
AI投資を成功に導く3ステップ。属人化を脱する業務再設計のアプローチ
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AI投資が期待通りの成果を出せず、デジタル赤字(投資額がリターンを上回り続け、コストだけが積み上がる状態)に終わってしまう背景には、既存業務の自動化を進める上で見過ごされがちな属人化の壁があります。この問題を放置したままツールを導入しても、結局は「ツール費用」を払いながら「従来通りの人件費」もかかり続ける「デジタル二重投資」に陥り、真のROI(投資対効果)は得られません。
本セミナーは、「AI投資のROIを最大化する業務再設計の技術」と題して開催され、株式会社スタディスト インキュベーション本部 業務自動化支援推進室 室長の藤江彩子が登壇しました。
本記事では、属人化から脱却し、AIを組織の資産として定着させるための具体的な3つのステップについて詳しく解説します。
(前編はこちらから)
目次
業務自動化を最短で実現する3つのステップ
株式会社スタディスト インキュベーション本部 業務自動化支援推進室 室長 藤江彩子(以下、藤江):属人化という個人知の状態から、形式知化(誰かがいなくても回る仕組み)を作っていくためのステップとして、3つのステップを提案しています。
【ステップ1】現状の把握と可視化:客観的な評価で見極める優先順位
ステップ1は、現状の把握です。業務の一覧化、可視化を行います。感情論ではなく、業務一つひとつを同じ粒度で洗い出します。例えば「Excelテンプレートを用いた見積書の作成」というくらいの粒度で整理することを推奨しています。
そして、「その業務にどれだけ時間がかかっているのか」という業務量、「どの程度特定の人に依存しているか」という属人性、万が一その人がいなくなった場合の影響度という3つの軸でスコアリングして客観的に評価します。
業務のプロセス図が書けるレベルまでしっかり棚卸しをして、最もリスクが高く改善効果が大きい業務から優先的に手をつけるという明確な判断基準を持つことが重要です。
【ステップ2】業務の「引き算」:不要な業務を捨て、最適な解決策を割り当てる
ステップ2は、標準化・外部化・自動化です。洗い出した業務に対して最適な解決策を割り当てていきます。ここで最も重要なのが、目的が不明瞭な業務は引き算をする、なくす、目線を変えるという判断です。このタイミングで形骸化している業務プロセスを見直し、整理しておきます。
その上で、手順や判断基準が明確になったルーチンワークは、AIやワークフローツールで自動化し、マニュアル化されている業務はアウトソーシングを活用して生産性をさらに高めたり、チームで分担したりなどして切り分けを行います。
【ステップ3】新しい業務フローの設計:曖昧な判断基準の徹底的な言語化
ステップ3は、新しい業務フローの設計です。AIが何を評価・判断するのかを明確にするため、判断基準やルールの言語化を徹底的に行います。
例えば、議事録作成のように、従来記憶で保管していた曖昧な作業を廃止し、書き出す項目を見直すといったステップを挟みます。「こういう判断をしたいから、こういう構造で自動化してくれ」と定義をしていくことが重要なポイントになります。
自動化を現場に定着させる際の「実装の壁」をどう乗り越えるか
藤江:ここまで業務フローの設計図を作ったとしても、多くの企業が、この設計図を実際の現場で実装、定着させるフェーズで難航しています。ツールを導入した後に、いつの間にか現場の方々が手作業に戻ってしまうのです。
これはAIの性能が悪いのではありません。例外データの発生やシステムの仕様変更などに直面した際、判断基準がブラックボックス化していると、忙しい現場では「業務を止めないこと」が最優先となります。結果として、「いちいちシステムを通すより、全部手作業の方が早い」と元のやり方に引き戻されてしまうのです。
この自動化が止まってしまう根本原因は、個人知の罠にあります。AIで作業の部分だけを自動化して、例外処理などの判断を依然としてベテラン社員の頭の中に残してしまっているためです。そうすると、イレギュラーに遭遇するたびにベテランが調整役として介入しなければならなくなります。
