
リスキリングの基礎知識|DX時代に求められる理由とメリットを解説
- 人材育成・採用
- # 解説記事
最終更新日:
公開日:

DXが進む現代、新たな技術の登場や市場の変化に対応するため、リスキリングによるスキルの習得が重要視されています。本記事では、リスキリングの概要とともに、企業がリスキリングを導入するメリットや実施時のポイントについて解説します。導入の流れや注目すべき分野・資格も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
リスキリング:業務スキルの再習得とは
リスキリングとは、経済産業省によると「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」です。
近年、新しい技術が次々と登場し、業務に必要なスキルも急速に変化しています。そのような状況でビジネスを成功させるには、従業員一人ひとりが新しいスキルを身につけなければなりません。そのため、多くの企業がリスキリングによるスキルの再習得に注目しています。
参照元:経済産業省|リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―
リカレント教育やアンラーニングとの違いは?
リスキリングに似た言葉として、リカレント教育やアンラーニングがあります。ここでは、それぞれの違いについて確認します。
リカレント教育との違い
リカレント教育とは、教育を受ける機会と業務に取り組む機会をそれぞれ繰り返すことです。英語の「リカレント」には「繰り返す」や「循環する」などの意味があります。たとえば、それまで企業で働いていた人が一度退職し、再び大学に入り直して学ぶケースが該当します。個人がキャリアチェンジやスキルの深化を目指して実施するものであり、本人が強く学びたいという意思を持っている点が大きな特徴です。
それに対してリスキリングは、教育を受ける機会と業務に取り組む機会を並行させる方法です。企業の積極的な働きかけにより、新たな職務や分野での業務に必要なスキルを従業員に身につけさせます。
アンラーニングとの違い
英語の「アンラーニング」は、日本語では「学習棄却」や「学びほぐし」などと訳される言葉です。それまでの認識やルーティンなどは一度捨て、新たな価値観や考え方などを取り入れる方法です。まずは自分が持っている能力を現状に照らし合わせて見直し、取捨選択します。必要ないと判断できるものは使わないようにし、未来の成長や発展に役立つ新しい知識を学び直します。
リスキリングと同様、アンラーニングも状況の変化に応じて必要なスキルを得る方法です。ただし、アンラーニングは既存の能力の取捨選択を重視しているのに対し、リスキリングは新たなスキルの習得に重きを置いています。
リスキリングが注目される背景|DX時代への適応
多くの企業がリスキリングを重視している背景には、社会全体でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の動きがあります。経済産業省も「『DX時代のリスキリング』研究プロジェクト」を立ち上げており、DXが進む社会に適応可能な人材の育成が必要だと示しています。デジタル技術を使って新しい価値を生み出すには、リスキリングによる学び直しが不可欠です。
また、厚生労働省もリスキリング推進事業を進めています。個人、企業、学校関係者など、各方面に対する支援が展開されています。
さらに、岸田前総理は、2022年の日経リスキリングサミットにおいて、政府としてリスキリングを支援する考えを示しました。非連続なイノベーションの実現や今後の賃上げにおいてリスキリングが重要なカギになるといった内容です。
参照元:経済産業省|リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―
参照元:厚生労働省委託事業 キャリア形成・リスキリング推進事業 |キャリア形成・リスキリング推進事業(厚生労働省委託事業)
参照元:日本経済新聞|岸田首相の「日経リスキリングサミット」での発言要旨
リスキリングで得られるメリット
リスキリングを推進することで、従業員のスキル向上だけでなく組織全体の生産性向上も期待できます。ここでは、リスキリングによって得られる具体的なメリットを解説します。
業務効率化がかなう
リスキリングを導入することで、従業員が最新の技術やツールの使い方を習得できます。たとえば、新しい業務システムの操作やデータ分析ツールの活用方法を学ぶことで、手動で行っていた作業の多くを自動化し、業務効率を向上させることができます。これにより、個々の業務時間が短縮され、企業全体の生産性向上が期待できます。
