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東南アジアにおける食品・飲料市場の成長と展望

東南アジアにおける食品・飲料市場の成長と展望

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近年、急速な経済成長を遂げる東南アジアでは、食習慣にも大きな変化が見られる。本稿では、特に食品・飲料市場に焦点を当て、その成長カテゴリと背景について、東南アジアの中でも人口の大きいインドネシア、フィリピン、ベトナム、タイの4ヵ国を対象に分析した結果を示す。

急成長する食品・飲料市場のカテゴリ

今回の分析では、ユーロモニターのデータを基に、アルコール飲料や未加工の生鮮品を除くヒトが食する市場カテゴリを包括的に俯瞰し(図表1)、これらのカテゴリに属する各商品群の直近5年間の成長率と今後の成長余地を測る指標として、先進国(日本、シンガポール)との一人当たり消費額の差を比較した(図表2)。

その結果、直近の成長率が高く、かつ今後の成長余地が大きいカテゴリとして、各国で図表3に記載の製品群が挙げられた。

図表1 分析対象とした食品・飲料カテゴリ一覧 図表2 分析アプローチ(インドネシアの例) 図表3 対象国における成長カテゴリ 図表3 対象国における成長カテゴリ2

さらに、これらの中で各国共通して高成長が見込まれる製品群をまとめたものが図表4である。こうして俯瞰してみると、冷凍・冷蔵・加工食品、即食・栄養補助食品、調理用ソース、欧米朝食・軽食食品といったグループが4ヵ国において直近の成長率が高く、今後の伸びしろも大きい食品であると言える。

図表4 各国共通的に高成長が見込まれる製品群

成長を支える3つのトレンド

これらの製品群の成長背景には、以下の3つの大きなトレンドが影響していると考えられる。

1. インフラ整備とモダントレードの増加

東南アジア各国では経済成長に伴い、冷蔵庫の普及やコールドチェーンの整備が進み、従来のウェットマーケットやパパママショップから、近代的なスーパーマーケットやハイパーマーケットへの移行が進んでいる。これにより、冷凍・冷蔵が必要な「加工肉、シーフード、肉の代替品」や「果物・野菜加工品」といった製品群が流通しやすくなり、市場が拡大していると推察される。さらに、近年のEC(電子商取引)の普及により、食品や飲料のオンライン購入が都市部で急増しており、モダントレードの拡大に重要な役割を果たしている。

2. ライフスタイルの変化

都市化の進展により生活が忙しくなる中で、利便性の高い食品への需要が高まっている。例えば、調理の手間が省ける「調理済み食品(レディーミール)」や「スープ」、簡便な栄養摂取を可能にする「ビタミンと栄養補助食品(サプリメント)」の需要が伸びている。また、調理工程を効率化できる「メニュー用調味料」や「その他ソース・調味料」も好調である。特に、フィリピンでは女性の社会進出の進展に伴う共働き世帯の増加により、家庭料理に代わる即席食品や惣菜市場の拡大が顕著である。

3. 食の多様化

所得の増加や外国文化の流入により、伝統的なコメ中心の食事から、パンやシリアルといった洋食への移行が進んでいる。これに伴い、「焼きパン・焼き菓子」、「朝食シリアル」「スイートスプレッド(ジャム・ペースト・クリーム等)」などの需要が増加している。これらの製品は、若年層を中心に人気が高く、食の選択肢が広がる中でさらに成長が見込まれる。また、外食文化の発展も食の多様化に寄与しており、都市部では欧米や日本料理など、海外の食文化に触れる機会が増えている。

日本企業に求められる視点

こうした市場の成長は、現地で事業を展開する日本企業にとっても大きなチャンスを意味する。ただし、このような需要を獲得するためには日本国内で販売している製品をそのまま販売するだけでなく、現地市場の特性や消費者のニーズを十分に把握し、それに見合った商品を展開することが肝要である。実際に、日本で求められる品質が必ずしも現地市場で受け入れられるとは限らず、日本製品の優れた品質が裏目に出て、価格競争力を欠くケースも見られる。そのため、現地の購買力や品質水準に合わせた商品開発やローカライズが必要となる。また、足元の消費者ニーズや競争環境を踏まえた短期的な戦略だけでなく、本稿で分析したように経済成長や外部環境の変化とともに多様化する現地の食文化やライフスタイルを踏まえた長期的な戦略立案も重要となるだろう。

今後の展望

東南アジアの食品市場は今後も拡大が見込まれる。その背景には、経済成長だけでなく、人口の増加や都市化の進展といった構造的な要因もある。特にインドネシアやフィリピンのように人口が1億人を超える国々では、今後の食品需要の拡大は不可避である。

日本企業がこうした市場で競争力を持つためには、現地の変化を的確に捉え、柔軟かつ戦略的に対応していくことが重要だ。人口減少に歯止めがかからず、今後縮小が懸念される日本国内の市場とは対照的に、東南アジアは日本企業にとって大きな可能性を秘めた市場であり、食を通じた新たな価値創造の場でもある。この成長市場での成功に向け、国内市場で培った商品力と「日本ブランド」を最大限活用しつつ、現地に根ざしたアプローチを模索してはいかがだろうか。

執筆者
垣下 至徳
Arthur D. Little Ltd.
Senior Manager

会計系コンサルティングファームを経てADLに参画。消費財を中心に成長戦略、海外事業展開戦略、業務改革、サステナ戦略等を支援するほか、東南アジア地域における政府・民間企業の脱炭素方針・ロードマップ、トランジション等を支援。香港での就学・就労を経て、2020年よりタイ在住。タイオフィス所属。

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Arthur D. Little Ltd.

アーサー・ディ・リトルは、1886年にマサチューセッツ工科大学のアーサー・D・リトル博士によって創業された世界最初の経営コンサルティングファームであり、米国アポロ計画をはじめ、社会的インパクトが大きいイノベーションの実現をグローバルで数多く支援している。近年注力する脱炭素領域では、東南アジア含むグローバルにおいて、政府・地場企業に対して、脱炭素に向けた戦略の策定から、脱炭素化を支える組織・オペレーション変革を含む支援を行っている。

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