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業務可視化の重要性と成功のポイント、実践ステップを紹介

業務可視化の重要性と成功のポイント、実践ステップを紹介

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企業にとって生産性の向上は極めて重要な経営課題であり、その実現に欠かせない施策のひとつが「業務可視化」です。本記事では業務可視化の重要性について解説するとともに、業務プロセスを可視化する具体的なステップを紹介します。競合他社にはない付加価値を創出し、市場の競争優位性を確立するためにも、ぜひ参考にしてください。

業務可視化はなぜ重要なのか

業務可視化とは、作業の工程やタスク処理の手順などを調査・整理し、業務全体の流れを俯瞰的に理解する取り組みです。具体的には業務一覧表を作成して業務の粒度の大小関係を整理する、あるいはフローチャートの要領で業務の上位概念を下位概念に落とし込んで細分化するといった方法が用いられます。とくに業務一覧表は業務プロセスの簡易的な調査・整理に適しており、比較的短時間で作成できるため、業務可視化の初期段階で推奨される手法のひとつです。

生産性の向上に向けて業務可視化が求められる理由のひとつは、業務全体の流れを把握してボトルネックを特定するためです。生産性とは、人的資源や物的資源といった経営資源の投入量に対する産出量の比率で、「生産性 = 付加価値(アウトプット) ÷投入資源(インプット)」の数式で算出されます。したがって、生産性を向上するためには、リソース投入量を削減しつつ従来と同等以上の付加価値を創出する、もしくは従来と同等のリソース投入量で付加価値を増大させる必要があります。

業務可視化によってボトルネックを特定できれば、無駄な作業の削減やタスク処理の効率化につながり、オペレーションの総合的な改善を図ることが可能です。それにより、人的資源の投入量を最適化しつつ、従来以上の付加価値を生み出せる可能性が高まります。また、業務全体の流れを視覚的に理解できれば、人材育成の合理化や部門間連携の強化などにも役立てられるため、生産性の向上に向けて初めに実施すべき重要な取り組みです。

業務可視化で得られること

業務可視化の推進によって得られる主な利点は以下の3点です。

  • オペレーション品質の均一化
  • 現状課題の把握
  • 業務効率化

オペレーション品質の均一化

業務可視化によって得られるメリットとして、オペレーション品質の均一化による属人化の解消が挙げられます。たとえば営業活動は担当者のスキルに対する依存度が高く、属人化を招きやすい業務領域です。しかし営業プロセスを業務一覧表やフローチャートで可視化できれば、各工程で求められる施策を言語化・数値化し、そのナレッジを営業部門全体で共有できます。それによって営業活動の再現性が確立され、教える側のレベルに依存することなく業務の標準化を促進できます。

現状課題の把握

業務可視化を推進する利点のひとつは、既存業務の課題を詳細に把握できる点です。先程と同様に営業部門を例に挙げるなら、営業活動では「初回訪問」「ヒアリング」「ソリューションの提案」「クロージング」「契約締結」という一連の流れが存在します。この営業プロセスを業務一覧表やフローチャートを用いて細分化し、各工程で実施しているアクションや進捗状況を可視化できれば、無駄な作業が発生している部分や対応漏れのある領域を把握して改善策を立案できます。

業務効率化

業務可視化によって既存の作業工程やタスク処理の改善点を把握できれば、具体的な対策を講じてオペレーション品質の向上を図れます。たとえば営業活動における提案のフェーズで見込み顧客の離脱率が高い場合、顧客ニーズの掘り下げや価値提案の明確化、トークスクリプトの見直しといった対策が必要です。このように、業務可視化によってボトルネックを特定できれば、無駄な工数を把握したり、必要な施策を具体化したりできるため、オペレーションの改善に役立ちます

業務可視化を成功させるポイントは「観点・形式・精度」

業務可視化に取り組む際は、「観点」「形式」「精度」の3つのポイントを意識することが大切です。

  • 観点:何の業務を対象に、どのような観点で調査するのか
  • 形式:どのような形式で業務を調査・整理するのか
  • 精度:調査・整理の粒度と精度をどこまで求めるのか

業務プロセスを可視化するためには、どの領域を対象として、どのようなフォーマットで調査・整理し、どのレベルまで可視化するかを明確化しなくてはなりません。初期段階では効率化の余地が大きな領域に焦点を当て、概略的な調査・整理をスピーディーに実施できる業務一覧表を活用するのがおすすめです。また、調査と整理のプロセス自体にも金銭的・時間的なコストが発生するため、細分化する粒度と分析の精度を業務の重要度に応じて見極める必要があります。

