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障害者雇用の概要|企業が推進する意義や助成金も解説

障害者雇用の概要|企業が推進する意義や助成金も解説

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企業における障害者雇用の重要性が広く認識されつつあり、障害者雇用の推進によるメリットや活用できる助成金・支援制度についての理解が企業に求められています。

本記事では、障害者雇用の基本的な概要から、関連する助成金や支援制度までを詳しく解説します。

障害者雇用の概要

一般企業における障害者雇用とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(通称:障害者雇用促進法)に基づき、企業が障害のある方々を積極的に雇用する取り組みを指します。この法律は、1960年に「身体障害者雇用促進法」として制定され、1987年に現在の名称へと改正されました。その後、1998年には知的障害者、2018年には精神障害者も対象に含まれるようになり、雇用促進の範囲が広がりました。

近年、企業においてはダイバーシティ(多様性)やサステナビリティ(持続可能性)、そしてSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが重要視されています。障害者雇用はこれらの一環として位置づけられ、多様な人材を受け入れることで組織の活性化や新たな価値創出が期待されています。障害のある方々が社会の一員として活躍できる環境を整えることは、企業の社会的責任(CSR)を果たす上でも重要です。

厚生労働省は、企業に対して従業員の2.5%に当たる人数の障害者を雇用するよう義務付けています。この法定雇用率は、障害のある方の職業的自立と社会参加を促進するための制度であり、企業は達成する責任があります。法定雇用率を達成していない企業には、納付金の支払いや是正指導などの措置が取られることもあります。

参照元:事業主の方へ|厚生労働省

障害者雇用が義務付けられる企業

従業員が40人以上の民間企業は、障害者の法定雇用率である2.5%を達成する義務があります。これは、全従業員数に対して一定割合の障害者を雇用することで、社会全体での障害者の就労機会を拡大する目的があります。例えば、従業員数が80人の企業では、少なくとも2人の障害者を雇用する必要があります。

一方で、「除外率制度」という特例も存在します。これは、業務の性質上、障害者の雇用が困難と認められる一部の業種や職種に対して、法定雇用率の計算から一定の人数を除外する制度です。しかし、この制度を適用するには、所定の手続きと認可が必要であり、全ての企業が適用を受けられるわけではありません。また、現在この特例は廃止の方向で、段階的に除外率が引き下げられています。

障害者雇用の対象となる従業員

障害者雇用の対象となる方は、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 身体障害者手帳を所持している方:視覚障害、聴覚障害、肢体不自由など、身体に障害があると認定された方が該当します
  • 療育手帳など各自治体が発行する手帳を所持し、知的障害者と判定された方:知的発達に遅れがあり、専門機関による判定を受けている方が対象です
  • 精神障害者保健福祉手帳を持ち、症状が安定して就労可能な方:統合失調症やうつ病、発達障害などの精神疾患を有し、医師の診断により就労が可能と判断された方が含まれます

これらの手帳は、障害の程度や種類を公式に証明するものであり、法定雇用率の計算にも影響を与えます。企業は手帳を確認し、適切な職場環境の整備や業務内容の配慮を行うことが求められます。

企業が障害者雇用を推進する意義

企業が障害者雇用を推進することは、単に法的義務を果たすだけではなく、企業の成長や社会的責任を果たすためにも重要な意味を持ちます。

多様な人材受け入れによる採用拡大

多様な人材を受け入れることで、採用の幅を広げることが可能です。障害のある従業員を適切に配置し、それぞれの能力を活かせる業務を任せることで、企業に新たな価値や視点がもたらされます。例えば、専門的なスキルや独自の視点を持つ障害者を採用することで、新しい市場開拓や製品開発に役立つ場合もあります。人材不足が深刻化する現代において、多様な人材の活用は組織の持続的な成長に欠かせません。

また、障害者雇用を通じて社内の多様性が高まることで、異なるバックグラウンドや経験を持つ人々が協働し、新しいイノベーションにつながる可能性もあります。従来の枠にとらわれない発想や解決策が生まれ、企業価値や競争力の向上に努めることも重要です。

