
点検業務の形骸化が招く品質リスク。スタディストが「iCheckup!」で挑む現場の構造的課題
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日本の労働人口減少を背景に、外国籍人材やスポットワーカー、シニア人材など多様な人材の活用や、一人で複数の業務をこなす働き方が進んでいます。しかし、この変化が新たな課題を生んでいます。
業務が複雑でわかりにくいことで理解や解釈に個人差が生まれ、求められた水準での業務再現が困難になっているのです。また管理者の確認負荷も増大し、適切なチェックやフィードバックができなくなっています。その結果、決めたことが形骸化し、「適正品質」の維持が難しくなり、経営リスクにつながっているのです。
こうした課題を解決するため、株式会社スタディストは2025年10月より点検業務の実行支援システム「iCheckup!」の本格提供を開始しました。これまで紙で行っていた点検業務をデジタル化し、誰でも簡単かつ確実に点検できるようにすることで、適正品質の実現と生産性向上を支援するサービスです。
事業を主導したのは、同社のiCheckup!事業部 部長である関根弘明。なぜ今、スタディストが「点検」という領域に挑むのか。その背景には、関根が過去に経験した「品質低下が招く経営危機」という原体験と、現場への深い想いがありました。
今回は、新事業立ち上げの経緯や、現場が抱える点検業務の構造的な課題、そしてサービスに込めた想いについてお話を聞きました。
目次
「高品質で溢れる社会を創りたい」倒産という苦い経験から生まれた仕事のミッション
ーーまずはご経歴と、スタディストに入社された経緯から教えていただけますでしょうか?
株式会社スタディスト iCheckup!事業部 部長 関根弘明(以下、関根):私のキャリアについてお話すると、スタディストが4社目になるのですが、スタートはPOSシステムの会社でした。スーパー銭湯などの温浴施設で、リストバンドのバーコードで館内精算を行うシステムがありますが、私はその仕組みを日本で初めて開発した会社に在籍していました。
その後、飲食事業の会社でフランチャイズ店舗や自社居酒屋の立ち上げ、店長やスーパーバイザーなどの経験をしました。そして、3社目の調剤薬局向けシステム会社を経て、スタディストに入社したという流れです。
ー多くの現場経験の中で、特に印象に残っている出来事はありますか?
関根:私は「品質」というものの重要性を痛感する出来事を何度も経験してきました。例えば、温浴施設でお風呂の品質管理が不十分で清潔さに欠けていれば、お客様は再来店しません。飲食店で食中毒を出してしまえば、営業停止になり、最悪の場合は閉店に追い込まれてしまいます。
すべてが品質だけの問題ではありませんが、品質が経営に大きく関わっていることは間違いありません。こうした原体験から、私の中には「高品質で溢れる社会を創りたい」という仕事のミッションが生まれました。世の中の商品やサービスが高い品質で提供され続ける社会をつくりたいと思うようになったのです。
ーーそこから、どのような経緯でスタディストに入社されたのですか?
関根:転職活動中にスタディストに出会い、当時掲げていた「伝えることを、もっと簡単に」というミッションに強く惹かれたのがきっかけです。
現在は「オペレーションから、働き方と未来を変えていく」という新しいミッションへ進化していますが、私が目指す「高品質な社会」と、スタディストが目指す方向性がまさに合致していると感じました。「ここなら自分の想いを実現できる」と確信し、入社を決めました。
素晴らしい商品やサービスがあっても、その提供方法やつくり方が正しく伝わらなければ、品質を維持したまま広めることはできません。伝えることを簡単にして、誰もが同じようにサービスを提供できるようになれば、企業の価値を最大限に届けることができます。このミッションに強く共感し、興味を持ちました。
ーースタディストの主力事業である「Teachme Biz」は、写真や動画を使ったわかりやすいマニュアルをクラウド上で簡単に作成・共有できるシステムですが、まさにそのミッションを体現していますね。
関根:そうですね。私は2016年に入社したのですが、当時はまだ社員数が10名ほどの時期でした。そこからTeachme Bizの営業として現場を回り、2019年からは営業部長も任せていただきました。Teachme Bizを通じて、多くの企業の標準化のお手伝いができたことは、私にとっても大きな経験でした。
マニュアル作成だけでは解決できない。現場の「徹底」を支える仕組みの必要性
ーー順調にキャリアを重ねられていたなかで、今回iCheckup!という新規事業を立ち上げることになったきっかけは何だったのでしょうか?