業務可視化のステップ1. 業務項目の棚卸し

ここからは、業務可視化の基本的な流れを3つのステップに分けて解説します。業務可視化の第1ステップは「業務項目の棚卸し」です。以下のような業務一覧表を作成するのであれば、チームメンバーと協力しながらカードソーティング(情報やアイデアを分類・整理する手法)の要領で業務項目を抽出し、粒度の大小を整えながら全体の構造を整理するといった方法が推奨されます。
業務項目の棚卸し表

棚卸しで意識すべき粒度

業務一覧表を活用して業務項目の棚卸しを進める場合、組織階層における上位概念を下位概念に細分化していくのが基本です。それにより、組織全体における業務の構成要素が俯瞰的な視点で整理され、各階層の業務項目を効率的に調査・整理できます

部門単位

部門単位は、組織の中で特定の機能や役割を担う大きな構成要素です。たとえばマーケティング部門は企業全体のマーケティング活動を統括する部門であり、組織によっては「デジタルマーケティング部」「広告宣伝部」「販売促進部」といった複数の部署で構成されています。まずはこうした部門や部署などの大きな構成要素を最上位に据え、そこから「大分類」→「中分類」→「小分類」→「業務内容」とフロー形式で細分化していく、の一般的な流れです。

大分類

大分類とは、各部門が担う業務を大枠で定義した業務種別を意味します。マーケティング部門を例に挙げるなら、「市場調査・需要分析・競合調査」「見込み顧客の獲得・育成・選定」「プロモーション戦略の立案・策定」「Webメディアの運用・管理」など、一般的に「◯◯関連業務」と呼ばれるものが大分類に該当する業務領域です。つまり業務項目の棚卸しにおける大分類とは、該当部門の主要な業務を広範なカテゴリーで示したものと換言できます。

中分類

中分類は、大分類のカテゴリー内において個別の従業員が担当する業務を指す単位です。たとえばマーケティング活動における市場調査では、「3C分析」や「4P分析」などの分析手法を活用し、マーケティング戦略の方針を策定する分析業務が欠かせません。Webメディアの運用・管理なら、Webサイトの設計業務やコーディング業務などが不可欠です。このような数時間〜数日で完結するサイズ感で、「◯◯業務」と呼ばれるような業務が中分類に該当します。

小分類

小分類とは、中分類の各業務を10項目前後に分解した作業工程を意味します。例としてWebサイトのコーディング業務を内製化する場合、「HTML構造のマークアップ」「CSSの適用」「レスポンシブデザインの実装」「JavaScriptによる動的機能の実装」「フォームの作成」「コンテンツの配置」「リンク構造の最適化」「画像ファイルの最適化」「各種テスト」「Webサーバへのアップロード」などの工程が必要です。こうした数分から数時間で区切れるサイズ感の作業工程を小分類と呼びます。

業務内容

業務内容は、小分類の作業工程の中で具体的な作業や動作を意味する単位です。たとえば、Webサイトのコーディング業務における「HTML構造のマークアップ」や「CSSの適用」をさらに分解すると、「メタタグの設定」「ヘッダー・フッターの作成」「ナビゲーションメニューの設置」「メインコンテンツの配置」「ハイパーリンクの記述」といった作業に細分化されます。このように、特定の作業工程の中でそれ以上の分解が困難な作業・動作が業務内容に該当します。

業務可視化のステップ2. 業務工数の推計

業務可視化の第2ステップは「業務工数の推計」です。基本的には、まず「1回あたりの業務時間」と「月あたりの実施回数」を推計し、それらの積を「月あたりの業務時間」として算出します。そして各部門における中分類や小分類の業務時間を算出すれば、組織全体の業務時間に対する「構成比率」を算出可能です。構成比率についても記載することで、特定の業務領域に対する負担率を視覚的に把握できます

あくまでも簡易的な例ですが、店舗運営を主体とする小売事業部があり、総営業時間に対する業務工数の構成比率が「品出し:35%」「在庫管理:20%」「品質チェック:20%」「発注:5%」「清掃:10%」「設備メンテナンス:10%」となる場合、品出しが最も負担の大きい業務領域であると分かります。このように各業務の負担割合を視覚的に把握できれば、その知見をオペレーションの改善やリソース配分の調整などに役立てられます

また、積み上げ式で算出した業務の構成比率と稼働時間ベースでの全体業務時間を掛け合わせ、月あたりの業務時間を算出して補正値に用いることで精度の向上が期待できます。さらに正確な算出が必要であれば、実際の作業やタスクを実測しなくてはなりません。しかし粒度や精度に完璧を求めると金銭的・時間的なコストが増大するため、業務の調査・整理に投じるリソースと得られるメリットを比較しながら実施の要否を判断する必要があります

