを確認することが必要です。
3. 惰性
従業員がつい慣れ親しんだ古い方法を使ってしまう場合があります。この問題を解決するには、新しい方法しか受け付けないルールにするなど、簡単には古い方法に戻せない仕組みを作ることが効果的です。
4. 無視
従業員が新しいルールを意図的に無視する場合があります。これは、従業員がルールの重要性を認識していない、あるいは新ルールへの不満や変化に対する不安を感じている場合に起こります。この問題を解決するためには、変化の必要性とメリットを丁寧に説明し、従業員が新しい方法に適応するためにサポートすることが重要です。
実践に移しているが思うような結果に至らない主な原因
従業員がルールを実践しているものの、期待通りの結果に至らないことがあります。主な原因は「理解不足」「不慣れ」「スキル不足」「方式不備」の四つに大別できます。
1. 理解不足
従業員がルールを実践しようとしても、実際にはその内容を完全には理解していない場合があります。この問題を解決するためには、ルールを再度丁寧に説明し、理解度を確認するためのテストやフィードバックセッションなどを実施することが効果的です。
2. 不慣れ
新しいルールや手順に従うことに慣れていないため、スムーズに実践できない場合があります。この場合、実践の機会を増やし、慣れを促すトレーニングやサポートを提供することが必要です。
3. スキル不足
従業員が新しいルールで業務を遂行するために必要な技術や知識をもっていない場合、結果として思うような成果が上がりません。この問題を解決するためには、スキルアップのための教育プログラムや研修を実施し、従業員が必要なスキルを身につける機会を提供します。同時に、スキルレベルに合うように業務を簡素化することも有効です。
4. 方式不備
ルールや手順自体に問題があり、現場で実践した際にうまく機能しない場合があります。業務手順が現実的ではない、またはリソースが不足しているといったケースです。この場合、現場からのフィードバックを収集し、ルールや手順を見直すことで改善を図ります。
徹底化に向けた最終工程「しかけ」とは
「しかけ」は、新しい業務方式への移行をスムーズに行うための重要な要素です。
ここまでに解説した「理解」および「実践と確認」は、明示的・意識的に行うものです。従業員は新しいルールを理解し、日々の業務で意識的に適用します。また、上司や指導者はその実践状況を確認し、必要な改善やフィードバックを行います。
これに対して「しかけ」は、従業員が新しいルールを意識的に守ろうとしなくても、自然とそのルールに従った行動がとれるような環境や仕組みを整えることを指します。身近な例としては駐車場の白線が挙げられます。広い駐車スペースに白線が引いてあれば、ドライバーは自然と白線内に収まるよう停車するため、停車位置や方法を指導する必要はありません。
「しかけ」の段階では、現場に負担をかけないような仕組みを構築し、従業員が自然に「新しい業務方式の方が楽」と感じるようにすることが理想的です。
「しかけ」で重要な「ナッジ理論」と「EAST」
「しかけ」を構築する際のヒントになるのが「ナッジ理論」です。ナッジ理論は、人々の行動を変えるために、小さな変化や「ナッジ(ある行動をそっと促す)」を利用する戦略です。この理論では、強制せずに人々の自発的な行動を促すことを目指しています。ナッジ理論の実践的なフレームワークとして、行動変容を効果的に促すための「EAST」があります。EASTは以下の要素で構成されています。
- Easy(簡単・簡素)
- Attractive(魅力的・印象的)
- Social(社会性)
- Timely(タイミング)
各要素について解説します。
Easy(簡単・簡素)
Easy(簡単・簡素)は、シンプルかつ手間をできるだけかけずに行動を実行できるようにすることです。面倒な手順を取り除くことで、従業員が自然に行動を選択しやすくなります。例えば、作業完了の報告方法について、文字数の多い報告書を作成・提出させるのではなく、システム上のワンクリックで完了報告ができるようにするなどの工夫です。
Attractive(魅力的・印象的)
人々の行動を促すために、行動を魅力的にすることです。これには、金銭以外の報酬を与える方法や、人の「損失を回避したがる性質」(利益を得るよりも、何かを失うことを避けたがる心理的傾向)を活かす方法が含まれます。
金銭以外の報酬を与える方法では、従業員がその取り組みに対して楽しさや意義、やりがいを感じられるように設計します。例えば、新しいルールで成果を出した従業員を社内広報で紹介したり、表彰したりする仕組みが挙げられます。
損失を回避したがる性質を活かす方法としては、例えば、新しいルールに従わなかった場合に、社内設備の利用を一時的に制限する仕組みを導入する方法があります。
Social(社会性)
社会規範を示し、人間が社会性のある生き物である性質を活かすことを意味します。人は他人の行動や社会の基準に影響されやすいため、この特性を利用して行動変容を促します。例えば、節電を促進するにあたり、「全部署の従業員のうち、90%がすでに節電に取り組んでいます」というメッセージを示すことで、社会規範を明確にし、従業員に節電行動を促すことが可能です。
Timely(タイミング)
行動変容を促すためには、情報を提供する適切なタイミングがあります。人は特定の状況や時間において行動を起こしやすいため、そのタイミングで適切なメッセージやリマインダーを提供することで行動を自然に促進できます。
例えば新しいルールを適用する前日に、「明日から新しいルールが適用されるため、業務開始前に再確認してください」というメールを対象者全員に送付する方法などが考えられます。
まとめ
業務の徹底化は、組織の変革を促し、成果に直結する重要な取り組みです。「理解」のステップでは「MORSの法則」に合致しているかを意識しましょう。「実践と確認」では、「分かっているが実践に移せない」場合と「実践に移しているが思うような結果に至らない」場合に原因を切り分け、解消方法を検討・実施します。「しかけ」のステップでは「ナッジ理論」と「EAST」の要素を組み合わせて、従業員の行動変容を促すことで、よりよい結果を導き出せます。このプロセスを継続的に実行し、改善を重ねることで業務の徹底化につながります。
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