社会的責任(CSR)遂行による企業イメージの向上

障害者雇用を積極的に行うことで、企業は社会的責任(CSR)を遂行していると認知されます。これは、責任感ある企業というイメージの獲得につながり、顧客や取引先からの信頼性が高まります。社会貢献活動としての障害者雇用は、企業のブランド価値を高め、市場での競争力を強化する要素となります。

さらに、CSR活動を通じて得られる良好な企業イメージは、優秀な人材の採用や顧客の獲得にも寄与します。社会的課題に取り組む姿勢を示すことで、ステークホルダーからの支持を得やすくなり、長期的なビジネスの成功につながります。

業務フロー見直しによる生産性向上

障害者雇用をきっかけに業務フローを見直すことで、従来の問題点を洗い出すことができます。業務プロセスの改善や効率化が進むことで、生産性の向上につなげることも可能です。例えば、業務の標準化やマニュアル化を進めることで、誰もが業務を理解しやすくなり、全体のパフォーマンスが向上します。

さらに、職場環境の整備やコミュニケーションの円滑化を進めることも、生産性の向上に役立ちます。これにより、従業員のモチベーションが高まり、業務効率の改善チーム全体の協力が強化される効果も期待できます。

障害者雇用に関連する助成金や支援制度

障害者雇用を行う企業は、それに関連するさまざまな助成金や支援制度を活用できます。これらの制度を利用することで、雇用に伴うコストを軽減し、より積極的な障害者雇用が可能となります。

例えば、障害者を新たに雇い入れた場合に活用できる助成金として、「特定求職者雇用開発助成金」や「トライアル雇用助成金」などがあります。

  • 特定求職者雇用開発助成金:高年齢者や障害のある方など就職が困難な人を一定期間以上雇用した事業主に対して支給される助成金です。支給額や条件は雇用形態や雇用期間によって異なります
  • トライアル雇用助成金:障害のある方を一定期間試行的に雇用し、その後本採用する場合に支給されます。トライアルができることで企業は雇用へ踏み出しやすくなり、実際の業務を通じて適性を見極めることが可能です

参照元:障害者を雇い入れた場合などの助成 |厚生労働省

また、助成金以外にも各種支援が受けられます。例えば、職場のバリアフリー化に対する補助や、専門家によるコンサルティング、従業員への研修プログラムなどが提供されています。さらに詳しい情報は、参照元をご覧ください。

参照元:事業主の方へ|厚生労働省

※2024年10月時点の情報です。

障害者雇用義務が未達成の場合はどうなる?

障害者雇用の義務を達成していない場合、企業にはいくつかのペナルティや行政指導が課される可能性があります。これらは、障害のある方の雇用促進を図るための措置であり、企業にとっても無視できません。以下では、障害者雇用義務が未達成の場合における実際の罰則や指導について解説します。

納付金の発生

障害者雇用は法律により義務付けられているため、その義務を果たしていない企業には「障害者雇用納付金」の支払い義務が生じます。この納付金は、法定雇用率を達成していない企業に対して課されるものであり、企業の財務状況に直接的な影響を及ぼします。具体的には、未達成の障害者1人当たり月額5万円(※2024年10月時点の情報です)の納付金を支払う必要があります。年間に換算すると1人当たり60万円となり、未達成人数が増えるほど経済的な負担も大きくなります。

この納付金制度は、企業が障害者雇用に積極的に取り組むよう促すためのものです。納付金は国の障害者雇用支援の財源として活用されますが、企業にとっては無駄な出費となってしまいます。そのため、納付金の支払いを避けるためにも、障害者雇用に積極的に取り組むことが重要です。

ハローワークによる行政指導

法定雇用率を達成していない企業に対しては、ハローワークから行政指導が行われることがあります。まず、企業は一定期間内に障害者を雇用する計画の作成を命じられます。この計画には、具体的な採用人数や時期、採用方法などを詳細に記載する必要があります。

計画の実施状況が不十分であると判断された場合、ハローワークから改善の勧告を受けます。それでも改善が見られない場合には、ハローワークの職員が企業を直接訪問し、具体的な指導や助言を行う特別指導が実施されます。

