
シェアードサービスのメリットとは?導入成功のポイントも解説
- 業務プロセス
- # 解説記事
最終更新日:
公開日:

企業にとって「ヒト・モノ・カネ」をどう効率的に活用するかは、経営の重要な課題です。業務の効率化とコスト削減を実現する手法として、近年注目を集めているのが「シェアードサービス」です。本記事では、シェアードサービスの概要や導入のメリット、導入プロセスについて解説します。
目次
業務を集約し、効率化を図る「シェアードサービス」
シェアードサービスとは、企業グループ内の間接部門の業務を一箇所に集約し、業務の効率化とコスト削減を目指す手法です。対象となるのは主に人事、経理、総務、情報システム、法務などの部門です。これらの業務は企業ごとに大きな違いがないため、業務プロセスやシステムを統一することで、グループ全体の業務効率向上や経営資源の最適化につながります。
例えば、同じ業務を複数の部門で行うと、人的コストや設備コストが増大します。しかし、業務を集約すれば重複作業を削減し、人件費の抑制や設備の最適化が可能です。また、間接業務の負担を減らすことで、各企業や部門の人材が本来のコア業務に専念できるようになります。
さらに、知識やノウハウの共有・蓄積が進むことで、業務品質の向上や経営力の強化といったメリットも期待できます。
対象となる業務例
シェアードサービスの対象となるのは、主に間接部門の定型的な業務や専門性を要する業務です。ただし、間接部門の業務すべてがシェアードサービスに適しているわけではありません。
【人事・総務関連業務】
多くの企業が給与・賞与計算業務をシェアードサービスに移行しています。また、社会保険手続きや福利厚生に関する業務も、法律に則った標準化が可能なため、シェアードサービスの導入が進んでいます。一方で、人事評価や採用業務のような専門性の高い業務には適していません。
【経理・財務関連業務】
支出管理や債務管理などの一般会計業務、伝票・帳簿作成、月次・期末決算業務などがシェアードサービスの対象となります。ただし、管理会計や内部監査などの戦略的な業務には向いていません。
【IT関連業務】
ハードウェア・ソフトウェアの管理業務、セキュリティ管理、ヘルプデスクなどが該当します。これらの業務は事業部門が異なっても業務内容に大きな違いがないため、集約のメリットが大きいです。
【調達・購買関連業務】
資材調達、備品管理、契約管理なども、シェアードサービスの対象として多くの企業が導入しています。
BPOとの違い
シェアードサービスと混同されやすい概念に、BPO(Business Process Outsourcing)があります。どちらも業務効率化やコスト削減を目的としていますが、いくつかの点で大きく異なります。
まず、業務を委託する対象が異なる点です。シェアードサービスはグループ企業内の一箇所に業務を集約するのに対し、BPOは外部の専門業者に業務を委託します。
また、対象業務にも違いがあります。シェアードサービスは主に財務・経理、人事、総務、情報システムといった間接業務が対象です。一方、BPOは間接業務に加え、より専門性の高い業務も外部委託の対象となります。これは、シェアードサービスがグループ内での業務標準化やコスト削減を目的とするのに対し、BPOは外部の専門知識や技術を活用し、高度なサービスを得ることを目的としているためです。
シェアードサービスの導入形態
シェアードサービスの導入形態には、大きく分けて「本社集約型」と「子会社型」の二つがあります。自社の状況や目的に応じて、適した方法を選びましょう。
本社集約型
本社集約型は、グループ企業の共通業務を本社内の一部門として集約する形態です。
メリットとして、本社が直接シェアードサービスを運営するため、事業部門との連携が強化され、経営判断のスピードアップにつながる点が挙げられます。また、大規模な組織変更を伴わずに導入できるため、比較的スムーズに運用を開始できるのもメリットです。
一方で、この形態では従来の業務体制や慣習に引きずられやすく、抜本的な改革が難しいという課題があります。また、業務の効率化やコスト削減の効果が外部から見えにくいため、成果が把握しづらいのもデメリットです。
本社集約型を成功させるためには、シェアードサービスの目的やメリットを組織全体に明確に伝え、理解を深めることが重要です。また、経営層が主導し、従来の業務プロセスにとらわれない抜本的な改革を推進することが成功の鍵となります。
子会社型
子会社型は、グループ企業の共通業務を専門に担う独立した子会社を設立する形態です。
この形態の最大のメリットは、独立した組織として、専門性の高いサービスを提供できることです。また、本社とは異なる独自の方針・戦略を採用しやすく、より柔軟な運営が可能となります。さらに、法人として別会社化することで、売上やコストの可視化が進み、当事者意識の向上や公正な人事評価が実現しやすくなるのも大きなメリットです。
しかし、新たな法人を設立・維持するためのコストがかかる点には注意が必要です。また、他の子会社とのバランスや、グループ内での適切な位置づけを明確にすることも重要な課題となります。本社との連携や、グループ全体の最適化も考慮しなければなりません。
