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外国人材が辞めない現場をつくる!2027年施行の「育成就労制度」で見直すべき組織のあり方とは?

外国人材が辞めない現場をつくる!2027年施行の「育成就労制度」で見直すべき組織のあり方とは?

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従来の技能実習制度に代わり、2027年4月に新たな「育成就労制度」が施行されます。この新制度の最大の特徴は、外国人材を「仕事を学ぶ実習生」ではなく日本人と同じ「労働者」として位置づける点です。これにより、これまでは原則禁止されていた「自分の意思で会社を移ること(転籍・転職)」が一定の条件で認められるようになります。企業にとっては、これまで以上に「選ばれる職場づくり」が求められています。

そこで今回、累計3,000名以上の外国人材採用に携わってきた株式会社ジンザイベース 代表取締役の中村大介氏に詳しくお話を伺いました。制度改正がもたらす変化と外国人材を雇う現場の課題、そして経営者が持つべき視点など、リアルなお話が満載です。

はじめに

中村氏は、2008年に近畿大学を卒業後、一部上場企業にて経営コンサルティングや新規事業開発に従事されました。2015年にはスタートアップを共同創業し、取締役として外国人材向け求人サービスを複数立ち上げ、システム開発を主導。

これらのノウハウを活かし、国内外の外国人材が直面する就職課題を解決するため、2021年に株式会社ジンザイベースを創業。現在はSNSを主軸とした独自の集客手法により、20万人を超える外国人材のデータベースを構築しています。現場視点での鋭い分析と、SNSを通じたリアルな情報発信は、多くの経営者から厚い支持を得ています。

SNSで20万人と繋がる、ジンザイベースが変える外国人採用の構造

——まず、ジンザイベースが展開されている事業についてお聞かせいただけますか。

株式会社ジンザイベース代表取締役 中村大介氏(以下、中村): 当社は「働く人の可能性を最大化する」というミッションを掲げ、外国人材と就労支援を軸に事業を展開しています。

SNSを主軸とした集客手法によって、国内外で約20万人の外国人材のネットワークを持っています。このデータベースの最大の目的は、「日本語能力N2〜N3(日常会話からビジネス会話の入り口程度)以上レベルの人材と最短1週間で、適切にマッチングできること」です。また、人材側(求職者)から一切の手数料を取らない点も前例のないビジネスと言えます。

——これまでの外国人材採用は、どのような構造だったのでしょうか。

中村:従来の仕組みでは、いわゆる派遣会社のような現地の送り出し機関や、そこへ人材を繋ぐブローカーが介在し、人材側から多額の手数料を徴収していました。実際に、元技能実習生で現在は弊社の社員として働くメンバーに聞くと、来日時に120万円もの手数料を支払わされたと言います。

このような不当な手数料による借金は、日本で大きな問題になっており、技能実習制度が廃止される一因にもなっています。私たちはこの構造を打破し、人材側には無料で機会を提供しています。その結果、日本語能力の高い優秀な人材が「お金をかけずに良い仕事を得よう」と私たちのもとに集まっているのです。

JINZAIBASE

2027年施行の育成就労制度で変わる「転籍の自由」と企業の危機感

――技能実習制度に代わって施行される育成就労制度ですが、企業にとって最も大きな変化は何でしょうか。

中村:「転籍・転職の自由」が認められることです。これまでの技能実習制度は、原則として3年間は同じ職場で働き続ける必要があり、企業側からすれば「逃げられない」という状況に甘んじてきました。

これにより、たとえ不当な扱いやミスマッチがあっても原則として職場を移ることができず、それが外国人材の失踪などの社会問題に繋がっていたのです。

しかし新制度では、1〜2年の制限期間はあるものの、本人の意思による転籍が可能になります。これは、労働条件が悪く、成長する実感が得られない職場からは、優秀な人材ほど去っていくという市場原理が生まれることを意味します。

育成就労制度は、人手不足における「人材育成」と「人材確保」を目的とした、日本の労働政策の大きな転換点です。政府は2028年度末までの2年間で、育成就労の受け入れ枠を43万人とする方針を示しています。

中村氏

——この変化に対して、受け入れ側の日本企業の反応はいかがですか?

