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製造業DXはトップダウンからボトムアップへの移行が成功の鍵

製造業DXはトップダウンからボトムアップへの移行が成功の鍵

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自身の原体験をもとに1990年代からDX化に取り組んできたMipox株式会社 代表取締役社長の渡邉氏ですが、現場では「社長にやらされている」という空気が蔓延している時期もありました。しかし、コロナ禍によるパンデミックを機に、DX化について自発的にアイデアを出す社員が増えたといいます。

本記事では、強いリーダーシップでDX化を進めてきたMipox株式会社の代表取締役社長 渡邉淳氏に、社内でデジタル化による業務効率化を目指す雰囲気が醸成されるまでの過程や経営者としての姿勢についてお話を伺いました。

(前編はこちらから)

社員のDX化への意識が変わったきっかけは、コロナ禍のリモートワーク

――前編では1990年代からデジタルツールに触れてきたという話をお伺いしましたが、DX化に対する社員の意識が変わったのはいつでしたか?

Mipox株式会社 代表取締役社長 渡邉淳氏(以下、渡邉):DXに対する社員の意識が変わった一番大きな転換点は新型コロナウイルスのパンデミックでした。会社に集まることが難しいなかでも業務を止められないとなれば、リモートワークが必須です。社員の側からすれば、今までは「社長が言うから仕方なく実行する」といった面もあったと思いますが、コロナ禍を通してDX化の必要性を肌で実感したようです。

パンデミックが落ち着いた後、DX化に関するアイデアがものすごい勢いで上がってくるようになりました。以前は「DXチームはどのような業務に取り組んでいるのだろうか」と疑問を持たれることもありましたが、パンデミックを経験してからは潮目が変わったと感じています。

私は元々「生産部門の次にDXの部門が大事だ」と語っていましたが、社員はあまり腹落ちしていない様子でしたね。しかし、今は私の意見に納得する社員が増えたと感じています。パンデミックとDX化は、経営者だけでなく、社員にとっても会社のあり方を考える機会になったのではないかと考えています。

経営者の一貫した姿勢が製造業DX推進を加速させる要因

――DX化を浸透させるために渡邉様自身が心がけていたことがあれば教えてください。

渡邉:私が当社の経営者として取り組んだことは一貫しています。物事をシンプルに変えていくこと、常に刺激・変化を与えて活性化すること、公平・公正・透明性を大事にすること、常にリスクを想定すること、高い視座から「仕組み化」することです。

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特に「物事をシンプルに変えていく」という考え方が、メールを廃止するという決断につながりましたね。チャットを導入することにより、伝言ゲームをなくし、共有のための転送をなくして、コミュニケーションをオープンかつシンプルにしています。

また、業務の実行手順をひとつに絞るという取り組みは「高い視座から仕組み化する」の一つです。Aのやり方でも、Bのやり方でも、Cのやり方でも許容するのではなく、ベストなやり方を見出して仕組み化することが私のやるべきことだと考えています。

製造業DX成功の秘訣はトップダウンからボトムアップへの段階的移行

――では、DX化を推進するにあたって、経営者が留意した方が良いポイントを教えてください。

渡邉:DX化を推進していくことを決めたのであれば、まずは経営者がトップダウンで意思決定を行うことが重要です。現在はDXチームが中心となって改善を進めており、現場から上がってきた意見を集約して改善するような流れを構築していますが、特に最初のうちは経営者がトップダウンで意思決定を行うようにしてください。言い換えると、会社のカルチャーとして浸透するまではトップダウンで激しく推し進めていく必要があると考えています。

DX化を推進させるポイントは、最初はトップダウンで意思決定を行い、徐々にボトムアップ型に移行させていくことです。トップダウンで何でもかんでも物事を進めていってしまうと、企業全体としての成長が止まってしまうとも考えています。

製造業は現場が命です。進むべき方向性がある程度見えてきたら、実際の現場の意見を反映させ、ボトムアップ型で業務効率化を進めることが非常に大切だと考えています。

――トップダウン型からボトムアップ型に移行するのは、どのようなタイミングだったのでしょうか。

渡邉:デジタル化で業務効率化を目指すことがカルチャーとして根付いてきたタイミングです。ここ最近、会社の中に私と同じような発言をする人が増えてきたこともあり、当社でもデジタルを活用して業務効率化を目指す文化が根付いてきたことを実感しています。

