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組織のCQを高める方法。違いを競争力に変える4つの実践ステップ

組織のCQを高める方法。違いを競争力に変える4つの実践ステップ

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日本において、「CQ」という言葉が広まりつつあります。IQ(知能指数)やEQ(感情的知性)に並ぶCQ「Cultural Intelligence(文化の知能指数)」は、文化の違いをポジティブなパワーに変えるこの力が注目を集めているのです。

前編では、アイディール・リーダーズ株式会社 CCO(Chief Culture Officer)の宮森千嘉子氏に、CQの定義と日本社会・組織が持つ文化的な傾向について伺いました。後編では、多様な人材が共に働き、未来の競争力を育むために不可欠なCQを、個人そして組織としてどのように高めていくのか、具体的なアプローチを宮森氏にお話しいただきます。

なぜ日本組織は同化を求めるのか。6次元モデルで見る文化的特徴

――日本企業は今、労働人口の減少という課題に直面し、外国人材を含めた多様な人々との協働が必須となっています。宮森さんは、日本人の異文化に対する理解や、文化がもたらす影響に関する理解には、どのような課題があると感じられますか?

アイディール・リーダーズ株式会社 CCO 宮森千嘉子氏(以下、宮森):17年間海外で過ごし、日本に戻って感じたのは、異文化に対する誤解や理解不足が、まだ根強いということです。「日本人はみんな同じだ」という前提が強いぶん、違いが見えたときに戸惑いが大きくなっているのではないかと。その結果、無意識に「自分たちに合わせてもらう」方向に寄ってしまう場面もあると感じます。

日本は、行動が予測しづらい少数派に不安を覚えやすく、目的達成のために同質性を求めやすい面があります。だからこそ、多様性を進めても、インクルージョンではなく「同化」に誘導してしまう。そこが、これから向き合う課題だと思います。

――宮森さんが日本で広められた「ホフステードの6つの文化次元(以下、6次元モデル)」でいうと、日本はどういった傾向がありますか?

宮森:6次元モデルで分析すると、日本は他国と比べて、不確実性回避と達成志向が高い傾向にあります。曖昧さを減らし、品質と成果を積み上げる力が強い。その意味で、日本の組織は「完璧を目指す文化」になりやすいと思います。私はこれを「職人型」と呼んでいます。

――なるほど。完璧主義的な傾向は、プライベートにも影響していそうですね。労働時間だけでなく、介護や子育てなどの家事の時間も日本が他国と比べると長い傾向がありますね。

宮森:「完璧を目指す文化」は強みでもありますが、育児や介護のある方を苦しめてしまう側面もあります。達成志向と不確実性回避が強い傾向があるので、決められたことを高い品質でやり切れる一方で、試行錯誤を前提とするアジャイルな進め方は難しくなりがちです。その結果、働き方が硬直し、生産性の課題につながるとも指摘されています。

日本人はよく「思いやりがある」と言われます。でも、その思いやりが、相手の文化や状況でも同じように受け取られるとは限りません。自分の視点だけでなく、相手の視点で捉え直す癖を持つこと。それが、これからの競争力を育てる鍵になると思います。

違いをポジティブな力に変える「相手のメガネ」

――自分の視点ではなく、相手の視点を考える癖をつけるために、日常生活の中でどのように取り組んだらいいでしょうか?

宮森:わかりやすい例として、私が友人に相談事をした時の経験をお話ししましょう。ある時、「最近、物忘れがひどくて困っている」と友人に話したことがありました。私は本当に悩んでいたのです。すると友人はすぐに「わかる、わかる。私もそうなの。この間ね……」と、自分の話をし始めてしまったのです。

――相談した側としては、「自分の話を聞いてほしいのに」と感じてしまう状況ですね。

宮森:そう。私としては話を聞いてほしかったんですが、自分の話をされちゃったら、もう言えなくなっちゃって(笑)。「わかる、わかる」は、一見すると同調に見えます。でも実は、その瞬間に「相手のメガネ」をかけていないことが多いんです。「自分のメガネ」のまま、話してしまっている。

