不確実な時代を乗り越えるリーダーシップ
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私の仕事は経営コンサルタントです。現在上場企業も含め5社の社外役員や6社の顧問をしており、また小宮コンサルタンツという16名の小さな会社を経営しています。業種的には化粧品や自動車部品、塾チェーン、印刷、建設、成人式の着物の販売レンタル、変わったところでは投資ファンドなどと直接関わっています。規模的には、売上高が数億円の会社から数千億円という会社まであります。
どんな時代でもリーダーの仕事を全うするのは簡単なことではありませんが、基本的な考え方をしっかりと持つことが大切です。今回は、不確実な時代を乗り越えるリーダーシップについてご説明しましょう。
目次
リーダーは二つの「覚悟」を持て
どんな時代にもリーダーに必要なのは二つの覚悟です。理屈だけでは人は動きません。
ひとつは「先頭に立つ」覚悟。先頭に立って行動する「指揮官先頭」の覚悟がないリーダーには誰もついてきません。
大切な方針や大きなクレームの際には、リーダーは先頭に立って行動する必要があるのです。
もうひとつは「責任を取る」覚悟です。自分の管轄下にある組織については、すべての責任を取る覚悟がないと、やはり、部下は思い切って仕事ができません。
経営コンサルタントの大先輩の一倉定先生は「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのもすべて自分のせいだと思え」とおっしゃっていました。そこまでは思えないでしょうが、部下がやったことには全責任を負う覚悟がないと、部下は思い切って動けません。
今日からでもこの二つの覚悟を持って行動してください。普段からやっていないことはいざとなってもやれないものです。
理念、現場、夢を語る
不確実な時代ほど、リーダーはメッセージを発しなければなりませんが、リーダーとして、次の三つを語らなければならないと私は思っています。
まずは「理念」です。かくあるべしという行動規範とさらにはそのベースとなる会社の存在意義、つまり「目的」です。これがブレると会社はおかしくなります。
さらには「現場」です。製造や販売、営業、研究開発、管理などの現場で何が起こっており、何が素晴らしく、どこがおかしいかについて、リーダーはその本質を知り、語らなければなりません。このことに関して、「一番厳しいお客さまの目」になることも大切です。
そして「夢」を語ること。「理念」や「現場」はとても大切ですが、それだけでは、堅苦しくなってしまいます。社員と共有できるのは「夢」です。社員それぞれも、各人の夢を持っているのです。経営者や社員もつらい時を乗り越えられ、前向きに進めるのは夢があるからです。会社の夢に、各人の夢をかぶせることができるような夢を経営者は語らなければならないのです。
会社がしんどい時に、働く人の給与を下げるなどして危機感をあおる経営者がいます。もちろん、しんどい状況にある時には、幹部とは危機感を共有することは必要です。
しかし、一般社員にまで危機感をあおると、それにとどまらず「不安感」が蔓延します。不安な状況でベストパフォーマンスを出せるのはよほどの人だけです。
そのためにも、普段から「夢」を語り、それを共有しておくことです。
「人望・仁徳」を身に付ける
人に頼りにされたいなら、「人望」や「仁徳」を身に付ける以外にはありません。他に方法はないのです。
それはどうすれば身に付けることができるのでしょうか。まず、そう「思う」ことが必要です。
人望や仁徳を身に付けたい、身に付けようといつも思っていたら、それが実現する方向へ、0.01歩ずつでも進んでいくのではないかと私は思っています。
人間は、余程のことがない限り、行こうと思う方向にしか行きません。人望・仁徳を身に付けたいと思っていれば、少しずつかもしれませんが、その方向へ行ける可能性があります。
そのためには『論語』や『老子』などの古典や仏教書、あるいは偉人が描かれた歴史書などを読んでみて、その中から見つけ出し、自分自身で「人望・仁徳とは何か」を理解したうえで、心にとどめておくことです。司馬遼太郎さんの本もお薦めです。
人望・仁徳を身につけるための八つの徳目