最終的に、これらの行政指導に従わず法定雇用率を達成できない企業は、企業名が公表される可能性があります。企業名の公表は社会的信用の低下につながり、取引先や顧客からの信頼を失う原因となりえます。そのため、企業は早急に適切な対応策を講じることが求められます。

企業名の公表

行政指導の結果、企業名が公表されると、ブランドイメージの低下につながる恐れがあります。これにより、顧客や取引先との関係が悪化する可能性があり、企業の信頼性や経営にも影響を及ぼすことが考えられます。特に、社会的責任が重視される現代において、法令違反による企業名の公表は深刻なダメージをもたらします。

また、優秀な人材の採用にも悪影響を及ぼす可能性があります。企業の評判が低下すると、求職者から敬遠されることになり、人材確保が困難になる恐れがあります。そのため、法令を遵守し、障害者雇用に積極的に取り組むことは、企業の長期的な発展にとって不可欠です。

障害者雇用の手順

企業が障害者雇用を効果的に進めるためには、計画的な手順と社内の理解が必要です。ここからは、障害者雇用の具体的な手順を解説します。

1.障害者や障害者雇用への理解を深める

まず、障害のある方が抱える特性やニーズについての理解を深めることが重要です。障害の種類や程度は個人によって異なり、それぞれに適したサポートや配慮が求められます。社員全体で障害に関する知識を共有し、正しい理解を持つことで、職場の受け入れ態勢を整えることができます。

また、障害者雇用に関する法律や制度についても学ぶことが必要です。障害者雇用促進法をはじめ障害者差別解消法などの関連法規を理解することで、企業としての法的義務や役割を正しく認識できます。

2.障害者雇用関連の計画を立てる

次に、障害者を採用するための具体的な計画を立てます。待遇や配属先、職務内容などを明確にし、障害のある方が働きやすい環境を設計します。業務内容は、障害の種類や個々の能力にあわせて調整し、適切な役割を担ってもらえるようにします。

また、法定雇用率を達成するためのカウントルールも確認しておきましょう。週30時間以上の常時雇用労働者は、1人とカウントし、週20時間以上の短時間労働者は、0.5人とカウントする、といったルールがあります。

これにより、企業としての義務を果たしつつ、効果的な人材活用が可能となります。計画段階でしっかりと準備を行うことで、採用後のミスマッチを防ぎ、長期的な雇用関係を築けます。

参照元:障害者雇用率制度について|厚生労働省

3.募集をかけ選考を行う

計画が整ったら、実際に募集を開始し、選考を行います。募集する際は、ハローワークや専門の求人サイト、特別支援学校や就労移行支援事業所、地域障害者職業センターなどを活用すると効果的です。

選考の際には、障害の特性に応じた配慮が必要です。例えば、筆記試験が難しい場合は口頭での面接を中心にするなど、柔軟な対応を心がけます。面接時にはコミュニケーション方法や環境にも注意を払い、リラックスして話せる雰囲気をつくることが大切です。雑談なども適宜はさみながらゆったりと面接を行うことで、応募者の本来の能力や意欲を正しく評価できるでしょう。

4.採用と受け入れ準備

採用が決まったら、受け入れ準備を進めます。まず、本人の了承を得た上で、他の従業員にも新たな仲間について周知します。社内全体で障害者雇用に対する理解を深め、協力体制を築くことが重要です。

また、障害特性に合わせた業務マニュアルの作成や、職場環境の整備も行いましょう。例えば、バリアフリー化や必要な機器の導入など、具体的なサポート体制を構築します。受け入れ準備を入念に行うことで、新しい従業員が安心して働ける環境を提供できます。

5.定着

採用後は、職場に定着できるよう継続的な支援を行います。定期的な面談を通じて業務上の課題や不安を共有し、必要に応じて業務内容の調整やサポートを提供します。

また、ハローワークのジョブコーチ支援制度を活用することも効果的です。専門家のサポートを受けながら、職場への適応やスキルアップを支援することで、長期的な雇用関係を築いていけます。社員全体で協力し、働きやすい職場環境を維持することが重要です。

