
残業を減らすには何をすべきか?残業理由から見る具体的なアイデア
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2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行され、残業に対する罰則付き上限規制が適用されました。残業の削減は法令遵守の観点から必須の取り組みであると同時に、企業のブランドイメージにも影響を及ぼす重要課題となっています。本記事では長時間労働が常態化している企業の特徴や残業を減らすアイデアについて解説します。
目次
残業を減らせない主な理由
残業が常態化している企業には、いくつかの共通した課題があります。長時間労働の削減を推進するためには、まず残業を減らせない背景や課題を把握することが大切です。ここでは、残業を減らせない主な5つの理由を紹介します。
勤怠管理不足
残業が常態化している企業に共通して見られるのが勤怠管理体制の不備です。たとえば出退勤時間の管理がタイムカードによる打刻のみで、管理職が従業員の労働時間をリアルタイムで把握できていないケースが挙げられます。このような環境では長時間労働が見過ごされやすく、結果として残業の常態化を招く要因となります。
また、業務内容や進捗状況が可視化されていないと、残業の必要性や妥当性を正しく判断できません。その結果、不必要な長時間労働や非効率な働き方が定着するおそれがあります。このようなリスクを回避するには、従業員の勤怠状況と業務実態をリアルタイムで把握できる管理体制の構築が不可欠です。下記の記事も参考にしながら、管理業務・管理体制の効率化を図りましょう。
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仕事の属人化
属人化とは、特定の業務が一部の従業員に集中することであり、長時間労働の常態化を招く要因のひとつとなっています。たとえば、ある業務を担当するエンジニアが長年にわたって独自の手順で処理しており、そのノウハウが他のメンバーに共有されていない場合、そのエンジニアが不在になると業務が停滞しかねません。結果として、そのエンジニアに業務負荷が偏り、長時間労働につながりやすくなります。
また、より多くの残業代を得るために、あえて自分しか対応できない環境をつくり出し、特定の業務を抱え込むケースもゼロではありません。特定の業務がブラックボックス化し、他の従業員がサポートに入りにくい環境では、このような残業時間増加のリスクを招きやすくなります。残業を減らすためにも、ノウハウやナレッジを共有できる環境の整備や、業務の標準化を推進する企業風土の醸成が必要です。
仕事量と人員のミスマッチ
仕事量に見合った人員が確保されていない場合、各従業員の業務負荷が増大し、長時間労働が常態化しがちです。労働力が不足している状況では業務に対する適切なリソース配分が難しく、特定の従業員にタスクが偏る傾向があります。その結果、従業員が個々の処理能力を超える仕事量を抱えることになり、定時内での業務完了が難しくなります。
とくに繁忙期に十分な人員配置が行われていない部署では、納期を守るために残業を余儀なくされるケースが少なくありません。また、プロジェクトでの予期せぬトラブルや急な仕様変更などが生じた場合も同様です。一方、閑散期を迎える部署では人材が十分に活用されていないケースもあるため、どのように仕事量を可視化し、人員配置の最適化を図るかが課題となります。人材・労働力が不足する背景や解決に向けた取り組みについては、下記の記事も参考にしてください。
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目標や納期が不明瞭
目標や納期が明確にされないまま業務を進行するデメリットのひとつは、「誰が」「何を」「いつまでに」「どの水準まで仕上げるのか」といった要素が曖昧になる点です。このような状態ではタスクや時間配分の適切な管理が難しくなり、結果として業務の進捗が遅れたり、手戻りが頻発したりする可能性が高まります。
さらに、進捗管理が徹底されていないと、納品直前で修正対応や急な追い込み作業が多く発生すると考えられます。計画的な業務の遂行が困難となるため、長時間労働の常態化や残業の増加を招く要因にもなりかねません。残業削減のためには、目標や納期、各人員の役割、品質の基準などを明確化し、チーム全体で共有することが重要です。
残業を良しとする企業風土
日本では古くから滅私奉公の精神を美徳と考える傾向にあり、現在でも長時間労働を肯定的に捉える企業が少なくありません。自分の私生活を犠牲にしても働く姿勢を「努力」や「貢献」とみなす人も多く、定時で退社する従業員に対して「労働意欲がない」「責任感が欠如している」などの誤った評価が下されることもあります。
長時間労働が評価される企業では、上司や同僚が遅くまで残業しているケースも多く、定時退社に抵抗感や罪悪感を覚える人も少なくありません。その結果、従業員は必要以上に長く働くことを無意識のうちに選択してしまい、残業の常態化を招く要因となります。こうした状況を打破するためには「残業=努力」という固定観念を見直すとともに、企業風土の変革を推進することが求められます。下記の記事も参考に、良い企業風土がもたらすメリットをふまえた上で企業風土の変革を進めていきましょう。