また、自動化できる業務が増えると従業員が業務に費やす時間が短くなるため、残業代の削減にもつながります。これにより、従業員のワークライフバランスが向上し、働きやすい環境が整います。さらに時間に余裕ができれば、新事業の展開やイノベーションのために多くの時間を割くことも可能です。
人材不足に対応できる
働き手の減少は、業界を問わず多くの企業にとって課題となっています。特に、DXに必要な高度なスキルを持つ人材は貴重であり、確保が難しい状況です。しかし、リスキリングによって既存の従業員に新しいスキルを身につけてもらうことで、自社の成長を支える人材へと育成できます。外部からの採用に依存しなくても、将来に向けて必要なパフォーマンスを発揮してもらえるはずです。
また、新しいスキルの習得により最新の技術やツールを活用できるようになることで、業務効率や生産性が向上し、限られた人員での円滑な業務運営が可能です。結果として、人材不足の問題にも対応できます。
従業員のエンゲージメント向上につながる
リスキリングでは、企業の将来をイメージしたうえで、どのようなスキルが必要かを従業員自身が考える機会を得ます。この過程で、従業員は企業のビジョンや目標を理解し、自分のキャリアと自社の成長を結びつけることが可能です。その結果、主体的にスキル習得に取り組むようになり、自社の発展に貢献したいという意欲が高まります。
また、リスキリングを通じて新しいスキルを身につけることで、従業員は自己成長を実感し、企業から評価される機会が増えます。自分の努力が認められていると感じて仕事に対するモチベーションが高まり、結果としてエンゲージメントも向上します。
新たなアイデアやイノベーションが生まれる可能性がある
リスキリングによって新しいスキルを身につけると、それまでにないアイデアが生まれるきっかけにもなります。各従業員が幅広いスキルを持てば、チームや組織として物事を考える際の視点が多様化し、さまざまな意見が出るようになるでしょう。
多様な視点が組み合わさることで、顧客のニーズに合った新規事業の立案や、社会に大きなインパクトを与えるイノベーションのヒントを得られる可能性が高まります。その結果、競争力や顧客満足度の向上に寄与し、最終的には利益拡大なども期待できます。
リスキリング導入の5ステップ
リスキリングを導入する際は、必要な準備をして順番に進めていくことが大切です。具体的な流れを5つのステップに分けて解説します。
1.現状の課題を洗い出す
現状の経営環境やビジネスの成長を阻む要因を分析し、解決すべき具体的な課題を洗い出しましょう。これにより、今後の経営戦略の方向性が定まり、課題解決に直結するスキルを従業員が習得するためのリスキリング計画を策定できます。
企業によって抱えている課題は多種多様であり、従業員がリスキリングによって新しく身につけるべきスキルも一律ではありません。経営戦略をもとに人事戦略も見直し、自社には今後どのような人材が必要かよく検討しましょう。
2.課題からリスキリングの目的を導き出す
洗い出した課題をもとに、リスキリングすべき分野と目的を導き出します。まず、従業員の現在のスキルセット(持っている知識や技術の組み合わせ)を確認し、業務上不足しているスキルを特定します。これにより、どのようなスキルを新たに習得する必要があるのかが明確になり、実効性のあるリスキリングを計画できます。
次に、リスキリングの目的を明確にし、従業員に共有します。目的を明確にすることで、どのスキルを習得すべきか、リスキリングが業務やチームにどう貢献するかが明確になります。これにより、従業員も目指す方向性を理解し、リスキリングに取り組みやすくなります。
3.具体的な教育プログラムを立てる
リスキリングの取り組みについて、具体的な教育プログラムを検討していきます。質の高い教育を意識し、従業員がスムーズに理解できるよう構成を練ることが大切です。内容が充実していても、受講する順番が適切でないとスキルを正しく習得できません。自社にとって最適な教育プログラムの内容や構成をよく考える必要があります。
スキルを習得するための具体的な方法は、集合研修、eラーニング、座談会、スクールなどさまざまです。複数の方法を組み合わせてリスキリングの機会を提供すれば、従業員それぞれが自分に合う方法で学びやすくなります。なお、社内で教育プログラムを用意できない場合、外注によって外部の企業や講師の力を借りる方法も有効です。
4.リスキリングを実施する