障害者雇用における3つの注意点

企業が障害者雇用を進める際には、いくつかの注意点を理解しておくことが求められます。しっかりとポイントを押さえた上で準備を行うことで、障害のある従業員が安心して働ける環境を整え、組織全体の生産性向上や職場の活性化につなげることが可能です。

配属や業務内容のミスマッチを避ける

まず、配属先や業務内容が障害のある従業員に適しているかを慎重に検討することが必要です。障害の特性や個々の能力を正しく理解し、その人が最も力を発揮できるポジションに配置することで、ミスマッチを防ぐことができます。

例えば、視覚に障害がある方には音声を活用した業務や、振動など触覚的なフィードバックを伴う作業を提供することが考えられます。一方、聴覚に障害がある方には、文章やビジュアルを中心とした業務が適している場合があります。また、精神障害や発達障害のある方には、ストレスの少ない環境や明確な指示、ルーチンワークを中心とした業務が効果的な場合もあります。

また、業務内容だけでなく、職場環境や設備面でのサポートも重要です。例えば、車椅子を利用する方のためにオフィス(の一部)をバリアフリーに整備して、快適な労働環境を提供できます。就労支援機器として、聴覚障害がある方向けの補聴システムなどの機器や、視覚障害がある方向けの画面読み上げなどのソフトウェアを導入し、業務効率化を図れます。

定期的な面談や評価を通じて、業務内容や環境が本人に適しているかを確認し、必要に応じて調整を行うことも効果的です。このように、適切な配属と環境整備により、従業員は自分の能力を最大限に発揮し、組織の成果に貢献しやすくなるでしょう。

障害についての理解を促す

次に、社内で障害に関する理解を深める取り組みも必要です。どのような言動や態度が差別や偏見につながるのかを既存の従業員に把握してもらい、無意識のうちに障害のある従業員を傷つけないよう注意する必要があります。例えば、障害に対して過度に同情したり、過小評価したりすることは避けるべきです。適切なコミュニケーションを図るためには、障害の種類や特性についての基本的な知識を持つことが重要です。

社内研修や勉強会を開催し、全社員が障害に対する正しい理解を共有することが有効です。これにより、職場全体が協力的な雰囲気となり、障害のある従業員が働きやすい環境を築くことができます。また、オープンなコミュニケーションを促進し、困ったことや改善点を気軽に相談できる体制を整えることも大切です。このような取り組みを通じて、チーム内の信頼関係が深まり、組織の一体感が高まります

サポート役の負担を抑える工夫もする

障害のある従業員のサポートは、周囲の従業員にとって重要な役割ですが、その負担が過度にならないよう工夫することも必要です。支援制度を積極的に活用し、業務フローの見直しや業務の標準化を行うことで、サポート役の負担を軽減できます。

例えば、業務手順をマニュアル化し、誰でもサポートできる体制を整えることが効果的です。また、社内の進捗管理システムやコミュニケーションツールを活用し、情報共有を円滑に行うことで、個々の負担を分散できます。

また、専門の支援スタッフを配置したり、外部の専門機関と連携したりすることで、サポート体制を強化することも可能です。このような工夫を重ねることで、周囲の従業員も自身の業務に集中でき、全体の業務効率が向上します。結果として、障害のある従業員も安心して働ける環境が整い、組織全体のパフォーマンス向上も期待できます。

まとめ

障害者雇用は法的に義務付けられており、一定数の従業員を抱える企業にとっては必ず行うべき取り組みです。法令を遵守するだけでなく、障害への理解を深め、障害のある方々を積極的に雇用していくことが重要です。企業が障害者雇用という側面で社会的責任を果たしつつ、多様な人材がもたらす新たな視点やアイデアを組織に取り入れることができます。

障害のある方が安心して働ける環境を整えるためには、社内全体での理解促進や適切なサポート体制の構築が重要です。障害のある従業員が持つ能力を最大限に活かし、組織の成長につなげることが可能となります。今後も障害者雇用を積極的に推進し、誰もが活躍できる社会の実現を目指しましょう。