
常にビジネスの原理原則を考える
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私の仕事は経営コンサルタントです。現在上場企業も含め5社の社外役員や6社の顧問をしており、また小宮コンサルタンツという16名の小さな会社を経営しています。業種的には化粧品、自動車部品、塾チェーン、印刷、建設、成人式の着物の販売レンタル、変わったところでは投資ファンドなどと直接関わっています。規模的には数千億円の売上高の会社から数億円という会社まであります。
経営には、業種・規模を問わず、成功するための「原理原則」があり、私の仕事はそれらを経営者の方たちに説明することだと考えています。今回は、その「原理原則」をご説明しましょう。
目次
一丁目一番地は「お客さま第一」
まず、原理・原則の第一は、なんといっても「お客さま第一」です。
当社のコンサルタントによく言うことは、「もし、お客さまのところに行って会社の見方が分からなかったら、少なくとも『お客さま第一』かどうかだけは見てくるように」と話します。「マネジメントの父」と呼ばれるピーター・ドラッカー先生も、「企業の一義的価値は企業外部にある」とおっしゃっています。「お客さま第一」つまり、「外部志向」かどうかが、まずもってビジネスがうまくいくかどうかの一丁目一番地です。
逆に言えば、うまくいかない会社は内部志向です。経営者としてとにかく注意しなければならないのは、自社が内部志向、つまり自分たちの都合第一になっていないかどうかです。通常は、お客さまは自社の内部事情など一切考慮しないからです。
お客さまが買うのは商品やサービスですが、まず、その商品やサービスを、経営者や幹部が「一番厳しいお客さまの目」になって見ることです。それが十分でないのに、お客さまが満足されることはありません。そして、本当に良い会社は、新入社員にいたるまで、「お客さま第一」が徹底されています。
お客さま第一のレベルを上げるには、お客さま志向の小さな行動を徹底することです。それにより基礎力を高めなければなりません。
働く人の「意識」が高まればそれに越したことはありませんが、意識はなかなか高まりません。そしてお客さまは、社員の意識が高まるのを待ってはくれません。意識の高い従業員がいても電話が10回なっていたらアウトです。意識より行動なのです。
そして、働く人をお客さま志向にするには、行動から変えるのが一番です。具体的には、挨拶をきちんとする、電話は3コール以内に取るなどの小さな行動を徹底させることです。それを徹底すれば基礎力は上がります。
私がこのことに気づいたのは、空手や剣道、柔道、茶道、華道など「○○道」と言われるものはすべて「形」から入るからです。剣道の習い始めは素振りばかり、柔道なら受け身を徹底的に練習させられます。「形」から入るのです。意識からではありません。そして、われわれ凡人はその小さな行動を何千回、何万回と行うことで意識が高まってきます。お客さまは行動を求めているのです。
また、「行動」はしているかしていないかがはっきりと分かります。意識の高まりはなかなか見分けるのが難しいものですが、行動ならすぐに分かります。そして、行動をしていない人には、上司はきちんと注意しなければなりません。なあなあではうまくいかないのです。
内部志向で長期的にうまくいく会社はありません。小さな行動の徹底で基礎力を高め、それを商品やサービスに反映させるのです。経営者が先頭に立ち「お客さま第一」を実践し、一番厳しいお客さまの目になって、商品やサービスを提供することが何よりも大切です。
働く人を幸せにする
それと同時に、「働く人が幸せ」かどうかが大切です。
ピーター・ドラッカー先生は、社会はそれを構成する人を幸せにするために存在する。そして、現代社会においては、多くの人が社会と最も大きな接点を持っているのは勤めている組織だ。そして、その組織が人を幸せにしないのであれば、それは社会そのものと自己矛盾だとおっしゃっています。
私の人生の師匠の曹洞宗円福寺の故藤本幸邦老師は「政治も経済も人を幸せにする道具」だとおっしゃっていました。人の幸せというものがとても重要なのです。
私は、会社が与えられる幸せは二つあり、一番目が「働く幸せ、働きがい」、二番目が「経済的幸せ」です。この順番が大切で、経済的幸せももちろん大事ですが、働きがいを感じて働けるかはもっと大切なことなのです。
当社のお客さまの中には、現場で働く若い社員たちが、会社に来るのが楽しいので「朝が来るのが待ち遠しい」「テーマパークに行くより会社に行くほうが楽しい」という会社があります。結構厳しい現場仕事をしていますが、それでもそう言うのです。従業員180人ほどの会社ですが、離職率も格段に低く、辞めた人もここ数年で5人ほど戻ってきました。その中の一人は、息子を自社に入社させたほどです。働くことが楽しいからです。
その会社では、働く喜びを感じてもらうために、「お客さまが喜ぶ小さな行動」の目標を毎月立て、それを実行し、本人や上司が評価するということを繰り返しています。たとえば、「現場作業が終わったら、その周りを5分間掃除する」や「3コールでとっていた電話をこれからは2コールにする」などです。最初は抵抗勢力もいましたが、数年を経てお客さまの喜びを働きがいに感じる人が増えたことで、定着しました。
今では、お客さまが喜ぶ小さな行動の他に、「働く仲間が喜ぶ小さな行動」の目標も立てています。こちらも定着してからは、社内のチームワークが格段に良くなったことは言うまでもありません。もちろん業績は抜群で、中小企業ながら待遇も群を抜いています。
「良い仕事」から「良い会社」を作る
私は、経営者たちに、働く人に「良い仕事」に専念させたほうが結果としてうまくいき、高収益企業となるというお話をよくします。
私のいう「良い仕事」とは、①お客さまが喜ぶこと、②働く仲間が喜ぶこと、③工夫です。いずれも、小さな行動です。
先に「お客さま第一」の重要性を説明しましたが、内部事務などでお客さまと直接接しない人もいるので「働く仲間が喜ぶこと」を良い仕事に加えているのです。「工夫」とはお客さまが喜ぶことや働く仲間が喜ぶことをより良く、より早くやることです。お客さまや働く仲間に喜んでもらうことで働きがいを感じるのです。そんな会社をお客さまも従業員も好きです。
その結果が「良い会社」です。これも私は3つの定義を持っており、①良い商品やサービスを提供し、お客さまが喜び、それによって社会に貢献する会社、②働く人が幸せな会社、③高収益です。
私は「高収益」を「付加価値の2割の営業利益を生む会社」と定義しています。ただし、給与を下げれば利益は出るので、「同じ地域の同業よりも1割高い給与」と「長く働いてくれる幹部には最低でも年収で1,000万円」を支払った後、付加価値の2割の営業利益を出すようにとお願いしています。
先に説明した若い社員が「朝が来るのが待ち遠しい」という会社はもちろんのこと、当社の顧客企業では、収益も含めてこの「良い会社」をクリアしているところが多くあります。中小企業でも「良い仕事」を徹底すれば高収益企業を作ることは十分に可能だと、現場で会社を見てつくづく感じています。
いずれにしても、ビジネスの原点は、「お客さま第一」と「働く人の幸せ」です。これを同時に実現することです。こんな時代だからこそ、それぞれの職場でこれを実現したいものです。
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