子会社型を成功させるためには、グループ全体の中での明確な役割と位置づけを決め、適切な権限と責任を付与することが欠かせません。また、本社との円滑な連携を保ちつつ、独立した組織としての強みを活かす戦略を構築することが求められます。
シェアードサービスを導入するメリット
シェアードサービスを導入しても、それが自社の課題解決につながらなければ意味がありません。ここでは、この取り組みが具体的にどのような効果をもたらすのか、解説します。
管理費・人件費の削減につながる
シェアードサービスの導入により、管理費や人件費の削減が可能になります。これは、間接部門の業務を一元化することで、人員配置を最適化できるためです。
重複する業務を削減し、業務プロセスを標準化すれば、作業時間の短縮につながり、結果として必要な人員数を減らせます。また、システム導入費用の削減に寄与するのもメリットです。さらに、間接業務を集約することでスケールメリットを活かせます。例えば、全社での調達を一括化することで、より有利な条件での交渉が可能となり、ボリュームディスカウントなどのコスト削減効果も期待できます。
ただし、導入初期には一時的なコスト増加が発生する可能性があるため、中長期的な視点での検討が必要です。
人的リソースの有効活用につながる
シェアードサービスの導入は、人的リソースの最適配置を促し、組織全体の生産性向上につながります。定型業務をシェアードサービスセンターに集約することで、各部門の従業員は、より戦略的で付加価値の高い業務に集中できるようになります。例えば、経理部門の従業員が日々の仕訳作業から解放され、財務分析や経営戦略の立案に時間を割くことが可能です。
また、シェアードサービスセンターには、特定の業務に特化した専門家を配置できるため、高度な専門知識やスキルを持つ人材を効率的に活用し、業務の質と生産性を向上させられます。専門性を高めることでキャリアアップの機会も増え、従業員のモチベーション向上にもつながります。
さらに、シェアードサービスセンターは若手社員のトレーニングの場としても機能する点もメリットです。標準化された業務プロセスのもとでノウハウを共有することで、若手社員が基礎スキルを効率的に習得できます。
社内でのナレッジ共有が業務効率化・業務品質向上につながる
シェアードサービスの導入は、業務の効率化と品質向上の両面でポジティブな影響をもたらします。業務プロセスの標準化やマニュアル化が進むことで、作業時間の短縮が可能です。また、業務に関するナレッジを一元管理することで、必要な情報の共有や活用がスムーズになります。
さらに、各事業所で蓄積されたノウハウやベストプラクティスを共有することで、担当者のスキルアップにつながる点もメリットです。ナレッジの共有により業務の属人化を防ぎ、情報伝達ミスを減らすことで、部門間の連携強化にも寄与します。これらの取り組みは、最終的に企業全体の競争力強化につながります。
企業・組織全体のガバナンス強化につながる
シェアードサービスの導入において、業務プロセスの可視化と標準化が不可欠です。これにより、内部統制の強化やコンプライアンスの徹底が可能になります。また、リスク管理体制の強化や不正防止にも役立ちます。例えば、ある企業では、各社の業務プロセスを並列に比較し、標準化すべき点を明確化することで、内部統制を強化しました。
効率的な業務運営やリスク管理の強化、コンプライアンスの徹底によって、企業の信頼性が向上し、結果として企業価値の向上にもつながります。
シェアードサービスの導入手順
シェアードサービスを成功させるためには、適切な手順を踏むことが重要です。以下の手順に沿って取り組みましょう。
1. 企業グループ全体で抱える課題の明確化
まず、企業グループ全体が抱える課題を明確にしましょう。コスト削減、人員配置、システム統合、業務効率化など、さまざまな観点から分析することで、シェアードサービス導入の具体的な目的が明確になります。これは、経営層や従業員に導入の必要性を説明する際にも役立ちます。
特に、現状の業務プロセスや組織体制を分析することで、シェアードサービスの適用が有効な部門と、逆に適さない部門を見極めることが可能です。この分析を基に具体的な改善目標を設定することで、導入後の効果を最大化できます。
十分な事前分析と検討を行うことが、導入の円滑な進行と最終的な成功につながります。
2. 導入部門の検討
次に、シェアードサービスを導入する部門を検討します。この段階では、二つの重要な検討事項があります。
ひとつ目は、シェアードサービスに移管する部門の選定です。総務・人事、調達、経理、情報システムなどの間接部門の中から、自社にとって最適な部門を選びます。業務の標準化が可能かどうか、システム移行の負担と得られるメリットのバランスを慎重に評価することが重要です。
二つ目は、本社集約型か子会社型かの選択です。本社集約型は導入がスムーズで、短期間で効果が期待できますが、大幅な組織改革が難しい場合があります。子会社型は大規模な組織変更を伴いますが、より抜本的な業務効率化が可能です。自社の事業規模や経営方針に応じて、最適な形態を選択しましょう。
3. システム統合などの検討
導入部門と運用形態を決定したら、システム統合について検討を進めましょう。
まず、システム統合の範囲を決定し、本社集約型と子会社型のどちらを採用するかに応じて、システム構成の影響を評価します。次に、既存システムからのデータ移行方法を検討し、データの整合性を保ちながら効率的な移行計画を策定します。また、新システムと既存システムの連携方法も考慮し、APIやデータ連携ツールの活用を検討してください。