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残業を減らすメリット
残業の削減は労働基準法の遵守につながるだけでなく、その他にもさまざまなメリットをもたらします。残業を減らす代表的なメリットは以下の4点です。
生産性や業務効率が向上する
基本的に人間は時間に余裕が生まれると、その仕事を完了するのに与えられた時間をすべて使い切ろうとする傾向にあります。この「仕事の量は与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という人間の心理的な性質を表した法則を「パーキンソンの法則の第一法則」と呼びます。
一方、労働時間に明確な上限が定められた場合、従業員はその時間内で業務を計画的に進めなくてはなりません。その結果、業務プロセスの改善やタスク管理の見直しが進み、従業員一人ひとりの労働生産性や業務効率を高める効果が期待できます。生産性向上に向けたプロジェクトの進め方については、下記の記事も参考にしてください。
生産性向上を実現する、プロジェクト推進のためのステップガイド
従業員満足度や定着率の向上につながる
残業が常態化している環境では慢性的なストレスを抱える従業員が多く見られ、従業員満足度や定着率が低くなりがちです。一方、ワークライフバランスが整っている企業は従業員エンゲージメントが高く、定着率も高い傾向があります。
残業を削減できれば従業員は休息やプライベートの時間を確保でき、心身の健康を維持しやすくなるため、職場への満足度や帰属意識の向上が期待できます。定着率が高まれば優秀な人材の流出を防止できるため、人的資源の採用・教育に関するさまざまなコストの削減も見込めます。
従業員の健康維持につながる
従業員の心身のストレスを軽減し、従業員の健康を維持・向上できる効果が期待できることも、残業を減らすメリットのひとつです。
長時間労働でストレスが蓄積されると、体内で「コルチゾール」というストレスホルモンが過剰に分泌されます。その状態が継続すると自律神経系のバランスが乱れやすくなり、睡眠障害をはじめ、うつ病や不安障害といった精神疾患の発症へとつながりかねません。
従業員の健康管理は企業の義務であり、健康経営の観点においても残業削減は極めて重要な取り組みです。労働時間の適切な管理によって従業員が十分な休息を確保できれば、心身の疾患リスクを軽減しつつ、集中力の向上やミスの減少にもつながります。
ホワイト企業化によって外部からの社会的評価が向上する
積極的に残業削減に取り組む姿勢は、「従業員を大切にする企業」というイメージを社外に発信する有効な手段です。働きやすい職場環境を整備する企業は、いわゆる「ホワイト企業」として社会から認知されやすく、採用市場における優位性を確立する一助となります。
また、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)への意識が高い企業として、顧客や株主からの信頼向上が期待できる点も大きなメリットです。社会的評価の向上は優秀な人材の獲得や事業機会の拡大に寄与し、結果として企業全体の持続可能な成長と市場競争力の強化につながる好循環を生み出します。
残業を減らすためのアイデア
残業を減らすためには、就業規則の整備や業務プロセスの改善、ITシステムの導入、業務の外部委託など、多面的なアプローチが必要です。ここでは残業を減らすアイデアや施策について解説します。
残業申請・残業許可制度の仕組みを導入する
残業時間の法的な上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があり、労働者と使用者がが合意した場合でも「残業時間が年720時間以内」「残業時間・休日労働時間の合計が複数月平均80時間以内、月100時間未満」という上限を厳守しなくてはなりません。また、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月までという制限もあります。
この上限規制を遵守するためには、残業申請・残業許可制度の導入が有効です。残業前に上長の承認を得る必要性が生まれるため、管理職は従業員の労働時間の状況を把握しやすくなり、無計画な残業や過重労働を抑止できます。結果として、従業員の業務に対する優先順位や時間管理に対する意識も高まります。
参照:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(p.4)」
ノー残業デーを設ける
残業を削減するためには、時間外労働を美徳とする企業風土そのものを見直す必要があります。その手段として有効なのが「ノー残業デー」の導入です。原則として残業を禁止し、特別な事情がない限り定時退社を奨励する日を設けることで、定時退社を自然な習慣として根付かせる効果が期待できます。
