
業務のスリム化改革|4層のフィルタで実現する業務単純化とは
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日々の業務を効率的にこなすためには、業務を整理し単純化していく作業が欠かせません。多くの企業は意図しないうちにムダな業務を抱えており、企業の生産性や従業員の労働環境に影響を与えています。本記事では業務の単純化に焦点を当て、単純化するためのプロセスやポイントを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
「業務単純化」とは業務のムダを削減すること
業務単純化は、さまざまな業務のなかにあるムダの削減を通じ、効率を向上させるのが目的です。ムダの削減により、そのムダにかけていた時間やお金など資源が浮き、新たなリソースとなります。
ムダが存在しやすいのは、業務のなかで特にストレスや面倒を感じる部分です。例えば何かを書く作業や、人やものの移動、判断に悩む作業などが挙げられます。具体例として、事務作業のなかに潜むムダを見てみましょう。
- 整理されていない棚から必要な書類を探す
- 様式が複雑な書類へ記入する
- ある書類を別の部屋に運ぶ
- 次にする作業が決まっておらず、どの作業から手をつけるか悩む
- 提出日を過ぎても書類が集まらず次の作業に着手できない
- 備品の数を数えてデータ入力する
これらの作業や状態は、業務のうえで完全に不要とは言い切れませんが、ムダが多いために担当者の負担が増え、効率の低下につながります。業務単純化は、このようなムダにまつわる問題を解決する代表的な手段です。
業務単純化で利用される「ECRSの法則」
まずは、業務単純化の手法として一般的に活用されている「ECRSの法則」を紹介します。次の四つの要素があり、それぞれの頭文字を取ってECRSの法則と呼ばれています。四つの要素を順番に確認していくことで、効率的な業務単純化が可能です。それぞれの要素を見てみましょう。
Eliminate(排除:なくす)
ECRSの法則のなかで最も効果が高い手法と言われているのが「Eliminate(排除:なくす)」です。不要な作業や手順など、その業務自体をなくせないか検討し、取り除くことを指します。
重複した手続きや、誰にも読まれない報告書の作成などはムダな業務の代表例です。ムダな業務が多い場合、その作業自体がなくなれば全体の工数を減らせます。「本当に必要な作業か?」という視点から見直し、排除できるものを徹底的に削減するのが重要です。
この手法の強みは、単純に業務を行うのをやめるだけで良いため、コストも手間もかからずすぐに実行できる点にあります。リソースに余裕がない企業でも、効率よく単純化が可能です。
Combine(結合と分離:寄せる)
「Combine(結合と分離:寄せる)」とは、複数の作業をひとつにまとめ、効率化することです。例えば、複数のデータ入力作業をひとつのツールで行って入力を簡易化したり、複数の書類をひとつの書類にまとめたりすれば、工数を削減できます。また、同じような作業をしている部署やチームがある場合、ひとつにまとめてしまえば効率的です。まとめることで重複した作業が省かれ、作業のプロセスもシンプルになるので、ミスを減らせるだけでなく業務の単純化にもつながります。
Rearrange(入替えと代替:交換する)
「Rearrange(入替えと代替:交換する)」とは、業務プロセスや作業の順番を見直し、より効率的な手順あるいは方法に変更することです。
例えば、製品組み立ての順番を見直して短縮化し作業効率を上げたり、複数の工程を一度に行える方法に変更したりして、作業の流れをスムーズにします。営業であれば、営業ルートの変更により時間を短縮したり、訪問営業からオンライン商談に変えたりするのも代表的なRearrangeの例です。
Simplify(簡素化:減らす)
複雑化して生産性が低くなった業務に対し、やるべきことを減らす「Simplify(簡素化:減らす)」もあります。ECRSの法則に基づいて業務単純化を行う場合、最後に着手される対策です。
例えば複雑な工程を踏まなければいけない作業については、必要最低限の手順になるよう整理すれば、時間や労力を削減できます。また、複雑で難解な手順やルールを避け、誰でも簡単に理解・実行できる方法に変更するのも有効な方法です。あるいは、DXも簡素化のひとつにあたります。
ただし、やるべきことを減らした結果、品質や成果が下がってしまうのでは本末転倒です。影響を与えない範囲で可能な限りシンプルな内容を追求し、単純化していく必要があります。