――「相手のメガネ」をかけるというのが、「相手の視点に立つ」ということですね。

宮森:そうです。「相手のメガネをかける」とは、まず相手の世界を知ろうとすることです。たとえば、「なんでそう感じたの?」「どんなことがあったの?」と聞いてあげる。もし友人が私にそう尋ねてくれたら、「あ、私のメガネをかけようとしてくれているんだ」とわかります。そうすると、同調ではなく「理解」に近づきます。一方通行ではなくなって、そこから一緒に考えられる。私はそれを「共創」と呼んでいます。同じ気持ちになることより、相手の世界を理解しようとすることが大切です。

昔、海外でのディナーの際、昆虫の料理を勧められたことがあります。私は正直「無理だ」と感じました。でも、「なぜこの材料で料理するの?」と聞いてみたんです。すると「ここは寒い地域でタンパク質源が限られる。春に向かって貴重なタンパク質を分け合うことが、昔から大事なんだ」と教えてくれました。背景がわかると、「なるほど」と思えました。私は目を閉じて、一口だけ味わいました。それは、相手のメガネをかける小さな一歩だったのかもしれません。

相手の視点で考える習慣づくり。同化から共創への転換方法

――仕事を進めていく上で「共創」を実現するためには、どうしたらよいでしょうか?

宮森:組織やチームとしてCQを高めていくには、いくつかステップがあります。最初のステップは、リーダーが「多様な人材を活用したい」と思うことです。「イノベーションをしていきたい」と思っている企業にとっては、多様な人を入れたいと思うはずです。その会社のパーパス(存在意義)をクリアにし、それに賛同してくれる人を集め、その上で「どんな組織文化が良いのか?」を考えることから始めましょう。

――リーダーの意思が起点なのですね。

宮森:はい。その上で、次のステップとして、「チームメンバーがどのような文化的な影響を受けているのか」「どんな違いがあるのか」をメンバーと可視化することを推奨しています。

チームの中には言われた通りのことをやるのが得意な人もいれば、新しいアイデアを持ってくるのが得意な人、あるいはミーティングに遅れてくる人もいるかもしれません。それぞれの働き方を可視化し、その違いを受け入れるのです。

第3のステップとして「このチームで目的達成のためにどんな決まりごとを守ろうか?」とみんなで決めます。第4のステップで、決めた内容が毎日の仕事の中で生きているかどうかを確認し、繰り返していきます。

――良い結果が生まれた事例はありますか?

宮森:例えば、多国籍のチームで、東南アジアなどの集団主義の国出身のメンバーと、アメリカなどの個人主義の国出身のメンバーがいたとします。会議でアメリカ人だけが一方的に話し続けるという状況が起きがちですが、これでは多様な組織のあり方とは違いますよね。

そこでリーダーは事前にアジェンダを送り、「会議で表現するのが苦手なら、事前に意見をくれてもいいし、事後でも意見をくれてもいい」とルール化しました。その結果、会議の後から意見が上がるようになり、リーダーがまとめて方向性を出すという意思決定のやり方に変わりました。これにより、アメリカ人の方も、発言しなかったメンバーの良い意見に気づきを得られました。

CQを高める4つの要素。ドライブ・ナレッジ・ストラテジー・アクション

――今の4つのステップは、組織レベルの取り組みですね。それを個人レベルに落とし込むと、どうなりますか?宮森さんの著書『強い組織は違いを楽しむ CQが切り拓く組織文化』にある「CQの4つの要素」と関係していますか?

宮森:まさにそうです。組織の4ステップは、個人のCQの4要素と対応しています。

1つ目はドライブ(動機や自己効力)。自分と違う人たちと共に何かをしたいと思う好奇心を持つことです。これにより、異文化での粘り強さと自信が生まれます。「その人たちがどんなことを考えているのか」「何をしているのか」など、どんな興味でも構いません。

2つ目はナレッジ(認知力)です。自分と相手のどこが同じでどこが違うのかを理解する力を育て、多様な価値観・判断基準の理解を深めます。認知力を高めるには、先ほど話した6次元モデルのようなフレームワークを使うのが有効です。

3つ目はストラテジー(メタ認知力)。異なる文化を活用する設計力と内省力です。行動前に「考える力」=視点転換を促します。

4つ目はアクション(行動力)。多文化環境の中で適応する力です。状況に応じた柔軟な言動が可能になります。CQの4つの要素

CQがもたらす具体的成果。グローバルIT企業で顧客満足度30%改善の事例

――CQを高めることで、実際に組織のパフォーマンスにどのような効果が見られるのでしょうか?