中村:正直なところ、まだ多くの企業が危機感を抱いておらず、現在の安定した状況が続くと考えているように見受けられます。2026年までは現行の技能実習制度で雇用可能ですし、最後に雇った実習生はさらに数年間は在留できるため、「まだ先の話」だと捉えている経営者が多いのです。

しかし、転籍が可能になれば、条件の良い都会の企業や、人間関係が良好な現場へ人材が流出していくのは目に見えています。10年後を見据えると、人材を確保できる会社とそうでない会社は、残酷なまでに明確に分かれることになるでしょう。

中国・ベトナム、そしてインドネシアへ。国籍の変遷から考える「選ばれ続ける組織」への転換

――日本で働く外国人材の国籍は、どのように変化してきたのでしょうか?

中村:かつては中国人が主流でしたが、そこからベトナム人に代わり、現在はインドネシアへとシフトしてきているのが大方の流れです。これは統計データを見ても、そのような推移を辿っていることが分かります。

特定技能在留外国人数 「主な国籍・地域別割合」

出典:出入国在留管理庁|特定技能在留外国人数 「主な国籍・地域別割合」

――なぜ、そのように働く人の国籍が次々と変わっていくのでしょうか?

中村:非常に厳しい言い方になりますが、日本の経営者が、より貧しい国から人を連れてくることで解決しようとしてきたからです。

ある国の人たちが日本で働くメリットを感じなくなると、不満や離職が増えます。そうなると、企業側は「今の条件でも喜んで来てくれる国はどこか」と考え、さらに賃金格差のある貧しい国を選定し直すということを繰り返してきました。

――こうした国籍の傾向が変わる背景には、ネット環境も影響を与えていそうですね。

中村:はい、今のSNS時代では情報の伝わり方が以前とは全く違います。例えば、特定技能外国人の約半数を占めるベトナム人のコミュニティでは、日本のあらゆる情報がFacebookなどを通じてリアルタイムに共有されています。

――どのような情報が共有されているのでしょうか?

中村:自分の給与明細をアップして「あそこがいい、ここがいい」と比較し合ったり、企業側の不都合な真実が幅広く出回ったりしています。その結果、特定の国の人材が増えれば増えるほど転職意識も高まり、その国の人たちが一つの場所に定着しなくなっていくという現象が起きています。

――国籍を変えて採用し続けるだけでは、限界が来るということですね。

中村:その通りです。国を変えてしのぐという「負の連鎖」はもう終焉に向かっています。

外国人材の離職理由は「給与の手取り額」と「人間関係」にあり

――外国人材が日本を離れたり、職場を変えたりする理由を具体的にお聞かせいただけますか

中村:多くの経営者は「円安だから」「日本の国力が落ちたから」と外部環境のせいにしがちです。しかし、私たちが現場の声を聞くと、理由は極めてシンプルで、「お金」と「人間関係」に集約されます。

特に「手取り額」への不満が顕著です。社会保険料や光熱費などが差し引かれた後の金額が想定より低く、控除の少ない韓国や台湾と比較して「日本は稼げない」と判断されてしまうのです。

――本日お話を伺って、非常に危機感を覚えました。これから日本企業は、どのようなマインドを持つべきでしょうか。

中村:今、経営者が最も反省すべきは、「貧しい国の人を雇ってあげている」という上から目線ゆえの勘違いです。 あなたの会社を辞めた社員が「社長が嫌いだから辞めます」と正直に言うことはまずありません。辞めた理由はほぼ建前であり、本音は別の場所にあることが多いのです。

今後は「選んでいる側」ではなく、日本人と同様に「対等なパートナー」として相手視点を持ち、いかに選ばれる経営を行うかが問われる時代になっていくでしょう。

(後編はこちらから)
取材・文:池田アユリ

話し手
中村 大介
株式会社ジンザイベース
代表取締役

1985年兵庫県神戸市生まれ。近畿大学経営学部卒業後、新卒で東証一部上場のコンサルティング会社に入社し、新規事業開発を担当。2015年にスタートアップを共同創業し、外国人材3,000名超の採用を主導。2021年、株式会社ジンザイベースを創業し、日本在住でN3以上の日本語力を有する人材や、3年以上の就業経験を持つ元技能実習生に限定した特定技能人材紹介を展開中。著書『日本人が知らない外国人労働者のひみつ』(白夜書房)