業務のムダを見つけ出す「単純化の4層のフィルタ」
業務単純化にあたってはECRSの法則が有名ですが、業務のムダを見つけ出すには「単純化の4層のフィルタ」に分けて考える方法がおすすめです。4層のフィルタは、水をろ過するイメージで考えると分かりやすいです。

インパクトが強い順に、次のフィルタがあります。
- なくす
- 減らす
- 寄せる
- 任せる
旧方式の業務を、「なくす→減らす→寄せる→任せる」と流れに沿って4層のフィルタにかけていくと、ムダがろ過され、最終的に単純化・最適化された新方式の業務が残る仕組みです。4層のフィルタを使った、具体的な業務のムダの見つけ方は後ほど解説します。
【具体例つき】業務単純化の進め方
具体的にどのように進めていけば業務単純化ができるのか、また「4層のフィルタ」をどう活用すれば良いのか、ここではスーパーマーケットの清掃業務を例に解説します。
業務に潜むムダを挙げる
まずは業務における一連のプロセスを確認し、不要な業務や、効率が悪い業務を列挙していきます。
例えばスーパーマーケットの駐車場において、毎日3回の清掃業務を行っているとしましょう。一見くまなく清掃されており綺麗で衛生的な状態が保たれているようですが、よく調べると次のようなムダがあると分かります。
- ゴミが落ちている箇所や、汚れた箇所を常に探している
- 駐車場の混雑具合に応じ、どこから掃除するか悩む時間がある
- 毎回、清掃の報告書を書面で提出しなければならない
- 報告するマネジャーの手が空くのを待たなければならない
- 清掃用具やゴミを台車で運ばなければならない
- 清掃用具の残数や残量を手動で調べて、足りない場合は追加手配しなければならない
これらは清掃業務に必要な行為のように見えますが、じつのところ「駐車場が綺麗になる」という結果にはまったく影響していません。例えば、どこから掃除しようか悩む時間が長かったからといって、駐車場がより綺麗になるわけではありません。むしろ、悩む時間が長いほどムダが生じていると分かります。このような観点から業務のあらゆるムダを探し、列挙していきます。
4層のフィルタで単純化の可能性を探る
業務のムダを把握したら、続いてムダを含んだ旧方式の業務を、前述した4層のフィルタにかけます。濁った水がろ過されていくように、フィルタを通じてムダが削ぎ落とされ、単純化された新方式が生み出されます。
先のスーパーマーケットの事例で列挙したムダを、各フィルタにかけてみましょう。
なくす
4層のフィルタにおける最初の一層は「なくす」です。具体的な理由や目的もないまま行っている業務や、慣例化して実行の意味が薄れてしまった業務はなくしてしまえば単純化できます。
例えば、次のようなムダな作業はないでしょうか。
- 多くの書類のなかに埋もれてしまい、目を通されることのない報告書の作成
- 形だけで、ミスの発見につながっていない確認作業
- 惰性で続けている、特に理由や必要性のない手続き
スーパーマーケットの事例でいえば、報告書の作成やマネジャーへの口頭での報告などが必要かどうか検討してみましょう。あるいは、是非は置いておいて、「店内はともかく、駐車場の掃除は必要なのか」といった根本的な部分から考えることもできます。
減らす
2層目のフィルタは「減らす」です。業務の量や頻度、回数を減らすことが単純化につながります。特に、明確な理由や根拠もないまま業務だけが増えている場合、減らすフィルタが役立ちます。
減らしやすい業務の例としては、次のものがあります。
- 日常的に行われる定例化された業務
- 何度も繰り返す業務
- 過剰な頻度で行われる業務
実際にスーパーマーケットの例を、減らすフィルタにかけてみると次のような改善余地があることが分かります。
- 掃除の回数を毎日3回から1回に減らす
- 雨の日や翌日は地面が濡れているので、駐車場の掃除をしないか、もしくは簡略化する
- ゴミ箱のみ確認して、通路や植栽などの掃除は週に2回にする
このように業務の頻度を減らせば担当者の負担が減り、単純化が可能です。
寄せる
3層目のフィルタは「寄せる」、すなわち類似した業務をまとめてひとつに集約することです。物理的、あるいは時間的に分散しており、担当者の負担を増やしている業務に高い効果を発揮します。
スーパーマーケットの事例をもとに、具体例を挙げると次のとおりです。
- 分散している用具入れをひとつにまとめる
- 1日3回に分けて行っていた作業を朝にまとめる