リスキリングの準備が整ったら、用意した教育プログラムを従業員に受けてもらいます。リスキリングを実施する際のスタイルは企業によって異なります。リスキリングの時間を一律で決めて取り組む場合もあれば、従業員がそれぞれの空き時間に学習する場合もあります。ただし、業務時間以外でリスキリングを実施しようとすると従業員が不満を持つ可能性が高いです。従業員の意見を取り入れつつ、基本的には業務時間内で取り組む必要があります。
リスキリングを成功させるには従業員に自主的に学習を進めてもらうだけでなく、企業からの働きかけも重要です。たとえば、定期的に1on1や個人面談などを実施してフィードバックを行うと、従業員の学習に対するモチベーションを維持しやすくなります。リスキリングは少なからず従業員に負担がかかるため、企業がその点をよく理解したうえで積極的にサポートする必要があります。
5.実務への活用とフィードバック
従業員が新しいスキルを身につけた後は、リスキリングで得た成果を十分に活かすために、実務で活用する場面を作ることが必要です。スキルを習得するだけでなく、実践の機会を設けることで、学んだ内容が業務の成果につながりやすくなります。
実践した後は成果を確認してフィードバックも行うべきです。フィードバックを行うと客観的な視点をもとに従業員が改善に取り組めるため、スキルをさらに磨けます。実践とフィードバックを繰り返し行うことが重要です。
また、実践を通して得たノウハウを社内で共有する仕組みを作ると、リスキリングの効果をさらに高められます。
リスキリングを行う際の注意点
リスキリングは新たな分野に挑戦するための大きな力になりますが、取り組みを成功させるには押さえておくべきポイントがあります。
成果が出るまでに時間がかかる
リスキリングを開始しても、すぐに目に見える成果が出るわけではありません。時代の変化に対応するための新しいスキルを身につけるには、ある程度時間がかかります。スキルが着実に身につくまで学習に取り組み続けるには、従業員のモチベーションを高く維持することが大切です。
従業員は日々の業務をこなしながら学習に取り組むため、業務が忙しいと学習に対する意欲が低下するおそれもあります。このため、企業は従業員の主体的な学習を促す環境を作るよう工夫するべきです。たとえば、柔軟な学習スケジュールを用意する、学習の目的やメリットを明確に示すといった工夫が挙げられます。
自社に合った分野をリスキリングする必要がある
従業員に学んでもらうスキルは、自社の状況を考慮したうえで決定しましょう。注視している市場の動向や課題などは、企業によって異なるからです。自社の状況を踏まえずにリスキリングに取り組んでも実践する機会はなかなか得られず、リスキリングの効果をあまり感じられない可能性があります。
自社に合う分野を選定し、その理由を従業員が理解していれば、積極的にスキルの習得を目指せます。身につけたスキルを活かして企業に貢献できるため、従業員の仕事に対する意欲も高まります。リスキリングに取り組む際は、従業員に学んでもらう分野を慎重に考えることが大切です。
費用や時間などの負担がある
リスキリングの教育プログラムは社内でも作成できますが、限界もあります。新しいスキルを学ぶためのコンテンツを作るには、自社の従業員が持つ既存の知識では対応しきれないため、外部に依頼して用意するケースが一般的です。スキルの種類やレベルに応じて依頼の費用も異なるため、予算を考慮したうえで検討しましょう。
また、リスキリングによるスキル習得には多くの時間がかかります。就業中に学習できる時間を設けるなどし、従業員がスムーズにリスキリングに取り組めるよう配慮することが必要です。
リスキリングにおすすめの分野・資格
リスキリングに取り組む場合、具体的にどのような内容を学ぶ必要があるのでしょうか。ここでは、DX時代にマッチするおすすめの分野や資格について紹介します。
プログラミング
企業が独自に専用のアプリやソフトを保有するケースが多いため、プログラミングのリスキリングは特におすすめです。従業員がプログラミングのスキルを身につけ、アプリやソフトの制作・運用などを内製できれば、外注費の削減が可能です。アプリやソフトに関するノウハウも社内に蓄積できます。
「Python 3 エンジニア認定基礎試験」や「Python 3 エンジニア認定データ分析試験」などの資格取得を目指すのもおすすめです。Pythonは、人工知能の開発にも利用されているプログラミング言語で、文法が分かりやすく、世界中で使用されています。
マーケティング
マーケティングは、商品やサービスをスムーズに売るための仕組みを作るスキルです。セールスのように直接顧客に購入を呼びかけるのではなく、商品やサービスを自然に購入してもらう流れを作ります。
