
なぜ業務効率化で成果が出ないのか?成果を阻む構造的ムダの正体と対策
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深刻な労働人口の減少に直面するなか、生産性の向上は多くの企業にとって避けては通れない課題です。しかし、DXを積極的に推進しつつも期待した成果が得られず、現場の負担が変わらないと悩む担当者も少なくありません。
本セミナーは、「なぜ、業務効率化しても成果が出ないのか〜成果を阻む“構造的ムダ”の正体〜」と題して開催されました。株式会社スタディスト リーンソリューション部 部長を務める⼩峯悠司が、業務の根底に潜む構造的なムダをどのように見つけ出し、解消していくべきかを、リーンオペレーションの考え方をもとに解説しました。
前編では、多くの企業がDXに投資しながらも成果が出ない理由と、業務効率化の成果を阻む3つの構造的ムダの正体についてご紹介します。
目次
なぜDXに投資しても現場の負担は減らないのか
株式会社スタディスト リーンソリューション部 部長 ⼩峯悠司(以下、⼩峯):現在、日本社会が直面している最大の課題は、生産年齢人口の急激な減少にあります。
2065年までに労働人口は現在より約4割減少すると見込まれており、従来は10人で対応していた業務を、わずか6人で遂行しなければならない時代が到来します。

こうした背景から、DX(デジタルトランスフォーメーション)を検討している企業も増えてきました。当社の調査によると、約7〜8割の企業が何らかの形でDXに着手しています。しかし、実際に成果が出ている企業はなかなか増えていないというのが実態です。
多くの現場からは「ルーティン作業が減らない」「導入したツールを使いこなせていない」といった声が聞かれます。生成AIなどの最新技術を活用して効率化を図っているはずなのに、なぜかアウトプットが増えず、忙しさが改善されないという矛盾を感じている担当者も少なくありません。
「ツール導入=効率化」という誤解が失敗を招く
⼩峯:DXに投資を行いながらも成果に結びついていない最大の要因は、多くの企業が「効率化=ツールの導入」と捉えてしまっており、導入自体が目的化している点にあります。
チャットツールの導入やRPAによる業務の自動化、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)の整備などは、あくまで手段にすぎません。
これらは作業のスピードアップにはつながりますが、本質的に解決すべき課題に辿り着けていないケースだと感じています。企業の現場では負担が減らないまま、むしろ手間が増大してしまう現象が起きているのです。
例えば、製造現場で入力フォームをデジタル化しても、現場の動線に合わなければ紙にメモしてから後でパソコンに転記するといった二度手間が発生します。データの記録そのものが煩雑になることで、本来の作業よりも時間を取られてしまい、担当者はその矛盾に気づかない状態が続いているのです。
また、ルール変更の意図が十分に伝わらず、新しいツールと古いツールが混在したまま現場が混乱する事例も散見されます。表面的な改善は作業の置き換えに終始するため、プロセスの前提や設計といった構造が変わらなければ、いくらツールを刷新しても成果は得られないでしょう。

組織の生産性を停滞させる3つの「構造的ムダ」
⼩峯:業務に潜むムダは、表面的なものと構造的なものの2種類に大別されます。作業速度やツールの使い勝手といった表面的なムダに対し、構造的なムダは長期にわたって非効率を招き続ける根本的な原因です。
私たちが提唱する構造的ムダには、「個別最適」「属人化」「変わらない前提」の3つの要素が含まれます。この3つを解消しない限り、どれほど個別の作業を効率化しても、組織全体の生産性は向上しません。
ここからは、構造的ムダを生む「個別最適」「属人化」「変わらない前提」の3つの要素について詳しく解説します。

組織全体の不整合を招く「個別最適」
⼩峯:1つ目の要素は、業務全体の停滞を招く要因の1つである「個別最適」です。
個別最適は、各拠点や部門が自分たちだけの都合で最適な手法を追求し、組織全体としての整合性が失われている状態を指します。例えば、同じ入荷検品業務であっても、拠点ごとにやり方が異なれば、トラブル発生時の改善が進みづらくなります。
また、人手不足の拠点に応援を派遣しても、やり方の違いから機能しないといった問題も生じるはずです。拠点ごとのばらつきは、アウトプットの品質低下や全体のムダを生む仕組みそのものとなってしまいます。
リスクと停滞の要因となる「属人化」
⼩峯:ムダを生む2つ目の要素は「属人化」です。
属人化が業務に与える悪影響も、深刻な構造的ムダの1つです。ベテラン社員の経験や勘に頼りすぎる作業は、一見うまく回っているように見えても、その担当者が不在になった瞬間に業務が停止するリスクをはらんでいます。
属人化した環境では、手順が可視化されず、教育も進みません。さらに、担当者本人が「これがベストだ」と主張すれば、第三者が改善を提案することさえ難しくなります。人への依存は、持続可能な組織運営を妨げる大きな壁となります。
変化を阻害する「変わらない前提」
⼩峯:最も見落とされがちなのがムダを生む3つ目の要素「変わらない前提」です。
環境や業務量は変化しているにもかかわらず、昔のルールや手順、役割分担が更新されずに継続されているケースが多く見られます。
例えば、以前のミス対策として増やしたチェック工程がシステム化によって不要になっているにもかかわらず、今も形式的に残っている状態が挙げられます。また、10年前の設備環境に合わせた作業順序をそのまま踏襲しているため、現在の動線が極端に長くなっている現場も珍しくありません。
電子化された後も承認待ちが発生する状態だと、組織全体の改善スピードを著しく低下させ、時代の変化から取り残される要因となります。これらの構造的ムダを根本から見直すことで、初めて効率化の成果が目に見える形となって現れるのです。
ツールを入れる前に着手すべき「業務の構造改革」
⼩峯:構造的ムダの解消と個別の業務効率化のどちらから着手すべきか、判断に迷う人も多いでしょう。現場の忙しさを目の当たりにすると、どうしても「まずはツールを入れて早く楽にしたい」という効率化を優先しがちです。
しかし、構造が整理されていない状態でツールを導入すると、現場の負担が増えるだけでなく、構造的ムダを見逃すことにもなります。例えば、新しいアプリと古いExcelが併用されたり、RPAのメンテナンス工数だけが増加したりといった、逆効果になってしまう可能性もあります。

全体を捉え直すステップとしては、現状分析で業務を棚卸しし、実態を把握することを優先して始めましょう。
次に業務を構造化し、フローや役割、ルールを整理します。そのうえで構造的ムダを徹底的に排除した後に、RPA導入や手順の単純化といった作業効率化に着手してください。
構造を整える作業は、行為と同じ意味を持ちます。目的や判断基準を整理し、部門間の流れを可視化す業務の前提を見直することで、それまで見えていなかった不合理な前提が浮き彫りになります。
すべての構造改革を終えてから効率化に着手する必要はありません。全体を捉え直すプロセスのなかで、先行して進めてよいものは順次実行していくべきです。大切なのは、構造改革と効率化を両輪として捉え、正しい順番で進めていく視点を持つことです。
現状を分析し、構造的ムダを特定するための具体的な手法については、業務アセスメントの活用が有効です。自社のオペレーションにどのようなムダが潜んでいるのか、客観的な視点で評価することが改善の第一歩となります。
まとめ
前編では、多くの企業が業務効率化に失敗する根本的な理由と、成果を阻む構造的ムダの正体について解説しました。「個別最適」「属人化」「変わらない前提」といった構造的な問題を放置したままツールを導入しても、真の生産性向上は実現できません。
(後編はこちらから)