たとえば週に1回、特定の曜日を残業禁止とすれば、従業員はその日に向けて計画的に業務を進めるようになります。その結果、限られた時間内で業務を遂行する意識が高まり、タスク管理や時間管理のスキル向上にもつながるでしょう。また、上司が率先して退社することで、組織全体の意識改革が期待できます。
勤怠管理システムを導入する
残業が常態化している企業の特徴のひとつは勤怠管理体制の不備であり、その課題を解消する有効な手段として勤怠管理システムの導入が挙げられます。勤怠管理システムを活用すれば、従業員の出退勤時間や労働時間を正確に記録でき、サービスによっては休憩時間や在宅勤務時の稼働状況なども一元的に管理できます。
また、労働時間をリアルタイムで可視化できるため、長時間労働や過重労働の兆候を早期に察知し、管理職が状況に応じたフォローをするといった運用も可能です。蓄積されたデータをもとに残業の実態を分析すれば、課題の特定や改善策の立案にも役立ち、働き方改革の推進にもつながるでしょう。
業務プロセスを見直す
非効率な業務プロセスは残業が発生する要因のひとつです。たとえば従業員の処理能力を超えたムリのある作業、付加価値を生まないムダな活動、作業の品質や時間のムラなどが挙げられます。残業を減らすためには、この「ムリ」「ムダ」「ムラ」の3要素を取り除く工程が不可欠です。
ムリ・ムダ・ムラを排除するには、既存の業務プロセスを言語化・数値化し、各工程の基本手順や所要時間、必要なスキルセット、担当者の熟練度などを洗い出し、非生産的な活動や作業が重複している工程などを可視化することがポイントになります。これらの過程を経て、改善策の立案に必要な材料を獲得し、より効率的な業務プロセスの検討・導入につなげましょう。
業務の属人化を解消する
業務プロセスの見直しと並行して取り組みたいのが属人化の解消です。特定の業務を限られた従業員が担当する状態では、その担当者に業務が集中し、過重労働や残業の常態化を招くリスクが懸念されます。さらに担当者の不在時に業務が滞り、他のメンバーが対応に追われて残業が増える可能性も考えられます。
属人化によるリスクを軽減するためには、業務の標準化を促進する仕組みが欠かせません。そのためにはナレッジの蓄積・共有、マニュアルの作成、教育・研修制度の整備といった施策が必要です。これらの取り組みで業務の標準化を図り、誰でも業務を遂行できる状態にすることで、属人化に起因する残業を削減できます。業務標準化に向けた具体的な取り組みについては、下記の記事も参考にしてください。
業務標準化とは?進まない原因と効率的な進め方を解説
1日の目標や仕事の納期を設定する
目標が未設定の状態では行動指針や優先順位が曖昧になり、作業時間が際限なく延びてしまう可能性があります。これは先述したパーキンソンの法則の第一法則にも通じる現象です。このような事態を回避するためには、1日の目標や仕事の納期を具体化する必要があります。こうした時間意識の定着には、行動科学マネジメントのフレームワークである「MORSの法則」を活用することが有効です。
MORSの法則は「Measured(計測できる)」「Observable(観察できる)」「Reliable(信頼できる)」「Specific(明確化されている)」の頭文字を取ったもので、曖昧な目標や抽象的な表現を具体化し、行動の一貫性と実効性を高めるフレームワークです。この法則に沿ってゴールを設定することで個々の業務の進捗が可視化されやすくなるため、従業員の時間管理能力の向上を図れます。また、必要に応じてサポートすることにより、業務の遅延や残業の発生を抑止する効果も期待できます。
MORSの法則で「曖昧な指示」が「具体的な行動」に変わる
アウトソーシングを活用する
自社の人的資源や物的資源には限界があり、すべての業務を自社のみで完結させようとすると、リソースの逼迫により残業が増加するリスクがあります。そこで活用したいのが、業務の一部を外部委託する「アウトソーシング」です。専門性の高い業務や社内に十分なノウハウがない分野はもちろん、自社の従業員ではなくても作業可能なルーティン化された定型業務などを委託することで、自社の負担を軽減できます。
アウトソーシングで人的資源に余裕が生まれれば、残業の削減に寄与するだけでなく、コア業務への集中による生産性向上も見込めます。また、外注費は原則として経費計上できるほか、固定費である人件費を外注費という変動費に切り替えられるため、業績に応じてコストを調整しやすくなるという会計上の利点もあります。
まとめ
残業が常態化している企業の特徴として挙げられるのが、「勤怠管理不足」「仕事の属人化」「仕事量と人員のミスマッチ」「目標や納期が不明瞭」「残業を良しとする企業風土」です。残業を削減するには、就業規則や業務プロセスの見直し、勤怠管理システムの導入、アウトソーシングの活用といった施策が求められます。こうした取り組みによって長時間労働を是正し、従業員の心身の健康を守るとともに、定着率の改善や社会的評価の向上を図ることで企業全体の持続的な成長につなげましょう。
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