物事を徹底するには、無意識状態でも取り組める状態にすることが大切です。無意識に物事を進めるためには徹底的な意識が必要なので、無意識状態でできるようになるまでは、徹底的に言い続けます。その成果として、私と同じようなことを言う人が会社に増えてきたので良い兆候だと考えています。

「業務の先にあるもの」を想像し、より良い仕事のあり方を探求する

――業務効率化と属人化の関係性はよく話題になりますが、渡邉様はどのようにお考えですか?

渡邉:企業としての成長を第一に考えるのであれば、属人化している業務を少なくする努力も一定数必要だとも考えています。ただし「ロボットに業務を奪われるのが怖い」、「誰にでもできる仕事ばかりやっていてはダメなのではないか」と不安を感じる社員もおり、経営者としても難しい状況でしたね。

そこで私が意識したのが、イソップ物語の『北風と太陽』に登場する「太陽」のコミュニケーションです。属人化を解消するために、その人が果たすべき役割を丁寧に伝え続け、社員一人ひとりが安心して働ける環境をつくっていったのです。

以前は経営者として未熟な部分もあり、「北風」のコミュニケーションで社員と衝突してしまうこともありました。とにかく理詰めで説明し、相手が一切反論できないような論理的なコミュニケーション方法を選んでしまうこともありました。しかし、それでは社員から本当の理解を得ることはできません。

その人が果たすべき役割をちゃんと伝えて自ら動いてもらうようなコミュニケーションを意識することで、業務効率化を前に進めることができたと感じています。

AI時代の製造業DX推進で経営者が持つべきマインドセット

――DXツールの選択や業務効率化を進める中で、AIの活用も重要なテーマになってきています。そこで、AIとの関わり方についての渡邉様のお考えを教えてください。

渡邉:AIとの付き合い方については焦りすぎなくても良いと考えています。

もちろん情報を収集してさまざまな挑戦はすべきですが、テクノロジーの進化を焦りに変えてはいけません。また、AIツールの選択については、まだ正解が見えている状況ではありません。我々はユーザーとして製品を使う側なので、状況が落ち着いてから本格的な導入を検討しても遅くはないと思います。

最先端の技術を今すぐに導入しなければと焦ってしまうと、不安が膨らんで不必要なことまで考え始めてしまいます。メーカーとしてやるべきことをやりながら、情報は積極的に収集しつつも、焦りすぎないという姿勢でAIの動向を注視しています。

――どの業界でもますます業務効率化が求められる時代ですが、渡邉様が考える「経営者が持つべきマインド」を教えてください。

渡邉:あらゆる場面で共通することですが、今の方法がベストとは思わずに、常にアップデートしていく姿勢を大切にしてほしいです。決して今のやり方や選択が悪いわけではなくても、今の状態は必ず陳腐化していくというマインドを持つことが大切だと思います。

ツール選択に関しても、私は現在導入しているツールよりも良いものがあるはずだと常に考えるようにしています。ベストな方法は時代によっても変わってくるので、その時々でもっとも良いと思える方法を探る姿勢を持ち続けてみてください。

(前編はこちらから)
取材・文:小町ヒロキ

話し手
渡邉 淳
Mipox株式会社
代表取締役社長

1994年、日本ミクロコーティング株式会社(現:Mipox株式会社)へ入社。 製造現場からキャリアをスタート。 国内外の営業を経て半導体部門部門長、海外支援部門長に従事。 2007年取締役、業績が赤字に転落した2008年に先代からバトンを引き継ぎ代表取締役社長に就任。 社長就任後は、ITツールの導入により営業活動の可視化・情報共有の効率化で全社的な業務改革を行いV字回復を成し遂げる。 製造拠点のスマートファクトリー化に向けて製造業としてのDXの取り組み強化を進める。 常に挑戦し続け、変革し続ける『100年ベンチャー企業』を目指す。