これらを検討したら、システム統合や新システム構築にかかる費用と期間を詳細に見積もります。これには、ハードウェア、ソフトウェア、人件費、トレーニング費用などが含まれます。技術的な課題や集約されたデータやシステムのセキュリティ対策の検討も忘れてはなりません。
この段階で綿密な計画を立てることで、導入時のリスクを軽減し、スムーズなシステム移行を実現できます。
4. 人員体制の構築
次に、シェアードサービスセンターの人員体制を構築します。
まず、必要なスキルや知識を持つ人材を社内から選抜し、不足があれば外部採用も検討しましょう。選定した人材には、業務の円滑な移行を支援するための教育・研修プログラムを整備します。
また、各メンバーの役割と責任を明確に定めることで、業務の重複や混乱を防ぎ、スムーズな業務遂行が可能な環境を整えます。
さらに、シェアードサービスセンター内でのキャリアパスを設計し、従業員に成長の機会を提供することも重要です。これにより、モチベーションの維持や人材定着につながります。新しい業務体制に適した評価制度を整え、公正かつ適切な人事評価を行える仕組みを構築しましょう。
5. 運用と展開
最後に、シェアードサービスセンターの本格運用を開始します。
初期運用の段階では、予期せぬ問題に迅速に対応できるよう、業務の進捗を細かくモニタリングしましょう。また、導入前に設定したKPIを活用し、コスト削減や業務効率化、サービス品質向上などの観点から定期的に評価を行います。
さらに、業務プロセスやシステムの改善を継続的に実施する必要があります。ユーザーや関係部門からのフィードバックを定期的に収集し、サービス向上に役立てましょう。
シェアードサービス導入を成功させるポイント
シェアードサービスは、単に導入すれば成功するものではありません。期待する効果を最大限に引き出すためには、あらかじめ以下のポイントを押さえておくことが重要です。
システム統合を計画的に進め、スムーズな運用開始を実現する
計画的なシステム統合を進めることで、シェアードサービスのスムーズな運用開始と、導入効果の最大化を図れます。
まず重要なのは、既存システムとの連携とデータ移行です。シェアードサービスと企業グループ内の既存システムを適切に連携させ、必要なデータを正確に移行しなければなりません。場合によっては、新たなシステムを構築する必要が生じることもあります。これらの作業には専門的な知識や技術が不可欠なため、社内で対応可能かを見極め、必要に応じて外部の専門家を活用することも検討しましょう。また、システム統合には時間やコストがかかるため、事前に十分な計画を立てておくことが大切です。
導入期間中の業務継続性も考慮する必要があります。新システムの導入によって業務効率の低下や混乱が生じる可能性があるため、あらかじめ段階的な導入計画を策定し、トラブルを最小限に抑えましょう。さらに、本格稼働前には十分なテストと調整を行い、潜在的な問題を事前に洗い出しておくことが重要です。
問題発生時の対応スピードを高める体制を構築する
問題発生時に迅速に対応できる体制を整えることで、シェアードサービス導入の成功確率を高められます。そのためにも、企業側に一定の専門知識を持つ担当者を配置することが不可欠です。導入後も各企業に専門知識を持つ人材を確保しておくことで、突発的な問題や緊急事態に対する初期対応がスムーズになります。また、担当者が適切な知識を持つことで、シェアードサービスセンターとのコミュニケーションを円滑に進めることが可能です。
例えば、企業グループとシェアードサービスセンターの間に専任の窓口担当者を設置すれば、情報のやり取りがスムーズになり、問題解決のスピード向上が期待できます。
従業員のモチベーション維持とキャリア成長を促進する
シェアードサービスでは、標準化された間接業務を集約するため、業務が単調になりがちです。その結果、従業員のモチベーションが低下しやすく、キャリアパスも描きにくいという課題があります。これを防ぐためには、シェアードサービスでのキャリアパスを明確化し、将来の成長機会を提示することが重要です。
また、グループ企業間での出向や異動の機会を設けることで、従業員が幅広い経験を積み、視野を広げられます。特定分野での専門性を高める研修やスキルアップの機会を提供することも、成長意欲の向上につながります。さらに、シェアードサービスがグループ経営を円滑に進める上で重要な役割を担っていることを伝え、従業員が自身の仕事の意義を実感できる環境を整えることも大切です。
まとめ
シェアードサービスとは、企業グループ内の間接業務を集約し、業務の効率化やコスト削減を図る手法です。導入形態には「本社集約型」と「子会社型」があり、それぞれに利点と課題があるため、自社に適した形を選ぶことが重要です。
対象となる業務には、人事、経理、総務、ITなどが含まれ、統一されたプロセスを導入することで業務品質の向上や経営資源の最適化が可能になります。業務の重複をなくし、人材をコア業務に集中させられる点も大きなメリットです。
導入にあたっては、現状の課題を明確にし、システム統合を計画的に進めることで、スムーズな運用開始を実現しましょう。









