人材育成と強靭な組織づくり
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私の仕事は経営コンサルタントです。現在上場企業も含め5社の社外役員や6社の顧問をしており、また小宮コンサルタンツという16名の小さな会社を経営しています。業種的には化粧品、自動車部品、塾チェーン、印刷、建設、成人式の着物の販売レンタル、変わったところでは投資ファンドなどと直接関わっています。規模的には、売上高が数億円の会社から数千億円という会社まであります。
会社は「仕事をしに来る場所」であり、社員の成長や強い組織づくりには、切磋琢磨する社風と、リーダー自身の行動による示範が不可欠です。今回は、人材育成と強靭な組織づくりについてご説明しましょう。
目次
会社は仕事をしにくるところ
人材育成や強靭な組織をつくるためには、「社風」が大きな役割を果たすことも少なくありません。のんびりした社風、競争の少ない和気あいあいの社風では、やはり社員ものんびりしてなかなか育たないものです。組織も強くなりません。
正しい社風は「切磋琢磨」です。「あの人も頑張っているから自分も頑張ろう」と多くの人が思うような社風づくりが大切です。そのためには、企業のトップやリーダーが、頑張っている姿を見せることが必要です。上の人がのんびり構えていて、下の人にがんばれと言っても、部下は「あんたこそ頑張れよ」と心の中では思っているのです。
そして、もっと根本的に、「会社は仕事をしにくるところ」ということを働く人に伝えなければなりません。学校などと違い、通っているだけ、参加しているだけではダメで、会社が求めているのは「貢献」だということをきちんと教えなければなりません。
働く幸せを感じてもらう
ただ、その際に、「働く幸せ」を感じてもらうことも大切です。お客さま、働く仲間に喜んでもらい、そのことで自身もうれしい。工夫することで、やる気がさらに高まる、自己実現の喜びも感じるということです。お客さまに喜んでもらったり、働く仲間に喜んでもらうことが、働きがいを高める最高の原動力になります。
松下幸之助さんは、「仕事の喜びをお金に代えられると思っているうちは、本当の仕事の喜びを知らない」とおっしゃっています。長者番付日本一を10年続けた方の言葉だけに、とても重みがあります。お金に代えられない本当の仕事の喜びを経営者も従業員も感じられる会社が良い会社で、そういう会社が真の高収益企業となるのです。
「意識改革」でなく「行動改革」
経営者は、長く読み継がれた本を読むなど、自身の正しい考え方を確立していくことが大切です。考え方や信念が確立されていれば、強く生きることができますし、リーダーになった時にそれらを周りに伝えることができます。
ただし、人に考え方を伝えるのは難しいものです。もちろん、働く人の意識や考え方が良いほうに変わるのはいいことですが、とても難しいのです。そもそも「考え方」が良くなったかどうかなど、測りようがありません。
行動は、やっているかやっていないかは見ればすぐに分かります。
私が「小さな行動」の大切さに気がついたのは、剣道や空手、茶道やなど「○○道」という名が付くものが、すべて型から入ることにヒントを得ました。
剣道であれ茶道であれ、型を身に付けるために、同じ行動を何度も何度も繰り返します。つまり、同じ行動を何千回、何万回と繰り返すことによって、意識や思想が高まっていくのです。だから、とにかくそれをやらせ続ける、やり続ける。そのことで、意識が高まるのです。
必要な基礎力は「思考力」と「実行力」
会社は仕事をしにくるところなので、仕事ができないと貢献できませんし、楽しくもありません。会社でパフォーマンスを出せるのは、ある程度の能力があり、楽しんでその力を発揮できる人です。
そのために、目の前の仕事を行うための能力が必要なのですが、もっと基本的なところで「基礎力」が必要です。私はそれは「思考力」と「実行力」だと考えています。考える力と、考えたことを実行する力です。
先に説明した「小さな行動」の徹底が組織として基礎力を高めるのにとても有効ですが、ここではさらにそれらを高める方法をお話ししましょう。
