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日本企業のグローバル化と新興国市場進出の変遷

日本企業のグローバル化と新興国市場進出の変遷

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今回は、日本企業のグローバル化の歴史や、新興国市場へ進出した理由について、現状の傾向も踏まえながら説明していきます。まずは、日本企業のこれまでの海外進出の歴史を振り返りたいと思います。日本企業の海外進出の形態は、大きく4つのフェーズに分けることができます。

すべての会社が日本で製造し、日本国内で販売

第1フェーズ:国内製造・国内販売モデル(1940~1960年代)

第1フェーズのイラスト

最初のフェーズは、戦後の焼け野原の時代から始まります。この時代、日本ではモノを作り、それを国内で販売することを経験してきました。

例えば、かつてのトヨタ自動車も、当時はフォード車と比べて約5倍の生産性の差があり、「日本では車を作ることはできない」と言われていた時代でした。
この時代の日本と海外の経済的背景を考えると、為替は固定レートで1ドル=360円の時代でした。現在の変動レートの時代と比較すれば、3倍近くの円安であり、日本の労働者の賃金も当時の先進国と比較して非常に安価でした。

こうした状況下では、日本側から見ると輸入品は非常に高価でしたが、輸出するには有利な環境でした。次第に日本の生産性が向上し、欧米の先進国に対してモノが売れるようになり、戦後の荒廃した経済が復興する中で、日本企業は第2フェーズへと移行していくこととなります。

日本で製造した製品を海外で販売

第2フェーズ:輸出モデル(1960~1990年代)

第2フェーズのイラスト

第2フェーズの輸出モデルでは、輸出先の多くが欧米諸国でした。戦後、日本の賃金は欧米諸国に比べて低く、また為替相場も現在より円安で固定相場であったため、低コストで日本国内で製造し、欧米諸国に輸出するメリットは大きかったのです。

自動車メーカーが台頭し、販売力も向上していく中で、海外でも日本製品の需要が見え始め、日本は経済大国へと変貌を遂げました。また、「改善」という文化に基づく高い品質の製造技術を発展させたことで、日本製品は「安い」だけでなく、「高品質」という評価を得るようになり、“Made in Japan”のブランドが構築され始めました。しかし、この成功が原因で、1970年代から日本とアメリカの間で貿易摩擦が発生することになります。
この貿易摩擦の影響で、トヨタ自動車がアメリカに「米国トヨタ」を設立した事例のように、日本企業は先進国に進出し、製造も販売も欧米先進国で行うようになり、マーケット自体を先進国にシフトするという大きな変換点が訪れました。

日本国内の製造コスト高騰に対応するため製造拠点を海外に移し、海外で製造した製品を日本に輸入

第3フェーズ:現地生産モデル(1990年代~2015年)

第3フェーズのイラスト

高度成長を遂げた日本では、賃金水準が戦後よりも格段に上昇しました。また、為替相場は変動相場制へと移行し、国内生産によるコストメリットが限界に達します。さらに、中国の台頭により、日本国内に安価な製品が徐々に入ってくる時代となりました。

この時に何が起きたかというと、従来日本国内で製造されてきたモノが、海外市場では相対的に高くなっていきました。これは、日本国内の製造拠点における人件費が、中国を筆頭とする新興国に比べて高くなったことが原因です。この経済的背景を契機に、次の海外進出モデルでは、中国やアジアの新興国で製造し、それを日本に輸入するという形に変わっていきました。

しかし、販売先は依然として日本国内や欧米諸国がほとんどであり、海外拠点は本社の指示に従ってモノを作る工場、つまりコストセンターとしての役割を担うことが多い状況でした。このモデルは、結果的に日本企業を大きな成功へと導きました。なぜなら、中国の安価な製品に対抗するためには、コストダウンを図り、原価構造を変革する必要があったからです。

ここで重要なのは、第2フェーズや第3フェーズにおいて、販売される商材はすべて、日本や先進国向けのハイエンドモデルの商品であったという点です。

海外で生産しそのまま海外で販売する、いわゆる「地産地消型」のビジネスモデル

第4フェーズ:地産地消型モデル(2016年~現在)

第4フェーズのイラスト

右肩上がりの経済はやがて終息を迎えます。これまで日本企業にとっての競争相手は、同じ日本企業や、販売先である欧米の企業が中心でしたが、その勢力図は大きく変わりました。中国や韓国メーカーの台頭です。

中国は、共産党の一貫した経済指導体制と豊富な国内資源を背景に急速に成長しました。また、日本を含む海外企業から製造技術を吸収し、技術的にも競争力を高めました。韓国企業も、半導体や情報技術といったハイテク分野に集中した国家的成長戦略を描き、市場シェアを拡大してきました。

さらに、これまで日本が生産拠点と見なしていた新興国が、マーケットとしての重要性を増してきたことも、第4フェーズの大きな特徴です。

現在、多くの日系企業がこの第4フェーズに挑戦し、地産地消型モデルを構築するため、現地ローカル企業への投資や合弁パートナーの開拓を進めています。当社へのクロスボーダーM&Aに関する問い合わせ件数も増加傾向にあります。海外でどのようにイノベーションを起こし、マーケットを獲得していくかが、今後の日系企業の大きな課題となるでしょう。

執筆者
高橋 周平
Tokyo Consulting Firm Co., Ltd.
ASEAN Regional Manager

東京コンサルティンググループ入社後、東京税理士法人にて会計税務や財務分析によるコンサルティングを担当。2017年4月より、東京コンサルティングファームタイにて日系・外資企業の経営を会計税務、法務など多分野でサポート。ASEANやインド、バングラデシュの統括として各国の市場開拓やマネジメントを行う。

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東京コンサルティンググループ(TCG)は、1998年に東京本社を設立し、現在アジア市場を中心に世界26ヵ国44拠点で事業を展開している。主に日系企業の進出支援から現地での会社運営(会計・税務、法務、労務など)までをワンストップでサポート。近年はクロスボーダーM&A支援も手がけ、日系企業の海外展開に寄り添ったサービスを提供している。