
ベトナムで“使われる制度”を作るには 人事制度の形骸化を防ぐ4つのステップ
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近年、ベトナムの日系企業では、人材の定着や成長を目的に、人事評価制度や等級制度の導入が進んでいます。しかし実際には、「制度はあるが運用されていない」「評価が形骸化している」といった声をよく耳にします。多くの時間とコストをかけた制度が“使われない”ものになってしまうのは、なぜなのでしょうか。
目次
「制度疲れ」の背景にある3つの要因
過去の導入失敗による諦め感
かつて外部支援を受けて評価制度を導入したものの、運用が続かず自然消滅した経験から、「今回も続かないだろう」という諦めが社員や管理職の間に広がっているケースがあります。さらに、日本人社長が数年ごとに交代し、そのたびに制度が見直されることで、「どうせまた変わる」と現場が受け止め、導入に消極的になることも少なくありません。制度運用が続かない原因は、導入だけで満足してしまい、運用フェーズへの本気度が欠けていた点にもあります。
制度設計と現場運用の断絶
日本本社や外部コンサルが主導して制度を設計し、現地管理職が「なぜこの制度が必要なのか」を理解しないまま運用が始まると、評価は単なる“作業”になり、実態に即さない運用が広がっていきます。初期段階からHRマネージャーが制度設計に関わっていない企業で起きやすい傾向です。制度に現場の意識を通し、“魂を込める”プロセスを欠いたままでは、制度が生きた仕組みとして根づくことはありません。
運用体制の不備
評価者研修が不十分、導入後のモニタリングが行われていない、評価後のフィードバックがない――こうした運用面の未整備は、制度そのものへの信頼を損ない、「結局は上司の気分次第」といった不信感につながってしまいます。
特にベトナムでは、フィードバックを通じて部下と対話する文化が根づいていないケースも多く、評価制度を運用する管理職側の意識改革と、「対話」という負荷を乗り越えるための会社からの支援が重要となります。制度や研修を通じて、「対話は難しいが、それができればマネジメントサイクルが回り、チームが変わる」という実感を持たせることが、制度運用の定着につながります。
“制度疲れ”を防ぐための導入ステップ
作って終わりではなく、“使われる制度”にするにはどうすれば良いのでしょうか。以下のステップを意識することで、制度が現場に定着し、組織の力となる可能性が高まります。
ステップ 1:目的と導入の「背景」を丁寧に共有する
制度は「業績管理」だけでなく、「育成」や「公正な処遇の基準づくり」のために必要です。その目的を、トップ自らの言葉で社員に伝えることが重要です。
ステップ 2:最小単位でのパイロット導入
全社一斉ではなく、一部の部署や職種に限定してトライアル導入することで、制度の実効性や課題を見極められます。初期の成功体験は、社内に制度への理解を広げる武器になります。
ステップ 3:制度とセットで「評価者の育成」も進める
特にベトナムでは、評価を通じたフィードバック文化が根付いていないことも多く、「評価の付け方」より「伝え方」の指導が鍵を握ります。直属の上司からのフィードバックは、制度そのもの以上に社員に影響を与えることもあります。
ステップ 4:運用状況のモニタリングと制度の“微修正”
導入後の振り返りと継続的な見直しが、制度定着のカギです。年1回でもよいので、評価の実施率やコメントの内容、従業員の納得度を定点観測し、必要に応じて制度を微修正していくべきです。一度導入して終わりではなく、現場に根づくまで見届ける“経営側の覚悟”が求められます。
制度は“人を縛るもの”ではなく、“成長を支える道具”
評価制度や等級制度は、決して社員を管理するための“縛り”ではありません。むしろ、「どんな役割を期待しているのか」「どのように成長していくのか」を可視化し、社員の納得と挑戦を促すための“共通言語”です。
制度を作るだけでは意味がなく、“使われる”ことで初めて、組織は変わり始めます。ベトナムという異文化環境だからこそ、丁寧に、着実に、“活きる制度”をつくっていくことが、これからの人事に求められています。