AI投資を組織の資産に変えていくためには、属人化している個人の脳内にある判断基準を逃げずに言語化をして、要素を分解していく必要があります。
例えば、「FAX注文の時はA支店に発送する」「特定顧客の問い合わせはBさんへ」といった独自のルールを、ヒアリングや整理によってしっかりと構造化されたルールに変えていくのです。この形式知をAIやワークフローに組み込み、例外対応も含めた業務プロセスが自動化されて初めてROIを生む組織の資産になります。
要素を分解していけば、本当に最終判断が必要なところ以外は言語化することができるようになるはずです。
業務標準化のプロによる伴走支援でROIを最大化藤江:業務の一覧化から構造化、定着までの一連の流れを、現場の対応で手一杯のベテランの方々が本業の片手間でやり切るのは至難の業です。
しっかり最短ルートで組織の資産としてナレッジを構築していくためには、このプロセスを伴走してくれる外部の実働支援を頼るという選択肢もあります。
例えば、弊社では、業務の標準化や現場への定着支援を得意としており、業務改革の青写真を描くだけでなく、実装と定着までの空白地帯を埋めるパートナーとして並走します。
「AIをどの業務に使えばいいのか」「一部の社員しか使えていない」というモヤモヤをお抱えでしたら、現場の獣道を整理して、AIが正しく動く構造を作るサポートをさせていただければと思います。
セミナー時の質疑応答内容
Q1:業務自動化の成功のステップで紹介されていた3軸のスコアリングで、優先度が高かったのに結果的に自動化できなかった業務はありますか?
藤江:目的が複数あって、目的から逆算して自動化の設計をする際に、複数の目的を含めて考えてしまった結果、自動化できずに人の判断で行うことになったケースがありました。
また、頻度や改善の優先度が高いとスコアリングしたものの、高度なお客様との交渉や会話が切り離せない業務だったため、本当に使われるものにならなかったケースもあります。「どの業務でスコアリングをするか?」というところをしっかり整理してから進めることが大切です。
Q2:会社の業務が多すぎて、どこから手をつければ良いのか迷います。
藤江:すべての業務をしっかり洗い出して客観的に可視化しましょう。網羅的に一度棚卸しをして整理してみると、安心感もありますし、抜け漏れなく整理した中で重み付けがしやすくなります。
少し時間はかかりますが、皆さんでしっかり腰を上げて取り組むこと、そして3つの軸でスコアリングするといった自社なりの観点を持って棚卸しをされることをお勧めします。
Q3:私の部署は顧客ごとの個別対応が多く、毎回やり方が違います。こういったイレギュラーばかりの業務は、結局人間が行うしかないのでしょうか?
藤江:例外対応がしっかりマニュアルに書けるレベルまで言語化できているかがポイントになります。言語化は難しい部分かと思うのですが、「今どういう風に対応しているのか」から考えていくと、「このお客様はいつもこうおっしゃるから、こう対応していたな」ということが紐解けるようになります。
まずは、しっかり時間を取って言語化してみることに取り組まれるのはいかがでしょうか。「判断基準を構造化されたルールに変えられるか?」という観点で、まずは言葉に出してみて、「こういう時はこういう判断をする」というものを1つずつリストアップしていくことが、最初の一歩になると思います。
まとめ
属人化を脱却しAIを定着させるには、3つのステップがあります。1つ目は、業務の可視化とスコアリング、2つ目は、標準化・外部化・自動化、3つ目は、新しい業務フローの設計という3つのステップです。
しかし、理想のフローを設計しても、現場のイレギュラー対応によって手作業に戻ってしまう実装の壁が存在します。これを乗り越えるには、個人の記憶に頼っていた判断基準を粘り強く言語化し、マニュアルなどを通じて形式知へと変換してシステムに組み込むことが不可欠です。
忙しい現場の力だけでこの変革を完遂することが難しい場合、業務プロセスの可視化から実装・定着までを伴走支援する実働パートナーを活用するのも1つの手です。AIを確実な組織の資産へと変えていきましょう。
(前編はこちらから)