現在はビッグデータの活用が進んでおり、特にデジタルマーケティングのスキルの需要が高まっています。インターネットを通して収集した情報をもとに分析を行い、具体的な施策の検討や実践につなげる方法です。マーケティングのスキルを身につけるには、従業員にマーケティング検定の受験を促しましょう。1〜3級に分かれており、最も初歩的な3級ではマーケティングに関する基本概念や市場環境など、基礎的な内容を中心に出題されています。
データ分析
データ分析に関する知識やスキルとしては、データサイエンティスト検定や統計検定などが挙げられます。MOS(Microsoft Office Specialist)もデータ分析の基礎スキルを強化するのに有効です。
近年では、ビジネスのさまざまな分野でデータ分析が重視されています。収集した大量のデータから必要な情報を抽出・分析することで、根拠にもとづく経営戦略の策定や意思決定が可能になります。たとえば、顧客データを分析することでマーケティングの精度を高め、顧客ニーズに合わせたプロモーションや製品開発の実現が可能です。また、人事データを活用することで優秀な人材を効果的に見つけ出し、自社に適した人材の採用や配置につながります。
また、データ分析のスキルを持つ従業員を育成することは、ビッグデータを活用して市場のトレンドを把握し、顧客ニーズに迅速に対応できるため、自社の競争力を維持・向上させるためにも有効です。
英語などの語学
グローバルにビジネスを展開する企業が増えているため、特に英語を中心とした語学力はキャリアを強化するうえで欠かせません。また、今後も外国人労働者の増加が予想されており、英語を使用した社内外のコミュニケーション能力は、業務のスムーズな進行に重要な役割を果たします。語学を習得して実際に使えるようになるまでには時間がかかるため、早いうちから計画的に取り組むことが必要です。
英語のリスキリングにおいては、従業員にTOEICの受験を促すと効果的です。自社のビジネスの状況や従業員のレベルを考慮し、目標の点数を設定しましょう。
ITリテラシー
ITリテラシーは、コンピューター、ネットワーク、セキュリティといったITに関する知識を身につけて使いこなすスキルです。業界を問わず幅広い業務がIT化されているため、どの企業においても従業員のITリテラシーを高める必要があります。
特に、情報セキュリティの知識はリモートワークの普及に伴い重要性が増しており、企業がデータを安全に管理するためにも不可欠です。また、クラウドサービスやデータ分析ツールの利用が一般的になっている今、ITリテラシーを持つ従業員が多いほど、社内のデジタル変革がスムーズに進みます。
なお、厚生労働省が委託している「デジタル人材育成のための「実践の場」開拓モデル事業」では、情報セキュリティ、AI・機械学習、動画編集、マネジメントなどの重要性も示されています。
参照元:厚生労働省 |リスキリング|DX時代に習得すべきおすすめな資格・スキルとは?
企業がリスキリングに活用できる助成金
企業がリスキリングに取り組む際は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」を利用できる可能性があります。複数のコースが用意されており、リスキリングに関しては「事業展開等リスキリング支援コース」や「人への投資促進コース」などの申請が可能です。
「事業展開等リスキリング支援コース」では、新事業に進出する場合や、新しい商品の開発やデジタル化に取り組む場合などに、経費や賃金の一部について助成を受けられます。また、「人への投資促進コース」は、高度なデジタル人材育成のための訓練を実施する場合や、定額制訓練(サブスクリプション型の研修サービス)を利用する場合などが対象です。
助成金については細かい条件や提出すべき書類が複数あり、よく確認したうえで申請する必要があります。今後新たに利用できる制度が作られる可能性もあるため、最新の情報に注目しましょう。
参照元:厚生労働省|人材開発支援助成金
※2024年10月現在の情報です。
まとめ
ビジネスに関する技術の発展やDXの動きに伴い、リスキリングの重要性が増しています。政府もリスキリングを推奨しており、業界や業種を問わずすべての企業でリスキリングは不可欠です。リスキリングによって、業務効率化や人材不足の解消、斬新なアイデアやイノベーションの創出などさまざまなメリットが期待できます。
リスキリングを導入する際は、自社の状況を考慮したうえで目的や教育プログラムを検討する必要があります。成果が出るまでには時間がかかるため、従業員のモチベーションの維持も重要です。企業によってリスキリングすべきスキルは異なるため、よく検討したうえで取り組みましょう。
最新記事