リーダーが人望や仁徳を身に付けるために具体的には何が必要でしょうか。私は儒教の八つの徳目を実践することが大切だと考えています。「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」です。
順に説明しましょう。
まず「仁」です。「人」に「二」と書きます。人が二人以上いると必要なことは思いやりです。さらにはリーダーシップです。リーダーが持つ思いやりの心が仁で、儒教ではそれをとても大切にします。リーダーが持つ思いやりには、下の人を育てるために、ときには厳しさも必要です。
「義」は「正義」の義です。正しいこと、そして私は全体のことを考えるとよく説明します。「先義後利」という言葉があります。明治時代に500の会社や600もの非営利法人を繁栄させた渋沢栄一翁がとても大切にしていた言葉ですが、先に社会や全体のことを考え、自分のもうけ(利)は後にするということです。先に義があれば、利は後からついてくるとも解釈できます。
「礼」は言葉や服装に気をつけるということです。いまでは年長の部下は珍しくありませんが、部下であっても年長者には言葉遣いは気をつけなければなりません。
そして、その場その場に応じた服装も大切です。40年ほど前、米国ダートマス大学のビジネススクールに留学してすぐの頃、コミュニケーションの授業で「proper attire(適切な服装)」が大切だということを教えられました。ビジネスの場はファッションショーをするところではないのです。相手やその場に応じた服装を考えなければなりません。
「智」は考える力、「思考力」です。ドラッカー先生は「20世紀は資本の時代、21世紀は知の時代」と喝破されましたが、戦争などでインフラが十分に整っていない時代には、鉄鋼や通信、鉄道など巨大な資本が必要な産業に資本を投入できた人が成功したのです。
一方、今の時代はITなどの知的集積が富を生みます。ハーバード大学の寮で始めたアイデアを発展させて大成功したマーク・ザッカーバーグのような人を生む時代です。資本よりも知力があれば、世界有数の金持ちになれる時代なのです。
次に「忠」です。忠義などに使われる字です。この字は「中」に「心」と書きます。ブレないという意味だと私は解釈しています。正しい考え方を持ってそれをぶらさないことが大切です。
生き方などをきちんと学んでいない人が、間違った考えをぶらさないのならそれはそれで問題です。あくまでも正しい考え方を学んでそれをぶらさないことです。
「信」は「人」の「言」と書きます。言ったことを守ることにより、信用を得、そして実行力を獲得するということです。小さなことでも言ったことを守ることが大切です。
「孝」は親孝行です。私はよく、「親孝行して不幸になった人はいない」という話をします。
以前こんなことがありました。ある地方で、親子関係がそれほどうまくいっていない方から経営者をしている親と会ってほしいと頼まれたことがありました。お会いしてみるときちんとされた方で、私は息子さんに「親孝行して不幸になった人はいませんよ」とお話ししました。
1年ほどして、その方にお会いしたら、とても感謝されました。「小宮さんに言われて、とにかく親に逆らわないようにしました。そうこうしていると、父親は突然亡くなったのです。亡くなる前の半年間でも親孝行出来てとても良かった」と言われたことがありました。私にはもう親孝行出来る両親はいませんが、「親孝行して不幸になった人はいない」と私は信じています。
最後は「悌」です。これは弟の分を守るという意味ですが、弟に限らず、分を守るということはとても大切なことです。自分の仕事を全うするということです。
儒教では、自分より上の人の仕事をすることには注意を払う必要があると諭しています。一方、先にも書いた一倉先生は「ダメな会社というのは、社長が部長の仕事をし、部長は課長の仕事を、課長は係長の仕事をし、係長は平社員の仕事をしている。平社員は何をしているのかというと、会社の将来を憂いている」とも言っておられました。下の人の仕事は、自分が経験あることも多いのである意味楽ですが、それに逃げ込んでもいけないのです。自身の与えられた地位や役割りの仕事をきちっとするのが本質なのです。
どんな時代でもリーダーの仕事を全うするのは簡単なことではありませんが、基本的な考え方をしっかりと持つことが大切です。






