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ベトナム法改正による社会保険支払いの適正化

ベトナム法改正による社会保険支払いの適正化

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2024年6月29日、ベトナムでは改正社会保険法(41/2024/QH15)が国会で可決され、2025年7月1日より施行されます。ベトナムは社会保険における構造的な問題を抱えており、その解決を目指しています。本稿では、社会保険料の支払いに関する「遅延」や「逃れ」に焦点を当て、日本企業として注意すべき点を述べます。

社会保険料の「支払い逃れ」の明確化

ベトナムでは、社会保険料の遅延や逃れによる社会保険債務が深刻な問題となっており、日本企業がローカル企業や外資系企業の買収、または合弁を行う際に、これが顕在化することが少なくありません。ベトナムの社会保険債務総額は16兆VND(日本円で約924億円)以上に上ります。特に、中小企業における社会保険債務は増加傾向にあり、2024年に入ってから全国で中小企業600社に対して160億VND(日本円で約9千万円)の罰金が課されています。現在も、行政処分に加え、悪質なケースに対しては「労働者の社会保険、医療保険、失業保険の料金納付を逃れる罪」(刑法216条)に基づき、雇用主に対して罰金刑や懲役刑といった刑事罰が科されています。

しかし、社会保険機関が警察に送付する書類に不備が多く、証拠として使用できず、故意であったかの証明が難しいことや、企業がすでに活動を停止したり他の地域に移転し、調査や確認作業ができないため、刑事処分に至らず、社会保険料(追加利息含む)の支払いにとどまることが多いと言われています。こうした事態を深刻に受け止めた新法では、社会保険料の「支払い逃れ」の概念を明確にしました(図表1)。

図表1 社会保険料の「支払い逃れ」の概念

また、社会保険逃れに対する措置として、行政処分や刑事責任の追及(新法41条2項)があるほか、社会保険料の支払いが適切に守られない場合には、書面による督促状の発行や雇用者リストのウェブサイトでの公表、監査当局および関係する検査機関を通じた措置(新法35条)などの厳格な運用も想定されています。

企業側で注意が必要なポイント

日系企業で起こり得ることとして、以下の2点をご紹介します。

実質上の“雇用契約”の未登録

実際には雇用契約に相当する契約ではありながら、「サービス契約」、「コンサルティング契約」、「代理店サービス契約」などと名目を変えて締結し、強制社会保険や失業保険に加入していないケースが見受けられます。こちらについては、名目上異なる名称の契約であっても、雇用契約とみなされるため(労働法13条1項)、適正な社会保険に加入しているか確認することをお勧めします。

適正な基礎額に基づく保険料の未登録

社会保険の算出基礎は、「職務や役職に応じた基本給、給与手当、および給与支払い時に定期的かつ安定的に支払われることが合意されたその他の補足的な手当を含む」(新法31条1項b)とされており、基本給に加え、役職手当、語学手当、責任手当などの固定手当は社会保険の対象となります。一方、賞与やインセンティブボーナスといった変動手当、昼食手当、交通費、通信費、住宅費などの扶養に関する手当については、支払う必要がありません。

筆者が見てきた事例として、日系企業がベトナムローカル企業や外資系企業をM&Aで買収した際に、最低限の社会保険料を基本給として支払い、実際には定額支給の固定給であるにもかかわらず、インセンティブ名目で支給することで社会保険料を逃れているケースがありました。基本給を最小限に抑えるため、最大で基本給が手当の3%程度しかない極端な例もありました。このような場合に支払い処分を受けると、一度に全員分の社会保険料を支払えず、会社の利益に多大な悪影響を与えることもあり得ます。

今後の対応

2025年の法改正に合わせて、国家の総力を挙げて社会保険支払いの「遅延」や「逃れ」を防止する動きが加速すると見込まれる

法改正の基となった社会保険制度改革に関する決議28-NQ/TWに「社会保険政策の実施における監査、検査、監察、違反行為の処理の有効性と効率性は、依然として不十分である」とあるように、2025年の法改正に合わせて、国家の総力を挙げて社会保険支払いの「遅延」や「逃れ」を防止する動きが加速すると見込まれます。これまでは、監査が入った際に「わざとではなかった」といった理由が、刑事責任を逃れる口実として通用していた側面がありましたが、今後は厳格化が図られる可能性が高いと言えます。刑事責任を負うことは、会社のレピュテーションリスクを抱えることにもなりかねません。新法の施行までにはまだ少し時間がありますので、今一度、貴社の状況を確認された上で、適正に支払い・運用されているかをご確認いただければと思います。

ベトナムの人事労務や報酬制度などについてご不明点がありましたら、弊社までお問い合わせください。

執筆者
野尻 康平
PERSOL VIETNAM CO., LTD.
Senior HR Consultant

大学卒業後、日本にて金融関係の専門紙の記者を経て、2019年よりベトナム在住。ベトナムで人材教育コンサルタントとして従業員研修事業に携わる。2023年より現職。日系企業の人事労務のヘルプデスク、人事制度設計、就業規則の作成、各種セミナー講師を務める。

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