
日本人の3倍のスピードで辞める外国人材。離職を防ぐために企業が持つべき「3つの意識」と「5つの行動」とは
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外国人材の採用・定着支援に取り組んできた株式会社エイムソウル。同社は、採用支援や社員研修を中心に、これまで700社以上の企業の人事課題を解決。2020年にはグローバル採用適性検査「CQI」を開発し、特許を取得しました。
今回は、株式会社エイムソウル 代表取締役 稲垣隆司氏に、外国人材定着の実態、そして外国人材を雇用する企業が直面している課題とその解決方法についてお話を伺いました。
目次
はじめに
稲垣氏は、同志社大学を卒業後に光通信へ入社し、営業職を経て人事部門を経験。その後、人事コンサルティング会社で3年間勤務したのち、2005年に株式会社エイムソウルを設立しました。
同社は、新卒採用支援や社員研修を中心に事業を拡大。立ち上げ当初から続く事業の柱である新卒採用支援では、単なる会社説明ではなく、参加者同士が議論しながら考えるビジネスゲーム形式のワークショップを開発・提供しています。これまでに約700社のグループワークを設計してきた実績があり、新入社員や若手社員向けのマインドセット研修も手がけています。
現在は日本企業のグローバル人事課題に焦点を当てた支援を行っており、2014年からはインドネシアに進出し、現地に人事コンサルティング会社を設立。文化や価値観の違いに直面しながら、外国人材が定着・活躍するための仕組みづくりを探求しています。
インドネシア進出で直面した「ちゃんと」の感覚のズレ。文化の壁とは何か
――稲垣様がインドネシアに行かれたのは10年ほど前だとお聞きしましたが、現地で最初に感じたギャップはどのようなものでしたか?
株式会社エイムソウル 代表取締役 稲垣隆司氏(以下、稲垣):あるイベントでの出会いをきっかけに「海外で挑戦しよう」と決意し、2014年からインドネシアに移住しました。現地では言葉も文化も通じず、当初は失敗の連続で、日本とインドネシアの間にある「文化の壁」を肌で感じましたね。
最初に感じた日本とのギャップは「時間に対する感覚の違い」です。とりわけ、日本では約束の時間を守ることが当然とされていますが、インドネシアをはじめ東南アジアの多くの国では、時間に対する捉え方が大きく違っており、まずはそのギャップに驚いたことを覚えています。
――「時間に対する感覚の違い」について、具体的なエピソードなどはありますか?
稲垣:私がよく皆さんにお話しする中で、とある自動車部品メーカーさんの事例があります。
ある日本人駐在員が、インドネシア人社員に「『ちゃんと』時間を守りなさい」と注意したことがあったそうです。実際に10時に開始するはずの会議に、インドネシア人社員が誰も来ていない状況だったと言います。しかし、注意されたインドネシア人社員は「私は『ちゃんと』時間を守っています。だって、10時になったら会議室に向かっているので」と答えたそうです。
日本人であれば、10時開始の会議と聞いて、5分前着席が「ちゃんと」という認識になるのですが、インドネシア人は10時になってから会議に向かえば「ちゃんと」ということだったようです。
このエピソードから分かるように、同じ「ちゃんと」という言葉でも、文化や考え方によって想定している基準がまったく違うんですよね。このような感覚の違いをしっかりと整理できていないと、海外の方と一緒に働くのは難しいかもしれません。
44%が離職を希望。外国人材が定着しない本当の原因
――では、外国人材の企業における定着状況については、どのような現状があるのでしょうか?
稲垣:まず実態としてお伝えすると、これまで蓄積してきたデータからも、外国人材の離職率は非常に高い状況にあると言えると思います。日本人の新卒社員は「3年間で3割が離職する」と言われていますが、外国人の場合は「1年間で3割」、つまりおよそ3倍のスピードで離職しているのが実情です。
さらに、技能実習制度のように「研修」を目的とした在留資格では、制度上「退職」という概念がなく、契約途中で辞めることはできません。
当社の調査では、「本当は辞めたかったが、制度上できなかった」という人も含めると、1年以内に離職・離職を希望する人の割合は44%に達することが分かっています。
――離職の原因はどのような点にあるのでしょうか?
稲垣:原因は外国人材だけの問題ではなく、受け入れる側の体制や仕組みにあると考えています。外国人材の定着に成功している企業は、現場でのコミュニケーション設計がうまくできていることが多く、「文化の違い」にうまく対応していることが多いです。
日本人と外国人では、言語だけでなく「報告・連絡・相談」や「時間の感覚」など、根本的な前提が違うことを理解し、それを踏まえた対応ができる企業が、結果として人材の定着率を上げられていると感じています。
――業界によって、外国人材の定着しやすさに違いはあるのでしょうか?
稲垣:一般的に、外国人材が長く働いているイメージがあるのは、製造業やサービス業といった現場型の業界だと思います。ただし、業界で区切って考えるよりも、「在留資格」ごとに見るほうが実態をつかみやすいと感じています。
同じ外国人材であっても、置かれている環境や目的は大きく異なります。業界別の分類ではなく、「どのような在留資格を持ち、どのような前提で働いているのか」を理解しなければ、支援や教育の方向性を誤ってしまうかもしれません。
大きな課題となっているのは、外国人材の適性を集団面接で見抜くことの難しさ
――貴社が支援する企業では、どのような課題を抱えているケースが多いのでしょうか?
稲垣:当社は数多くの外国人材を雇用する企業を支援していますが、それぞれが抱えている課題は、業種や従業員の国籍によって大きく異なります。特に技能実習や特定技能の方が多い業界では、採用のプロセス自体に大きな難しさがあります。
実は、インドネシアやベトナムなどの送り出し国には、政府認定の送り出し機関があり、日本側では監理団体や登録支援機関が連携して人材を紹介する仕組みになっています。
実際の採用面接は多くの場合オンラインで行われ、1対5〜10名の集団形式で通訳を介しながら短時間で実施されます。日本語のレベルも「日常的な会話をややゆっくり話したら分かるレベル」が中心で、「なぜ日本で働きたいのか」「あなたの得意なことは」といったシンプルな質問で合否を決めるケースもあります。
しかし、それだけでは候補者の適性や文化的な相性を十分に見極めることはできません。そこで当社では、グローバル採用適性検査「CQI」を開発しました。このツールを活用することで、面接前に候補者の特性や日本で働く際の適応度を数値化し、企業と人材のマッチング精度を高めています。
定着率が高い企業の共通点。「3つの意識」と「5つの行動」とは
――外国人材の定着率が高い企業に共通点はありますか?
稲垣:当社では外国人材が定着して活躍している企業と、そうではない企業の詳細な比較・分析を行っているのですが、はっきりとした意識と行動の違いが見えてきました。当社はそれを「3つの意識」と「5つの行動」として整理しています。
「3つの意識」とは、「受容する必要性の理解」、「受容する自信」、「受容する熱意」です。
外国人材を受け入れる必要性を理解し、外国人材を受け入れる自信と熱意を持って楽しめるかという、日本人側の心構えに関わる要素となっています。
そして「5つの行動」とは、「安心・安全な環境構築」、「個人的な関係性づくり」、「改善に向けたフィードバック」、「意見や提案の傾聴」、「コミュニケーションの工夫」です。
これらの「3つの意識」と「5つの行動」を持つ企業では、外国人材が安心して働ける環境が整っており、結果として定着率が高くなっています。
後編では、「3つの意識」と「5つの行動」のより具体的な内容、そして文化の壁を乗り越えるために企業が取り組むべきコミュニケーションなどについて深堀りしていきます。
取材・文:小町ヒロキ
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