宮森:具体的な事例で言うと、あるグローバルIT企業ではコールセンターをインドやフィリピンに持っていた際、顧客満足度が下がっていましたが、CQトレーニングをコールセンターリーダーの育成に導入した結果、顧客満足度が30%改善しました。

また、海外の軍事組織でもCQ研修をした結果、ある国で行った作戦が、違う国に行ったときにもっとうまくいくようになったというデータもあります。米国の国防機関では、CQトレーニングの導入によって、異なる任務への学習曲線を大幅に短縮しました。さらに、効果のある研修とない研修をCQ基準で仕分けすることで、年間数百万ドルのコストを削減したという報告もあります。

特に近年、BANI(Brittle:もろい、Anxious:不安、Non-Linear:非線形、Incomprehensible:不可解)と呼ばれる不確実な時代です。世の中があっという間に変わってしまう中で、一度下した決断が間違っていたとしても、「あの時は最善の決断だったけれど、世の中が変わったから変えるよ」ということが言える力が必要です。それは、CQがあると可能になります。

――「今あるものの中で一番いいものを探そう」という経営者の姿勢は、社内の安心感につながりますね。

宮森:はい。多様な人材を入れたいと思っている企業にとって、「違いを活かしながら、どういう風にパフォーマンスを上げていくか」は、リーダーの方々にかかっていると感じます。

CQは、「もっと自分らしくなる」ためのスキル

――最後に、これからCQを学び、組織の競争力を高めたいと考えているリーダーに向けてメッセージをお願いします。

宮森:文化の違いを理解せずに組織の多様化・グローバル化を図るのは、泳ぎ方を知らずに海へ飛び込むようなものです。まずは、自分の仕事や日常に関わるものを通して、「世界は繋がっているんだよ」という意識を持ち、「どんな人が関わっているのかな?」という興味を持つことから始めてみてください。

CQを高めることは、単に他者に合わせることではありません。もっと自分らしくなるためのスキルなのです。例えるなら、オーケストラが異なる楽器を持ちながらも、良い演奏に向かって素晴らしいハーモニーを生み出すことに似ています。違いを嫌なものではなく、無限大の可能性を秘めた機会として捉えていきましょう。

文化的知性であるCQは、「組織の力を倍増させる装置」です。多様なチームを動かす力、判断の質を高める力、変化に強いリーダーをつくる力、組織のイノベーションを生み出す力、新たな市場を切り拓く力——これらすべてを強化します。「違い」に満ちた現代の世界で成果を出すために、CQは単なる「優しい考え方」ではなく、再現性のある、投資対効果の高いリーダーシップスキルとして機能します。

個人の好奇心と認知力を高め、「相手のメガネ」をかけることで、固定観念から脱却し、多様な違いを組織の競争力へと変えていきましょう。

取材・文:池田アユリ

話し手
宮森 千嘉子
アイディール・リーダーズ株式会社
CCO(Chief Culture Officer)

「文化と組織とひと」に橋をかけるファシリテータ、リーダーシップ&チームコーチ。 サントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人で社内外に対するコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括し、 組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。 また50カ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、 多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「違いに橋を架けパワーにする」を生涯のテーマとし、日本、欧州、米国、アジアで企業、地方自治体、プロフェッショナルの支援に取り組んでいる。英国、スペイン、米国を経て、現在は東京在住。

ホフステード博士認定ファシリテータ、米国Cultural Intelligence Center認定CQ(Cultural Intelligence)及びUB(Unconscious Bias)ファシリテータ、 IDI(Intercultural Development Inventory) 認定クォリファイドアドミニストレーター、CRR Global認定 関係性システムコーチ(Organization Practitioner, Gallup認定ストレングスコーチ。
一般社団法人CQラボ主宰。青山学院文学部フランス文学科卒、英国Ashridge Business School MBA オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士の国民文化研究をベースに、経営戦略や組織文化変革に関するアセスメント実施及びコンサルティングを提供しており、アイディール・リーダーズのビジョン策定プロジェクトや組織風土変革プロジェクトにおける組織文化診断として導入事例多数。