推計時に算出すべき項目

以上の点を踏まえた場合、業務工数の推計に必要な項目は、「1回あたりの業務時間」「月あたりの実施回数」「月あたりの業務時間」「構成比率」の4点となります。4項目の概要と基本的な算出方法は以下のとおりです。

1回あたりの業務時間

1回あたりの業務時間は、特定の作業やタスクを1回実施するのに必要な時間です。品出しの工程を実測して4時間12分かかった場合は「品出し:4.2時間/回」、在庫管理の工数を約6時間と推計するなら「在庫管理:6時間/回」、品質チェックに2時間25分を要したなら「品質チェック:2.4時間/回」と記録します。

月あたりの実施回数

月あたりの実施回数は、1カ月の間に特定の業務を実施する頻度です。たとえば年中無休の店舗を運営しており、発注頻度の目安が週に2回程度であれば「発注:8回/月」、清掃を1日に3回行うなら「90回/月」、設備メンテナンスを毎日実施する場合は「設備メンテナンス:30回/月」と概算します。

月あたりの業務時間

月あたりの業務時間は、「1回あたりの業務時間」と「月あたりの実施回数」を掛け合わせて算出します。品出しを実際に測定したところ4時間12分を要し、それを1カ月に30回実施する場合の業務時間は「4.2時間 × 30日 = 126時間/月」です。それにより、品出し業務に1カ月あたり約126時間を費やしていると分かります。

構成比率

業務時間の構成比率は「構成比率(%)= 月あたりの業務時間 ÷ 月あたりの総営業時間 × 100」で算出できます。1カ月の日数を30日と設定し、12時間営業で年中無休の店舗の場合、月あたりの総営業時間は360時間です。この月あたりの総営業時間を分母、月あたりの業務時間を分子とすることで、以下のように構成比率を割り出せます。ただし、これは極めて簡易的な例ですので参考程度に捉えてください。

  • 品出し:4.2時間/回 × 30回/月 = 126時間/月(構成比率:35%)
  • 在庫管理:6時間/回 × 12回/月 = 72時間/月(構成比率:20%)
  • 品質チェック:2.4時間/回 × 30回/月 = 72時間/月(構成比率:20%)
  • 発注:2.25時間/回 × 8回/月 = 18時間/月(構成比率:5%)
  • 清掃:0.4時間/回 × 90回/月 = 36時間/月(構成比率:10%)
  • 設備メンテナンス:1.2時間/回 × 30回/月 = 36時間/月(構成比率:10%)

業務可視化のステップ3. 業務難度の定義とスキル・ツールの整理

業務可視化の第3ステップは「業務難度の定義とスキル・ツールの整理」です。各業務の難度を明確に定義し、それぞれの領域において適切なスキルセットとツールを整理することで、タスクの割り当てやリソース配分、人材の育成計画などを効率的に推進できます。

難度は3つの型に分けて考える

業務難度を定義する際は、難しい・普通・簡単といった分類ではなく、少し違った視点での整理が必要です。業務は難度の高低で評価できるものばかりではなく、経験に基づく暗黙知が求められる業務、ルールに従って正しい手順を選択する必要があるタスク、定型的なルーティンを繰り返す作業など、性質の異なるものが含まれています。

したがって、単純な難度の高低ではなく、「感覚型業務」「選択型業務」「単純型業務」という3つのカテゴリーに整理する方法がおすすめです。それにより、業務を可視化できるだけでなく、業務難度を整理していく仮定で組織のポリシーが浮き彫りになり、企業理念や経営ビジョンを再確認する機会にもなり得ます。感覚型業務・選択型業務・単純型業務の主な特徴は以下のとおりです。

感覚型業務

感覚型業務は、個人の技術や知識、経験値などに大きく依存する業務を意味します。たとえば全体戦略・事業戦略・機能戦略の立案・策定といったマネジメント分野は極めて非定形的で属人的な業務領域です。また、デザイン制作や音楽制作などのクリエイティブ分野も個人のセンスに依存するため、不確実性が高く定型化しにくい業務領域といえます。

感覚型業務はデータや数値では判断できない定性的な要素が多く含まれており、高度な学問的探究を経て深化した専門知識、あるいは創造性や独創性といった先天的な資質が求められる分野です。標準化の推進が極めて困難なため、属人的であることを許容し、いかにして担当者のさらなるスキル強化を支援するかが重要な経営課題となります。