思考力を高めるには、ひとつは難しい本を読むことです。ただ、それがすぐには難しいという場合には、難しい本の入門書、できれば同じ著者が書いた入門書などを読み、ある程度、概略を頭に入れたうえで、専門書に進むというやり方です。会計書やマクロ経済の本などはこのパターンがいいと思います。
次に「実行力」です。実行力を高めるには2つのステップがあります。これは儒教の徳目のひとつ「信」に関係します。
この字は「人」の「言」と書きますが、言ったことを守るということが、信用を得る根幹であると同時に、言ったことを守ることで実行力が高まります。私は、「飲みに行こう」と約束した場合には、いつになるかは分かりませんが、必ず守るようにしています。軽口をたたく人がいますが、このような人は信用もされませんし、実行力も高まりません。
実行力を高めるセカンドステップは、「思ったことをやる」ということです。「○○へ行きたい」「○○を買いたい」などさまざまあると思います。もちろん、経済的、時間的な制約がありますが、その中でやりたいと思ったことをやるのです。思ったことをやらないと、やらないクセがつきます。やるクセを持っている人と、やらないクセを持っている人では、実行力、そして、その後の人生のステージが大きく違ってくるのは明らかです。
規律の中の自由
組織では「管理」をすることが当然と考えている経営者も多いと思います。
もちろん、製品の品質やアウトプットの量などの管理は必要ですが、人の管理はなぜ必要なのでしょうか。
それは、規律がないからです。「きちんと出勤しているか」「営業に出てさぼっていないか」などと考えるから管理が必要になるのです。
本来、人に対して必要なのは管理ではなく「規律」なのです。規律をきちんと守らせ、あとは自由にやらせるのが、本来は一番力が出ます。
管理というのは、プロセスを管理します。管理ばかりに慣れてしまうと、言われたことしかやらなくなります。そのうち、言われたことすらやらなくなります。そして、自分では動けない人になってしまうのです。必要なのは「規律の中の自由」なのです。
そして、管理を最も嫌うのはトップランナーたちです。そのためには、まずは、採用が大切です。採用の段階で、きちんとした人を採ることです。面接時間に遅れてくるなどとんでもない話です。
さらには、経営者や幹部自身が規律を守ることです。上の人間が規律を守らないで下の人が守るはずがありません。
人はコーチし、数字をチェックする
私はよく「人はコーチし、数字をチェックする」と申し上げることがあります。人それぞれ課題を克服するためには、やるべきことが違うのです。「課題」とは、現状とあるべき姿のギャップです。それを埋める行為が必要なのです。
営業を例にとると、成績を上げるためには、ある人はお客さまへの訪問回数を増やすべきかもしれませんが、別の人は訪問回数を減らしてでも、提案能力を高めるべきかもしれません。上司にとって必要なのは、それぞれの部下を見極め、何をすべきかのコーチをすることです。
そして、成果や結果をチェックする。会社にとって必要なものは成果(アウトプット)です、そしてその結果です。営業の場合、結果は売上高や利益です。事務の場合は、事務処理の質と量です。プロセスは大切ですが、いちいち上司が口を出す必要がない場合も少なくありません。
会社が働く人に求めているのは、アウトプットでの貢献なのです。
コミュニケーションは「意味」と「意識」の両方
同じことを言われても、好きな人に言われたら喜んでやりたいけれども、嫌な人に言われたらやりたくないという経験は多くの人にあるはずです。それは「意味」の問題ではなく「意識」の問題なのです。
ここまで、多くのことを示唆してきましたが、それを部下の人が喜んでやるか、それともいやいややるかは、リーダーとのコミュニケーション、それも「意味」ではなく「意識」の共有ができているかどうかにかかっています。
そのためには、普段から挨拶を交わす、雑談をする、昼食を共にする、飲みに行くなどの「意識」が通じやすい行動をリーダーが積極的に行う努力が必要です。「意識」の共有というベースがなければ、人も育たないし、組織も強くならないのです。組織も生身の人間が築いているということをしっかり認識していなければなりません。