関根:Teachme Bizを通して、多くの企業をサポートしてきましたが、世の中が激しく変化するなかで、マニュアルだけではカバーしきれない数多くの経営課題を目にしてきました。
そして、私がスタディストに入社したのは、ツールを販売するためではなく、事業を通じて「お客様の課題を解決し、高品質で溢れる社会を創る」というミッションを実現したかったからだ、と改めて思い出したのです。
そこでTeachme Bizを通してだけではなく、新しいサービスを通して、より多くのお客様にさらなる価値を提供できないかと模索し始めたことが、iCheckup!事業を立ち上げるきっかけになりました。
飲食業界の副社長との対話が導いた「点検業務」という着眼点
ーーそこから具体的に「点検業務」に着目されたのはなぜですか?
関根:「点検業務」に着目したのは、以前から親交のあった飲食業界の副社長の方との意見交換がきっかけでした。その方は、Teachme Bizをご利用いただいているお客様でもあるのですが、頻繁に経営に関する意見交換をさせていただいていました。
さまざまな経営課題に関して話をしていくなかで、「飲食業界では、こうした仕組みが役立つのではないか」という仮説をいくつか提案させていただきました。その中の一つが、飲食業界の品質改善に繋げるためのチェックリストの事業でした。
そこからさらにTeachme Bizをご利用いただいているお客様に詳しくヒアリングを重ねるなかで、特に製造業のお客様から高い関心を寄せていただきました。製造業において、点検や確認という業務は製品の品質や安全を守るための基盤であり、非常に重要な業務です。しかし、そこには多くの課題が潜んでいることがわかってきました。

なぜ点検は形骸化するのか?紙のチェックリストが抱える構造的な限界
ーーヒアリングを通して見えてきた「点検業務の課題」とは、具体的にどのようなものだったのでしょうか?
関根:本来、チェックリストの目的は「ミスをなくして作業の品質を保つこと」です。しかし、実態は正しく活用されていないケースが非常に多かったのです。
数百社へのヒアリングを通じて、現場が抱える問題は以下のように整理できることがわかりました。
まずは、点検の対応漏れが発生していることです。次に、実際には確認していないのにチェックを入れてしまうといった「点検の形骸化」の問題です。また、点検の基準や手順が不明確なことが挙げられます。その他にも、異常があった際の報告や共有がなされていないこと、紙での管理が煩雑であること、点検結果がその場限りになってしまい、データとして活用されていないといった課題も浮き彫りになりました。
この中で特に深刻なのが「点検の形骸化」です。私もアルバイト時代に経験しましたが、実際には確認していないのにチェックを入れたり、前回の記録を書き写したりするケースが多くの現場で発生していました。
また、「基準が不明確」というのも大きな問題の一つです。ベテラン社員は機械の音や振動の違和感で異常に気付くことができますが、新人はチェックリストの項目をただなぞるだけになってしまいます。このような属人化が進むことで、点検の品質にバラつきが出ていたのです。
ーーマニュアルがあっても、それを「実行」する段階で課題が起きていたということでしょうか?
関根:おっしゃる通りです。Teachme Bizは業務の標準化を支援するツールですが、マニュアルをつくった後、それが現場で「実行・徹底」されているかどうかを確認し、維持する仕組みが必要だと感じました。
点検業務がおろそかになれば、設備の故障による生産停止や不良品の流出、重大な事故に繋がるリスクがあります。それにもかかわらず、多くの現場では紙の点検表が使われ、管理者はハンコを押すだけの確認作業に追われていました。
異常があっても報告されなければデータとして蓄積されず、改善につながらないという問題があります。こうした点検業務の属人化こそが、品質低下や生産性低下を招いている根本的な原因だと確信したのです。
私たちスタディストは、企業のオペレーション改善に本気で向き合いたいと考えています。業務を標準化するだけでなく、それが確実に実行され、データとして蓄積され、継続的な改善につながる。そのサイクル全体を支援することが、企業の成長には不可欠です。だからこそ、点検業務のデジタル化を通じて、オペレーション改善の基盤をつくるiCheckup!が必要だと考えています。
後編では、iCheckup!がこれらの課題をどのように解決し、現場の意識をどう変えていくのか。具体的な導入事例や機能、そして関根氏が描く「適正品質」の未来について詳しく伺います。
取材・文:小町ヒロキ
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