選択型業務

選択型業務は、いくつかの定型的なフォーマットがあり、状況に応じて手順を選択する業務です。たとえばWeb制作のコーディングはクリエイティブなスキルを必要とする一方、HTML・CSSの記述に一定の形式が存在します。属人性が高い傾向にあるものの、ソースコードの修正・追加やコンテンツの更新といった作業であれば、標準化された手順に従うことで専門外の人材でも対応可能です。

また、営業活動も属人的な業務領域ですが、成約率の高い営業フローの再現性を確立できれば、営業担当者のスキルや経験値に依存することなく一定の成果を創出できる可能性が高まります。このように選択型業務は現時点で属人的な部分が残存していても、学習や体系化によって一定レベルのスキル獲得が見込めるため、可能な限り標準化を進めたい領域です。

単純型業務

単純型業務は、定型的な手順に基づいて実行される業務です。手順を知っていれば人を選ばずに実行できる業務であり、基本的に高度な意思決定や専門的なスキルを必要としません。いわゆるルーティンワークに分類され、定義されたパターンに基づいて繰り返されるため、効率化・自動化しやすいという特徴があります。

具体的な業務内容としては、データ入力やファイルの整理、テンプレートに基づく文書作成、見積書や請求書の発行、一定の手順に従う機器の操作、電話やメール対応などが該当します。単純型業務はプロセスの体系化が容易で、手順の明確化によって人為的なミスやエラーを最小限に抑えられるため、組織全体で標準化を推進するべき業務領域です。

各業務で求められる必要スキルを洗い出す

業務難度を感覚型業務・選択型業務・単純型業務に分類したなら、次はそれぞれの工程で必要なスキルを抽出します。従業員の能力・技能を評価するスキルマップを作成済みであればそれを流用します。ただし業務一覧表と紐づける場合は、特定の業務に求められる能力や技能のみを抽出する点に注意が必要です。汎用的なスキルを含めると調査・整理に手間を要すると同時に、業務一覧表の複雑性が増大します。

そのため、「特定の業務」に求められる「特別なスキル」を洗い出すことが大切です。たとえば特定のシステムを使用する、特定の設備機器を操作する、あるいは業務の遂行に特定の権限を有するなど、資格・免許・認定などで裏付けられたスキルを優先的に抽出します。このプロセスによって従業員に求められる能力やスキルギャップを特定し、業務効率化に向けた取り組みや人材育成の方向性を定める一助となります。

業務に必要なツールを確認する

各業務で求められるスキルの抽出後は、その業務の遂行に必要なツールを明確化します。業務一覧表に必要なツールを記載する場合、原則として台数や使用回数、使用タイミングなどに制限のない汎用ツールを考慮する必要はありません。PCや一般的なソフトウェアなどの汎用ツールは台数の制約や使用回数の制限がない場合が多く、あえて業務一覧表に記載する必要性が薄いためです。

たとえば台数制限のある機器は業務の集中によって利用できなくなる可能性があり、操作に特定のスキルが求められるツールは人材を確保しなくては業務そのものを遂行できません。また、利用に多大なコストが発生する設備の場合、可能な限り利用回数を抑えることが望まれます。こうしたツールを抽出することで業務全体の細部を可視化しつつ、リソース配分の最適化や効率的な運用方法の考案に役立てられます

【+α】ルールやモラルの浸透度も可視化できるのか?

企業が持続的に発展していくためには、原則や前提条件(ルール)が制定・認識され、順守意識(モラル)が醸成されているかが重要です。たとえば生産性の向上を目的として、やみくもにシステムを新調しても意味がありません。そのシステムを活用して業務プロセスを再設計し、すべての従業員が生産性の向上を目指すという前提条件が共有されていなければ真価の発揮は困難です。

こうしたルールやモラルは極めて定性的な要素であり、浸透状況の把握が難しい傾向にあります。

個別面談やアンケートでルール・モラルの浸透度を調査する際は、「組織」「現場・個人」「付加価値創出」「業務効率化」の4軸に焦点を当て、行動ベースに着目した設問が有効です。たとえば「組織の生産性向上につながる行動を、どの程度起こせているか」という設問に対する回答を分析することで、実際の行動に基づく前提条件や順守意識の浸透度を推し量れます。

まとめ

業務可視化とは、業務の流れを調査・整理して全体像を把握するための取り組みです。既存の作業工程やタスク処理の手順を可視化できれば、業務フローの全貌や課題を俯瞰的に理解できるため、オペレーション品質の均一化やボトルネックの改善、リソース配分の最適化などに役立てられます
業務可視化によって非効率的な作業やタスクを特定し、継続的な改善を続けることで均整の取れたオペレーションの実現にもつながります。

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