いま行っている作業をまとめるだけなので実行の難易度が低く、また従業員の負担感も減りやすいのがメリットです。
任せる
最終段階のフィルタは「任せる」、すなわち、手順や方法、あるいは道具を変えて業務を手放し、誰かに任せてしまう方法です。アウトソーシングや自動化、DX、あるいは担当者の変更もこのフィルタに含まれます。
スーパーマーケットの例をもとに、具体例を見てみましょう。
- ゴミ箱を定期的に確認するのではなく、センサー付きのゴミ箱に変え、満杯になったら通知をもとに処理するようにする
- 台車を用いて手動でゴミや用具を運んでいたのを、専用カートに変えて負担を軽減する
- 混雑状況に応じて清掃順番を変えるのをやめて一律にし、迷う時間をなくす
- 清掃ロボットを導入して、手動から自動清掃に切り換える
- 外部の清掃業者に委託し、従業員の負担をなくす
このように、負担になりやすい複数の作業や複雑な作業はあえて「任せる」ことで、単純かつ手間をかけずに実行できます。
業務単純化における「旧方式」と「新方式」の比較ポイント
業務単純化のアイデアを採用するか否かを決定する場面では、「旧方式VS新方式」の議論になることもたびたびあります。議論の際に注意したいのが、「未来志向型の比較をする」という点です。例えば清掃業務をなくすべきか検討している場合は、旧方式を続けた未来と、新方式に切り換えた未来を比較したうえで、どちらが良いか判断します。
業務単純化を行うのは、あくまでより良い未来を得るためです。しかし、過去の方式や慣例ばかりにとらわれていると、未来をより良くするための議論や思い切った決断ができなくなってしまいます。
例えば、「創業から40年続けてきたのだから、今後も掃除をすべきだ」とする意見に対しては、過去へのリスペクトをしつつも、今後どうするかという未来を中心に話し合わなければなりません。
また、「10年前にゴミで大きな問題が発生したため、対策として今後も清掃するべきだ」といった意見には、問題が起きたのはそのときだけで、むしろ10年前から現在までは同じ問題が起きていないことを踏まえて検討する必要があります。
このように、あくまで過去は過去として振り返り、そのうえで未来について目を向けることが重要です。
処分・導入・定着にかかるコスト
旧方式と新方式を比較するうえで必ず出てくるのが、コストに関する問題です。業務単純化にあたり、旧方式と新方式のコストを比較する際は、単純にランニングコストのみ比較しても意味がありません。
例えば、新方式に切り換える場合は「旧方式の処分+新方式の導入+新方式の定着」にそれぞれコストがかかります。具体的には、旧設備の破棄、新設備の購入・設置、およびマニュアル整備や研修、説明会などを行うためのコストです。これらのコストは切り換え時にのみ発生する一時的なコストですが、内容によっては莫大なものとなるため、よく考慮して判断しなければなりません。
また、導入後は継続的にランニングコストがかかります。これらを踏まえて、1年や10年など比較する期間を適切に設定することが大切です。
「削減される負担」と「増える負担」
業務の単純化によって減る負担だけに注目するのではなく、新方式に変えることで増える負担も考慮する必要があります。
例えばスーパーマーケットにおいて、電気代の節約のため、営業時間外の品出しや閉店後の掃除の時間は空調や照明を抑えて作業したとします。この場合、高騰する電気代は削減できるものの、従業員が快適に作業しづらくなり、負担も増えてしまうでしょう。
従業員の負担が大きくなれば、ストレスや離職などにつながる懸念もあります。そうなると、かえって採用や人材育成のコストが生じかねません。このように、目先のコストを削減するだけでは、負担が減るとは限らないばかりか、むしろコスト増を招くおそれもある点に注意が必要です。
特に、従業員の負担感は可視化や数値化が難しく、感覚によるところが大きくなります。そのため、業務単純化の議論にあたっては従業員が持つ感覚的な部分も考慮したうえで、適切に判断していかなければなりません。
まとめ
業務のムダを削ぎ落として効率化し、業務精度の向上を目指すには「4層のフィルタ」が役立ちます。「なくす」「減らす」「寄せる」「任せる」の各フィルタでろ過できるムダがないか、現在の業務を見直してみましょう。
業務プロセスを徹底的に見直すことは、いわば企業体質を「筋肉質」に変えるようなものです。改善を繰り返し、ムダのない均整の取れた業務の状態を維持することで、企業の生産性は飛躍的に向上し、さらなる企業価値や競争力、顧客満足度などさまざまな利益が得られると期待できます。









